【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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締め切り終わったのでリハビリ挿入話


職域確認折衝

「わざわざ出向かなくてもいいのでは?」

「こういうのは偉い人が先に頭を下げるものだよ。入江くん」

 

 叢雲とステンノとマシュのいつもの面子に宮内省の入江を引き連れて厚生省に入る。

 つくづく統括審議官という肩書に感動する。

 アポなし訪問でも待っていればそれ相応の人がお伺いに来る訳で。

 

「おや?新設の宮内省の統括審議官がこちらに何用で?」

「挨拶と、荒巻さんのやり残した仕事についての引継ぎをね。

 ……えっと……」

 

 同じ顔が二つあるのも何というか。まったく気にすることなく彼は俺に名刺を差し出した。

 

「入江省三で結構ですよ」

「だそうだ。宮内省の入江くん」

「いじめないでくださいよ」

 

 各省庁に一人ずついるとか。入江シリーズ。

 まぁ、相手が出てきた事で本題に入る。

 

「前任者の荒巻さんがこの国のオカルトなあれこれの組織一元化を目指して動いていたのは?」

「知っていますよ。もちろんうちにもちょっかいをかけてきましたよ。ええ」

「こっちの事情については?」

「理解はしますが、お役所ってそういうものじゃないでしょう?」

「おっしゃる通りで」

 

 こんな会話なのに、マシュは盾を取り出そうするし、叢雲も警戒を解いていない。

 俺も、厚生省の入江も、宮内省の入江も胡散臭い笑顔のまま話を続ける。

 

「名古屋……いや、綾金だったかな?

 そこで遊んでいる分にはこっちも何もいうつもりはなかったさ」

 

 俺は心の底からため息をつく。

 タイミンクがドンピシャなのがまた憎たらしい。

 

「真浜原子力発電所と原潜の件は、さすがに見過ごせなくってね。

 古巣が痛い目にあったみたいだし、米軍中将がこの件の解決に動いている」

 

「おや?CIAではなくって?」

「あれは勝手に動くのだろう。そういう組織と映画で見たよ」

「なんならエリア51あたりも彼らのせいになりそうですな」

 

 陸自は原発奪還作戦を計画し、見事に返り討ちにあった。

 そのせいもあって防衛庁内部でこの厚生省案件の化け猫は怨敵みたいになっていた。

 それは、原潜を奪われた米国も同じである。もちろん、在日米軍最悪のスキャンダルが生えたデグ様は事態の解決を俺の方に依頼し、かくしてこんな所に出張る事になった。

 

「まぁ、こちらも馬鹿じゃない。

 自衛隊や米軍の二の舞なんてごめんでね」

 

「だったらなんでこちらにいらしたんです?

 わざわざ偉い人が敵地の省庁に出向いてまで」

 

「決まっているだろう?

 偉い人ができる取引ってのをするためさ」

 

 俺は厚生省の入江に対して条件を提示する。

 すでに彼と彼の上司である菊島雄麻はこの厚生省で独立王国を築いていた。

 だからこそ、省庁間折衝という形で、まずはコンタクトをとる。

 

「これは荒唐無稽な質問だが、原発と原潜をこちらで用意するので化け猫に今の巣から出て行ってもらうという条件交渉は可能かな?」

 

「またド派手な金の使い方をしますね。宮内省は……」

 

「言っただろう。名古屋で遊ぶ分には関与はするつもりはないよ。

 残るは面子の問題でね。

 新規原発と原潜を用意するので、そちらで遊んでいただけるのならば宮内省は表立って動くつもりはない」

 

「数千億の金をどのようにして調達を?」

 

「もちろん、表に出せない金だよ。決まっているじゃないか」

 

 原潜と原発の費用ぐらい、ドレイク船長とプレジデントギル様ならどうとでも調達できる。

 俺個人でも表に出せない金が一千億ほどあるのだから。処分できるなら万々歳である。

 俺は笑顔のまま凄む。

 

「こっちとしては、原潜から核が東京に落ちてくるなんて事があったら困るんだよ。

 それ以外なら、まぁ向こうの要求は飲むよ」

 

「偉く含みのある言い回しですね」

 

 怪訝そうな顔をする厚生省の入江とこちら側なので笑顔の宮内省の入江の対比が面白い。

 化け猫たちが情報生命体だからこそ、この闇鍋世界は彼らにとって致命傷になる。

 同じ情報生命体であるメガテンの悪魔たちに情報を書き換えられたら、彼らはとても簡単に詰むからだ。

 そうなった時、どちらの世界が強いかの勝負となる訳で、己の運命がサイコロによって決められるとわかった時に彼らの顔が楽しみではある。

 

「なに、よくある人質事件における交渉と同じさ。

 相手の要求を知り、妥協点を導き、問題を解決する。

 つまり政治さ」

 

 どうせどこかで聞いているのだろう菊島雄麻に向けて俺は話をする。

 それに気づいた厚生省の入江が菊島雄麻の口として問いただす。

 

「こちらの戦力には手を出さないと?」

 

「宮内省としてはだな。内務省は荒巻さんががんばっているからちょっかいをかけるだろうし、自衛隊にも喧嘩売っただろう?君たち。

 米国は俺たちの事なんて知った事ないと内政干渉をしてくるわけだ。

 友好的中立を手土産に挨拶に来たお偉いさんにそれ相応の手土産があってしかるべきじゃないのかな?」

 

 実にわざとらしい言い回し、叢雲とステンノとマシュの三人がくすくすと笑いだす。

 俺は立ち上がって、話は終わりだとばかりに特大の毒を置いてゆく。

 

「あと一つ。

 これは心からの忠告だ。

 学園都市には手を出すな」

 

「あなたが食い込んでいる麻帆良学園都市ではなくあの?」

 

「あの学園都市だ。いいな。忠告はしたぞ」

 

 某芸人風に言う『押すなよ!』である。

 厚生省が絡んでも問題がないが、化け猫たちにとって相性最悪の罠があの学園都市に存在している。

 AIM拡散力場。

 情報生命体である悪魔や化け猫にとって、これほど致命的な罠は存在しないだろう。

 

「あの、統括審議官。向こうの入江が何か言いたそうな顔でこっちを見ているのですが」

 

 こっちの入江が笑いをかみ殺しながら俺に忠告し、なんとなくその理由を察した。

 

「もしかしてだが、綾金ラボラトリと神宮寺重工、学園都市にラボ持っていたりする?」

 

「最先端技術の宝庫たる学園都市ですよ。持っていない方がおかしいのでは?」

 

 当然、学園都市のラボと名古屋にあるこれらの会社は回線でつながっている訳で……

 

「ご愁傷様」

 

 ぽんと厚生省の入江の肩を叩いて、俺たちは厚生省を出る事にした。




という訳で、電子書籍でまとめ買いした『ジオブリーダーズ』追加。
みんなの胃痛が増えたよ。やったね。
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