【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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雁夜おじさん救済回


第四次聖杯戦争介入 その5

 冬木市にて爆弾テロ未遂事件が発生した翌日。

 やっと寝ようとしていた俺達を天ヶ崎千草が起こしに来る。

 

「倉庫街で倒れていた奴が目を覚ましましたえ」

 

 仕方ないので、着替えて間桐雁夜の元に。

 遅くまで起きていた理由は、間桐雁夜の体には蟲が巣食っていたので、まずはそれを取り出していたからだ。

 メガテンちっくに状態を確認した結果、何が何だか分からない状況なので、一番簡単な解決方法を取ることにした。

 

「一旦彼を仮死状態にしてそれから蘇生。

 その間に出てきた蟲を駆除して再度治療を施します」

 

 ということで空いている部屋に移して、ムドの効果のあるアイテム点穴針で間桐雁夜を仮死状態にする。

 その途端出てくるわ出てくるわの蟲の数々。

 なお、蟲は羽虫だけでなくエロゲ仕様の卑猥なやつまであって、某赤王ちゃまの目がランランとしていたので駆除から追い出すことに。

 そこから発生する魔力不足については、マグネタイトを間桐雁夜本人に渡すことで一時的にごまかすことにした。

 

「マグネタイトと呼ばれるものと魔力が同一であるか心配なのだろう?

 だったら簡単さ。

 その供給源である間桐雁夜にマグネタイトを渡す事で彼を擬似魔力交換炉にしたて上げればいい」 

 

 こういう事を言えるロリンチちゃんマジ天才。

 そして、ロリンチちゃんが逃げ出した虚数潜航艇シャドウ・ボーダーもちゃんと回収してきており、現在叢雲のヘリ甲板に積んである。

 派手に叢雲が機銃掃射したけど、港のクレーン機能が生きていた事に感謝。

 もちろん、オルガマリー所長が見てわめき出したのは言うまでもない。

 現在彼女は自衛隊所属の医師によって精神安定のためのカウンセリング中である。

 そんなロリンチちゃんは、現在徹夜で叢雲の機関室にこもって魔力炉の製造と設置をやっていたり。

 これで令呪がFGO式に一日に一つ回復するし、電力を魔力に変換し魔力供給をサポートするからモードレッドやドレイクと正規契約できるって訳だ。

 話がそれた。

 

「ここは?」

 

 まだ頭が混乱しているらしい間桐雁夜に俺は優しく声をかける。

 なお、暴れないように拘束具をつけさせている。

 

「舞鶴基地の病院の一室だ。

 君は倉庫街で倒れていたんだ」

 

「……聖杯戦争は……行かないと……」

 

 言うと思ったので、俺は用意していた台詞を言う。

 対バーサーカー対策に、モードレッドが霊体化して控えていたり。

 

「その聖杯戦争だが、大変なことになっている」

 

 病室のTVをつけてやると、国営放送のキャスターがずっと続く臨時ニュースを読み上げていた。

 

「……冬木市を襲った大規模テロについての続報です。

 自衛隊舞鶴基地の広報官の発表によると、冬木ハイアットホテルの爆弾は完全に解除。

 港に潜伏していたテロ組織とたまたま停泊していた護衛艦が交戦・戦闘に入ったとの事。

 テログループは逃走し、現在冬木市内では陸上自衛隊第3師団第7普通科連隊の第1・第5普通科中隊が京都府警と共に警護を行っています……」

 

「なんだこれは?」

「あれだけ派手に暴れて、何だこれはは無いだろう?」

 

 ナース服のジャンヌ・ダルクがメ・ディアラマをかけながら状態異常回復の鎮心符を張る。

 バーサーカーの狂化の影響下、精神が不安定になり、この札が面白いように消える消える。

 なお、間桐雁夜の仮死をサマリカームで治したのが彼女である。

 

「見ての通り、街には警察と自衛隊がいっぱい。

 聖杯戦争どころではないよ」

 

「聖杯戦争はどうなるんだ?」

 

「状況次第だろうが、続けられるだろうな。

 君も知っているだろう?

 彼らの根源への執着心を」

 

「ならば……行かないとっ!」

 

 やっとそこで拘束具に気づく間桐雁夜。

 また一枚鎮心符が破れて灰になった。

 

「まぁ、待ち給え。

 間桐雁夜くん。

 取引をしようじゃないか」

 

「……何で俺の名前を知っているんだ?」

「むしろ、この制服姿で察してほしいんだけどね。

 海上自衛隊入即出やる夫二佐相当官だ。

 護国組織ヤタガラスが本職なのだが、君にはこっちの方が理解しやすいだろう」

 

 その上で、彼に分かりやすいように、彼の理解できる現実を提示してやった。

 

「国家は、聖杯戦争をテロと断定した。

 少なくとも、これ以上被害が出るようならば、国家が介入する。

 あのTVの映像はそういう意味と捉えてもらいたい」

 

「……ははっ!

 ざまーみろ!!遠坂時臣め!!

 何が魔術だ!!!聖杯戦争だ!!!」

 

 涙を流してひとしきり笑う間桐雁夜。

 その間にも鎮心符がどんどん灰になってゆく。

 

「おちついたかね?」

「ああ。

 頼みがある」

「間桐桜くんの事だろう。

 こちらの取引の条件がそれだ」

「全部知っているって訳だ」

「国家を馬鹿にしてはいけない。

 いい教訓だろう?」

 

 俺は笑うが間桐雁夜は警戒する。

 してくれないと困るのでやっと話が進められる。

 

「彼女を助けるためには法が邪魔をする。

 遠坂家から間桐家への養子は正規の手続きを経ていたからね。

 そのために、一芝居打つ必要があるんだ」

「何をすればいい?」

 

 警戒したままの間桐雁夜に俺はあっさりとその手の内を明かす。

 シンプルだからこそ、間桐臓硯の手が出せない一手を。

 

「簡単な事だ。

 『昼間』に『間桐家』でバーサーカーを暴れさせればいい。

 その際に令呪を使い切って、バーサーカーが消滅してくれるとなおいいな。

 テロの犯人が分からなくなるからね」

 

「……ぁ……ああ!!」

 

 感づいたらしい間桐雁夜が叫び声をあげる。

 フリーのルポライターなんてやっていたから、表の感覚が残っていたのだろう。

 国家を敵に回すという事が、どれだけ恐ろしい事かを。

 

「間桐家のテロ事件の捜査という形で自衛隊を派遣して、桜ちゃんを保護する。

 感づいていると思うが、こちらでは体内にいる蟲の除去とかもできるからね。

 その上でカウンセリングをして、彼女自身から家庭内暴力と虐待の証拠が出れば、雁夜くん。

 君の願いは叶う」

 

「……ありがとう……ありがとうこざいます……さくら……」

 

 静かに泣く彼と看護するジャンヌ・ダルクを置いて、俺は部屋を出る。

 そして虚空に向けてつぶやいた。

 

「わざわざ使い魔を残して今の光景を見せてあげたんだ。

 何か言いたい事があるのならば、そこの電話にどうぞ。

 番号は……」

 

 ずっとアサシンがつけていたのは知っていたので、この光景を見せてやった。

 かかってくる電話を取ると、予想していた声がきこえる。

 

「どういうつもりかね?」

 

「こういうつもりですよ。

 良かった。

 電話が使えないかと心配していましたよ。

 遠坂時臣さん」

 

 初っ端から嫌味をぶつけてやる。

 この時点で彼は多分うっかりに気づいていない。

 敗退したはずのアサシンの報告で使い魔を放って電話に出たら、アサシンとアーチャーであるはずの彼が繋がっているという事が。

 まぁ、知っているからいいのだが。

 

「君は聖杯戦争をなんだと考えているのかね!」

「私はどちらかといえば間桐雁夜さんよりの人間でしてね。

 それで察していただけると嬉しいですなぁ」

 

 相手の顔から優雅さが剥がれるのが分かる。

 それでも優雅に取り繕おうとしているのが滑稽だった。

 

「貴様も魔道の尊さを理解できぬ者だったか」

「そんなものが無くても、こうやって科学は離れた俺達との会話を可能にしてくれる。

 所詮その程度のものなんですよ。

 魔導なんてものは」

「……」

 

 挑発は怒ったほうが負けである。

 『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』をモットーとしている彼からすれば、これが安い挑発であるのは分かっているだろう。

 黙っている事で、彼が必死に考えを取り繕っているのが手に取るように分かる。

 あの倉庫街の決戦で、謎のイレギュラーサーヴァント数騎を俺が抱え込んでいるのが分かっているはすだ。

 その上で俺の討伐に英雄王を差し向けたら、セイバーやランサー陣営に横殴りをされる。

 しかも、俺が自衛隊に表向き所属していることが、彼の自制心を働かせていた。

 当然舞鶴基地への攻撃は完全なるテロ行為に当たる。

 外面がいいために、彼は衛宮切嗣みたいに成りきれない。

 その彼も銃の反射で負傷しているはずだか、多分諦めないのだろうな。

 

「なるほど。

 そちらの家訓は存じあげております。

 大変ですなぁ。

 怒るにも理由が要るとは」

 

「黙れ」

 

「言わせていただきましょう。

 魔術師。

 国を舐めるな。

 少なくとも、上はどうか知らないが、この国の現場は根源や聖杯なんてものの為に、ビルを爆破したり子供を生贄にする事を許容しない」

 

「……」

 

 結局の所、遠坂時臣も言峰璃正と同じく電話をかけた時点で詰んでいた。

 情報を制する者は戦場を制するが、知りすぎれば情報に溺れる。

 俺にも言えることである。

 注意しておかねば。

 

「しばらくは、テロ警戒の為に自衛隊が駐屯します。

 もちろん、そちらの庭の爆発についても警察がお話を聞くことになるでしょう。

 おとなしく屋敷で震えている事ですな。

 一 般 人 として。

 では」

 

 がちゃん。

 その後間桐雁夜の病室から響き渡る笑い声。

 今の会話、当然のように聞かせてあげていたのである。

 これで彼が取引に快くのってくれるだろう。

 

「ひとでなし」

 

 横で聞いていた叢雲がぽつりと言い、

 

「あら、マスターのそういう所、私は好きよ」

 

 同じく横で聞いていたステンノが俺に抱きついた。

 そのまま叢雲を抱き寄せて、廊下向こうから覗いていたアサシンに言う。

 

「この後俺達は寝るだけだから面白いところなんて何もないぞ。

 それとも、このままついてきて人の情事も遠坂時臣に報告するかね?」

 

 俺の皮肉にアサシンはそのまま消え失せた。




やる夫も実は結構愉悦部。


桜の家庭内暴力と虐待の証拠
 まぁ、膜の無しで多分黒判定が出る。
 

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