【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

31 / 226
レイヤー重ねた副作用


聖杯戦争拡大 その1

「令呪を以て命じる!

 間桐臓硯を殺せ!!

 重ねて令呪を以て命じる!

 間桐の地下工房を滅ぼせ!!

 最後の令呪を以て命じる!

 全ての魔力を使い切って桜ちゃんを助け出してくれ……」

 

 病室での令呪使用にバーサーカーが吠えること無く消えた。

 まるで最後の意思を尊重するかのように。

 

「これでいいか?」

「ああ。

 取引については約束しよう。

 それと君の体についてだが……」

 

 医者の見立てだと生きているのが不思議なレベルにまで体が壊れていた。

 それ以上に、魂がバーサーカーの精神汚染で消耗しきっていた。

 生かそうと思えばなんとかできるが、それをする前に言峰綺礼が手を出さない訳がなかった。

 

「知っている。

 もう長くはないのだろう?」

 

「多分、この襲撃を以て、君は冬木市のテロ事件の犯人にされるだろうな。

 こちらとしては逮捕という形にした上で、君を別人にする事を考えているがどうだろうか?」

 

 遠坂・言峰陣営が主導権を奪回するためには、冬木市に展開した自衛隊を撤退させる必要があった。

 その犯人を捕まえたら事件解決なので自衛隊は撤収する。

 だったらその犯人を用意するのが手っ取り早い。

 その犯人候補としては倉庫街で暴れ、保護された間桐雁夜に目をつけるのは分かっていた。

 間桐家を潰す以上、彼を保護する人間がいなくなるのも大きい。

 多分、雨生龍之介と合わせてテロ組織メンバーとしてでっち上げられるだろう。

 衛宮切嗣を入れるかどうかで俺は迷ったが、この時点で彼を表向きに叩くのは無理だと判断していた。

 理由は、彼ではなく彼のスポンサーであるアインツベルンの金だ。

 聖堂教会と時計塔が買収と隠蔽を行う資金のほぼ全てがアインツベルンから出ている。

 聖杯戦争の敗退ならともかく、テロ組織メンバーとして逮捕して聖杯戦争を背後から参加させないような形にして、アインツベルンの機嫌を損ねたら、彼らの買収資金が途切れる可能性が高かった。

 もっとも、そんな事は既に捜査している警察は知ったことではない。

 衛宮切嗣の名前までたどりつくのは時間の問題であり、アインツベルンの屋敷に捜査令状を持って踏み込むのは時間の問題だろう。

 間桐雁夜の返答を待っている間、そんな事を考えていたが彼は俺の沈黙を気にすること無く答えを口にした。

 

「いや。

 いい。

 魔術だとあるかも知れないが、表では死人に口なしだ。

 この大騒ぎは誰かが泥をかぶらないといけない」

 

 間桐雁夜はただ静かに首を横に振った。

 バーサーカーと繋がったので、彼の正体とその思いも知ったのだろう。

 

「あいつも罪を犯したのに裁いてもらえなかった。

 俺も、罪を知っていながら逃げ出した。

 結局、俺達は同じなんだよ。

 頼む。

 救いである裁きを俺達から取り上げないでくれ」

 

「桜ちゃんはどうする?

 このままだと施設に行くことになるぞ?」

 

「それをなんとかするのがお前なんだろう?

 それも取引の範疇さ。

 TVをつけてくれないか?

 最後はあの屋敷が崩れる所を見ながら逝きたいんだ」

 

 俺はTVをつけて病室を出てゆく。

 部屋の外には自衛隊服の叢雲とステンノと自衛隊服なのに盾持ちのマシュが待っていた。

 地味に隊員の視線が痛いが気にしたら負けである。 

 

「で、段取りは?」

 

「既に間桐家の屋敷の周囲に警官と自衛隊は配備済み。

 周囲の人間もこっそりと避難させたわ。

 礼状も用意して、万一に備えて天ヶ崎千草、タカミチ・T・高畑、建宮斎字の三人が待機済み。

 カルデアのマスターとマシュ達もついていっているみたいね。

 桜ちゃんの安全と周囲の避難を優先させているけど、間桐臓硯はいいの?」

 

 叢雲の言葉に俺はただ目を閉じて、後ろのドアの人物へ黙祷を捧げた。

 数秒の沈黙の後、口を開く。

 

「放っておけ。

 彼が桜ちゃんの中に入っているなら詰みだし、工房が破壊された後ならキャスタークー・フーリンで焼ける。

 こっちは宣言した通り、動かないでおこうじゃないか」

 

 基地内に警報が鳴ったのはその時だった。

 それが敵襲であるのを分かっていたから俺は慌てて叢雲に戻ろうとする前に、叢雲に陣取っていたドレイクがパスで告げる。

 

(ミサイル!

 こっちに向かってる!!

 迎撃するよ!!!)

 

(わかった。

 好きにやってくれ)

 

 轟音とともに学園都市製のイージスミサイルが飛び立ち、しばらくして派手な爆発音が轟く。

 爆発地点は、舞鶴湾出口付近だった。

 警報が鳴り続き、俺達が戻った時にドレイクを含めた艦橋の全員が敬礼をする。

 

「状況を」

 

「対岸の伊根町付近よりこちらに向けてミサイルによる攻撃。

 迎撃可能だったのが本艦しかない為に艦長の許可をえた上で、イージスミサイル一発を発射。

 迎撃に成功」

 

 新島副長補佐が報告する。

 次々と錨をあげて撃墜したミサイル付近に向かう海上自衛隊の艦を尻目に俺はため息をつく。

 急場とはいえ、このミサイル発射は指揮系統云々で後々揉めることになるだろう。

 

「聖杯戦争をしている人たちの仕業かしら?」

 

「衛宮切嗣以外で対艦ミサイルを撃ってくる人間は居ないだろうよ。

 そして、衛宮切嗣が撃ったにしては杜撰すぎる」

 

 叢雲を狙うために対艦ミサイルを撃った。

 分からないではないが、見ての通り自衛隊を完全に敵に回す。

 それを理解できない彼ではないだろうに。

 

「いや。

 間桐雁夜を犯人に仕立て上げようとする話がこれで潰れたか」

 

 間桐家襲撃後に発表すれば、間桐家襲撃が彼の確保にあったという情報工作を経て、テロ事件の犯人として自衛隊撤退の手打ちに出来ただろう。

 けど、冬木市ではない離れた伊根町からのミサイル発射はいやでも共犯者の存在を浮かび上がらせる。

 結局、そのミサイル一発が状況を更に混迷化させた。

 

 間桐家襲撃はバーサーカーの消滅まで続き、それで工房が破壊された結果、キャスタークー・フーリンの宝具『灼き尽くす炎の檻』にて蟲たちは間桐臓硯と共に消え失せる結果となった。

 なお、この火でボヤ騒ぎとなったが消防が出て火を消してそれでおしまい。

 すべての目は若狭湾で爆発したミサイルに注がれていた。

 桜ちゃんは保護され、舞鶴基地の病院に入院し、蟲の摘出手術の後間桐雁夜が居た病室で休んでいる。

 間桐雁夜は桜ちゃんが来るまで持たず、今は霊安室に安置しているがその笑顔は穏やかなものだった。

 

 一方で発射されたミサイルは米国製ハープーンミサイルで、伊根町に発射管が残っていた事から米軍の正規品である事が発覚。

 外交問題にまで発展する。

 警察の捜査の結果、数日前から何か作っていたのを地元住民や観光客が見ており、そこから得られた写真を見て絶句する。

 

「……ボブミヤじゃねーか……」

 

 そこで何か引っかかった。

 ステンノを見て、モードレッドを見て、ドレイクを見て、マシュを見て、俺は彼らの見ている前でメモを書き出す。

 

 

セイバー    モードレッド    野良 やる夫

アーチャー   ボブミヤ          ?

ランサー    クー・フーリン       やる夫

キャスター   クー・フーリン   野良 藤丸立香

        ロリンチちゃん  野良 やる夫

アサシン    ステンノ           やる夫

ライダー    ドレイク       野良 やる夫

バーサーカー  ?

シールダー   マシュ        野良 やる夫

        マシュ             藤丸立香

 

 

 あっ。

 これ聖杯大戦始まるわ。

 そうなると、ルーラーが出てくる訳で……

 ここだと出るよなぁ。

 天草四郎が。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。