【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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FGOクリスマスイベのために二部はじめました



ありがとうクリプター人類が忘れても俺は君たちの偉業を忘れない

「容態はどうかね?

 間桐桜ちゃん」

 

 舞鶴基地の病院で横になっていた間桐桜に俺は声をかける。

 この病室の前の住人は今や霊安室で静かに眠っている。

 それを伝えることはまだ早いと思って、俺は最低限のことだけ告げた。

 

「君の中の蟲はとったよ。

 後のことは、おいおい決めてゆくことにしよう。

 今はとにかくゆっくり休みなさい」

 

 彼女の顔には表情が無かった。

 カウンセラーによると典型的な児童虐待の症状の一つだという。

 証拠はそろっているので、彼女の虐待は認められるだろう。

 そこから先は、あの遠坂家とも話さないといけない訳だが、さて、その当主が生き残ることはできるのだろうか?

 ……無理だろうなぁ……

 

 

 

 桜ちゃんの病室を出ると、ロリンチちゃんが待っていた。

 

「話があるんだ」

「丁度良かった。

 こっちもだよ」

 

 病院を出て舞鶴基地を歩く。

 これから夏に入ろうという時期。

 人の騒ぎなど気にせず、空はただ青い。

 

「とりあえずだ。

 隠れているのは頂けないと思うな。

 ホームズくん」

 

「……おや。

 居ない事が当たり前と、君は思っていたのだがね」

 

 実際俺は気づいていなかった。

 だが、ふいに『ホームズが居ないとおかしい』という思考が俺の中に生えた。

 なるほど。

 こうやって、駄女神は舞台とシナリオをごまかし続けた訳だ。

 俺の台詞のあと、ロリンチちゃんの後ろから名探偵ホームズが現れる。

 俺はそんな彼にタバコを渡してやる。

 

「薬については勘弁してくれ。

 この世界のこの国ではご法度だ」

 

「この姿になって、あれの副作用を感じなくていいと思ったが、世間は厳しいものだ」

「もう少し先の未来だと、電子タバコなるものが出てくるぞ」

「それはそれで素晴らしいというか、味気ないと言うか。

 あの煙と火のきらめきは、思考を整理する際に良いものだったからね」

 

 世界は名探偵の事情より健康をとったのだ。 

 ホームズがタバコをふかしている間に、先にロリンチちゃんが口を開く。

 

「ホームズの事に気づいたということは、こっちの話も知った上でかな?」

「ああ。

 俺は、そっちの異聞帯には行かないよ」

「地球最後のマスターなのに?」

「ああ。

 何百万と居た地球最後のマスターでしかないよ。俺は。

 ホームズが出たという事は、感づいているだろう?

 この世界では人理漂白は起きないという事に」

 

 俺の指摘にホームズは肩をすくめた。

 つまるところ、俺の話と彼らの話は同じだった訳だ。

 

「もし、異聞帯に行く未来があるとすれば、あのカルデアの人たちだよ。

 懐かしい、オルガマリー所長とロマニ……」

 

「止めてくれないか。

 この体だけど、記憶は引き継いでいるんだ」

 

「……そうだったね。

 失礼」

 

 少しだけ黙った後、俺は意を決して口を開く。

 

「この世界ではやり直しがきくんだ。

 誰もが幸せになれる未来というのはおこがましいが、あの人理焼却をもう少しましな形で回避できる未来も選ぶ事ができる。

 ここは世界の闇鍋なんだよ」

 

「それを提示したのは誰だい?」

 

 当たり前のようにホームズが問いかけるので、俺は答えてやる。

 駄女神のブラック勤務と、その派遣社員と化した俺の滑稽な物語を。

 二人は、俺の告白を黙って聞いた後、ホームズが口を開いた。

 

「なにかわからないものに滅ぼされるよりはましなのかな?」

「さあな。

 だが、そのましな未来なるもののために俺は一応動いている。

 そして、カルデアの未来は俺ではなく、藤丸立香が担うだろうよ。

 大冒険と別れの果てにね。

 情報交換はしたのだろう?」

 

 俺の言葉にロリンチちゃんが頷く。

 このあたり彼らも抜け目がない。 

 

「舞台を降りたければ降りればいい。

 君たちにはその権利があるし、手段もある」

 

 カルデア組は放って置けばレイシフトでカルデアに帰還する。

 途中でレフ・ライノールに所長を殺されるかもしれん……あっ。忘れていた。

 

「そうだ。

 蒼崎橙子の工房の連絡先だ。

 あの所長の魂の器にふさわしいものが作られているから、持ってゆくといい」

 

「何処まで見通しているのか恐ろしくなるね」

「たいした事じゃない。

 君たちが初見なのに対して、俺は二周目だったというだけさ。

 一応億の金のかかっている特注品だ。

 魔力炉制作のお礼だとおつりが来るかな?」

 

 はったりもここまでくると清々しい。

 文車妖妃を入れるために作ったのに、大淫婦バビロンに乗っ取られ、出費がかさんだと嘆いた事はきれいに忘れることにする。

 本当にそれだけの事をこの二人はしてくれたのだ。

 感謝こそすれ、害を成すつもりは毛頭なかった。

 

「もしかしたら、この世界も人類が漂白されるかもしれないのに?」

「ああ。

 時間と空間というものは、きっちりと流れている訳ではない。

 それは我々という観測者が観測していて、そう見えているという事が大きい。

 この瞬間、時が止まり、世界が漂白されるかも知れない。

 だが、それがどうした?」

 

 駄女神は最初から言っている。

 この物語は過程こそが大事だと。

 

「その物語で人々を引きつけ、惹きつけ、魅せつけ続けて、続きがぱたっと出なくなって、誰かが

 『じゃあわかった!俺が続きを書いてやる!!』とまで言ったら俺と女神の勝利だ。

 そして、二人共感づいているだろう?

 このシステムはものすごく古い手法だという事に」

 

「神話創生」

 

 ロリンチちゃんがぽつりと告げる。

 そう。

 この物語は駄女神とアンコ神の神話の一ページでしかない。

 そんな逸話としての終わりがあるだろうが、多くの神話の多くは終わりが曖昧になっている。

 これはそういう物語である。

 

「こんな話は彼女には聞かせられないな。

 気づいている連中は?」

 

 ホームズの質問におれはあっさりと告げる。

 これからもこうして天才や賢者がこの世界の理を知って、発狂するか笑い転げてゆくのだろう。

 それもこの物語の醍醐味ということで。

 

「何人か居る。

 蒼崎橙子は笑ってくれたよ。

 で、どうする二人共?

 ここからは君たちが決めるといい」

 

 俺の振りに二人は同時に肩をすくめた。

 

「タイムパラドックスで消えるかも知れないが、消えたほうがいい存在と未来ってのはあると思うんだ。私は」

 

 過去が疼くからこそ、ロリンチちゃんは苦笑し。

 

「この世界は謎だらけじゃないか。

 それに手を出すななんて探偵にとって、死ねと言ってくれるようなものだ」

 

 ホームズは煙草を投げ捨てようとして、俺が差し出した携帯灰皿にその煙草を入れた。

 環境は、格好つけすら悪にする。

 

「じゃあ、今後ともヨロシクという事で。

 工房は艦の中に作ってくれ。

 ロリンチちゃんなら分かるだろうが、あの艦まるごとシャドウ・ボーダーみたいなものだよ」

 

 俺の差し出した手をロリンチちゃんは握る。

 目は既に研究者のそれである。

 

「それは凄いな。

 遠慮なく解析させてもらうとしよう」

 

「じゃあ、私は一旦離れて冬木ではなく東京の方に行かせてもらうとしよう。

 君の目的である、東京の危機は解きがいのある謎になりそうだ」

 

 ロリンチちゃんの後に俺の手を握ったホームズは俺に告げる。

 その視線は、俺ではなく東に、東京に向けられていた。

 

「だったら、横浜の隣の平崎市というところにあるホテル業魔殿というホテルを使うといい。

 俺の名前を出せば使わせてくれるはずだ」

 

「それで、君はどうするんだい?」

 

 新たな情報が生えた結果、回収しないといけないものができた。

 マシュと俺がこっちで暮らしたという設定ならば、ここにあれがないとおかしいのだ。

 

「『今まで契約したサーヴァントたちの霊基グラフデータ』。

 スーツケース型のあれを回収しておかないと。

 ルーラーの天草四郎あたりに渡ったら、目も当てられないからな。あれは」




つまり


 エタったらクリプターって奴が漂白しちゃったんだ!!!!!


 いやまじで途中だけどそれしか感想が出てこない。
 二次創作やっていると、こんな便利な打ち切り装置はそうもない。まじで。



メタ視点
 第二部やりだしたので、女神が使えそうな設定を急遽闇鍋に打ち込んだ。

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