【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
今まで契約したサーヴァントたちの霊基グラフデータの回収だが、マシュといちゃいちゃしていた俺は結構真面目にあれの保管を考えていたらしい。
新都の銀行の貸金庫に保管しているという。
マシュと話すことで、それまでのマシュとの思い出が記憶に付け足されてゆく。
というか、預金が九桁ある事をいい事に、散々爛れた生活を送っていたらしい。
まぁ、その記憶も体感も俺の中に湧いてきたから今は良しとしよう。
「で、マスター。
これからどうするんだ?」
魔力炉を増築した叢雲のおかげで契約したモードレッドとドレイクを交えて、叢雲艦内での会議。
モードレッドは戦いたくてウズウズしているらしい。
こっちも、ここで待ちをしている余裕はない。
「ちょっと、新都の銀行に出かける事になる。
襲ってくるとしたらここだから、気を引き締めてくれ。
マシュと俺と叢雲とステンノは車で新都に。
モードレッドは霊体化してついてくる。
OK?」
「そうこなくっちゃ!」
「あたしはまたお留守番かい?」
喜ぶモードレッドに対して、がっくりするドレイク。
ステンノと同じく海自の一尉相当官の制服を着させられている。
嫌うどころか海自内部のドレイク人気はすごいものがあるのは、海自も船乗りたちの末裔という事だろう。
「勉強会だの交流会だので基地から出られないだろうが。お前。
それにまたミサイルを撃たれたら困る」
「しかたないねぇ」
嘆き節のドレイクだが、本性は叢雲を思いっきり走らせたいのだろう。
彼女はこの舞鶴基地に着いてから、他の艦を見て喜んでいたのだから。
分からないではない。
「さてと。
基地で車を借りると……」
という所まで俺が言った所でクラクションが鳴られる。
車から黒スーツ姿の眼鏡の男が手をふる。
「入即出やる夫さんですか?
お会いしたかったんですよ」
ジャパニーズビジネスマンらしい挨拶&名刺攻撃でいつの間にか俺の手には名刺が。
その名刺を読み上げる。
中々珍しい部署だったからだ。
「大蔵省特殊査察部第二課執行官の入江省三さん?」
「はい。
貴方の置かれている状況と、それにまつわるお金の話で色々とお話が」
色々と思い当たるフシがあるが、今この状況で敵対する理由もない。
彼の伝説にはこんなのがあるのだから。
「彼の行動を妨げてはならない。
君がトラブルを抱えているのならば特にだ。
彼の行動を理解しようとしてはならない。
俺は、貴方になにか恨まれるような事をしたのかね?」
「とりあえずそれは車の中で。
何処に行くかは知りませんが、お送りしますよ」
ドアが開けられて、俺達はそれに乗り込むことにした。
さすがの政府の非公式活動用員と言えども、霊体化したモーさんに気づいていないといいのだけど。
……厚生省だったらやばいかも知れないが。
舞鶴基地から冬木市の新都まで車で一時間程度。
速くも遅くもないセダンを走らせながら、入江省三は話し出す。
「現在の政府の状況については?」
「まぁ、ある程度は。
その流れで俺はここに居るという認識なのですがね」
「その前提で話をしましょう。
自衛隊内部において、不可思議な金の流れが発生しています。
国民の税金を使っているなら、問題なのは分かると思いますが、使っていないのに装備が増えているというのもまた問題なんですよ」
さすが日本最強の官庁である大蔵省。
言い方も中々イヤミが効いている。
「つまり、俺の扱いが大蔵で問題になってきたと?」
「金の流れってごまかしがきかないんですよ」
俺も同じことを言った覚えがあるから、因果応報である。
俺の苦々しい顔を知ってか知らずが、入江省三は言葉を続ける。
「で、こちらとしましても、その解決にご協力をと」
「何?
税金でも払えっていうの?」
叢雲が喧嘩腰で威嚇するが、金云々は要するに脅迫の枕詞だ。
要するに、この非公式エージェントはそれに近い俺達に何かをさせたいのだろう。
「聖堂教会および時計塔から政府に流れる金の流れを止めて頂きたい」
この手の脅迫は、俺にもメリットがある提案をするのがポイントである。
聖堂教会および時計塔の金の流れを止める事の意味を、俺はやっと理解した。
「政府だけでなくて自衛隊側にも、時計塔と聖堂教会から金が流れていた。
そう言うわけか?」
「ご想像におまかせします」
俺は額に手を当ててうめく。
事態の収集。
その最終局面にて自衛隊の果たす役割は大きい。
実際、原作の『Fate/ZERO』では自衛隊機墜落を強引に金でごまかした経歴があったのを忘れていた。
「これは公安からの情報なのですが、内密にお願いしますよ。
衛宮切嗣への逮捕請求が、途中で潰されたそうです」
話を聞くと、警察がほぼ黒と判定した衛宮切嗣の逮捕だが、その前に共犯者としてアイリスフィールを任意同行からの逮捕で調べる所を魔術協会と聖堂教会が強引なんてものじゃない強硬さで撤回させたという。
地元の先生総動員の他に某国大使館からの外交官免責特権の付与、あげくに京都府警本部長直々の調査中止命令と捜査本部の解散命令とすさまじい圧力を受けたそうだ。
あー。
これは警察側の失敗だわ。
普通の捜査ならば当たり前の共犯者逮捕だけど、セイバーが残っている状況で聖杯戦争御三家のアインツベルンに手を出そうとしたから、全力で守りに行かざるを得なくなったと。
しかし、外交官特権ときたか。
こっちが表のルールに縛られるから、うまい絡め手を出してきたもんだ。
「ならば、国外退去命令が出るはずでは?」
「出るでしょうな。
問題は、その国外退去命令は今すぐではない。
そして、アインツベルンはその退去命令前に事をなさねばならなくなった」
手負いのセイバー陣営が、なりふり構わず暴れることを意味する。
「止めろと言われても、聖堂教会と時計塔の金の流れをどう止めろと?」
「それは、そちらの選択を尊重しましょう。
金の流れは止められるけど、それ以外の流れを我々は掴めない。
協力者が必要なんです」
「その見返りは?」
「まぁ、色々と。
一応国家組織ですので」
冬木市新都に入り、目当ての金融機関の前で入江省三は車を停める。
ドアを開けて降りて、了承と言おうとした時に、爆風が俺の顔を叩く。
「先輩!」
「マシュは防御!
モードレッドはまだ動くな!!
畜生!
何が起こってやがる!?」
派手な銃撃と爆発音。
その視線の先には、派手に暴れるオリアナ=トムソンと、回りを気にせずに攻撃するキャロルJとマヨーネ、それを取り押さえようとするタカミチ・T・高畑の姿があった。
入江省三
『LAWMAN』。
さぁ、昼は魔術と科学と銃撃戦だ!