【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
1 桜塚護勝利
2 1+ランサー消滅
3 1+ケイネス・ソラウ死亡
4 3+十字教全滅
5 ランサー勝利
6 5+陸耳御笠消滅
7 5+陸耳御笠逃亡、桜塚星史郎場所確認
8 5+桜塚星史郎場所確認
9 5+陸耳御笠逃亡
10 熱烈歓迎
結果 4
俺は冬木ハイアットホテルに誰も踏み込ませなかった。
前になし崩しに介入して衛宮切嗣に横っ面を引っ叩かれたのは今日の昼なのだから、警戒し過ぎる事はない。
その声が周囲に轟いたのは遠巻きに囲んだのが終了した後の事だった。
「ここまでか……マスター、どうか……!」
この声はランサー敗北の声。
負けたか。
捜索隊を編成する為に、クー・フーリンとゲンブとイスラフィールをCOMPから出す。
こいつらならば、たとえやられてもCOMPに戻る事ができるからだ。
「生存者が居たら報告しろ。
陸耳御笠が居たら、交戦せずに帰ってこい。
サーヴァント一騎と魔術礼装万全の十字教騎士団が負けた相手だ」
二手に分けて、クー・フーリンとゲンブは入り口から。
イスラフィールは羽を使って空からホテルの中を覗くことに。
結果はすぐにわかった。
ホテル室内全体にばら撒かれた桜の花びらの中、ホテル内部に居た全員が苦悶の表情で事切れていたのだから。
これが桜塚護の当代である桜塚星史郎の力である。
こうなると後は俺達が手を出す必要が無く、警察に任せることになるだろう。
引き上げを命じようとした所、思いついた事があって、ハイピクシーを呼び出す。
彼女の宝探しで漁った結果、案の定あったのは使徒十字。
やばくなったら使うつもりだったのだろうが、その切り札を切る前にリドヴィア=ロレンツェッティ以下十字教全員はケイネス・エルメロイ・アーチボルトとソラウ・ヌァザレ・ソフィアリの巻き添えを食う形で全員殺される結果となった。
別宗派である聖堂教会あたりは祝杯をあげているかもしれないな、なんて思いながら、使徒十字を回収して俺達は冬木港にやってきている叢雲に帰ることにした。
夜が明けた朝、この冬木ハイアットホテルの一件は報道管制が敷かれたおかげで表に出ることは無かった。
とはいえ、百人近い死体がホテルから運び出される訳だから気づかないわけもなく、市民は更に怯える結果になる。
「なんだ。
そんな面白い事になっておったのか」
戻った舞鶴基地の食堂にて征服王が笑いながら飯を食べている。
昨日だけで盤面は派手に動いた。
ファントムソサエティーが攻撃を受けて打撃を受け、現場で介入しようとした俺達が衛宮切嗣の横殴りをくらい、アーチャーがルーラーに強奪され、ランサーがマスターごと潰されたのだから聖杯戦争中盤の動きとしてある意味当然なのかも知れない。
「そういえば、お前ら何か騒ぎを起こしたって聞いたが?」
俺が味噌汁を飲みながら話を振ると、征服王が申し訳なさそうに頭をかく。
いかつい体だが、その本心は子供のように純粋なのがこの征服王である。
「うむ。
陸自が持ち込んだTAなるものを見てついつい興奮してしまってな。
ぜひ譲ってもらおうと押し問答をしていたら坊主が令呪をもって叱ってな。
反省はしている。今は」
その言い草にとなりのウェイバー・ベルベットの顔は暗い。
ランサー陣営全滅の報告を聞いて思う所があったのだろう。
「ケイネス先生の遺体は?」
「臨時の遺体安置所を用意して司法解剖の後、英国に送られることになるだろう。
報告は俺がしよう。
時計塔にもコネはあるから、君に迷惑はかけないよ」
コネの強度 100ほど強い
時計塔のコネ 8
イギリス清教とのコネ 43
魔法省とのコネ 39
外様の便利屋なので本当に下のコネしか無いが、ある意味だからこそこっちに帰ってこれたとも言う。
そんなのでも組織からすれば報告をあげる分には苦労はしないだろう。
「すいません!
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが死んだって本当ですか?」
そんな場所に乗り込んできて俺に問いかけてくるのはオルガマリー・アニムスフィア。
霊体なのに無茶をするなぁなんて思っていたら、後ろに藤丸立香と向こうのマシュがやって来るのが見えた。
「事実だ。
遺体を確認したよ」
俺がそれだけと言うと、オルガマリー・アニムスフィアは呆然とした顔で床にへたり込む。
向こうのマシュが彼女を椅子に座らせようとしているのを見ていたら、藤丸立香が俺にその理由を告げた。
「オルガマリー所長。
使い魔でケイネスさんと手紙のやり取りをしていたみたいで。
悩んでいた所を励ましてくれたとかで心の支えになっていたんです」
カルデアが攻撃を受けて、レフが裏切って、己の体が死んでいる中で、縋った糸も切れたと。
それでもまだ彼女には救いがあるあたり、色々と思う所はあるのだが。
「こっちのロリンチちゃんには話したが、人形師の蒼崎橙子の工房の連絡先だ。
彼女の魂も入れる器を作っているから、まずはそのあたりから解決すると良い」
カルデア組が動かない理由の一つに、オルガマリー所長の存在がある。
レフが裏切った事実だけでなく、彼女が霊体であるという事も本格的な行動に踏み出すのに躊躇するのに十分な理由だった。
まずはそれを解消してやる必要がある。
「器そのものの作成にはもうしばらく時間がかかるだろうから、その間はここを離れて東京の方でゆっくりしてもいいかもしれない。
これから数日、ここは戦場になるだろうからね」
ある意味正しい聖杯戦争が始まったとも言える。
だが、藤丸立香は首を横に振った。
「いえ。
それならば、私達もここに居て悲劇を防がないと」
そういえばこんな奴だったな。
この最後のマスターは。
一応念を押す。
「相手はサーヴァントだけでなく百人近い魔術師クラスを全滅させる事のできるひとでなしだぞ?」
「それでも、人理焼却するろくでなしよりマシでしょう?」
「たしかにそうだ」
静かに闘志をみなぎらせる藤丸立香に刺激されたか、ウェイバー・ベルベットも立ち上がる。
「僕も何かできる事があったら手伝わせてほしい!」
「よく言った坊主!!」
「っ!叩くなライダー!!」
対魔忍の朧を呼んで、対魔忍を護衛にオルガマリー所長を蒼崎橙子の工房に送り届ける事を命じる。
征服王がその後で俺に尋ねてきた。
「で、お主はこの戦をどう立て直すのだ?」
「我々が失っているのは主導権だ。
これを奪回しないと、好き勝手に暴れられる」
最大勢力を保持しているのに後手後手に回っているのはそれが理由である。
その主導権奪回の為にはやらねばならない事がいくつかあった。
「円蔵山にある大聖杯の確保。
ここを押さえないと、桜塚星史郎の呪殺攻勢を完全に防ぐのは無理だ。
で、式神の陸耳御笠を抑えるには、地元補正から陰陽師の力を借りるしか無い」
俺はそのまま藤丸立香を見る。
彼女がマシュとキャスタークー・フーリンしか居ないという事は、あと一騎レアサーヴァントが出るはずなのだ。
源頼光や坂田金時あたりが出たら、冬木については勝利確定なんだが、彼女の長い旅を考えたら、彼女が納得できるサーヴァントを引いてくれた方がいいので俺はあえて黙っている事にした。
「ならば、あれに匹敵する陰陽師を呼んでくるさ」
安倍晴明か芦屋道満か。
それが無理ならば鈴の木無山あたりを。
皇昴あたりを呼びたいが、彼の戦場は東京だからなぁ。
桜塚星史郎も東京が主戦場だからとっとと帰ればいいのにと思ったが、口に出すことは控えた。
鈴の木無山
『魔法使いの娘』。
多分桜塚星史郎相手に嬉々として術を撃ち合える桜塚星史郎よりの人物。