【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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一手遅らせ一駒入手

「ああ。

 それはこっちに入れておいてくれ。

 それもだ。

 貴重品だから大事に扱えよ」

 

 ご丁寧に、桜塚星史郎はサーヴァントと人だけを殺していったので、魔力炉だの礼装だのがまるまる残っていた。

 それらを保管するという名目でありがたく接収する。

 特に二十四層の結界と三基の魔力炉は有効に活用させてもらうことにする。

 なお、悪霊と魍魎はしっかり殺され、トラップは綺麗に破壊されていた。

 

「えー?

 異界化させちゃ駄目なのかい?」

 

 魔力炉の設置にロリンチちゃんがぶーたれる。

 異界化については、自衛隊側からの反対が理由である。

 

「魔術とやらで広いスペースをつくってそこに物をおくのは分かります。

 では、その魔術が切れた場合、そこに置いていたものはどうなるので?

 炉というからには何かのエネルギー源なのでしょう?

 そういう危ない事をせずにスペースの確保をお願いします」

 

 新島副長補佐の反対にロリンチちゃんは、

 

「私がそんなヘマをすると思うの!?」

 

と激怒するが、新島副長補佐はにべもない。

 この時期流行しようとしていたある本の一節を天才に言い放った。

 

「失敗する可能性のあるものは失敗するのです。

 我々はその失敗を許容できません」

 

 なお、海上自衛隊の前身たる大日本帝国海軍は、天才という綺羅星の連中を使って開戦初頭破竹の進撃を進めていたが、彼らを消耗し尽くした後に米国の物量に押しつぶされたという過去を持つ。

 結局、後部主砲を取っ払ったので不要になった後部弾薬庫跡に魔力炉を一基設置することになった。

 これは叢雲の機関から生まれる電力を魔力に変換するようにロリンチちゃんお手製の改造がなされているのがポイント。

 魔力炉のもう一基は、ロリンチちゃんの居城であるシャドウ・ボーターに搭載され、最後の一基と結界はカルデアにレイシフトで回収されることになった。

 

「うちが払うわよ。

 請求書を時計塔のお父様の所に送って頂戴!」

 

 ありがたく横領する事になった魔力炉と礼装だが、エルメロイ家への支払いとしてオルガマリー所長がまた勝手にアニムスフィア家にツケるという荒業で合法化することに。

 別世界線とは言え、アニムスフィア家を継承して何処にどれだけの財産があるか知っているのが彼女の強みであり、アニムスフィア家が騒いだ時には既にカルデアに帰っているという寸法。

 たくましくなったと言うか、可哀想にと言うべきか。

 そんな彼女が切った俺の人形代の数億円の小切手はしっかりと引き落とされたから、ロードと呼ばれる連中の財の凄さを思い知る。

 まぁ、その後で苦労するのは俺なんだろうが。

 

 

 

 徹夜後叢雲に戻った俺達は仮眠を取り、起きたのは午後三時。

 今度は舞鶴基地に連れてこられたキャロルJとオリアナ=トムソンに面会に行く。

 

「護国組織のサマナーが何か用か?」

 

 キャロルJは警戒の色を隠さない。

 平崎市の一件に関わっているぐらいは情報として入手しているのだろう。

 下っ端なだけに切り捨てられたかなと思って、探りを入れてみる。

 

「これもお役所仕事でな。

 どうせお偉方あたりが手を回すんだろう?

 おとなしくしているんだな」

 

「まぁ、仕事はしたと思うがな。

 相手がちゃんと逃げたかどうか心配だけどな。

 この仕事が終わったら、足でも洗うさ」 

 

 下っ端ゆえに切り捨てられて、それゆえにある意味生き残り成功するのがこのキャロルJだ。

 どうやら捨て駒として送り込まれ、深いことは何も知らないらしい。

 ならば、事が終わるまで三食昼寝監視つきのバカンスを楽しんでもらおう。

 

 

「あら?

 この国の軍人さんかしら?

 尋問でもするの?

 それとも、体に聞いちゃう♥」

 

 オリアナ=トムソンはこんなエロエロキャラだが、同時に目的のためなら平気で体を使うという思考の持ち主でもある。

 ついてきた叢雲とステンノとマシュの視線がきつくなったのを感じて、俺はさっさと要件を切り出した。

 

「お前の雇い主である十字教の騎士団と司祭、全員殺されたぞ。

 組んでいた魔術師ごと」

 

 俺を誘っていたオリアナ=トムソンの表情が消えた。

 俺は椅子に座って、契約書を机に置く。

 

「で、雇い主が消えたお前をこちらは雇いたい。

 何も人を殺せとか悪を成せなんて言うつもりはない。

 そちらの仕事を引き続きして欲しいだけだ。

 要するに、雇い主は変わるけど、君の仕事は変わらないという訳だ」

 

 一旦言葉を切るとオリアナ=トムソンが机に胸を置いて挑発する。

 

「断ったら?」

「国外退去処分。

 穏便だろう?」

 

 盤上の駒が多すぎて状況把握が出来ずに、こちらが後手に回るのが一番まずい。

 国外退去処分で盤上から出ていってくれるならば、何も言うことは無い。

 

「何をさせたい訳?」

「君が戦った相手であるファントムソサエティー。

 その本拠はここではなくてね、天海市にあるんだ。

 そこで好き勝手に暴れてもらいたい」

 

 マヨーネが残っているファントムソサエティーの排除が目的だ。

 この痴女がマニトゥ計画が進んでいる天海市で暴れたら、いやでもマヨーネは帰るし、増援が送られることも無いだろう。

 その間にこっちは終わっているはずだ。多分。

 

1 提案を受ける

2 提案を受ける

3 提案を受ける

4 提案を受ける

5 提案を拒否する

6 熱烈歓迎

 

 

結果 3

 

「いいわ。

 あいつらとは因縁があるし、乗ってあげる」

 

「良かった。

 向こうには東風谷早苗という知り合いが居るから、彼女と合流するといい。

 関東の拠点として横浜の隣にある平崎市のホテル業魔殿を使ってくれ。

 俺の名前を出せば問題ないはずだ」

 

 ドアの鍵を開けたまま俺は出ようとし、オリアナ=トムソンは後ろから声をかけた。

 

「あんた。

 結局何がしたいわけ?」

 

 立ち止まって、彼女を見ずに俺は茶化した。

 窓の外はもう黄昏れており、また夜がやってくる。

 

「強いて言うならば、悪党の敵ってやつをやっているだけさ」




マーフィーの法則
 日本語版は1993年7月発売だが、ネタそのものは前々からあった。

アニムスフィア家のツケ
 欧州のプライベート・バンクには、本人認証では無く、相手担当者にパスワードを言うことで開かれる口座というのもある。
 もちろん、そんな口座はやばい金が眠っているわけで、当主となったオルガマリーはそんなパスワードを知っていたという設定。
 体を得たオルガマリーがそのままスイスのプライベート・バンクに行って、オルガマリー家の魔術刻印を見せてその秘密口座を開けたという流れに持っていってもいいかもしれない。

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