【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
冬木市にとって幸いだったのが、爆発が人気のない郊外で起こった事と、非常事態に対処できる自衛隊が冬木市に展開していた事、そして現場指揮を俺が執った事である。
「住民の避難を優先させろ!
周辺には誰も近づけさせるな!!
起こっているのは火山の溶岩噴出と似たようなものだと考えろ!!!」
正しくは聖杯の泥なのだが、そこまで言う時間も惜しい。
まずは現地司令部を立ち上げる。
ありがたいことにそんなうってつけの場所が近くにあったのでそこを使わせてもらう。
穂群原学園である。
いろいろと手続きが面倒だが、現場の判断で押し通す。
「門を開けろ!」
「了解!」
藤丸立香と沖田総司が校門の扉を押して開けて、車を学園の中に入れる。
無線を使って、自衛隊基地と連絡を取る。
向こうもこの爆発を感知しており、状況把握に奔走していた。
「入即出二佐相当官。
何が起こっている?」
こちらの状況報告に問い返してくるのは舞鶴地方総監。
舞鶴基地の一番偉い人である。
さすが自衛隊。
即応体制が速い。
「こっちの業界の馬鹿が火薬庫のそばで火遊びした成れの果てです。
深山町全域に避難指示を出してください。
溢れ出ているものは溶岩並みに危険なものです!」
「わかった。
市長にはそのように連絡して、避難指示を出してもらうように要請する。
あと何か必要なことは?」
「ヘリを飛ばして、流れ出る溶岩みたいなものがどの方向に行くか常に監視をお願いします。
これから我々は、その溶岩の元を止めに行くつもりです!」
「待ち給え!
今、状況を一番把握している現場の最上位指揮官は君だ!
君がそれを行って失敗したら、誰が現場の指揮を執ると言うのだ?」
舞鶴地方総監の言い分にも理がある為に、俺も押し黙るしかない。
偉くなるデメリット、国に属するデメリットがここに来て俺の足を引っ張っていた。
「やる夫先輩!
私が行きます!!」
その声に意識が飛ぶ。
凛とした声を発したのはカルデアの制服を着た藤丸立香から出ていた。
ああ。
彼女はこの危機にためらわずに突っ込んでいけるだろう。
「わかった。
うちのモーさんとジャンヌ。あと痴女を連れて行け」
「はい!」
「わらわは痴女ではないぞ!
大淫婦バビロンという立派な名前が……」
なんか痴女が抗議するが、モーさんに抱きかかえられて連れて行かれた。
あいつらならば、引き時はわかるだろう。
「カルデア。
モニターしているか?」
(ああ)
虚空に浮かぶ半透明な人の姿というのも、あまりよろしくはない。
夜だからドクターロマンの姿が幽霊にしか見えない。
「おそらく特異点F。
そのきっかけの可能性がいまのアレだ。
こっちは、大聖杯もろとも叩き潰すつもりだが、その準備に時間がかかる。
藤丸の嬢ちゃんを行かせたが、やばくなったらそっちが手綱を握って逃がせ」
(ああ。
けど、その大聖杯を叩き潰す算段はあるのかい?)
俺は大炎上を続けている円蔵山を眺めながら言い放った。
柳洞寺は無事だろうか?
そこも確認をとっておかないと。
「科学をなめんなファンタジー」
災害からの三十分は、その対処において決定的に貴重な時間だった。
その貴重な時間を俺は穂群原学園の現地司令部で徹底的に活用した。
爆発によって起こった、マグニチュード4相当の地震で冬木市や舞鶴市だけなく周辺からも被害報告が上がっていた事もあって、最前線の俺達はなし崩し的に逐次投入された警察や消防に自衛隊を巻き込んで、救助に奔走する事になった。
「慌てないで並んでください!
まだ体育館や教室には余裕があります!!」
「まだ溶岩はこっちに来ていません!
おちついて避難をお願いします!」
「子供や病人を優先して運べ!
新都の聖堂病院にヘリで送り届けろ!!」
悪魔たちも姿を隠してフルで活躍させた。
ハイピクシーが、宝探しで迷子になった子供や独り身の老人たちを見つけ出して報告し、文車妖妃が情報を整理して、優先者リストを作成する。
俺がそれを元に救助隊員に指示を飛ばす。
ジャックフロストとチルノは火災現場近くの木々や可燃物を凍結させて、延焼を防がせている。
ブリジッドがディアラハンで軽症者を癒やしでゆき、大天使イスラフィールは外国人が多いこの街の外国人避難民に姿を見せて天使の啓示という形で避難を勧めていた。
人間だって負けていない。
「取り残されたもんはおらんのよ」
「わかりました。
では、次の捜索範囲を……」
建宮斎字達が広範囲に探索をかけて逃げ遅れた避難民を救助すると、明石夕子やタカミチ・T・高畑がそれを保護して救助隊員たちに渡してゆく。
クルト・ゲーデルは舞鶴基地において、俺を含めて裏の連中の救助活動の合法化に日本政府相手に腹黒交渉を行っているらしい。
もちろん、彼と彼の派閥の権益拡大も下心としてはあるのだろうが、
「皆、全力で救助活動をしてくれ!
裏についてのもろもろの責任はこのクルト・ゲーデルが全部とる!!」
こう言い切れる人間に人はついてゆくものだ。
だからこそ、俺は全力を出し、その結果としての死傷者0という数字に安堵する。
「入即出二佐相当官。
舞鶴基地より、陸自の実験中隊が到着しました。
作業終了は30分後との事」
情報整理と命令発令にはある程度の階級が必要になる。
陸自・海自・警察・消防に裏組織というごちゃまぜ混成部隊をまとめる為に俺は残ったが、俺の口は一つしかないわけで。
軍事知識があり俺の次に階級が高い叢雲が臨時副司令として俺以上に命令を飛ばし、この大騒動で当然やってくるマスコミ以下野次馬の連中を対男性特攻を持つステンノがあしらう。
天ヶ崎千草は叢雲艦内でひたすら身代わり札量産に精を出し続けているので、そうなると副官ポジに入ったのはこの甲河朧三尉である。
こんな時でも色気は忘れないあたりさすが対魔忍。
「だって、こんな後に人は燃えるじゃないですか♥」
俺の心を読んだか、あっさりと言い放つあたり度胸があるというかなんというか。
もちろんここでしないのはわかっているけど、こういうジョークで気が紛れるのも事実だから彼女なりの気遣いと受け取っておこう。
「叢雲に載せていた、シャドウ・ボーダーも到着した。
実験中隊と共に作業に入るが、あのちびっこいわく、向こうの準備より先に終わらせるそうだぞ」
俺の護衛任務なのを良いことにお願いしてシャドウ・ボーダーとロリンチちゃんを連れてきてもらった甘粕正彦一尉が報告する。
これで準備が整ったら、ちょうど上空を高高度で飛び去った超音速飛行機がこの校庭めがけて何か投下したらしく、パラシュートがこちらの用意した投下ポイントめがけてゆっくりと落ちてゆく。
「で、この災害をどのように解決するので?」
面白そうな、実際面白いのだろう。
災害にこそ、人の本性というのは嫌でも見える。
その命の煌きはこの三十分間にあちこちで光り輝いていた。
それを堪能し恍惚顔の甘粕一尉に俺はその答えを告げる。
学園都市の超科学にマジモンの超天才であるロリンチちゃん、そして若狭湾という地の理がこの発想を可能にした。
若狭湾は原発銀座としても名高い。
つまり、レールガン用の電力確保に困らない。
「電力を上げて、レールガンという物理でぶん殴るのさ」
現場の判断
『パトレイバー』の太田巡査。
あれ、よく始末書だけで片付いたなと今でも思っていたり。
科学をなめんなファンタジー
『ゼロの使い魔』。
元は「地球なめんなファンタジー」。
責任は全部とる
『踊る大捜査線』の室井管理官。
下心はあれどもこれか言えるからこそ、彼は魅力ある悪役なのだ。