【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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第四次聖杯戦争あとしまつ その2

 舞鶴基地グラウンド。

 

「がはは。

 良い戦であった。

 またどこかの場所でまみえる事を楽しみにしておるぞ!」

 

 戦闘訓練と称するガチ死合に征服王は良い笑顔のまま座に帰っていった。

 沖田さんとモーさんが獅子奮迅の活躍をするも数には勝てず、エミヤが『無限の剣製』で投射しても一騎当千の英霊たちは最低一撃はそれを弾き飛ばし、エミヤに殺到する。

 一方でこっちの仲魔たちも参戦させたが、こっちも数に押された。

 クー・フーリン二人は元々同じ英霊という事でコンビネーションも合ったが、レベルの低さに足を引っ張られ、大淫婦バビロンやジャンヌ・ダルク、ゲンブやイスラフィール、ブリジッドも数に押されて大苦戦。

 死ぬかもしれないというのに参戦を決めたタカミチ・T・高畑が生き残れたのも彼が元英雄というのがあるのかもしれない。

 というか、征服王の軍勢に軍師として見事な采配を見せたウェイバーの才能が光る。

 それでも征服王が勝てなかったのは、唯一つ。

 

「勝ったから約束のマネーカードおくれ!」

 

 万の英霊たちも人類悪には勝てなかったらしい。

 この人類悪に渡したマネーカードは10万円ちょっとである。

 その全てが多分学園都市謹製のアイドルソシャゲに消えるのだろう。

 なお、横須賀帰港後、ホテル業魔殿にてバイトをしている所が発見された。

 衣食住つきで、給料の全てをガチャにつぎ込んでいるらしい。

 

「そうだ。

 君の持つライダーとアサシンを貸してくれるなら、これからも定期的にマネーカードを……」

 

「わかった!!」

 

 速攻で押し付けられるリヨライダーとリヨアサシン。

 星1だが、この世界に置いてこの二騎は絶大な影響力を持つ。

 

「私みたいな星1サーヴァント役に立たないと思いますよ」

 

 実に美しい演技の笑顔を張り付かせたままリヨライダーは謙遜するが、俺が朧からもらったスマホである動画を見せるとその笑顔にヒビが入る。

 定期的に送られてくるらしい、名もなき対魔忍のアヘ顔ビデオレターである。

 

「ストーリーのかけらも無いですね。これ」

 

「で、君の出番という訳だ。

 これを制作している所に行って、ぜひとも素晴らしいものを作って欲しい。

 アサシンは彼女の護衛としてついてくれると嬉しい」

 

 横から見ていたリヨアサシンが口を挟む。

 スケスケネグリジェのみのニューフェイス痴女である。

 

「その場合、私がタチ役なりネコ役をしても?」

 

「お好きにどうぞ。

 場所は地下都市ヨミハラ。これはそこまで行く交通費だ。

 必要ならば、服も用意しよう」

 

 俺の顔もきっとリヨライダーと同じく笑顔になっている。

 腐れきっている政府中枢の暗部を調べるのに、リヨアサシンほどうってつけなのはない。

 それを俺は利用しない。

 だが、それを見て自分が利用しようと考える輩は出るだろう。

 それが狙いである。

 

「わかりました。

 こいつらに映像という物語のなんたるかを教えて差し上げましょう」

 

 二騎がヨミハラに行ってから、アダルトビデオのストーリー性が急上昇し、そこの女優陣が世界的ポルノスターとしてもてはやされるようになるのは後の話。

 そんな世界的ポルノスターの大部分が元対魔忍であるというのは公然の秘密となっている。 

 

 

 

「あー。

 戦った。戦った。

 マスター。また呼んでくれよな!絶対だぞ!!」

 

 キラキラしながらモードレッドも座に帰ってゆく。

 元々野良サーヴァントとして出たから、ある意味帰還は当然であり、ドレイク船長が帰りに叢雲を操りたいので、先に帰る事を決めたそうだ。

 同じ野良サーヴァントのドレイク船長も横須賀帰港後に帰ることになる。

 どこかでまた召喚ガチャをして二人を呼ばねばならない。

 

「どうだった?

 英霊同士の大合戦という奴は?」

 

 自衛隊の観戦武官達と共に隣りにいた 藤丸立香に尋ねる。

 興奮しているのか両手が強く握られていた。

 

「凄いです」

 

「いずれ、あの大軍勢を打ち倒す英霊たちを君が従える事になるだろう。

 というか、従えなければ君の、カルデアの目指す人理救済はできないよ」

 

 俺は諭すように言う。

 藤丸立香の成長に繋がればいいのだがと思って、メモにとある住所を書く。

 

「君の成長に役立ちそうな人物の住所だ。

 行ってみると良い」

 

「ありがとうございます」

 

 役小角による金剛神界での修行だ。

 精神と時の部屋みたいな所で遠慮なく時間を気にせずに鍛えると良い。

 君にはそれだけの運命が待ち構えているのだから。

 

「あと、俺の権限で食料・医薬品・衣服等の物資を用意してある。

 ダ・ヴィンチちゃんに空のコフィンを飛ばしてもらって積み込むといい」

 

 横に居た叢雲がジュラルミンケースを藤丸立香の前に置く。

 同じく横に居たステンノもジュラルミンケースをその隣に置いた。

 

「この二つについては君が受け取るか受け取らないかを決めるといい。

 一つは宝玉。

 体力を全快にするアイテムだ。

 もう一つは、金丹。

 死んだ人間を生き返らせる。

 さすがに仮死状態ぐらいしか効果は無いと思うけどね」

 

 ピクリと藤丸立香の体が震えた。

 その意味を理解したからだ。

 

「これがあれば、カルデアのスタッフを助けられるかもしれない。

 君以外のマスターが人理を救うかもしれない」

 

 そういえば、悪魔は本来優しいと言ったのは誰だったか?

 その意味ならば、俺も立派な悪魔なのだろう。

 

「助けられるんだ。

 そして戻れるんだ。

 期待されていなかった、かつての自分に。

 何も気にしなくていい自分に」

 

 藤丸立香は、現場指揮に奔走している俺を見ている。

 現場に出て真っ先に対処したかったのに、それを止められた俺を見ている。

 偉くなること、英雄になる事のデメリットを見ている。

 俺が知っているあの物語が奇跡である事を俺が一番知っている。

 その奇跡をあてにするほど、俺は楽観的な人間ではなかった。

 

「君の旅路はまだ長い。

 その重荷を一人で持つことも無いだろう。

 助けあって行くといい」

 

「その旅路にやる夫先輩は助けてくれないのですか?」

 

 その質問は分かっていたので、俺は少しだけ目を閉じる。

 どっちのマシュかわからないけど、『先輩』という声が聞こえた。

 

「この世界は俺の物語だ。

 ここを見捨てることはできないよ。

 けど、ここに居るから、辛くなったらいつでも俺に愚痴を言いにくるといい」

 

 真っ直ぐな目でジュラルミンケースを藤丸立香は受け取る。

 少しだけ顔をこわばらせて俺は笑った。

 

「何しろ俺は、君の旅路の完走者だからな」

 

「……はい」

 

 藤丸立香。

 君の旅路の幸運をこの世界から祈らせてもらうよ。




リヨライダーとリヨアサシン
 この世界だと格段に重要度が上がる、社会的スキル持ちの二騎。
 星1という所もポイント。

 なお、彼らのレンタル料もリヨぐだ子のガチャに消える予定。

金丹
 『ソウルサマナー』での蘇生アイテム。
 後に返魂香になるが、もちろんそっちもある。

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