【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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冬木市災害対策訓練

 第四次聖杯戦争から一週間後。

 冬木市にて、警察・消防・自衛隊等が関わる災害対策訓練が行われた。

 実際には、その名目で集まったこれらの組織へのアマテラス様の閲兵式であり、一日司令官となったアマテラス様の前で、それぞれの組織の士気高揚は凄いものになった。

 

 士気高揚効果 100ほどノリノリ

 結果 91

 

 さすがアマテラス様であり、その神々しさに各組織・マスコミ・市民を魅了しての大盛況。

 不満も費用もこの天津神様の笑顔が見れるならばとみなが言うぐらい。

 だよなぁ。

 高位分霊だし。

 そんな俺は貴賓席にて、海将補の制服姿で貴賓席にてその光景を眺めているぐらいしか仕事がない。

 少なくともこのあたりの現場レベルで自衛隊が反乱を起こすことは多分無くなっただろう。

 

「しかしまぁ、とんでもないものを呼び出してくれましたな」

 

 貴賓席近くの喫煙場にて神官服姿の忍野メメがタバコを咥えて俺にぼやく。

 そのタバコには火がついていない。

 彼がここに引っ張り出されたのもアマテラス様召喚に一役買ったからで、実に似合わない神官服を着ているのも鬼咒嵐の手から逃れられなかったからだとか。

 

「上手く行けばいいと思っていたが、上手く行き過ぎる事は考えていなかった」

「次からは考えることをおすすめしますよ。

 本命は東京だ。

 あのお方以上のものが出ても俺は驚きませんよ」

「違いない。

 悪魔だけでも頭がいたいのに、人同士でいざこざまであるのだから救いがない」

「それでも、救われるんですよ。

 救われるやつは一人で。勝手に」

 

 彼がこんな格好をしてここに居るのも、俺と最後に話をしたかったからだろう。

 世は怪異で満ちており、またいずれ道が交わることはあるだろうが、この冬木での出会いはこれにて終わりという事になるだろう。

 

「貴方は貴方だ。

 それさえ忘れなければ、最後は落ち着く所に落ち着くでしょうな。

 うちの先輩からの伝言です」

「貴重なアドバイス感謝するよ。

 臥煙さんによろしく言っておいてくれ」

 

 俺の声に忍野メメは返事をせずに後ろを向いて歩きだす。

 片手を上げて消えた彼を見て、彼らしいなと苦笑していたら別の来客が来る。

 

「よろしいかな?」

「どうぞ」

 

 同じく貴賓席に座っていたクルト・ゲーデルがタカミチ・T・高畑を連れてテントに入る。

 タバコに火をつけながら彼は本題を切り出した。

 

「君を正式にスカウトしたい。

 待遇は今の地位以上のものを約束しよう。

 望むならば、メガロメセンブリア元老院に席を持つことも可能だろう」

 

「お断りします。

 この国はそれ相応の待遇を一応くれましたからね。

 それなりの恩返しはするつもりですよ」

 

「それ相応の待遇ねぇ。

 鎖の間違いじゃないかな?」

 

「それを言ったら、そちらの提案も同じでしょう?」

 

「違いない」

 

 聞いていたタカミチが吹き出し、三人して笑う。

 天海市の件があるので、関東魔法協会とかこれからも友好的な関係を維持しなければいけないのだ。

 あくまで最初の勧誘は冗談という事にして、クルト・ゲーテルは次の話に移る。

 

「冬木市には明石君とそのチームを残す事にする。

 関西呪術協会も人を派遣するが、時計塔および聖堂協会は完全に遮断する。

 少なくとも敗者である彼らに流す情報は無しだ」

 

「それでもやつらの財力と政治力にはご注意を。

 俺が日の丸の旗に留まっている理由でもありますから」

 

「……肝に銘じておこう」

 

 大聖杯絡みの巻き返しは必ず発生するだろう。

 これだけの大奇跡を顕現させたのだ。

 時計塔も聖堂教会もついでに十字教もそれを座視なんてしないだろう。

 メガロメセンブリアを以て、時計塔や聖堂教会や十字教を制す。

 彼らがここでごちゃごちゃしてくれれば、東京でのメシア教とガイア教の争いに関与できないだろう。

 東京という舞台からどんどん役者を降ろしていかないと、こちらが制御できない。

 

 

 

「そんなところに隠れていないで、よければおごりますよ。

 言峰神父」 

 

 自販機でコーヒーを買って物陰に隠れている言峰神父に声をかける。

 何で分かったかと言うと、霊体化してステンノがついているからである。

 言峰綺礼神父は俺の声にあっさりと出てきたので、缶コーヒーを投げたらそれを片手で受け取った。

 

「感謝を」

「どういたしまして。

 お父上の不幸にお悔やみ申し上げます」

 

 色々あったとはいえ、死ねば水に流してお悔やみの言葉の一つぐらい口にだすのが日本人である。

 俺も言峰綺礼も言葉の穏やかさと裏腹に目がまったく笑っていない。

 

「先程のクルト氏との話ですが、色々とこちらにも交渉の機会をと思いまして」

 

 ちゃっかりと聞いていたらしい。

 おそらくクルト氏やタカミチもそれに気づいて流したのだろう。

 

「こちらは去る身です。

 私に言うよりも向こうに言ってくださいよ」

 

「そうでしたな。

 明日、出港でしたか。

 今でもあの日々が本当にあったのか疑ってしまうのです」

 

 

言峰綺礼チェック

 1で愉悦部員10で綺麗な綺礼

 結果 4

 

 

「あの勝者は今頃英国行きの飛行機の中でしょうな」

 

 聖杯戦争の生存者として時計塔へ報告をする役目を自ら申し出たウェイバー・ベルベットの事だ。

 俺が聖杯戦争全体の隠蔽などで動けなかった代わりに、色々あった彼の後始末をしたのがこの言峰綺礼である。

 愉悦部として目覚めているような目覚めていないような、そのあたり彼の顔からは読み取れなかった。

 

「こちらに残った被害者のケアなどをお願いします」

「わかりました」

 

 とりあえずがんばれ。遠坂凛。

 

 

 

「さあ!

 出航するよ!!」

 

 こうして、俺たちは舞鶴基地を後にする。

 海自服のドレイク船長というのも似合うもので、航海中にあっさりと士官を含めた海自乗員を掌握したのはさすがというかなんというか。

 

「悔しいけど、自分で動かすのより上手いのよ。

 いやになっちゃう!」

 

とは叢雲の言葉。

 いつの間にか覚えたらしい航海中の叢雲の訓練とかも、だらけ気味の乗員が見違えるようにきびきびと動いている。

 

「司令官。

 ちょっといい?

 妙な声がするのよ」

 

 航海中に叢雲が俺に声をかける。

 俺は、新島副長補佐の方を向くと彼にも話をしたらしく即座に返事が返る。

 

「通信室からはそんなものは聞こえないと報告が来ております」

 

「けど、たしかに呼んでいるのよ。

 『助けてくれ』って」

 

 叢雲の言葉に俺は地図を持ってこさせる。

 とにかく場所がわからないと話にならない。

 

「何処からだ?」

「多分、富山県と新潟県の県境あたり」

「今、あのあたり霧が濃くなっていますから、あまり近寄りたくは無いですな」

 

 状況が動いたのはその後だった。

 

「こちら無線室。

 この船に積んでいた古い無線機から助けを求める無線が!

 相手は伊庭義明三等陸尉と名乗っており、『演習に参加する予定の小隊が移動中に騎馬武者に襲われたから助けてくれ』と」

 

「騎馬武者ぁ!?」

 

「マスターくん。

 ちょっといいかな?

 あの霧の中、時空が狂っている可能性がある。

 近寄らない事をオススメするよ」

 

 ひょっこりと現れたロリンチちゃん説明ありがとう。

 俺たちの存在が特異な物だから、この手の特異も起こるものだと覚悟を決める。

 

「こちら海上自衛隊護衛艦『叢雲』。

 こちらに来ることは可能か?」

 

「ヘリがあるから誘導してくれるならば可能だ。

 装備はほとんど置いてゆくことになるか……」

 

「構わない。

 責任はこちらで取るから、ヘリにて離脱を。

 誘導する」

 

 またわからん事態にと頭を抱えそうになった時に正解を出してくれたのは、新島副長補佐だった。

 

「侍に自衛官が襲われるって『戦国自衛隊』じゃないですし」

 

 ……それかよ。

 霧の中から唐突に出たV-107に小松基地が大騒ぎをする事になる数分前の出来事である。




証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1096144498176839680

『戦国自衛隊』
 半村良のSF小説およびそれを原作とした映画など。
 場所が新潟県と富山県の県境だから出してみることに。
 彼らが遭難者全員が乗れるヘリを持っていたのでタイムスリップはなしとなった。
 なお原作が75年だから、およそ20年ほど未来にタイムスリップしたことになる。

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