【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
霧が晴れて何処からともなくやってきたV-107が小松基地に着陸した頃、俺たちは富山県と新潟県の県境、具体的に言うと親不知・子不知の沖合に停泊していた。
空を飛べる悪魔、大天使イスラフィールと妖精ハイピクシーの二体で、小松基地からの連絡を受けて彼らが居た場所の偵察に出したのだ。
残り物チェック
1 何もなかった
2 何もなかった
3 2トン半トラック一台に物資沢山
4 2トン半トラック一台に物資沢山
5 上の他に60式装甲車一両
6 上の他に60式装甲車一両
7 上の他に19号型哨戒艇一隻
8 上の他に19号型哨戒艇一隻
9 上の他に61式戦車一両
10 熱烈歓迎
結果 4
「サマナー。
それらしいトラックを発見した。
中に彼らの物資らしい物が手付かずに残っている」
「よし。
戻ってこい。
あとは現地の警察と近くの自衛隊に任せよう」
トラックが発見された事を報告したが、小松基地と市ヶ谷の防衛庁はそれどころではないだろう。
まさかのタイムトラベラーである。
悪魔とか魔法とか超能力とか科学もごちゃまぜになったこの世界において、時間旅行者として自衛隊員がやってきてしまった。
立派なヤタガラス案件だが、これに俺が絡むのは難しい。
元々舞鶴に行ったのは訓練航海という建前なので、横須賀に帰らねばならないのだ。
そして、天海市で進められているファントムソサエティーの陰謀を阻止しなくてはならない。
「ロリンチちゃん。
やっぱりあれは聖杯戦争の副作用で片付けた方が楽だろうなぁ」
「だと思うね。
原因不明だけど、近くで原因不明なわからないことが発生していたのだから、これが理由だと皆が最低限の納得する。
何より舞鶴にもとんぼ返りをしなくていい」
その方向で報告書の作成をロリンチちゃんにお願いする。
まさかその後でああなるとは思っていなかったのだ……
帰りの航海も基本同じで、大湊基地に翌日入港。
一日停泊してさあ出港という時に、その報告が飛び込んできた。
「正体不明の護衛艦が助けを求めているって!?」
大湊基地の司令部からの報告に、俺は新島副長補佐に確認を取ると彼は頷いて地図で場所を示した。
「太平洋上、南鳥島の近くか。
それで、その護衛艦は何を言ってきているんだ?」
「はい。
彼らはゆきなみ型護衛艦『みらい』と名乗っており、エクアドルの海外派遣に向かう途中に嵐に合い僚艦とはぐれ、帰国する途中まで衛星通信が使えなくなっていたとか。
現在の海上自衛隊にゆきなみ型護衛艦も『みらい』という艦も存在していません。
一応第43護衛隊の『いそゆき』と『はるゆき』が南鳥島に出動するみたいですが、先日のタイムトラベル騒動があったばかりで市ヶ谷も横須賀も浮き足立っているんですわ」
俺は頭を抱える。
『みらい』が何処からやってきたかなんとなく分かったからだ。
大きさなり時間なりの差異はあるが、過去からやってきたもののカウンターとして未来から何かを引っ張ってきたと。
両方共自衛隊というのがポイントだろう。
いずれ起こる自衛隊のクーデター。
それの海自側の混乱要因がおそらくこの『みらい』なのだと。
「それで、司令部はなんて言ってきているんだ?」
「はい。
これは要請だそうですが、横須賀帰港時に第43護衛隊と合流して欲しいそうです」
『みらい』が東京湾に近づいた時、ちょうど俺たちも帰り着く計算である。
その時に何かあったならば、その阻止戦力にという事なのだろう。
とはいえ、命令でなく要請という所に防衛庁の葛藤が見える。
「合流そのものは異存はないと伝えてくれ。
ついでに副長補佐に言っておく。
諸君らがここで降りてくれると、数時間後には俺たちは横須賀から出港できるぞ」
「どんな魔法を使うんですか?」
さすがに冬木での奇妙奇天烈な出来事に慣れてきたのか新島副長補佐も動じない。
それを確認してから、俺は手品の種を明かす。
「この船は叢雲だけならば消せるんだよ」
「消せる?」
「まぁ、あのアマテラス様と同じと思ってほしい」
そして一斉に視線を逸らす自衛隊の士官たち。
何処からともなく現れては、連れて帰られるアマテラス様はもはや様式美となっていた。
この航海でアマテラス様が現れないのは、訓練もするという事でアマテラス様に自重を願ったからである。
「神棚がおそらく、あの御方の目印になっとるんでしょうなぁ。
この間、何や勾玉みたいなん入れてはるの見てましたし」
天ヶ崎千草の一言にそれ八尺瓊勾玉じゃねと思ったが、それを確認する勇気は俺も天ヶ崎千草にも無かった。
閑話休題。
「人間降ろして俺と叢雲だけ飛行機で横須賀に戻れば、その日のうちに出港できるぞ」
俺と叢雲とマシュとロリンチちゃんとジャンヌ・ダルクと大淫婦バビロンの六人が飛行機メンバーとなる。
ステンノとドレイク船長は霊体化できるし、残りの悪魔はCOMPの中だ。
そして俺たちだけでも叢雲は動ける。
だが、それは俺たちにフリーハンドを与えることを意味する。
「司令官。
できれば我々もご一緒させていただけると嬉しいのですが」
新島副長補佐は、同じ船に乗る仲間として、俺に対する監視としての半々の声でそれを口にし、それからしばらくして陸奥湾から出た叢雲は太平洋を全速力で南下する事になる。
『みらい』
『ジパング』。
この物語時間93年なのだが、200x年の護衛艦が現れるのだからそりゃパニックだろうなぁ。
この船、こんごう型護衛艦ベースに、ラファイエット級フリゲートの内火艇格納庫とむらさめ型護衛艦のヘリ運用施設を継ぎ合わせ、若干のアレンジを加えて作られている。
なお、こんごう型護衛艦『こんごう』がやっと完成し、現在は慣熟訓練中。
証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1097588526755938304