【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
「ねぇ。旦那。
いいネタがありますぜ」
ホテル業魔殿に宿泊した俺達の所にやってきたのがメイド姿のリヨぐだ子。
明らかに口調が歓楽街の客引きなのだが、乗ってやらないと何をされるか分からないので、彼女用に準備していた十枚ほどのマネーカードを手渡してやるとある部屋に通される。
そこで待っていたのはリヨアサシンだった。
「何だ君か。
代金はマスターに払ったが」
「……ちっ!」
舌打ちした当たり、後で揉めるのだろう。
それをされても困るので、叢雲を俺たちの部屋に行かせて、札束の入った封筒を手渡してやる。
「値切ると思いましたが、金払いは良いのですね」
「この手の取引の基本だろう?
変にケチるとろくな事がない。
で、売りつけるつもりの情報とは何だい?」
リヨアサシンはネグリジェだからこのままエロエロという流れもありえなくはないが、諜報員と化している彼女にそれをするのは鴨が葱を背負ってくるのと同義語である。
そんな訳で、抑えとしてマシュとステンノは外せない。
「まずは最初の挨拶代わりに。
貴方つけられていますよ」
知っていた。
事、ここまで目立っていると、つけられない方がおかしい。
問題は、何処がつけているかだ。
「で、何処がつけていると?」
「防衛庁情報局。
監視と護衛を兼ねているのでしょうね。
それとカンパニーの連中」
ミサイル流出事件で在日米軍が大変なことになっているのに、CIAもご苦労さまである。
ふと疑問に思ったことを俺は口に出す。
「内調はつけていないのだな?」
「政府が真っ黒ですからね。
真っ先に無力化させられましたよ。
防衛庁情報局が動いているのも、組織防衛という所からでしょうね」
順調にフラグが進む自衛隊のクーデター計画。
俺はそれに対処する大きな餌なのだろうな。
実際に対魔忍や甘粕正彦は接触してきたし。
「分かった。
そろそろ本題に入ろう。
売りたいネタとは何だ?」
リヨアサシンはテーブルの上にレポートを置く。
ご丁寧に一枚目に『O&C』の文字が記されている。
「……うわぁ」
読み進めて出た声がこれである。
『女神転生』的には正しいのだが、こうやって理路整然と背後関係を見せられるとこの世界は実に終わっている。
『真・女神転生』は基本何をやっても最後は大洪水が発生し、神の千年王国に行き着く。
問題はその過程なのだが、当然世界の秩序が崩壊していないとリセットである大洪水は発生しない訳で。
かくして、メシア教こと大天使ミカエルの暗躍は始まる。
日本は物語の舞台ではあるが基本的に脇役であり、メインは欧州であり米国である。
で、都合の良い、本当に都合の良い配役が一人いた。
モンティナ・マックス。
分かる人には分かる、『少佐』とか『総統代行』とか呼ばれているあの人である。
「戦争の歓喜を無限に味わうために。
次の戦争のために。
次の次の戦争のために」
なるほどな。
次の次の戦争とは悪魔相手のハルマゲドンだったという訳だ。
そして、メシア教こと大天使ミカエルの加護にカトリック欧州総局は喜んで彼に手を貸したと。
これは言えんよなぁ。
あの司祭、死ぬ間際でも大天使ミカエルの名前は出さなかったと考えると、なんかただの俗物が狂信的殉教者に見えるから不思議だ。
更に読み進めてゆくと、こいつがやっていた吸血鬼製造計画を叩き潰した後、それをベースとした製薬会社が欧州に誕生する。
それがアンブレラ社。
アンブレラ社は生物兵器製造を目的とした製薬会社で時は冷戦の真っ只中。
『死なない兵士』はワルシャワ条約機構軍の兵士の津波を押し留めるのに絶大な効果を発揮する事を期待され、世界的ガリバー企業に躍り出る。
闇鍋世界のくせに微妙に整合性があるのが妙に腹が立つ。
当然、少佐率いる『ミレニアム』とアンブレラ社が繋がるのは時間の問題だった。
『ミレニアム』は非人道実験でどんどんデータをアンブレラ社に提供し、アンブレラ社はそのデータを元にした製薬商品でどんどん金を『ミレニアム』に提供すると。
その背後で、東側の恐怖から西側首脳がこの動きを黙認していた事まで記されていた。
問題は、ベルリンの壁崩壊でソ連を始めとした東側諸国が崩壊した事だ。
『狡兎死して走狗烹らる』とはよく言ったもので、非人道実験を今でも続けている『ミレニアム』を西側首脳は邪魔に思い出していたと。
これでも99年の決起まで尻尾を掴ませなかったのだからすげぇというか、それを背後関係までぶっこ抜いてきたリヨアサシンがすげぇというべきか。
かくして、東京ではクーデターの後核投下、米国ではバイオハザード、英国では第二次アシカ作戦と世界秩序の崩壊と既存宗教の失墜を起こし、大洪水の果てに神の千年王国へ人々を導くメシア教が一気に世界をという筋書きに見事だと感心するしか無い。
問題は、対吸血鬼に特化している型月世界の聖堂教会や、魔術と科学で彼の陰謀を叩き潰せる武力を持っている『とある』世界の十字教やイギリス清教、もっと容赦ないちゃぶ台返しが可能なねぎマ!世界と繋がっている事なんだが……
まあ、あの少佐にとって戦争こそが大事で、プレイヤーの増加は喜ぶことであり悲しむことではないだろうな。
「で、そんな素敵な状況に我が国の果たす役割は……うわぁ……」
対魔忍世界と繋がるという事は、オークが出せるという訳で。
弾除け歩兵としての生産供給地が我が国というか、地下都市ヨミハラだった。
そして、対魔忍というオーク生産孕み袋も用意されている。
最も、それだけではないのがあの戦争狂の少佐らしい所だった。
国内防衛企業から、少なくない中古潜水艦部品が南米諸国政府に流れている。
南米諸国の持つ潜水艦なんて70年台あたりまで第二次大戦期のものを使っていた。
それゆえに、枯れた技術となって西側情報機関が見逃していた盲点。
「たしかに、あの時は格好のチャンスなんだよなぁ」
某吸血鬼が乗っ取られた英空母に特攻をかけた時、その空母を沈められるのならばかの吸血鬼の足止めとしては最高である。
流水である海に落ちて残機は減るけど動けないから、兵糧攻めになるだろうし。
で、『最後の大隊』にはヴェアヴォルフが居るんだよなぁ。
南米に逃れた際のUボートも多分残っているだろうし。
群狼作戦はドイツUボートのお家芸である。
ヴェアヴォルフの艦長にオークの水兵でUボートを動かしての空母撃沈狙い。
「……ん?
何で私を見るのよ?」
叢雲の声を気にせず、安堵のため息をつく。
つまり、起こるだろう英国での死闘において、自分たちの役割が確定したのだから。
大天使ミカエル
『真・女神転生』のミカエルがCHAOS・NEUTRALルートにおけるラスボス。
問題はこの世界ミカエルが一体だけじゃない訳で、何人ミカエルが居るのやら……
あの司祭
『HELLSING』四巻の宗教裁判の被告人。