【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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学園都市があるので、技術は史実時代より進んでいる設定。
だから、こんな初手になった。


洋上人狼 その2

「!……出撃するわ!」

「駆逐艦、浜風、出ます!」

 

 日米合同の第50任務部隊の出撃日。

 俺たちの叢雲と浜風を先頭に次々と参加艦艇が出撃してゆく。

 一週間の準備では大規模な改造はできずに、後部甲板の武装を取っ払ってヘリ甲板を用意したぐらいだろう。

 叢雲とマシュ風の装備はこんな感じ。

 

 

 叢雲

   5inch単装砲 Mk.30 2基2門 ☆10

   25mm三連装機銃 集中配備 ☆10

   74式アスロック8連装発射機 × 1基

   ボフォース対潜ロケット4連装発射機 × 1基

   68式3連装短魚雷発射管 × 2基

   OPS-11B 対空レーダー

   OPS-17 水上レーダー

   81式射撃指揮装置

   66式探信儀 OQS-3

   SQS-35 可変深度式ソナー

   NOLR-6

 

 

 浜風

   10cm連装高角砲

   13号対空電探改

   25mm三連装機銃

   四式水中聴音機       ☆10

   3式爆雷投射機集中配備

 

 

 みねぐも型になった叢雲は大部分の装備を近代化させたので、いくつかの装備をマシュ風に渡すことにした。

 通信機や生活必需品などの更新でマシュ風は精一杯だが、後部甲板の装備は外してヘリ着艦スペースだけは用意させている。

 万一艦内がバイオハザードとなったら、ヘリで英霊を送り込む予定だからだ。

 硫黄島まで二日、訓練一週間、帰り二日に予備日三日の計二週間の演習航海である。

 艦橋を見ると、ヨロシサン製薬のハイデッカータイプの隊員が艦橋に数人居る。

 士官や下士官は前からの引き継ぎでかなり残せたのだが、隊員は浜風の方にも割かないといけないのでこのクローンを投入せざるを得なかったのだ。

 体力は十分で言われたことはこなす、最低限の兵士の練度は満たしていた。

 

「こんなのを投入せざるを得ないとは、世も末ですな……」

 

 美野原主席幕僚が嘆くが、短期間の戦力化は定数不足の海自にとって手放せないものになるだろう。

 ましてや、悪魔とかの訳が分からない連中が表に出ようとしているこのご時世では。

 

「浦賀水道を出たら幹部連中を集めてくれ。

 今回の航海の目的を説明する」

 

 知らず知らずのうちにため息をつく。

 内部の反乱分子のあぶり出しと粛清が目的なんてこの時点で言えるわけもないので、訓練航海で押し切るしかないだろう。

 できれば、反乱分子が居ない事を祈るしかなかったが、多分無理だろうなとも思っている俺が居た。

 

「今回の航海の目的だが、訓練航海であると同時に、実験航海でもある。

 ヨロシサン製薬とオムラ・インダストリーから送られたハイデッカーとオイランロイドのカタログスペックは以下の通りだから確認しておいてくれ」

 

 幹部士官達が、資料を見てため息をつく。

 美野原主席幕僚と同じく、こんなものを投入する事に対する怒りとも嘆きともつかない声が漏れる。

 規程乗員220人の内、人間は60人で残りは皆クローンとオイランロイドと悪魔と英霊と対魔忍である。

 後半に行くほどなんかなぁなのは言うまでもない。

 浜風の方はもっとひどく、239人の内、人間は幹部連中の30人ちょっとしか用意できなかった。

 いかに、海軍軍人が技術者であり、即席育成が難しいかを端的に示していると言えよう。

 

「質問があるのだが」

 

 第71護衛隊司令の梅津海将補がモニターから声をだす。

 学園都市の通信技術を駆使した結果、この時代なのにTV会議が可能になっている。

 さすが学園都市。

 

「どうぞ」

「こちらの艦に送られてきた船員についてだ。

 どういう意図があるのかご説明頂きたいのだが?」

 

 梅津海将補の言葉に、隣のモニターの第一護衛隊の衣笠一佐も頷く。

 送り込んだのは、クローン対魔忍である。

 もちろん慰安要員なんて言えるわけもないので、カバーストーリーが必要になる。

 

「端的に言えば、お目付けですな。

 そこからは、彼女に説明させましょう」

 

 俺がまず衝撃を与えて、次が細かな言葉で撹乱しはぐらかす。

 かくして、カメラは俺の隣の陸自制服姿の朧に向けられる。

 

「陸上自衛隊特殊作戦第四中隊の甲賀朧三尉と申します。

 今回の実験航海に便乗してこちらの実験も行えるようにと入即出海将補相当官に交渉させて頂きました。

 また、こちらの実験も市ヶ谷の承認済みです」

 

 こうしてみると陸自士官に見えなくもない。

 その胸がどう見てもハニトラ要員であると主張しているのだが。

 

「我々特殊作戦群は、その作戦において敵地への隠密理の上陸等も行います。

 今回は、その上陸の実地試験を目的としています。

 米海軍にもお願いして各艦に戦闘班を分乗させ、それぞれを上陸させて、最終的には小隊規模の作戦行動を行う。

 そういう訓練計画です」

 

 20人のクローン対魔忍の指揮の元、80体のオイランロイドが上陸して工作活動を行う。

 これが色気ムンムンの連中しかいないのだから、色々と無理があるのは承知の上だが、対魔忍の戦闘力はお飾りではないから本当に困る。

 

「……こっちの世界ではこういう作戦が当たり前なのですか?」

「……少し前までは違っていたのですよ……」

 

 梅津海将補の唖然とした声に、衣笠一佐の諦めともつかない声が続く。

 その少し前とは聖杯戦争の事なのは言うまでもない。

 俺はわざとらしく咳をして話を元に戻すことにした。

 

「なお、お目付けというのも本当だ。

 昨今、自衛隊に流れる不穏な噂の払拭も彼女たちは兼ねている。

 くれぐれも行動には注意をしてもらいたい」

 

 梅津海将補の顔が強ばるのが分かる。

 彼らの世界では自衛隊のクーデターなんてありえないだろうからな。

 

 

 

 叢雲艦内後部。

 くっつけられたシャドウ・ボーダーのあたりはロリンチちゃんの居城と化していた。

 叢雲がみねぐも型になったのを良いことに、異界化をこっそりと進めるあたり確信犯だが、そんな異界化された一室に今回の助っ人の部屋があった。

 

「呼んでいただければ、こちらから参りましたのに」

 

 シスター・シャークティは麻帆良学園より持ち込まれた大量の吸血鬼治療薬を背後ににっこりと微笑む。

 天ヶ崎千草との関係はぎくしゃくしているが、とげとげしいものはだいぶ薄れている。

 

「あいにく、この船にも盗聴器や集音器がとりつけられているみたいでね。

 腹を割った話し合いをするにはここが一番安全という訳だ」

 

「俗世というのは難儀なものだな。

 身内にも監視されるとは」

 

 シスター・シャークティの隣でたばこを吸っていた女性が苦笑し、俺が実にわざとらしくつっこむ。

 身内たる時計塔から封印指定を受けて、身を隠さざるをえなくなった女魔術師に。

 

「貴方がそれを言いますか?

 とはいえ、来てくださったことには感謝しますが」

 

「当たり前だ。

 超天才の英霊に会える上に、こんな素晴らしい技術を直に見て触れていじれるのだぞ!

 来ないわけがないだろうが!!」

 

 オルガマリー・アニムスフィアの調整が一区切りついたというかつけた彼女は、出港ギリギリの乗船となった。

 おかげでこちらはかなりの手が打てる。

 

「とはいえ助かった。

 ロリンチちゃんだけでは手が足りなくてね」

 

 実際、叢雲艦内のオイランロイドのバックドア削除すらまだ追いつかず、ハイデッカーの方は手すらつけていない状態。

 悪魔たちだけでなくモードレッドが居なかったら最悪艦内制圧もありえたから、蒼崎橙子の参加は本当に助かる。

 

「で、ナチの残党がこの艦隊を狙っているという話だが本当なのか?」

「狙っているというよりも、奴らが起こそうとする作戦に俺たちが邪魔だから排除するというのが正しいでしょうね。

 仕掛けるとしたら……」

 

 そこで艦内放送が響く。

 叢雲の切羽詰まった声が事態を明確に物語っていた。

 

「やる……司令官!

 大急ぎで艦橋に来て!!

 緊急事態よ!」

 

 ステンノと共に艦橋に来た時、艦隊は既に大混乱に陥っていた。

 床に片膝をついた叢雲を抱きしめてあたりを見ると、無線が輻輳し発光信号や手旗信号まで使われている始末。

 

「何が起こった?」

 

「『ヴィンセンス』、『たかつき』、『たちかぜ』の海軍戦術情報システムが途絶。

 この船の海軍戦術情報システムも止まりましたが、艦長が全権を掌握して強引に動かしている状態です」

 

 美野原主席幕僚の声に言葉を失う俺。

 艦娘化の恩恵がこんな所にと苦悶の汗を浮かべる叢雲を労おうとしたら、続きの言葉に俺も言葉を失った。

 

「戦術情報システムは横須賀基地ともリンクしており、そっちも止まって大混乱になっています。

 米海軍の方は厚木や横田まで止まったらしく、被害がどこまで行っているのか見当も付きません」




『イントレピット』
 叢雲と同じで艦娘が全権掌握で強引に回復。

『浜風』
 そもそもシステムを積んでいないし、積む時間もなかった。

『みらい』
 こうなる事を恐れて、システムを繋いでいなかった。



初手のコンピューターウイルステロ
 『Twelve Y. O.』のアポトーシスII。
 ちょっと便利すぎませんかね。このウイルスと読んだ時思ったけど、使う側になるとこれまじで便利と手のひら返し(笑)

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