【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
「報告を頼む」
八丈島沖合。
そこで起こった海軍戦術情報システムのシャットダウン。
リンクしている在日米軍横須賀・厚木・横田基地のシステムまで落ちるという大騒ぎにモニター向こうのデグ様の視線は凄みがある。
海軍戦術情報システムのダウンは航行するだけなら大きな問題はないが、戦闘には多大な支障が出る。
そのため、現在上空ではヘリどころかイントレピットからE-1Bを出して索敵に当たらせていた。
もちろん、各艦とも第一級戦闘配備なのは言うまでもない。
「『ヴィンセンス』の海軍戦術情報システムは使い物になりません。
データそのものが消えています。
横須賀に帰らないと復旧は無理です」
『ヴィンセンス』艦長ユーリア・ブラッドストーン大佐が悔しそうな声で告げる。
同じような顔で第1護衛隊の衣笠一佐も報告した。
「『たかつき』と『たちかぜ』も同じく海軍戦術情報システムが使い物になりません。
おそらくは、『ヴィンセンス』と同じ状況だと思います。
我々の方も復旧は横須賀に帰ってからになるでしょう」
そして、次の報告が続く。
その声は屈辱に満ちていた。
「『セント・バージニア』の海軍戦術情報システムもやられていた。
我々は作戦行動が行えない為、横須賀に帰還したい」
作戦行動中の潜水艦が浮上するというのはトラブルを起こしたと言っているようなもので減点対象になる。
というか、出港したての任務部隊の1/3の船が戦闘時に使い物にならないという被害は俺を含めた皆の顔色が悪くなるのにふさわしいものだった。
「最初に言っておく。
今回のトラブルの責任はこの私にある」
こういう事が言えるからさすデグが広がるんだよなぁ。
気づいていないみたいだが。
「と、同時にトラブルの発生そのものは今回の訓練航海において起こりうる物と想定している。
よって、訓練航海そのものは行うが……何だ?」
モニター向こうのデグ様の顔が横を向く。
なんだかの報告を受け取ったらしい彼女は「十五分待て」と言ってモニターを消す。
そのすきに、海自内部での確認をする。
「で、うちの方の損害は『たかつき』と『たちかぜ』だけかい?」
「横須賀基地は在日米軍と回線が繋がっていたため、被害が発生しています。
市ヶ谷のシステムにも潜り込まれたらしく、被害報告が上がっています。
また、在日米軍のネットワークによると真珠湾の太平洋艦隊司令部にも被害が出ているようです」
美野原主席幕僚の報告に顔をしかめざるを得ない。
こういう事をするという以上、必ず次がある。
それが俺たちなのか、デグ様なのか絞れないのがこの硬直を発生させていた。
「仕掛けるとしたらどういう手がある?」
「洋上艦艇は米軍の監視衛星から見られる以上、仕掛けは潜水艦でしょう。
既に、こちらも厚木と硫黄島からそれぞれP-3Cを出して哨戒をさせています。
それと、第4護衛隊群直轄艦『ひえい』と第43護衛隊の『いそゆき』と『はるゆき』が出港準備に入ったそうです」
過剰なとも思ったが、この手のトラブルでの逐次投入は百害あって一利なしだ。
何も言わずに頷いておくことにした。
デグ様の顔がモニターに戻ると同時に、その隣に英海軍観戦武官のシェルビー・M・ペンウッド少将の顔が見える。
「諸君。
英海軍観戦武官のシェルビー・M・ペンウッド少将から貴重な情報がもたらされた。
よってここで公開したいと思う」
「我々の情報部は、近年の戦争の背後において暗躍している秘密組織を追いかけていました。
その組織はミレニアムと称し、西側世界の政財界に多大な影響を与えております。
そんな組織が、極東方面において暗躍しているとの情報を掴み、ここにやってきた次第であります。
これがミレニアムの工作であるならば、必ず次が来るだろうと考えて間違いがありません」
ペンウッド少将からもたらされた貴重な情報にモニター越しの皆がざわめく。
それならば、まず間違いなく潜水艦による攻撃。
狙うならば、俺の叢雲とマシュ風とあのイントレピットの三隻。
ここで俺は疑問が出て、モニター外でメモを書き美野原主席幕僚の意見を聞く。
『潜水艦で襲ってくるとしよう。
だが、それを出撃から攻撃まで隠蔽できるのか?』
美野原主席幕僚は首を横に振る。
このタイミンクで仕掛ける理由は何か?
「この組織はナチスの残党によって構成されています。ただ、我が国だけでなくイスラエルのモサドも追っておりますが、南米に拠点を築いた事以上の事はまだ掴めておらず……」
ナチス残党の南米逃亡は結構有名な話で、敗戦寸前のドイツからUボートで逃れた……すごく嫌な予想が頭をよぎった。
駄女神が闇鍋で設定を足してゆくから、その思いつきが多分実現化してしまうこの世界の悪夢を心の中で罵倒しながら、デグ様たちが見ている中俺は美野原主席幕僚に漏らす。
「タンカーだ。
多分シージャックされているタンカーがある。
マラッカ海峡あたりで取り替えられたら、こっちでは確認のしようがない盲点を突いてきやがった!」
「おい!
入即出少将!
皆に分かるように説明しろ!」
モニター越しのデク様に俺は苦笑しながらその説明をする。
「空のタンカー内部にドックを用意して、そこに潜水艦を隠すんです。
密閉空間だと空気が下から逃げないので、船底に穴が開けられるのがこのドックの優れた所です。タンカーの出入りが疑問に思われない東京湾南方の八丈島近海で仕掛けてきたのも理由が通ります」
海軍戦術情報システムを潰したのもこれが理由だ。
派手に仕掛けたのは、森のなかに木を隠すため。
つまり、最大の脅威である攻撃型原子力潜水艦を無力化するため。
だからこそ、俺はその荒唐無稽な結論を皆に告げた。
「つまり、敵は、Uボートで俺たちを沈めに来たんです」
「艦娘でUボートをヒャッハーするぜ!」
「UボートXXI型だときついよ」
という会話から生まれた今回の話。
なお、その後でデグ様がイントレピットを神引きする奇跡を見せたので、こんな展開に。
ユーリア・ブラッドストーン大佐
『監獄アカデミア』。
デグ様の出世の調整からか、湾岸戦争が地獄の釜になったからなのか知らぬが28歳の大佐である。
デク様の年齢はこのあたりから察して欲しい。
どうせエロゲー美魔女だし。
空のタンカーに潜水艦のドック
『沈黙の艦隊』。サザンクロス号。
たった一回の補給で沈められ、その沈没にまぎれて『やまと』は脱出した。