【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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時計塔フルボッコ回


大英帝国円卓会議 その2

 会議は踊る。

 進むなのだろうが、この円卓会議では踊るの表現の方がふさわしい。

 今はボンド中佐による入即出やる夫の調査の報告が行われていた。

 

「彼が使役している艦娘は、旗艦にしている叢雲と浜風の二隻。

 また、サーヴァントについては、円卓の騎士モードレッドとフランシス・ドレイク提督、それに女神ステンノの存在を確認しています。

 他にも、シャーロック・ホームズやレオナルド・ダ・ヴィンチが協力をしており、彼の周囲に居る悪魔及び神様ですが、以下の通りになります」

 

 リストが提示されるとしばらく円卓のメンバーは誰も喋らない。

 また、聖杯戦争勝者であるウェイバー・ベルベットの報告書も机に置かれていた。

 そんなメンバーの視線は、バルトメロイ・ローレライに向けられている。

 針の筵のはずなのだが、彼女はその視線を気にしない。

 

「説明していただけるのでしょうな?」

 

 神秘の秘匿を名目にほとんど黒塗りで提出されたウェイバーの報告書だが、ボンド中佐はやる夫から彼の報告書を入手していたのである。

 つまり、聖杯戦争のシステムとその歴史、やらかしの全てである。

 フランシス・アーカート第一大蔵卿の嫌味たっぷりな確認にバルトメロイ・ローレライは涼しそうな顔で言い切る。

 

「神秘は秘匿されるべきものです。

 そういう意味からすれば、彼は時計塔の処罰対象になりかねないとでも返答すればご満足でしょうか?」

 

「そちらの論理ではそれでよしといたしますことよ。

 ですが、この円卓の席で隠し事をすれば袋叩きに会うリスクを踏まえてなおその姿勢を貫くのであるならば、それは偉大というより愚行と言うべきこと」

 

 ローラ=スチュワートは怪しげな口調で、入即出やる夫が日本国に提出していた聖杯戦争絡みの調査報告書を持って仰ぐ。

 日本政府を買収した時、やる夫の聖杯戦争の報告書も可能な限り回収がされていた。

 その後やる夫の処遇を決めるためにもボンド中佐を派遣したはずなのだが、そこで起こったのはナチス残党によるタンカージャック事件。

 時計塔は艦娘とアマテラス召喚の時点で封印指定を望み、他勢力と激しく対立していた。

 インテグラ卿が低い声でバルトメロイ・ローレライに詰問する。

 

「彼をその封印指定する為に経済大国日本を敵に回す事も?」

 

「神秘の秘匿のためです」

 

「それによる悪魔の暴走に対処できると?」

 

「時計塔及び、私のクロムの大隊ならば対処できるとお約束しましょう」

 

 ニヤリと笑うインテグラ卿。

 この席でもっとも孤立主義をとっていた時計塔はこういう時に集中砲火を浴びる。

 それを秘密主義とそのヴェールで隠した力によって防いでいた訳だが、それが通用しないのならばという良い見本だろう。

 

「ボンド中佐。

 この報告書に上げていない事を話してくれないか?」

 

「まぁ、横須賀であの人と親しくさせていただいたのですが、食事の席で色々と面白い話を聞かせていただきましたよ。

 酒の席だからと報告書に上げないでくれと言われたのですが、スパイは辛いですな」

 

 そんな事を言いながら、彼は小型レコーダーを取り出して再生する。

 たしかに酒の席だろう、陽気な宴会の背景と共に、やる夫の声が聞こえてくる。

 

「……英霊には地域補正ってのもあって、英国ではアーサー王や円卓の騎士あたりが出てくるとほぼ無双状態になるだろうな」

「なるほど。

 ちなみに入即出海将補相当官はアーサー王とか出せるので?」

「出せるけど、燃費悪いんだよ。

 あの御方。

 大食いだし」

 

 バルトメロイ・ローレライの顔にヒビが入る。

 それを楽しそうに確認した上でインテグラ卿が確認を取る。

 

「では、もう一度お願いしたい。

 時計塔院長補佐、バルトメロイ・ローレライ魔導元帥。

 時計塔と貴方の配下は、ドレイク提督率いる艦娘とアーサー王とその円卓騎士団を相手に事態を収拾できると?

 サポートに名探偵ホームズと大天才ダ・ヴィンチがついているのをお忘れなく」

 

 聖杯戦争のアーサー王のデータは時計塔も把握していた。

 モードレッドのデータもボンド中佐が確保してくれた。

 英霊には英霊をぶつけないときついという結論をこの場にて真っ先に知ったのは彼女なのだから。

 そして、大聖杯は冬木市の地下で時計塔の手の届かない場所にて眠っている。

 

「インテグラ卿。

 そのぐらいにしておきたまえ。

 幸いにも彼は我々にも友好的だ。

 何しろペンウッド卿に艦娘を提供してくれたぐらいなのだからな」

 

 円卓議長のヒュー・アイランズ卿がインテグラ卿をたしなめるが、ペンウッド卿の艦娘ウォースパイトを神秘秘匿を名目に真っ先に接収しようとしたのが時計塔である。

 アイランズ卿以下が激怒してウォースパイトのお目見えの席をこの場で作った原因にもなっている。

 彼が助け舟を出したのは、バルトメロイ・ローレライを助けるためではない。

 とどめを刺す為だ。

 

「聖杯戦争と英霊の一件については、円卓会議の専任事項とする。

 入即出やる夫海将補相当官との友好的関係を維持し彼から情報を適時入手する事を、ペンウッド卿に任せることにする。

 また、この件の情報提供を時計塔に求め、魔法省から監査を送ることを要請する」

 

 ここにバルトメロイ・ローレライの味方は誰も居なかった。

 居なくてもそれを覆せる力を魔導は持っていたはずなのに、この場の魑魅魍魎はそれをいともたやすく崩し去ってしまった。

 少なくとも彼女は自分の持つ常識とこの場の結論の差異に気づいて黙るだけの我慢はあり、それを肯定と捉えた円卓の面々は更に追撃をかける。

 

「そういえば、そちらの現代魔術科にて講演を頼まれておったな。

 監査を送るなら、ついでに儂がやっておこう」

 

「助かります」

 

 ダンブルドアの善意にファッジ魔法大臣が乗っかる。

 更にローラ=スチュワートも追随するあたり、落ちた犬は容赦なく叩く。

 

「時計塔内の教会について、こちらも人員を送りたいことよ。

 神の声は平等なるものゆえ。

 インテグラ卿。

 現状、色々な事件が発生しており、ヘルシング機関は早急な規模の拡大を求められていると私は愚考するのだわ。

 必要悪の教会と共に事を当たりたいのだけどいかが?」

 

「騎士団も、英国内の変事に対処する力はある。

 なにかあるのならば、遠慮なく助けを求めてくるといい」

 

 この場での最大の敗北者がバルトメロイ・ローレライならば、その次の敗北者がインテグラ卿である。

 彼女は若輩だから負けたのではなく、実戦力がアーカードと執事しかない為に負けたのだ。

 だからこうして、大勢力からの誘いを断れない。

 

「ええ。

 協定は魔法省の仲介の元、取り決めましょう」

 

 魔法省の存在はここにある。

 強すぎる個に、複数の行政機関の存在、王室だけでは到底手が足りない以上、表と同じく裏でも官僚が働き、書類が飛び交い、ルールが決められ、ゲームが整えられてゆく。

 バルトメロイ・ローレライとインテグラ卿はそれを思い知りながらもそれを顔に出すことは我慢した。




この話を書くためにFGOを起動して確認したやる夫のアーサー王。
 青王
 オルタ
 水着王
 メイド王
 騎士王

 この5人でも十分な気がする……


ヴィリアン王女は10代前半の可能性が高いので外している。

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