【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
市の上層部が敵で、警察も乗っ取られており、ヤクザが好き勝手している。
ではどうするか?
転生チートオリ主の最もチートな所以は、原作知識を持っているから、問題解決の最短ルートをとれる所にある。
だからこそ、市議会議員・警察署長・組長をぶっ潰すのが正解なのだが、それをするとこっちが犯罪者である。
泥をかぶってもらう人間が必要だった。
「ホテル業魔殿に聖堂教会のシスターさんが宿泊したそうよ」
叢雲の言葉に俺はニヤリと笑う。
一旦横須賀に帰った俺達は、その途中で匿名の手紙を冬木市の聖堂教会に送りつけた。
『平崎市に吸血鬼が居て、人々を襲っている』という内容と証拠込みで。
ステンノの気配遮断A+はまじで重宝する。
組事務所での吸血活動などの写真と、平崎市の連続殺人事件の記事を送りつけたので彼らが動かない訳にはいかなかったのだ。
聖堂教会は特に吸血鬼を目の敵にしている組織だったりする。
「宿帳の名前は知恵留美子ですって。
その翌日、天童組組長宅が大火事に見舞われたって。
何ででしょうねぇ?」
ステンノの言葉に俺は納得する。
そりゃ型月世界の闇鍋だからそっちからも来るよなぁ。
『月姫』のシエル先輩である。
で、さっそく天童組を粛清したと。
「で、よそ者が好き勝手暴れるのを現地のクズノハが黙って見ている訳もなく、双方いがみ合って、その仲裁を第三者に求める。
国の機関であるヤタガラスに。
悪党よね。そのあたり」
叢雲の呆れ声に俺は手を広げて潔白をアピールする。
こうして善意の第三者として堂々と出て行けるのだ。
「お役所仕事ってのはこんなもんさ」
改めて平崎市に到着し、ホテル業魔殿にチェックインすると今度はちゃんと現地のクズノハに挨拶に行く。
くずのは探偵事務所の主である、葛葉キョウジにだ。
まだ殺人事件は起こっていないので、彼は葛葉キョウジ本人である。
「開いてるぜ。
ヤタガラスのサマナーさんよ」
ドアの前から声がして、事務所の中に入ると、葛葉キョウジとそのパートナーであるレイ・レイホゥが俺達を睨んでいる。
好感度判定 100ほど好意的 -10の修正つき
葛葉キョウジ 17-10=7
レイ・レイホゥ 4-10=−6
「あら?
あまり好意的とも思えないわね」
「まぁ、こっちに義理なく好き勝手してくれたらそうなると思わないかい?」
ステンノの皮肉に、葛葉キョウジも皮肉で返す。
レイ・レイホゥに至っては敵意を隠そうとしない。
「ヤタガラスのサマナーである 入即出やる夫と申します。
今回は、第三者として……」
葛葉キョウジが机を叩く。
ある意味実に彼らしい。
多分、この有能な探偵は、こちらの仕掛けを全部見抜いているのだろう。
「御託は言い。
さっさと情報を寄越せ。
後はお前らよそ者でなく、俺達でやる」
「……こういうまどろっこしい手を使う意味を理解していただけると助かるのですがね。
お話ししますが、天童組組長宅の火事、うちは隠蔽工作なんてしていないんですよ」
「何だと?」
葛葉キョウジの目に探偵の火が灯る。
たとえデビルサマナーをやっていても、探偵なんて職業を名乗っている以上、謎なんでものをぶら下げればいやでも食いつくのが探偵という人種なのだ。
「まさか、警察?」
レイ・レイホゥの疑問系に俺はテーブルの上に書類を投げる。
政府機関経由で申請した、銀行口座の金の流れである。
「悪魔と言えども、税務署をごまかすにはそれ相応の努力が必要なんですよ。
平崎市の都市再開発は、天童組が莫大な資金を投じて地上げをかけているのに、市がそれを摂取した価格は適正価格になっている。
おもしろいですよね。
天童組は帳簿上では大赤字なんですよ。
じゃあ、その赤字は誰が補填したんでしょうね?」
金の流れは明確だ。
そしてそれ以上に面白いのが人の流れである。
「平崎警察署ですが、神奈川県警の人事移動の特異点になっているんですよね。
警察署長は癒着などを避けるために、ある程度のたらい回しをする慣例があります。
神奈川県警は天童組と関係があるらしい中込敦署長を交代させたがっていたが、今までそれは成功していません。
県警関係者が漏らしていましたよ。
『藤原市長が県警本部に来て「彼は優秀な人材だ。離れられては困る」と陳情して回った』と。
その意味をもう少し考えていただけたらこちらも助かるのですけどね」
二人の顔から敵意が消える。
二人が想像している以上にこれはでかいヤマなのだ。
まぁ、市長の一存でどうこうものではないが、西郵政省次官あたりがお願いしたら通りそうなのが日本組織である。
「警察署長と市長がグル?」
「いや、市長は傀儡だ。
彼を操っているのは市議会議員の山城誠一。
そいつが今回の敵という訳だ」
レイ・レイホゥの呟きに葛葉キョウジが核心を突く。
ここまで来たら、後は大丈夫だろう。
「我々はお役所仕事ですからね。
市長自らお願いに来られるようだと動けないんですよ。
二人、およびクズノハのプライドを傷つけました事をここにお詫びさせていただきます」
日本人固有スキル『謝罪』である。
ぐっと90度近くまでかがめるのがポイント。
「わかった。
腹は立つが、謝る人間を殴る趣味はねぇ。
謝罪は受け入れよう」
葛葉キョウジが謝罪を受け入れたのを確認して、俺は最後に一冊の本を二人に差し出した。
この問題のきっかけとなった、『日本古代文明論』。
文車妖妃を図書館に行かせて、確保しておいたのだ。
貸出カードの名前は、葛葉キョウジにしている。
後は二人にまかせて十分だろうと判断して、俺達はくずのは探偵事務所を後にした。
好感度判定 100ほど好意的 -10の修正つき
知恵留美子 86-10=76
俺達がホテル業魔殿に帰るとちょうど客人が待っていた。
同じホテルに泊まっている、聖堂教会の知恵留美子と名乗った彼女は、かなり好意的にこちらと接してきた。
「聖堂教会より派遣された知恵留美子と申します。
ヤタガラスの監視役さんにはこちらまで来ていただきお手数をおかけしています」
冬木市で聖杯戦争なんてものが始まる前に降って湧いたような吸血鬼騒動である。
裏工作に勤しんでいた、言峰璃正からすれば万全を期す為にも放置する訳にも行かず、最強の切り札を欧州から持ってきたという所だろうか。
そんな状況もあって、彼女はとても下手に出ていた。
「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。
隠蔽工作までやってくださって、こちらとしても助かりましたよ」
「え?
天童組の隠蔽工作はそちらがやったんじゃないんですか?」
「え?」
沈黙がしばらく続くが、からくりを知っている俺からすれば、笑ってはいけない沈黙である。
そして俺は情報を小出しに出してゆく。
「警察の発表でしたから聖堂教会が手を回したものだとてっきり」
「いえ。こちらはまったくその手のコネが無かったので、現地の退魔組織にお願いしたとばっかり」
「じゃあ、市の方から無事に片付いたという報告が来ていますが、これは?」
葛葉キョウジと知恵留美子が合同で敵と当たる訳がないと踏んだ上での情報誘導。
この手のポイントは嘘は言わないことと、重要な事は言わないことだ。
「ほら。
ヤタガラス名義で市に確認をとったら、『火事なので問題なし』と」
「では、現地の退魔組織の方がやったのでは?」
「さっき会ってきましたが、『俺達をのけ者にしやがって』とカンカンでしたよ。
ひたすら頭を下げていたんですから間違いがありません」
そして俺達は黙り込む。
これらのやり取りで、第三者の隠蔽工作が行われ、しかも警察や市内部に天童組の内通者が居るという情報が知恵留美子の中で組み立てられる訳だ。
で、ここでわざと引く。
「それでも、吸血鬼は退治されました。
現地の退魔組織も捜査をすると言っていますし、聖堂教会の方にこれ以上ご迷惑を……」
「いえ。
私の仕事はまだ終わっていないみたいですね」
「わかりました。
我々は一度調査のため戻ります。
何かありましたらこちらに連絡ください」
と、名刺を渡して、その夜の最終電車で横須賀に戻ることにした。
「悪党」
「ひどい人」
叢雲とステンノ二人の感想に俺は沈黙で答えた。
その後の展開
1 葛葉キョウジレイ・レイホゥ
2 知恵留美子単独
3 合同
シド・デイビス 1
警察署長 3
市議会議員 3
結果
シド・デイビス 58 VS 葛葉キョウジ レイ・レイホゥ 36+22
警察署長 87 VS 葛葉キョウジ レイ・レイホゥ 知恵留美子 1+64+74
市議会議員 38 VS 葛葉キョウジ レイ・レイホゥ 知恵留美子 65+55+49
結果だけ先に書こう。
『日本古代文明論』を巡る戦いで、シド・デイビスにあわや敗北の所まで追い詰められた葛葉キョウジとレイ・レイホゥは、知恵留美子との合同捜査に切り替える。
実際、警察署長が変化した悪魔との戦いでは、葛葉キョウジが一撃で沈められあわやという所まで追い込まれたが、なんとか撃破。
慢心を戒めた三人は市議会議員が変化した悪魔との戦いも危なげなく撃破したのはいいが、
シド・デイビスは未だ姿を表していなかった。
そして署長と有力市議会議員の失踪に平崎市政は大混乱となってしまい、他所からの介入を招いてしまう。
進出度 100でノリノリ
時計塔 46
聖堂教会 45
関東魔法協会 23
関西呪術協会 34
十字教 51
メシア教 46
ガイア教 79
ノリノリで進出してきたのはガイア教である。
この地に封じられた神の力はたしかに力を求めるガイア教には魅力的であり、他勢力の牽制を尻目に一気に乗り込んできて勢力を確保してしまっていた。
そんなガイア教の新たな拠点はお寺でありその名前は命蓮寺。
そこの住職は聖白蓮。
イラン事をするとろくでもないしっぺ返しが来るという教訓に俺は頭を抱えるしか無かった。
今回は作者の練習会。
サイコロを振る場合の補正のかけかたを考案中。
知恵留美子
『月姫』のシエルの偽名だが、『ひぐらしのなく頃に』のキャラでもある。
聖白蓮
『東方星蓮船』ボス。
やる夫系メガテンではガイア教の大物として登場する事が多い。
サイコロの結果、ガイア側強化という結果になったので、作者は頭を抱えている。
多分、アストラル界に行った時に誰かが封印された白蓮を助けたんだろうなぁ……