【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
「私達が、私達の世界が特異点?
冗談でしょ!?」
オルガマリーの言葉にロマニもダ・ヴィンチちゃんも返事を返さない。
その沈黙が、事実となって三人を打ちのめすが、口を開いたのはダ・ヴィンチちゃんだった。
「入即出やる夫氏の存在がそれを証明しているんだ。
この世界は、人理修復された世界だ。
にもかかわらず、私達が来た事で再度魔術王が動き出した。
これは、私達の世界の魔術王が、私達を起点にこの世界も焼却しようとしていると考えるべきだと思う」
「それを防ぐことはできないの?」
オルガマリーの質問にダ・ヴィンチちゃんはあっさりとその答えを言う。
簡単かつそれをするにはかなりの抵抗のある答えを。
「簡単な話だ。
この世界とカルデアのレイシフトデータを破棄してしまえばいい。
現在、この世界とカルデアはレイシフトで繋がっているから、それを解除すれば2つの世界は自然と離れてこの世界は助かるだろう」
この会談の前にロリンチちゃんとホームズを交えた話し合いが行われており、世界決定の観測者が藤丸立香と入即出やる夫である事が確認できていた。
現在の状況は、入即出やる夫側の事情であり、藤丸立香側は巻き込まれた側なので、レイシフトデータの破棄によるこの世界との切り離しでおそらく、この世界の魔術王の手はそれ以上は伸びてこないだろう。
「けど、この世界が無いと今のカルデアは存続できないじゃない!?」
現在修復途中のカルデアは、食料および物資をこの世界から調達している。
莫大な魔術素材、信じられない神秘の量、そしてスタッフの多くを回復させたマジックアイテムなどはこの世界無くしてはありえない。
それを破棄するという意味を考えて、オルガマリーの顔に汗が吹き出る。
この世界でなかったら、彼女は死んでいたという事実をつきつけられたからだ。
「そうだ。
その上で、向こうのダ・ヴィンチちゃんから提案があった。
『カルデアをこの世界に固定させないか?』だ」
つまり、観測者を入即出やる夫一人に固定させる。
そうすれば、観測者の視点は入即出やる夫一人に絞られて、おそらく記憶から何まで全部この世界に固定された瞬間から改変が始まり、この世界の一部となるだろうと。
ダ・ヴィンチちゃんは話を続ける。
その声に憂いがあるのは、ロリンチちゃんの提案が魅力的だからだ。
「その場合、人理修復はどうなるの?」
「この世界では人理修復は既に終わっている。
私達は終わった物語の主人公としてめでたしめでたしの後の生活を送ればいいという訳だ。
多分、記憶の改変の段階で、そのあたりも都合よく再設定してくれるのだろうね」
オルガマリーの声がダ・ヴィンチちゃんの声を止める。
それがこの提案をためらう最大の理由だった。
「わ た し た ち の せ か い は ?」
ロマニとダ・ヴィンチちゃんは何も言わない。
それが答えを物語っていた。
「この件は、藤丸立香くんを除いて知っているのは我々だけだ。
そして、藤丸立香くんに打ち明けた結果、彼女はこう言ったよ」
しばらくしてロマニは苦笑する。
モニターにその時の藤丸立香を映す。
「やる夫先輩は私達の旅路を応援してくれています。
私達の旅が成功する事をやる夫先輩の存在が示しています。
なぜ私達の旅を諦めるのですか?
ゴールはそこにあるのに、人理は修復されるのに。
私は、私の未来を、私の世界を諦めません!」
その旅路を続けるならば、いずれカルデアとこの世界は離れることになる。
それでも、藤丸立香は自らの世界を守るために旅立つという。
その時には、この世界を特異点として切り捨てる事を承知した上で。
「さっきの派閥云々の話はここに繋がるのね」
オルガマリーはため息をつく。
人は弱い。
困難な道があって、後ろに退路があるのならば、多くの人はその退路を選んでしまうだろう。
それでも、現在唯一のマスターは己の世界を守ると決めたのだ。
「実際、どれぐらいまでこの世界に滞在できそうなの?」
「正直、わからないというのが結論だ。
現在のカルデアは第一特異点オルレアンに向けて準備を進めている。
いつ状況が変化するのか分からないので、所長も早い帰還をお願いしたいが、所長がそちらに居るのと居ないのでは、支援体制が格段に違う」
カルデアへの物資供給はオルガマリー・アニムスフィア無しでは語れない。
アニムスフィアという魔術協会に通じる名前、現地にいる事での物資調達、彼女を起点としたコフィンの往還等彼女はカルデアの為に多大な尽力をしていた。
「最悪、私の切り捨ても視野に入っているという訳ね……」
画面向こうの二人が言わなかった事にオルガマリーは自ら口にした。
彼女の帰還とこの世界との分離が間に合わない事があるという事実をオルガマリーは表向きは受け入れた。
それは、彼女が人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長だからにほかならない。
「わかりました。
万一のときには、所長権限をロマニ・アーキマンに委譲する事をここに明言します。
貴方の、いや、藤丸立香の為にできる事は全て行ってください」
オルガマリーは、この世界で上に立つ人間というものを多く見てきた。
入即出やる夫みたいに現場に行けずに歯噛みした姿も、クルト・ゲーデルみたいにすべての責任を取ると明言してやる夫達を支援したことも。
レフが居なくなった今、彼女はそんな上に立つ者としての振る舞いが求められていた。
会議が終わり、オルガマリーはそのままベッドに倒れ込む。
小さな呟きは誰にも聞こえることはなく。
「助けてよ……」
誰に助けを求めたのかを言わなかった事で、彼女が成長しているなんて彼女自身分かるわけがなかった。
どのタイミンクで離れるかはやっぱりサイコロで決める予定。
各特異点の定礎復元後にサイコロを振って決めようかなと思っている。