【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
さいたま新都心。
新しくできた開発地区で、高層ビルが立ち並ぶ場所ではあるが、さすが闇鍋世界。
アーコロジーが建っているとは思わなかった。
ヨロシサン製薬の出迎えのヘリに揺られて上層階のヘリポートに到着する。
空気が綺麗なのにびっくりである。
「我が社は環境にも配慮しておりまして」
認識阻害の先にそびえる麻帆良学園都市の世界樹を眺めながら古奈牙柳魅は苦笑する。
メガコーポは真っ白ではないが、かと言って真っ黒でもない。
暗黒メガコーポと名を馳せていたこの両社だが、こっちに来たときにそれ相応に綺麗にはなったのだろう。
叩けば出る埃はメガコーポの必要経費である。
「ようこそいらっしゃいました」
ずらりと並ぶ美女達が俺にお辞儀をする。
こー言う所は名残として残っているのが中々面白い。
「なに笑っているのよ?」
自衛隊服の叢雲が突っ込み、同じく自衛隊服のマシュが白い目でこっちを見ている。
まぁ、暗黒メガコーポの接待なんて受けたら、それはそれで色々問題なのだろうが、こっちもこの社とくっつかねばならない事情がある。
実際にハイデッカーは対悪魔戦における切り札の一つになりえるのだ。
そんなアーコロジー最上階の和室で、オイラン達を侍らせながら盃を交わす。
「では、お近づきを祝して」
「乾杯」
高級酒を口にして盃を置く。
ふらりとした所をステンノに支えられる。
「お酒弱いのに無理するから」
「これも仕事さ」
その際にステンノが気遣うふりをして警戒する。
彼女から何度か魅了がかけられた事を目で告げていた。
概念礼装『ムーニー・ジュエル』を装備していなかったら危なかった所だ。
こういう所も暗黒メガコーポらしくて苦笑するしかない。
「これは失礼を。
何か別のものを用意させましよう」
古奈牙柳魅が軽く手を叩くと、オイラン達が下がり、障子が開けられるとそこに巨大モニターが現れる。
出て来たのは、魔界バブル真っ只中における日本の自衛隊の充足状況だった。
「湾岸戦争以降、戦争はハイテク兵器が戦場の中心になりました。
それは、大量動員された兵士よりも専門職のエキスパートである兵士が必要になった事を意味しています。
そのエキスパートの兵士の育成には、多額の費用と時間がかかります。
弊社商品はそれを解決できると思っております」
「たしかに。
とはいえ、それを一介の国家公務員に言うのは筋違いと思うのだけどね」
「そうでもありません。
入即出様が購入なされた弊社商品は、自衛隊における初の採用になります。
その有効性はいずれ正規採用に繋がると思っており、弊社といたしましては最大限の協力をと思いまして、このような席を用意した次第で」
実際、海自の定数不足は深刻だった。
現在作成中のレポートでは、バブルの夢を未だ見ているこの国の海自隊員の充足率は八割を切ろうとしており、私物購入扱いだったハイデッカー達については予算をつけて正規隊員化もという市ヶ谷の思惑がレポート提出後に出てきたのは笑うしか無い。
なお、陸自や空自まで導入をするとなれば、その購入人員は余裕で万を超えるし、警察や消防にまで導入が始まれば桁が更に一つ上がる。
「貴社の商品だけが採用される訳ではない。
ライバルは多くいるからな。
オムラ・インダストリーにノマド、学園都市や麻帆良学園都市も研究を進めている。
戦闘機導入と同じように、ハイ・ローミックスでの採用になると思っている」
「もちろん、利益の独占が理想ですが、蹴落とす相手は少なければ少ないほど楽なもの。
今回、入即出様がヴィクトリア・ザハロフに支払った金額、全て弊社にて負担いたします」
そう言って、古奈牙柳魅は小切手を差し出す。
調達したハイデッカーの値段は一体1000万円。
それの400体だから40億円だったりする。
なお、オムラのオイランロイドの価格は一体一億円で80億円。
対魔忍クローンは一体三億円で60億円で、合計180億円ものビッグビジネスだったりする。
小切手の金額は200億円だった。
「また豪儀なことですな」
「軍事関連はこれぐらいのお金は常に動いていますから。
リベートとでも思ってください。
正直な所、これでもまだ可愛いものです」
ハイデッカー一体1000万円が自衛隊全部に採用されると、一万体は配備される計算になるので一千億円のビッグビジネスになるからだ。
おまけにハイデッカーの寿命は三年。
三年ごとに一千億円の売上があると考えるならば、200億円のリベートは先行投資と割り切る覚悟が古奈牙柳魅の笑みから見えた。
「受け取りたい所ですが、査問会から開放された身。
ここでそれを受け取れば、また査問会に呼ばれるので、それはおしまいください」
古奈牙柳魅の眉がぴくりと動く。
オイランの接待だけでなく、現金受け取りも拒否すれば向こうの面目が潰れるので、ある程度のお礼は返す必要があった。
「あくまで私個人の私用という形で、ハイデッカーを追加購入しておきたい。
400体分。
なんなら、この場で契約書を書いても構わないがどうかな?」
デグ様経由で、ウォースパイトの乗員の不足についての報告は届いていた。
あの人の良い提督を救国の英雄として殉死させるのは忍びなく、せめて彼の手元に最低限の戦力を送るぐらいはしてあげようという訳だ。
購入費用はNATO軍予備費、購入は俺で、送り先はデグ様の所。
デグ様の所で経歴ロンダリングをして、NATO軍兵士としてウォースパイトに乗船という手はずだ。
さすがにバックドアまで手が回らないが、ボンド中佐には話しているから後はMI6の技術部が外してくれるだろう。多分。
古奈牙柳魅は、ぽんぽんと優美に手を叩くとオイランたちが契約書一式を用意してくれる。
笑みを崩さず、雅な口調でこの会談を終わらせた。
「これからも弊社商品をご贔屓によろしくおねがいします」
アーコロジー
シムシティーで見かける超高層建築。
この中だけで生活ができるのでサイバーパンクではよく出てくる。
ヨロシサン製薬とオムラ・インダストリーはこのさいたま新都心にアーコロジーを建てている設定。
ムーニー・ジュエル
彼女は手を触れた相手を治療するかわりにニューロンに楔を打ち込み、奴隷化するジツを用いる。
4凸で魅了耐性+100%なので、完全に防いでいる。