【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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横須賀基地食堂の一コマ

「私って、魅力ないんでしょうか?」

 

 横須賀基地の食堂にてそんな事を言いだしたのは、東風谷早苗。

 入即出やる夫によって助け出された現人神の学生である。

 そんな発言に天ヶ崎千草が食べていた醤油ラーメンを喉につまらせるが、当の本人はまったく気づいていない。

 

「神奈子様も諏訪子様も『さっさと押し倒してしまえ!』って言うんですけど、なんと言いますか、周りの女性達のあれやそれがが……」

 

 ランチの鶏肉ステーキを箸でつつきながら、最後の方はごにょごにょになっているあたり東風谷早苗にも思うところはあるのだろう。

 むせながらも天ヶ崎千草はあくまで大人としてアドバイスを送った。

 

「十分魅力は持ってはると思いますけど、大人にはしがらみがあるんどす」

 

「たとえば、どんなしがらみなんですか?」

 

 天ヶ崎千草はとある方向を指差す。

 そのしがらみの最たるものが、カレーうどんの悲劇を今嘆いている所だった。

 

「あっ……あーあーーーーあーーーーー!」

 

「あれ落ちないんですよねぇ……」

「いや、突っ込む所はそこやあらしまへんわ」

 

 近代設備になった事で、叢雲での食事のレパートリーはかなり広がっていた。

 おまけに異界化した倉庫に保存食を大量に買い込んだので、長期間の航海でも問題ないという状況になっている。

 とはいえ、食事は基地の食堂でした方がレパートリーも多いので、多くの隊員と共にこっちに出向いて食事をする事に。

 周囲の自衛隊員の視線ももう慣れた。

 

「当たり前のように居てはりますな。あのお方」

「神奈子様と諏訪子様は露骨に避けていますけど……」

「そりゃそうどっしゃろ」

 

 因縁が日本神話レベルなだけに、深いというかなんというか。

 そんなアマテラス様は妖精三人に絡まれる。

 

「アマテラスおねーちゃん!

 一緒にアイス食べよ♪」

「ひーほー♪」

「だめだよ。

 チルノちゃん。

 ごめんなさい」

「いいですよ。

 一緒に食べましょうね」

「「「わーい!」」」

 

 微笑ましい光景を眺めていた二人のうち天ヶ崎千草がぽつり。

 

「なんぼ食べても太らへんて羨ましおすな」

「私もあまり気にしていませんけど?」

「そないな事が言えるんは、十代の間だけどす」

 

 今までで一番真剣な口調で天ヶ崎千草が言い放ち、東風谷早苗はその後の言葉を失う。

 そんな空気を打ち払ったのは、隣の席に座った定食を持った女性のおかげである。

 

「隣失礼しますね。

 どうも楽しそうなお話をしていたみたいなので」

 

 そう言って朧は手を合わせてアジのフライに箸をつける。

 不思議なもので、人が食べるのを見ると食べたくなるのが世の常で、明日の昼食は定食にしようと二人は心に決める。

 

「あ。そうそう。

 夜這いの話なんですよ!

 私って、魅力ないのかなって……」

 

 結構大きな声で夜這いなんて堂々という東風谷早苗。

 当たり前だが、この食堂には男子自衛隊員の方が多い。

 

「そりゃ、魅力云々でいうと、相手が神様ですからね。

 そこを何とかアプローチをしてというのが我々の立場です」

 

 やる夫の寝室のライバルは、基本全員神様である。

 その時点で色々突っ込む所なのだが、そのやる夫の子供からどれだけのものができるかという訳で、彼に抱かれて子供を孕みたいという女子は結構多い。

 その後の世話は、所属する組織が見てくれる。

 

「あの人結構義理堅いんですよ。

 手を出した人たちってアマテラス様を除けば、全員長い付き合いの人達ばかりだとか」

 

「そうなんですか」

 

 朧の言葉にへーという顔をする東風谷早苗。

 叢雲・マシュ・ステンノの三人は死線をくぐった仲で、それぞれ微妙に付き合い方が違う。

 叢雲の場合は自衛隊員に分かりやすい古参下士官と新米士官との関係で、それが公私に渡って広がったケース。

 だから、必要なら遠慮なく私の時間でも公の話を振るのが叢雲。

 一方で、マシュは後輩としてやる夫の指示に付き従った関係で、先輩後輩の関係がそのまま公私に使われている。

 そのため、基本的な所ではやる夫の指示待ちになるのがマシュだった。

 またステンノとの関係はマスターとサーヴァントではあるが、親しさと他人行儀な所は神様と崇拝者でなく、少しわがままな幼馴染とそれを受け入れる友人ポジと言った所。

 双方体を重ねる関係なのに、最後までどこか他人行儀な所があったりする。

 そんな事を朧はアジのフライをつまみながら話す。

 

「よう見てはりますな」

「それがお仕事ですし。

 そういう所から、自分の立ち位置を作らないといけない訳です」

「で、あのお方は?」

「当人曰く、姉と弟だそうで」

「それ、スサノ……」

 

 東風谷早苗の口を自らの口に指を当てて閉じさせる朧。

 言霊はこの世界は命取りになりかねない。

 

「まぁ、ぶっちゃけると、愛がなくても私はいいのですけどね」

 

 監視と勧誘が目的の朧はそのあたり割り切れていた。

 一方の東風谷早苗は自分の心が分かっていない。

 

「私は何なのかなぁ?

 助けてもらった恩はあるけど、じゃあ恋を飛ばして愛に行くのもどうかなって感じで。

 かといって今のままだとなぁというのも分かっているし」

 

 天ヶ崎千草は復讐のために動いてこの躰を差し出してもと思っていたのに、シスターシャークティをはじめクルト・ゲーデルやタカミチ・T・高畑みたいな人間を知ってしまうと彼らを憎めない。

 復讐を続けるのも力が居る。

 そして、その力が揺らぐ程度には時は経っており、少女は大人になっていた。

 

「天ヶ崎さんはどう思います?」

「ん?」

 

 天ヶ崎千草は残っていた漬物を口に入れることで、東風谷早苗の質問を拒否することにした。

 朧はそれを見ていたがなにも言わず、こうして三人の昼食は終わった。




東風谷早苗 JC
天ヶ崎千種 20代中盤
朧       躰は10代心は30代

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