【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
それ以外はサイコロである。
新設される宮内省にまとめられた退魔組織人員構成はこんな感じである。
ヤタガラス
30人 平均レベル18 全国の退魔組織との連絡役
クズノハ
16人 平均レベル60 基本2人で行動
陰陽課
4人 平均レベル4 東京守護任務がメインなので東京から動かず
関西呪術協会
110人 平均レベル30 畿内を始めとした西日本の寺社仏閣の警護
退魔四家
17人 平均レベル72 個々で動いている。遠野家はこの枠。
対魔忍
72人 平均レベル15 単独行動及び複数で任務に当たるが未帰還者多し
デビルバスターズ
40人 平均レベル5 4-5人のチームで活動
見事にというかなんというか言葉にしにくい。
ヤタガラスは基本全国を飛び回る連絡員という扱いなので、この人員とレベルは納得ができる。
クズノハは少数精鋭主義で一族として事にあたってなおこの練度を維持できているのがすごい。
一方で陰陽課は関東魔法協会との兼ね合いで見事なまで弱体化させられていた。
ここは、関西に多くの霊地を抱えている関西呪術協会に協力を仰いで早急な戦力化を急ぐ必要がある。
退魔四家のレベルが異常な程に高いのは、クズノハと同じく尖った個人がレベルを押し上げている結果だろう。
遠野兄妹とか、両儀式とかあのあたりだ。
思った以上に人数がいるのが対魔忍だが、ここは設定が設定だから人数とレベルがある程度あるのは大助かりである。
無駄に送り込んで未帰還者アヘ顔ビデオレターの届く率を抑えないといけない。
デビルバスターズは内閣調査局の弱体化にさらされて陰陽課と同じような感じに。
このあたりの人員を動かせるのが俺の立場となる訳だ。
宮内省技術総括審議官。
実務組織となる予定の神祇院特別調査連絡会議の更に上の椅子だから困る。
ボスが復活する宮内大臣で、宮内省事務次官・宮内審議官に次ぐ内局局長扱い。
こういう扱いなのは、外局である神祇院のトップである総裁に変わって神祇院を動かす為の搦手なのは言うまでもない。
「さてと。
どこから手をつけるかね」
皇居。皇宮警察本部地下に作られた準備室にて俺と叢雲とステンノは頭を抱える。
神祇院は皇居防衛の必要と隠密性から皇居地下にその施設の大部分を建設する秘密基地に近いかたちになる予定だ。
「まずは、何を守るべきかから始めた方がいいんじゃない?」
叢雲の指摘に、俺はCOMP絡みの資料を確認する。
意外と思うが、COMP流出にともなう悪魔の出現事件は、まだ許容範囲内に収まっていた。
それは時代が93年。
つまり日本のITブームを一気に加速させたパソコンの爆発的普及前という事があげられる。
まだ、パソコンは持つ人が限られる物だったのだ。
もちろん、学園都市の最先端科学によってそのあたりの発展も進んではいるが、学園都市製の技術をデファクト・スタンダードにしたくない国家側の規制がこのバランスを作り出したと言えるだろう。
アルゴンソフトのパソコンが世界基準となり、その先駆けとして天海情報都市があった。
表向きの政策が潰れたので、まだ治安の悪化に対処できる時間が作れたのは運が良かったと言えるだろう。
「治安の維持。
そのためにも、警察側の組織とも提携しないと」
対魔忍を使っていた内務省公共安全庁調査第三部および、警視庁特別資料室と連携を取るための話し合いを申し込む。
ちなみに、警視庁特別資料室の人員は数人でレベルは3というやはり使えない状況だったので、室戸文明次官に頼んでここも強化させる事にする。
その調査第三部部長である山本信繁は電話向こうから苦悩な声を聞かせながら、対魔忍使い捨ての窮状を語る。
「問題の本質は、悪魔が暴れることではないのです。
暴れたことによる恐怖の感染が一番やっかいなんです」
神様クラスの悪魔はひとまず放おっておくとして、大体の雑魚悪魔は核の熱と衝撃に耐えられない。
これは人が悪魔に刺し違え覚悟である程度対抗できる事を示している。
とはいえ、そんな勝利を人も悪魔も基本望んていない。
悪魔にとって、人は存在を固定できると同時に全滅すれば現界できなくなる基礎みたいなものだ。
だからこそ、悪魔と人は古より境界線を決めて、その中でつつましく共存していたのだ。
それが近年の経済発展で狂いだした。
悪魔は人に快楽を与え、人は悪魔に心を捧げ、繁栄と共に悪魔の顕在化は加速度的に進んだ。
それでも、まだ治安悪化に行き着いていないのは対魔忍を使い捨て、悪魔と人の欲望の生贄とする事で、満足させていたという側面に俺は頭を抱えざるを得ない。
「つまり、クローン対魔忍。
あれは政府の主導もしくは黙認によって、生み出されたものだと考えてよろしいのですね?」
山本信繁の沈黙が全てを物語っていた。
対魔忍の尊い犠牲によってこの国は魔界バブルに酔いしれ、未だ空前の繁栄を続けているのだから。
この国が何を差し出し、何を失ったのか、それを究極的には部外者である俺は問うことはできなかった。
そして、その流れに俺も基本乗らざるを得ない。
「退魔組織における人材不足は致命的な所にまで来ています。
対魔忍クローン、オムラのオイランロイド、ヨロシサンのハイデッカーをベースに、各部署に人員を割り振ることになりそうです」
首都圏だけでなく霊脈のパワースポット地帯であるこの国の霊的防衛には、最低でも連隊規模の人員は欲しい。
それを確保できるのはその手段しか無かった。
「自衛隊が大量導入をするという話に便乗する事になるでしょう。
それで今の治安が維持できることを信じていますよ」
おそらく、このハイデッカーを始めとした大量導入に紛れて、かなりの数がクーデター側に渡るだろう。
それでも、そのクーデター後の治安維持には面制圧ができる戦力がどうしても必要だった。
警察にも、俺にも。
山本信繁との電話を切った後に、ステンノが言い放つ。
とても綺麗な笑みで。
「人間って不思議ね。
貴方も彼も、まったく信じていないのに」
その言葉に俺は何も返事をする事無く、ステンノに笑みを返すことで答えた。
山本信繁
『対魔忍アサギ』。
対魔忍世界の数少ない常識人。