【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
退魔組織と治安維持組織の問題点を室戸次官(なお省庁再編で宮内省ができるのは来年1月1日からである)や荒巻公安課長側(彼は案の定内務省公安局の課長だった)から見ると、管轄と実戦力が内務省側から離れている点にある。
悪魔絡みの事件は必然的に宗教が絡み、それは来年できる文部科学省の管轄という訳だ。
宮内省昇格とその外局である神祇院は内務省がやっと悪魔絡みで実戦力を得たという見方もできなくはない。
そして、実戦力を得た事で表の法の執行ができる体制が用意できる事になる。
「基本、悪魔がらみの事件については、以下の編成で行う」
室戸次官の説明に神祇院特別調査連絡会議に参加した俺を含めた面々はその資料を確認する。
「事件そのものの一報は110番通報で警察に届く事が多く、最初の対処は警察が行う事になる。
その後、悪魔絡みの事件であるという事が確認された後に、神祇院に権限が移管される」
とはいえ、発生時の警察への被害が馬鹿にならないので、警察側も治安維持の為にハイデッカーを投入する事でこれに対処する事になる。
大事件の一報で動ける人員と盾が増えたことで、被害を軽減する仕組みだ。
警官2人にハイデッカー2体がつく形で初動チームを編成する。
とはいえ、彼らの装備は対悪魔用ではなく、対事件用の軽装備なので注意。
「権限移管後に神祇院が出動する事になる。
編成は、ハイデッカー16人に執行官4人を基本に管理官をつける。
管理官は基本警察から出向してもらい、警視以上の者をこれに当てる」
悪魔絡みの事件はその異様性からどのように法を当てはめるかで確実に揉める。
そのため、警視以上の警察官を管理官として事件解決と法の執行の整合性を取らせるために上に据えるという訳だ。
このあたりからも、この神祇院が警察の植民地であると正しく認識できた。
「つまり、現在集まっている面々は基本執行官として事件解決に当たり、管理官の助言のもと事件解決に当たる訳だ」
俺が横から口を挟むがイマイチ分かっていない現場組である会議の参加メンバー。
手を上げて質問を求めたのは上京してきた関西呪術協会会長の近衛詠春。
「関西呪術協会は地域に根ざし、現地警察と協力してこの手の事件を秘密裏に解決してきました。
中央から管理官が出てくると、現地警察との軋轢が発生すると思うのですが、そのあたりについてお伺いしたい」
「もちろん、現在の案はまだ机上の空論で、省庁再編後に本格化するためのたたき台とでも思っていただけると助かる。
ただ、昨今の悪魔事件の発生はまだ許容範囲内とはいえ増加傾向に有り、いずれ現地だけで対処できる規模を越えることが予想される。
この案の狙いは、全国規模で頻発する悪魔事件において、増援を送る際のケースも想定しており、増援部隊と現地部隊の協力で事件解決をする事が望ましい」
互いに装飾しているが、要するに、
『地方の事に中央が出しゃばるんじゃねえ!』
『手が足りなくなるだろうが!
増援送って責任は取るから、指揮権よこしやがれ!!』
という官僚的な殴り合いである。
困ったことに、その手の指揮権の奪い合いを警察は前例としてちゃんと学んでいた。
連合赤軍あさま山荘事件における機動隊派遣である。
「新組織の戦力化については疑問を挟みませんが、対魔忍のクローン導入だけでなく、オムラ・インダストリーのオイランロイドまで導入する意図を教えていただけないでしょうか?」
対魔忍代表として陸自の服を着た甲河朧の質問に俺が答える。
いつもの海自の制服でなくスーツを着ている事で、立場の違いアピールも忘れない。
なお、叢雲は海自制服のままだが、ステンノはスーツ姿に変わっている。
「現在の人員で悪魔事件に対処できるのは100人ちょっと。
訓練と休息を考えたら、実数で動けるのは30人が良い所だろう。
4人でチームを組ませたら7チーム。
西日本は関西呪術協会が見てくれるが、この数だと東日本どころか首都圏でも手が足りない。
対悪魔に対してある程度の戦力が期待できる対魔忍のクローンは、この国の治安維持の切り札になるだろう。
同時に、そんな対魔忍の消耗は避けないといけない。
オムラ・インダストリーのオイランロイドは、対魔忍を守る盾として導入する」
この導入については、実戦までさせた俺の意向がものを言った。
クローンは疲弊したノマドからの購入ゆえ、ヴィクトリア・ザハロフ相手に300億円を支払い、割引込みで150人の対魔忍を確保して五車学園に送り込んで再教育をしているからこそ、こういったチーム編成までの話ができるのだ。
なお、オイランロイドは100体購入、ハイデッカーも1000体購入し既に納入が終わっている。
これらの費用を首都警設立の資金経由の裏金から出せるのも、この国が未だバブルに酔っているおかげだろう。
話はそれるが、首都警もハイデッカー2000体と装甲車両、機関銃装備でプロテクトギアをつけさせて戦力化を進めているのだから、この導入は技術のブレイクスルーとして記録されるだろう。
もちろん、自衛隊も万体規模で導入を決定したので、ヨロシサン製薬の株価はうなぎ登りで、いらんと断った200億の小切手が再度送られてくる始末。
「東京と京都を中心に近く人員の再編成を行う。
現状の危機的状況だが、最低限の対処ができるように手は打っているので安心して欲しい。
希望などがあるのならば、私か入即出技術統括審議官に言い給え。
以上だ」
室戸次官の声と共に皆が立ち上がる。
俺が立ち上がろうとした時に、意図的に低い声でマダム銀子がこんな事を言った。
「悪魔相手ならこちらも問題はありません。
ですが、悪魔に魂を売った人間や、悪魔側についた人間を相手にした場合、どうしたらいいのでしょうね?」
何を当たり前の事をという感じで室戸次官は笑って出てゆく。
後ろ姿からこんな声を残して。
「我々の正義はこの国の法が保証している。
それを信じられないならば、この国の神様でも信じてみるといい。
最近降臨したそうだから、聞けば答えてくれるかもしれんぞ」
と。
会議室を出た所で、一人の官僚が俺を待っていた。
次から次へと厄介事がやってくる気がしたが、これも偉くなった宿命だろう。
「超常現象研究所の木林と申します。
冬木市で見つけられたゲートの開放についてお話が……」
あさま山荘事件
警視庁の指揮監督に反抗する長野県警及び、警視庁内の反対勢力というすばらしい足の引っ張り合いは佐々淳行『連合赤軍「あさま山荘」事件』(文春文庫)に詳しく書かれている。
木林
『MMRマガジンミステリー調査班』。
こんな研究所があったらこの人達居るでしょうという事で。
「「「な……なんだってー!!」」」
他の候補者として、上田次郎も考えていた。