【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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ターミナル開発 その4

 海自の艦娘適性検査の間、先に冬木市に入った木林はできる事をという事で無人探査機での調査に取り掛かっていた。

 プロジェクトがプロジェクトなので、関東魔法協会の葛葉刀子を護衛に雇った上に、関東魔法協会にも協力を要請している。

 

「この手のは秘密裏に進めれば進めるほどリスクが高くなる。

 ある程度味方に取り込める勢力にはそれ相応の飴を与える方が話は進むさ」

 

という俺の方針で、時計塔と聖堂教会の誘いは断ることに。

 同じパターンで今回は別勢力とも手を組んだ。

 

「どうも。

 今回は我々との話を選んでいただきありがとうございます」

 

「是々非々なのをお忘れなきように。

 今回はアーカムより貴方がたを選択したのは、そういう背景という事ですので。

 『トライデント』のラリー・マーカスン大佐」

 

 巨大軍産複合体。トライデント。

 その一角である高隅財閥はこの日本が本拠である。

 木林は天才ではあるが、だからといって政治的根回しが上手い人間とはお世辞にも言えず、このプロジェクトは発足当初から各勢力に注目されていたのである。

 で、俺が責任者に就いたことで、一気に介入の圧力が増した。

 そんな中で、この国の中枢と繋がり、この国の発展に寄与し続けていた高隅財閥のネゴシエートに政府がかなう訳もなく。

 あのイージス戦艦やまとの諸経費をトライデントが支払い、代わりにあの船の調査許可を与えた縁で、俺にまで話を通してきたやり手がこのラリー・マーカスン大佐である。

 日米両軍に影響力を発揮できる軍産複合体だからこそ、敵に回せない。 

 

「まぁ、今のアーカムにはあなた方の話を受ける余裕があるかどうかわかりませんけどね」

 

 いけしゃーしゃーと言い放つラリー大佐だが、そのアーカムは現在戦力を中東の地に重点的に送り込んでいた。

 リバースバベルという悪魔との交信をする施設を巡る争いに巻き込まれたのである。

 

「それに、アーカムの場合、このプロジェクトの中止を申し込む可能性もありましたからね。

 ですが、我が国は我が国の国土で他勢力の非合法活動を許容しません。

 その点は重々ご留意ください」

 

 少し前に、アーカムの東京支社がテロ組織に襲撃される事件が起こり、それに前後して米軍基地で爆発事故が起こった。

 そのテロ組織の正体も俺は知っている。

 米軍特殊実験部隊『COSMOS』。

 そして、その部隊のスポンサーも実はトライデントだったりするので釘を刺すのを忘れない。

 

「まぁ、彼らの立場なら言いかねませんな。

 忠告は耳にとどめておきますが、それでも我々と手を組んでプロジェクトを進める理由は?」

 

 超古代文明の遺産を封印しあらゆる権力から守護することを目的としているアーカムから見れば、このターミナル開発は文字通りパンドラの箱だ。

 かといって、敵対したくはないのでアーカム側にはトライデント側の情報をこそっと提供していたりする。

 ミサイル誤射事件から始まった対米不信は、タンカージャック事件で高まるばかり。

 そんな中、米軍特殊部隊がテロ同然の活動を行ったなんて話を公にできる訳がなかった。

 メガコーポ同士の壮絶な争いに巻き込まれた形になるが、両方とも綺麗じゃない所まで知っているなんて言える訳もなく。

 

「あの人の熱意に押された。

 そういう事にしておいてください」

 

 話をそらすために、俺は米軍横須賀基地のモニターから冬木の封印されたゲートを見る。

 モニターの中の木林は八衢比売神と話をして、通信越しに俺の了解をもらってゲートの封印を解く。

 そして、無人探査機をゲートの中に入れた。

 無人探査機のモニターは、こちらのモニターにも繋がっていた。

 

「……これは、また独創的な世界ですな」

 

 ラリー大佐がめずらしく間の抜けた声をあげる。

 その場所は中央の平原を中心に5つの区画に分かれている。

 お菓子の国、大海原、廃墟都市、雪原、そして水晶の城。

 何よりもそれらの世界が画像では灰色になっており、まるで廃墟の遊園地とも言わんばかりのその景色を俺は知っていた。

 

 FGOイリヤコラボ。魔法少女たちの国。

 

 それの意味を俺は嫌でも悟らざるを得ない。

 多分古今東西の魔法少女はあの場所で召喚可能となるだろう。

 

「……失礼。

 私だ……」

 

 ラリー大佐が離れて報告を受ける。

 おそらく、リバースバベルの話が片付いたのだろう。

 そうなると次はルーマニアのライカンスロープか。

 あっこも、この闇鍋世界でどう変わっているのやら。

 

「失礼しました。

 調査の方はこのまま続けるのでしたら、費用は我々トライデントが提供しましょう」

 

「その分、このゲートの先にある世界の調査資料の提供とターミナルシステムの開発データの提供ですよね?

 もちろん、忘れていませんとも」

 

 

 

 横須賀米軍基地から帰る途中、ついてきていたステンノが何となく呟く。

 

「けど良かったわね。

 ゲートの向こうがあれで」

 

「たしかにな。

 あれだったら、笑わないでいるのが難しいしな」

 

「あれって何よ?」

 

 同じくついてきていた叢雲が尋ねたので、俺とステンノはそのアレを声に出した。

 

「「チェイテピラミッド姫路城」」

 

「……?」

 

 口に出して思い知るが、あれがある可能性もあるのか。

 その時俺とステンノはそれを指さして笑らないでいられるとは思えなかった。




『スプリガン』5巻--混乱の塔--から--獣人伝承--に移るあたりの話
 メガテンベース世界で、リバースバベルは超強力な武器に成り得たのだが、やる夫達が日本に留まっていたからついに原作を逸れること無く終わった。
 なお、デグ様とペンウッド卿はペルシャ湾まで出張って支援をしていた模様。


FGOイリヤコラボ
 やって、これで魔法少女を召喚できると喜んだ私。
 何しろ、『カードキャプターさくら』のコミックが1996年、『リリカルなのは』が2004年、『まどか☆マギカ』が2011年。


チェイテピラミッド姫路城
 人類史に燦然と光り輝く特異点。
 何度も出てきて恥ずかしくないんですか?

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