【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

92 / 226
基本の一人称は叢雲。
草加少佐の叢雲と対比させる場合や正規呼称では叢雲改二。


ターミナル開発 その5

「……出撃するわ!」

 

 ターミナル開発で叢雲改二と浜風を冬木の方に送る為に、横須賀の戦力強化の為に来てもらった大和と叢雲。

 叢雲の方は通信などの近代化改修に入ってもらい、大和の確認のために日帰りの訓練航海を行う。

 参加艦は以下の通り。

 

第72護衛隊

 司令官 藤堂進海将補

  

『大和』 艦長 大和撫子一佐相当官

     副長補佐 東郷守一佐

 

 

第70護衛隊

 司令官 入即出やる夫海将補相当官

   副官 恵美ステンノ三佐相当官

   主席幕僚 美野原信弘一佐   

 

  『叢雲改二』 艦長 東雲叢雲二佐相当官

          副長補佐  新島義則三佐

 

  『浜風』 艦長 マシュ・キリエライト二佐相当官

        副長補佐 フランシス・ドレイク三佐相当官

 

 

 要するに艦娘のみのお出かけだが、横須賀を守る大和がどんなものかのテストという訳だ。

 なお、半月ほどで旧システム積み替えが終わる『うらかぜ』の訓練は『みらい』が行う予定である。

 

「ちょっと!

 速いわよ!!」

 

「先輩、先に行きます」

 

 浦賀水道を抜けて、試しとばかりに全力疾走をする大和の速力は32.5ノット。

 たちかぜ型の叢雲は27ノットしか出ないので追いつけないのだ。

 なお、浜風は35ノットで昔の吹雪型船体だと38ノットまで出せる。

 かくして、浜風、大和、叢雲の隊列になってしまい、戦艦の先導は駆逐艦の仕事と張り切っていた叢雲はまさかの最後尾でふてくされる。

 

「まったく、ボイラーだけ昔のにすればよかったかしら……」

 

 装備更新で武器などは変更できたから、ボイラーもできなくはないだろう。

 とはいえ、扱う海自隊員はこのボイラーの方が馴染むのでそのままにしていたのだ。

 

「まぁ、古いやつにしてもいいんじゃないか?

 どうせ、ほとんどがハイデッカーの隊員になるからな」

 

 大和の乗員は定員で1500人。

 俺たちの船ですらハイデッカーやオイランロイドで運用している今の海自にそれだけの定員を確保できる訳もなく。

 海軍戦術システム更新で動けない船から隊員をかき集めて今回の航海は運用されているが、その乗員の殆どはハイデッカーやオイランロイドになる予定である。

 彼らは洗脳装置で教育されて出荷されるから、旧軍関係者からその機関技術を習得して、それを再度洗脳装置で再教育すればいい。

 

「一応無理をすれば300人程度で動かせますし、艦娘ですから、提督一人でも十分なのですが」

 

という大和の意見はその主である藤堂進海将補に却下される。

 

「それはダメコン要員がいなくなる事を意味している。

 継戦能力を考えれば、定数の確保は絶対条件だ。

 現状、関東はこの船と『みらい』で守らねばならないのだからね」

 

 費用はデータ提供の取引で『トライデント』が持ってくれるのだからと遠慮なく人員を定数一杯まで用意させるあたり、この人もただの軍人ではないらしい。

 この人のえげつない所は、費用をトライデントが持つからと、うちとおなじく対魔忍クローンも大量発注した所にある。

 

「中が迷宮みたいな大和の中で、すばやく動ける連中はダメコン時の切り札になる。

 どうせトライデントが払う金だ。

 派手に使おうじゃないか」

 

 そうやって用意させた対魔忍クローンは100体でおよそ300億円なり。

 F-15J三機分と言えば安く聞こえるから不思議である。

 彼女たちも洗脳装置にて再教育を行って下士官として大和に配備される予定である。

 

「訓練海域に到達しました。

 これより訓練を開始する。

 仮想敵は、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦相当の敵艦1隻、スプルーアンス級駆逐艦相当の敵駆逐艦1隻、ロサンゼルス級原子力潜水艦相当の敵潜水艦1隻だ。

 敵艦隊は東京に向けてミサイルを撃つと考えられている。

 敵ミサイルの阻止が我が艦隊の目標である」

 

 タンカージャック事件は良くも悪くも自衛隊に衝撃を与える事件となった。

 対米不信の加速もそうだが、海軍戦術システムがクラッキングされて味方からミサイルが飛んできた事で、最悪のケースとして同士討ちまで訓練に入れなければいけなくなったからである。

 今回の訓練は、大和を使った敵ミサイルの東京発射の阻止。

 敵艦隊の撃破は別の部隊がするという事で、俺たちの叢雲と浜風が抜けても大丈夫かというテストでもある。

 

「敵潜水艦を発見したわ!」

 

 敵洋上艦はレーダーで確認済み。

 向こうもこちらを発見している。

 そんな中でまずは叢雲が敵の潜水艦を発見する。

 

「敵艦ミサイル発射!

 ミサイル数は100発以上!

 こちらに向かってきます!!」

 

「敵潜水艦の魚雷発射管開きました!

 魚雷発射!!」

 

「全兵装自由!

 一発たりとも当てるなよ!!」

 

 もちろん、訓練だから本当に撃っているわけではない。

 それに合わせた機動と発射訓練をおこなっているのだ。

 その巨体と強力な武装で、大和は敵のミサイルと魚雷の迎撃にハマる。

 いや。

 ハマりすぎていた。

 

「戦術コンピューターにウイルス反応!」

「戦術コンピューターを落とせ!

 各艦手動で敵ミサイルと魚雷を迎撃せよ!」

 

 藤堂海将補から訓練前に言われた、

 

「訓練だからこそ最悪の状況を体験させておきたい」

 

という最悪の状況で叢雲、浜風、大和は個々ではできうる限り奮闘していた。

 そして、こちらに向かっていたミサイルと魚雷は全弾撃破するという奮闘は讃えられていいだろう。

 

「敵潜水艦がミサイルを発射!

 トマホークです!!」

 

 とはいえ、洋上から発射された12発のトマホークを撃破できるかどうかは別問題である。

 結果から言えば、このトマホーク撃破に失敗する事になった。

 

 

 

「今回の訓練では貴重な戦訓を得られた」

 

 その日の夜、横須賀基地に帰港後に忘れないようにという事で始められた反省会だが、藤堂海将補の挨拶から始まり、大和が悔し顔で意見を言う。

 

「状況が少しきつかったのではないでしょうか?」

 

 最後のトマホーク迎撃が失敗したのは、海軍戦術システムがダウンした後は艦娘大和が全部をコントロールしたために、タスク処理のオーバーフローが発生した為だ。

 ミサイルと魚雷の迎撃に注力した結果、次に出たトマホークの迎撃が追いつかなかった。

 艦娘の構造的欠陥でもある。

 

「今回の想定は、先日発生した八丈島沖のタンカージャック事件で起こり得た状況でしかない。

 現代の海戦はミサイルが主流だから、その制御を奪ってしまって、全部発射というのはありえる状況なんだ。

 最初から、目標として東京に向けて撃たれるだろうミサイルの阻止は明言していた。

 だから、そのリソースを残さなかった時点でこちらの負けだよ」

 

「入即出海将補相当官。

 貴方が指揮を採ったならば、あのケースをどう対処しましたか?」

 

 藤堂海将補が俺に尋ね、俺は頭をかいて苦笑する。

 こういう時、きちんと教育を受けていなかった弊害が出る。

 

「反省になりますが、叢雲改二は対潜装備は充実していた。

 ミサイルと魚雷の迎撃をしながら敵潜水艦への攻撃をしていれば、少なくともあのタイミンクでトマホークは撃たれなかったのではと」

 

 それをあの時指示できなかった俺の反省でもある。

 なお、訓練後に美野原主席幕僚に教えてもらった正解だったりする。

 

「艦娘に頼るのはいいですが、彼女たちも限界がある。

 我々人間は彼女たちの負担を軽減する為に乗っているはずです。

 それをこれから議論してゆきましょう。

 今回は現状の材料で考えうる最悪の状況ではありますが、これから先、その上を行く状況が発生する可能性が高いと思っています」

 

「その上を行く状況とは?」

 

 大和艦長補佐である東郷一佐が怪訝そうな顔で尋ねたので、俺はそれを口にした。

 そもそも、俺達が横須賀を離れる目的が、その状況が起こる可能性を示唆しているのだから。

 

「何処からともなく湧いてきた敵兵による艦内襲撃及び制圧ですよ」




艦内敵兵襲撃
 『無責任艦長タイラー』。
 転送装置を使っての襲撃。
 笑いガスで無力化する手法で馬鹿話にしたが、毒ガスなどを使う可能性は原作でも示唆されていた。
 ターミナルシステムの実用化はこの戦法が実現可能になる可能性を秘めている。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。