【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
そんなこんなで、おれ達が冬木市にやってきたのは、演習から半月後だった。
今回は叢雲とマシュの船体を解除して、新幹線と在来線を乗り継いでの冬木入りである。
日本の鉄道網は実に優秀である。
その日は隣の舞鶴基地にて宿泊し、翌日から調査に入る。
「お待ちしておりました」
木林と握手して、現状で判明している事の報告を受ける。
ゲートそのものは安定しており、今までの調査で何か出てくるというものは無かったという事。
時間もこの世界と向こうの世界で連動しており、ウラシマ効果みたいなのは今の所発生していないという事。
移動は問題なく行われ、機械、ハイデッカー、オイランロイド、木林自身も移動してみた事。
真ん中の平原から離れると謎の生命体の襲撃があり、そこから先の調査は中々進んでいないという事。
その襲ってくる敵の中には人型の敵も居たという事。
「シャドウサーヴァントだな」
撮影された人型の敵の写真を見て俺は断言する。
イベントも終わった灰色の世界でただ来訪者を待つばかりの彼らに少しばかり憐憫の情が湧くが、ひとまずおいておいて俺は木林にターミナル開発について尋ねる。
「ターミナルシステムは完成できそうかい?」
「渡された資料を見ていますが、メガロセンブリアのゲートはオーパーツで維持が精一杯。
システムの解析まで手が回らないし、変に弄ってゲートが使えなくなると大変なことになるので触らぬ神にというやつになっていますな。
また、魔法関係者達が住む世界はどうも我々の世界と空間軸が少しずれているという事がわかりつつあります」
「空間軸が少しずれている?」
俺の質問に木林は両手を合わせてそのまま手を離す。
「合わせ鏡の世界はご存知ですか?」
「あの果ての先に、別世界があるかもってあれかい?」
「ええ。
魔法世界というのは、そのあわせ鏡の一枚先か二枚先の世界と考えていただけると」
ほんの少しの差異しかないパラレルワールド。
それゆえに、世界の抑止力は修正のみでそれを許容する訳だ。
まぁ、この世界が闇鍋というとても許容範囲が広い世界であると知っているのは俺だけなのだが。
「そちら側が異界として言われているものも多分そういうものであると私は考えています」
なるほど。
ある程度の解析は進んでいるみたいだ。
「コフィンシステムについては?」
「難航しています」
木林はあっさりと認める。
まぁ、簡単にできるのなら苦労はしない訳で。
「まず、霊子の存在と定義に難航しています。
量子力学で応用できるかをトライデントの研究者と話している所です」
霊子の存在を量子力学で説明しようとしているあたり、科学と魔法が交差しようとしているのだろう。
そこからスタートしているので、その歩みは遅いが同時に着実にという所か。
「じゃあ、ひとまずはこのゲート先をちょっと大きな異界として定義して管理しようか」
「ちょっとした市ぐらいの大きさがありますが、異界というのはこんなものなので?」
「それぞ千差万別だよ。
小さなのだと部屋ぐらいから、大きなのだと星一つまである」
話しながら、俺達はそのゲートの所までやってくる。
周囲に色々な機械が取り付けられているが、ゲートに何か変化らしいものはない。
「お待ちしておりした。主様」
実に神々しくエロい八衢比売神が俺たちに頭を下げる。
主様?
振り向くと、めずらしく真面目モードのアマテラス様が。
「この先に、私に助けを求めている声が聞こえるのです」
こういう時のアマテラス様を止められるわけもなく、巫女装束の皇北都と鬼咒嵐と天ヶ崎千草の姿がその神々しさに拍車をかける。
「まぁ、行ってみれば分かるさ」
そして、俺達はゲートを潜った。
その先の世界は色があった。
「何だと!?
世界に……色がっ!?」
驚愕する木林をほおって置いて水晶宮に進もうとするアマテラス様御一行。
さすがに歩くのは効率が悪いので、マシュ風こと浜風を穏やかな海に実体化させ、更に叢雲を実体化させると、そこから切り離されて草地に進んできたのはロリンチちゃんが運転する虚数潜航艇シャドウ・ボーダー。
こういう時に探索用の車が使えるのは実にありがたい。
「マスターくん。
何か飛んできているけど?」
「マシュ。
モーさん。
クー・フーリンの兄貴。
迎撃準備」
俺の指示で三騎が外に出て迎撃をしようとしてクー・フーリンから声が届く。
「ちょっと待った。
マスター。
あれ、あんたの所のちびっこじゃないのかい?」
「確認する。
俺が襲われるまで手を出すなよ」
ハッチを開けて外に出る。
その目に飛び込んできたのは、唇だった。
「~~~♥
はーっ♥魔力供給完了♥
ごちそうさまでした♥
マ・ス・ター♥」
「やる夫。
そのチビっ子。誰?」
目の据わった叢雲の台詞にかちんと来たらしい褐色の小悪魔は遠慮なく宣戦布告する。
「あら?
分からないのかしら?
おばさん」
「酸素魚雷をブチ込むわよ!!」
「落ち着け。叢雲。
俺がおっぱい星人というのは知っているだろうが!」
「あらあら。
じゃあ、私との愛の日々は嘘だったというの?」
面白半分でステンノが乗ってしまい、見事に大炎上。
あのアマテラス様が仲裁するという珍しいシーンによってこの場が収まるまで、叢雲とクロエ・フォン・アインツベルンの罵り合いは続くことになった。
「絶対にマスターが来ると信じていたわ。
お願い。
美遊を助けてあげて」
水晶宮に捕らわれていたのは美遊・エーデルフェルトだった。
いや、守られていたというべきか。
彼女は母親である朔月陽代子と共に水晶の中で静かに眠っている。
「こ、これは、生きているのですか!?」
木林が驚くがそりゃそうだろう。
もっとも俺はそれどころではなかったのだが。
アマテラス様召喚という形で冬木の時空を歪めた自覚はあるが、その結果原作で起こった巨大災害からこの母娘を逃すことに成功したという訳だ。
彼女は生まれながらにして完成された聖杯。
別の言い方をするならば、人の願いを無差別に叶える神の稚児。
その神であるアマテラス様が呼ばれたのも当然なのだろう。
「生きているし、助けるんですよ」
それは、この闇鍋の観測者である俺の義務だろう。
『FGO』のクロエ、『プリズマ・イリヤ』の美遊、『Fate/stay night』のイリヤ、世界軸が微妙に違うことになった彼女たちが笑えるかは、観測者である俺の手にかかっているからだ。
そこで気づく。
この世界に、アイリスフィールもいるかも知れないと。
クロエ・フォン・アインツベルン
FGOを始めたばかりのフレンドさんで100にした彼女の鶴翼三連にどれだけ助けられたか。
うちのクロエは聖杯をあげてレベル90である。
なお、やる夫スレでは、彼女はアチャ子に進化する事が多い。
アチャ子の元ネタが元ネタだからなぁ……
美遊・エーデルフェルト
『プリズマ・イリヤ』。
彼女の設定が面白いので登場。
なお、爆死した。