鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
あの小説では、登場人物たちが次々と死んで、最終的に誰もいなくなりましたが、ここではどうなるか…?
中央暦1641年9月17日、第三文明圏リーム王国 王都ヒルキガ。
王城内の各部屋のうち、外務部に割り当てられた部屋の中で、総務を担当する王都諸侯の1人キルタナは愕然としていた。その目はハイライトを失ったまま丸く見開かれ、額には冷や汗が滝のように流れ落ちている。
「なんて……ことだ……」
力無く呟くキルタナ。その周囲では、職員や幹部たちも騒然となっていた。
何故このようなことになっているのかというと、原因はさっきから連続して受診した“魔信の内容”である。魔信を書き取った紙のうち、キルタナが最初に読んだものにはこう書かれていたのだ。
『発:トーパ王国総務省外務部及びネーツ公国総務省外務部
宛:リーム王国政府
トーパ王国及びネーツ公国は、ロデニウス連合王国主宰の大東洋共栄圏に参加する国家として、今回の貴国リーム王国の行為に対して相応の対処を取る。ロデニウス連合王国が貴国リーム王国に宣戦布告する事態になれば、両国は直ちに大恩あるロデニウス連合王国に味方し、“軍の派遣を含む包括的な軍事支援”をロデニウス連合王国に対して行う用意をしている。
貴国リーム王国の賢明な判断に期待する』
ド
続いて、フェン王国外務部とアルタラス王国外務省からも、同様の内容の魔信が届けられた。どちらもトーパ王国と同じくらい、ロデニウス連合王国に大恩のある国である。フェン王国は、軍祭に襲来したパーパルディア皇国国家監察軍をロデニウス連合王国に撃退して貰った上に、パーパルディア皇国の侵攻による
そしてこれらの国を皮切りに、大東洋共栄圏に参加している各国が一斉に同様の魔信を送ってきたのだ。パンドーラ大魔法公国、マール王国、アワン王国、シオス王国……なんと新生パールネウス共和国ですら、「必要とあらば共和国国防軍を動かすと共に、ロデニウス連合王国に対して
要するに何が起きたのかというと、大東洋共栄圏に参加している“全ての国が”
「これでは……これでは、我が国は“あの時のパーパルディア”のようになってしまう……!」
青ざめた顔でそう呟くキルタナ。
そう。こうした事態を、リーム王国は一度体験していた。パーパルディア皇国と戦った時である。あの時パーパルディア皇国は、ロデニウス連合王国やリーム王国を含めた“第三文明圏内外の全ての国家”から宣戦布告ないし何らかの敵対行動を取られていたのだ。そして、その数の暴力と強力なロデニウス連合王国軍による怒涛の侵攻を食い止められず、滅ぼされた。
今リーム王国が置かれているのは、あの時のパーパルディア皇国と
しかも、リーム王国の国力は以前よりは増したとはいえ、“全盛期のパーパルディア皇国の国力”に比べれば、その足元にも及んでいない。全盛期のパーパルディア皇国ですら、ロデニウス連合王国と大東洋共栄圏に勝てなかったのだから、それより国力の劣るリーム王国が敵対すればどうなるかは、“考えるまでもない”。
「い、いかん! 陛下に、直ぐご報告申し上げなければ!」
山を成していたメモの束を抱え、キルタナは急いで部屋を飛び出していった。
その頃、王城の王下直轄軍総司令部では、現リーム国王バンクスが「作戦続行」の指示を出すか撤回するか、未だ決めかねていた。
自らの野望である「フィルアデス大陸の統一」を果たしたいという気持ちがある。しかしその一方で、ロデニウス連合王国軍の“強さ”も知っている。そして、今のリーム王国軍ではロデニウス連合王国軍には到底勝てない、ということも。
リバル自身もまた、悩んでいた。ロデニウス連合王国軍の強さは、対パーパルディア戦線に出征した兵士たちや将軍たちから聞いて知っている。
陸上にあっては、彼らは“全身を鎧で固めた怪物”を使役しており、頭部の角から大量の光弾を撃ち出して相手を薙ぎ払う。しかも、よく聞くと其れはどうやら銃であるらしく、ダダダダダダダという奇怪な連続音を立てて銃弾を1秒間に10発ほどバラ撒くという、途轍もない性能を有しているそうだ。しかも、我々が開発した金属盾……パーパルディアのマスケット銃を防ぐ性能があるあの盾も、
(実はリバルはまだ知らないが、この時ロデニウス連合王国軍が投入したのは、あくまで「
空軍にしても、“飛行機械を実用化している”時点で、とんでもない技術力である。飛行機械といえば、運用しているのはムー国と神聖ミリシアル帝国だけであり、この二国は世界五列強のツートップを占める強国だ。そんな代物を運用できるとなると、全く侮れない。しかもこの飛行機械は、ワイバーンオーバーロードを……「最強のワイバーン」と言われたパーパルディア皇国の力作を、
海軍は……これに関しては、直接目撃した兵が少ないので、どれほどのものなのかはっきりとは分からない。だが、第三文明圏最強を誇ったパーパルディア皇国の戦列艦隊を撃滅した、という事実だけでも強さのほどが窺える。リーム海軍の戦列艦隊では、まず間違いなく勝てないだろう。
まとめると、
だが……数の差で押し切ればどうなるだろうか?
その時、リバルの心に一筋の希望が芽生えた。
ロデニウス連合王国軍は確かに強敵だ。だがこちらが数で優越していれば、勝機はあるだろう。
今、ドーリア共同体との国境に集結しているリーム王下直轄陸軍の数は、歩兵・騎兵合わせて35,000名。これ以外に、後方では侵攻部隊の本隊として30万もの兵力がスタンバイしつつある。これだけの数があれば、大抵の軍相手には戦える。
もし仮に、ロデニウス連合王国軍の陸上兵力がデュロにいたとしても、その数が5,000にも満たないのであれば、まずこの数で押し潰せるだろう。その後は防御戦闘に徹して、相手を海岸線で食い止めながら機を窺って停戦に持ち込めれば、あるいは何とかなるかもしれない。
そう思ったリバルがバンクスに意見具申しようとした、その時だった。
「陛下! 一大事にございます!」
ちょうど良いところで、大量の書類を抱えたキルタナが飛び込んできたのだ。「ど、どうした?」と尋ねるバンクス。
「は! 今しがた外務部に大量の魔信が届きました! それがこちらです、ご覧ください」
キルタナの手から1枚を受け取り、目を通したバンクスの顔色が急激に悪くなっていく。
疑問に思ったリバルは、キルタナから1枚を受け取り…そこに書かれた文面に絶句した。それはアルタラス王国からの“宣戦布告状”にも等しい一文だったからだ。「ロデニウス連合王国に対して
「こ、これは……!」
更に何枚かの魔信を見てみたが、どれも“送り主が異なる”だけで、内容はほぼ同一だったのだ。「リーム王国が侵略行為を行った場合、ロデニウス連合王国に対して必要な支援を行う」と、書かれていたのである。
(何故だ……。何故、このようなことが……いや、考えるまでも無いな。“大東洋共栄圏の筋”だ)
愕然としたリバルの指の間から、魔信の文書が滑り落ちて音も無く床に落下した。
そう……これこそが、リンスイが打った「手」だったのだ。
堺から「海賊に襲われた船の積み荷」についての照会があった後、急な問い合わせを不審に思っていたリンスイは、ヤヴィンに連絡を取って全てを知った。そして、堺たち第13艦隊及び第13軍団が動きだす
幸いにして、リーム王国は大東洋共栄圏に参加して
その仕事をする傍ら、リンスイはヤヴィン率いる軍部と共同でリーム王国に送り付ける声明文を考え、各国によるリームへの外交的攻勢が始まる
「陛下、これは“王国の命運に関わる一大事”ですぞ。大東洋共栄圏参加各国にまで手を回された以上、もう打つ手はありません。大東洋共栄圏とロデニウス連合王国に正面から喧嘩を売ったパーパルディアがどうなったか、陛下もご存知の筈です。
すぐにも艦隊を引き返させ、ドーリア共同体との国境に進出させた部隊にも撤退をお命じください! 今なら、まだ間に合います!」
よほど焦っているせいだろう、キルタナは早口でまくし立てた。
そしてリバル自身も、今度こそ部隊を退くべきだ、と痛感した。こうなった以上、ロデニウス連合王国と敵対するのは、はっきり言って「無謀」以外の何物でもない。大東洋共栄圏にまで手を回した今、ロデニウス連合王国は
更に、ロデニウス連合王国
リーム王国という国家を残す道はただ一つ。ロデニウス連合王国からの勧告に従って、軍を撤退させるより他にない。
「陛下、私からも慎んで申し上げます。直ちに兵を退くよう、お命じになってくださいませ。
こうなった以上、リーム王国という国を残す道は一つしかありませぬ。即ち兵を撤退させ、ロデニウス連合王国の勧告に従うのです。今彼らの勧告に従えば、
私とて断腸の思いではありますが、ここは一旦兵を退きましょう。そして、国力を増し軍事力を増強して、いつの日か来る“捲土重来の時”に備えるのがよろしいかと存じます。陛下、ご決断を」
自分でも驚くほど落ち着いた口調で、リバルはバンクスに意見を述べた。バンクスは俯いたまま何も言わない。
ややあって顔を上げたバンクスは、苦渋を顔全体にまで浮かべていた。そして、震え声を絞り出す。
「………分かった」
そしてバンクスは
「全軍撤退……作戦は中止だ。繰り返す、まず陸軍の全部隊に撤退を命令せよ。それから海軍の艦隊にも、作戦を中止してヒキルガに帰投せよ、と伝えろ」
「は……ははっ! 承知致しました!」
軍幹部たちが直ぐに動き始める。
「キルタナよ、外務部を通じてロデニウスに魔信を送れ。貴国の意見を容れ、直ちに撤兵する、と!」
「はっ!」
命令を受けたキルタナは、すぐさま飛び出していった。
「陛下……?」
英断を下したバンクスに声を掛けようとして……リバルは気付いた。
……バンクスの唇から漏れる、ほとんど聞こえないような小さな声に。
「今回は負けた……。だが忘れるなよ、ロデニウス連合王国よ。私は決して断念した訳ではない……次に我が国が行動する時が、貴様らの最期だ…!」
その後、バンクス直々の命令を伝えられたリーム王国陸軍は、順次撤収を開始した。デュロに迫りつつあった艦隊も全て反転、ヒキルガへと引き返していった。
リーム王国軍が“完全に撤収した”のを見届けると、デュロに展開していたロデニウス連合王国・第13軍団及び第13艦隊、そして海兵隊の訓練部隊も、順次本土への引き上げにかかった。
時に、中央暦1641年9月17日。デュロに再び戦火が燃え上がることは、ついに無かったのである。
「やれやれ……今回は『連合艦隊の大散歩』で終わっちまったなぁ。ま、平和に済んだから良いんだけどさ」
その4日後、タウイタウイ泊地・第13艦隊司令部では、堺が今回の作戦を振り返っていた。
「しょうがないんじゃないの、提督。戦わないで済むんなら、それに越したことは無いしね」
その堺に、本日の秘書艦担当である"
堺の言う「連合艦隊の大散歩」とは、「Z1号作戦」中に旧日本海軍がやらかした事件だ。太平洋戦争の最中、アメリカ海軍空母機動部隊出撃の予兆あり、ということでこれを迎撃すべく、旗艦「
「それはそうだ。だが……俺としては、やはり
「それなら提督、去年の5月末〜6月にかけての大規模作戦の時の方が燃料消費が多いじゃない?」
「あれは、『パーパルディアとの全面戦争』という“大義名分”があったからだ。パーパルディアの戦列艦や竜母の数は多いし、性能的にも決して侮れない。それに何より、向こうが“殲滅戦”を宣言していたから、手を抜いたらこっちが滅ぼされる。だから、あれだけの戦力を動員し、燃料消費にも目を瞑る必要があった。
だが、今回はどうだ? 結果論だが、言うなれば“ただの威嚇”じゃねえか。その威嚇のため
まあ、これは仕方がないという面もあるだろう。
「平和に済んだし、結果オーライよ。あと提督、燃料気にし過ぎじゃない?」
「当たり前だろ! 燃料が無かったら、俺たちは立ち枯れになっちまうんだから。大規模作戦中に燃料切れをやらかしたあの時の恐怖、忘れようったって忘れられるもんか!」
まだ堺が新米提督だった時分……つまり、彼とタウイタウイ泊地がまだ地球にあった頃のことである。西暦2197年夏、日本はいい加減にソロモン諸島・ガダルカナル島方面……通称「
新たな敵として水上機母艦の姫クラスが発見されたり、「防空駆逐艦」という名の
その作戦の最中、堺率いるタウイタウイ泊地艦隊は後方支援を行っていたのだが、堺の想定よりも作戦規模が大きく期間も長かったために、タウイタウイ泊地において“燃料切れ”が発生。艦隊が動けなくなってしまったことがあったのだ。しかも、時を見計らったかのように西方のカレー洋方面から、深海棲艦の大規模部隊が攻め込んできていたため、タウイタウイ泊地はかなり危険な状態に立たされたのだ。燃料に余裕のあったブルネイ基地の協力を得て何とかなったものの、あれが無かったらどうなっていたやら分からない。
この苦い経験から、堺は特に“燃料の残り”に関しては「過敏」とすら言えるほど気にするようになってしまったのだ。また、旧日本海軍も“最終的に燃料が尽きて戦えなくなっている”ことから、彼は先人の失敗を繰り返すまい、としていた。それらの思考が、さっきの彼の発言に表れている。
「ま、本件に関しては後は外務省に任せるしか無いな」
「そうね」
堺と"伊勢"の言う通り、後は『外務省案件』だ。
既に、ロデニウス外務省から派遣された外交官が、リーム王国外務部と接触し、ヒキルガに於いて外交交渉に入っている、というニュースがタウイタウイにも入ってきている。一先ずは、交渉の成り行きを見守る以外にすることがない。意見を求められれば、アドバイザーとして一仕事することになるだろうが、本件に関してはそれくらいしかできることがない。
「事が平穏に済めば良いがな……。
あと、あんな行動に出た以上、リーム王国は要注意国家ではなく潜在的敵対国家だな。アルタラスに展開している陸軍第15戦略航空爆撃団の任務に、新たに『フィルアデス大陸南部・リーム王国領の監視』を追加するようヤヴィン元帥に意見具申しとくか。それと、
「それと提督、撃沈した“海賊船”の乗組員はどうするの? 何人も捕虜にしてるんでしょ?」
「そっちも外務省案件だなァ……。今後の交渉次第ってところか」
この案件が
その頃……タウイタウイ泊地・工廠地下室。
タウイタウイ泊地において、最も警戒が厳重なのが工廠だ。ここは、第13艦隊に所属する艦娘たちの艤装の建造、修理、近代化改修、改装等を請け負う他に、新装備の開発、新兵器の研究、その他
そんな警戒厳重なタウイ工廠、その地下室は
その地下室、赤色灯の頼り無げな光源の他はほとんど暗闇に閉ざされたこの世界に、“一筋の白い光”が
その白い光は、1人の女性が装着したヘッドランプから放たれていた。ランプの光に照らし出された女性の髪は、紫色。そして、その下に
この女性こそ、タウイタウイ泊地に1人しかいない「移動工廠艦」の艦娘"釧路"である。
「ええと、これの読み込み口、どこにあったかな……?」
呟きながら、彼女は巨大な機械の中に半ば潜り込むようにして探し物をしている。その手には、フロッピーディスクのような形のデータ記憶媒体があった。
いや……彼女が半ば潜り込んでいるその“巨大な物”は、一瞬であれば機械と見間違えたかもしれない。だが、人間が装着できるように大型のアーム状の機構を備え、そして上部に二基の巨大な三連装砲を搭載した姿は、それが明らかに「艤装」の一種であることを、無言の裡に物語っていた。
「あったあった」
"釧路"は目当ての読み込み口を見付け、そこに媒体の向きを確かめてから差し込んだ。艤装には何の変化も起きない。しかし、およそ10秒の後に彼女は満面の笑みで媒体を引き抜いた。
「よーし、インストール完了! ……この艤装、
何やらマッドエンジニアめいたことを呟いて、"釧路"はその艤装の一角に目をやった。船でいうなら船首部分に当たるであろうその一角には、艤装の内側に巨大な“ボルト”のようなものが見え隠れしている。そのボルトは船首部分に開けられた巨大な穴と連結されており、何に使うか分からないながらも、不気味な印象を醸し出していた。
「これ作動させたら、多分バレるわよね……。シミュレーションで我慢するしかないかな……ま、良いか。また考えるとしましょう」
それで全ての用事が済んだらしく、鼻歌を歌いながら艤装を部屋に残して"釧路"は退室する。だが退室する前に、生体感知センサーその他の観測機器を用いて、室内に誰もいないことを確認するのを忘れなかった。
「また点検に来ないとね……いつ出すことになっても良いように。まあ、
呟く"釧路"の前で閉まった自動扉には、巨大な錨のマークが描かれていた。
地上へと戻り、自身の執務室に戻ってきた"釧路"。彼女の仕事は多い。
何しろ、ロデニウス連合王国の軍事技術や科学技術、更には魔法・魔導技術の一部ですら彼女が担当しているのだ。やらなければならない仕事は増えこそすれ、減るということは滅多に無い。
まず彼女が最優先で取り組んでいるのが、“現代戦対応装備の開発”であった。具体的には、89式5.56㎜自動小銃やAK-47、最低でもStG44のような自動小銃の開発、ジェットエンジンを装備した超音速戦闘機(一部ステルス機含む)の計画、フェーズドアレイレーダーやイージスシステムといった強力なレーダー管制系の構築、先日発見されたV-1飛行爆弾とV-2弾道ロケットの性能改良(特に
今しも彼女は、机に向かって“新型の戦闘機の設計図”を描いている。そこには「F-104 スターファイター(仮称)」と銘打たれていた。
その隣には、別の設計図が置かれている。ほぼ完成した状態であるその設計図、そこには砲塔と無限軌道を搭載した“大型の装甲戦闘車輌”が描かれていた。明らかに「戦車」である。その特徴は、斜めに倒された装甲……つまり傾斜装甲だった。足回りはT-34シリーズのような大型の単列転輪によって支えられており、巨大かつ重厚な車体の接地圧を減らせるよう設計されている。エンジンは伝統のガソリンエンジン……ではなく、なんとディーゼルエンジンだ。そして……この新型戦車が装備している主砲は、あの「ティーガーI」の56口径88㎜砲すら上回る威力を誇る代物だった。
設計図の上部に書かれた名称、そしてその下に書かれた性能要綱は、以下の通りである。
計画名称: 45式戦車「ケーニヒスティーガー改」
分類: 陸軍第4世代
全長: 12.2メートル(71口径88㎜砲搭載時)又は13.1メートル(68口径105㎜砲搭載時)
車体長: 8.8メートル
全幅: 5.0メートル
全高: 3.3メートル
重量: 50トン
最高速度: 整地50㎞/h、不整地27㎞/h
主砲: 初期砲として71口径88㎜ライフル砲を想定。尚今後の情勢を鑑み、ターレットリングを広めに取って68口径105㎜砲を搭載できるようにしておくこと。68口径105㎜砲を滑腔砲とするかは要検討。
弾種: ライフル砲用はHE弾及びAT弾。滑腔砲用にHE弾及びAPFSDS弾、最低でもAPDS弾を用意する。
装甲厚: 砲塔前面150㎜傾斜30度、砲塔側面・後面最大90㎜傾斜20度、車体前面130㎜傾斜50度、車体側面・後面90㎜傾斜30度
装甲板: RHAを基本とし、チタン合金若しくはセラミック及び合成ゴムによる複合装甲を予定。開発が間に合えば劣化ウラン装甲の使用も検討する。少なくとも地球に於けるⅥ号戦車B型「ティーガーⅡ」と同程度の防御力を目指す。最終的には、ERAも搭載できるようにすること。また、側面から履帯を狙われないよう、RHAによるサイドスカートを用意する。
備考: 赤外線暗視装置、及び半自動装填装置を装備すること。半自動装填装置は、最低でも68口径105㎜砲搭載車輌には載せられるようにする。
見た目は地球における「ティーガーⅡ」そっくりだが……最早「魔改造」と評すべきほどに改造され、“中身がほぼ別物”と化してしまっている。
まず史実ティーガーⅡは、68口径105㎜砲を搭載していない。正確には
因みに、アルファベットによる略号等が分かり難いかもしれないので、ざっくり解説しておくと、
・ライフル砲……砲身内部に、“ライフリング”と呼ばれる溝を刻んだ砲。遠方に対しても安定して弾が届く代わりに、弾の威力が滑腔砲に比べて落ちることがある。猟銃や狙撃銃等に用いられる。
・滑腔砲……砲身内部にライフリングを刻んでいない砲。ライフル砲に比べると弾の威力が高いが、遠距離攻撃に向かない。現代の戦車は、大体この砲を搭載している。
・HE弾……榴弾のこと。炸裂時の爆風と破片によって相手を攻撃する。歩兵や簡単な防御陣地には有効だが、コンクリート製トーチカのような堅固な防御陣や戦車等の装甲化された相手には効き目が薄い。
・AP弾……徹甲弾のこと。重防御を持つ相手の装甲を貫くのに用いられる。
・APDS弾……装弾筒付徹甲弾のこと。AP弾の発展型。装甲貫徹力を向上させた状態で遠距離の敵を攻撃するために、弾道を安定させるべく「装弾筒」と呼ばれる機構を取り付けた徹甲弾である。尚、これに翼を取り付け、更に弾道安定性を高めた砲弾が装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS弾)である。現代戦車の徹甲弾は、このAPFSDS弾が主流である。
・RHA……均質圧延鋼装甲のこと。簡単に言えば、均等に圧力をかけて引き伸ばした1枚の鉄板。第二次世界大戦時の各国戦車の装甲は、これであった。
・複合装甲……複数の素材の板をサンドイッチのように重ねた装甲。敵の徹甲弾の威力を減衰させる効果が有る。現代戦車の装甲は大体これ。
・ERA……爆発反応装甲のこと。装甲板の表面にわざと爆薬を設置し、敵の攻撃が命中した時にそれを爆発させることで、敵の攻撃の威力の減衰を狙った装甲。但し、周囲に味方の歩兵がいると死傷者が発生しかねない、という欠点がある。
配備された暁には、この「ケーニヒスティーガー改」は、文字通り『この世界』における最強の地上装甲戦力となるだろう。
何よりもまず、ここまでの
ドイツの科学技術はァァァ世界一ィィィィィィ!!!
そうして仕事を続けている"釧路"の元へ、妖精が1人やってきた。
何事かと訝しむ彼女に、妖精は何かの紙を手渡す。そこに書かれた文面に目を通した"釧路"の顔から、さっと血の気が引いた。
「これは……すぐ、提督にご報告しなければ!」
血相を変えた"釧路"は、直ぐに自室を飛び出していった。
相変わらず、リーム王国関連の今後の方針について"伊勢"と話していた堺。そこへ突然、"釧路"が訪ねてきた。
「お話中、失礼します提督。“懸念されていた事態”が明るみに出ました」
切迫した様子の彼女の表情、そして「懸念されていた事態」という言葉に、堺もすぐに顔色を変えた。
「懸念されていた事態、ということは……まさか……」
「はい。放送局に偽装して設置していた無線電波探知レーダーが、我が国の本土から西方に向けて発信されている
グラ・バルカス帝国の諜報員による、本国への報告無電と思われます」
はい、リーム兵がいなくなった理由は「勅命に基づいての撤退」でした。誰も死なずに済んだので、まだ良かったと言えるでしょう。…タウイタウイの財布には大穴が開きましたが。
そして、「いや釧路さん何作ろうとしてんの!?」と言いたくなった人は挙手。彼女が作ろうとしている「ケーニヒスティーガー改」は、WoTのティーガーⅡの主砲を真似たものです。但し、装甲と機動力がおかしくなっているので、ティーガーⅡの要素は外見くらいにしか残らなくなりますが。
あと、彼女が弄っていた艤装らしきものは何だったんでしょうね。
改めまして皆様、このようなネタのごった煮をご愛読いただき、本当にありがとうございます!
評価5をくださいましたジャイルドア様
評価8をくださいました和太様、ヘカート2様、taka坊様
評価9をくださいましたグルッペン閣下様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
次回予告。
ロデニウス連合王国にて"釧路"が探知した不審な電波。それは、グラ・バルカス帝国諜報員たちの暗躍の証であった。ロデニウス大陸のみならず、各地で集められた情報がグラ・バルカス帝国本土へと集約される…
次回「グラ・バルカス帝国の暗躍」