鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
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パスワードのヒントは…「大日本帝国陸軍が、最大の得意戦法を披露する時のかけ声」です。
…もうお分かりですよね?
パスワードの準備はよろしいですか?
それでは、せーのでいきますよ! せーのっ!
天皇陛下、バンザァァァァァァイ!
中央暦1639年5月1日 午前8時30分、クワ・トイネ公国公都クワ・トイネ。
いつものように朝が来たが、市街地の店は軒並み閉められており、道路を走る車は1台もなく、街は静まり返っている。そしてどの家の窓にも、2つの旗が揚げられていた。
1つは、
もう1つは、何も描かれていない黒と白のツートンカラーの旗……弔旗である。一昨日の政府からのお達しに従い、クワ・トイネの全国民が、今回のロウリア王国軍の侵攻で亡くなった約1万人の公国民の魂を慰めるべく、喪に服しているのだ。
カーーーン……カーーーン……
公都の教会も、いつもより緩やかな
ある妻は、戦場に行ったまま還らぬ人となった夫を悼む。
ある男は、西方で戦っている友の無事を祈りつつ、ギムで死んでいった多くの国民に思いを
軍においてもこの日は訓練が休みとなり、兵士たちの中には出征している仲間を思って、そいつのベッドの横に貴重な強炭酸入りビールを供える者もいた。
(農業立国であるクワ・トイネ公国にも、麦の生産があった以上、ビールはあった。だがはっきりいうと、アルコール度数も低く、何より炭酸がどうしようもなく弱いという、現代日本人からしたら「ビールの出来損ない」でしかない代物だった。堺のタウイタウイ艦隊が、艦の二酸化炭素消火装置の力を流用して、強力な炭酸飲料を作るやり方を教えたため、ここ最近やっと強炭酸入りビールが出回り始めた、という状態なのである。従ってクワ・トイネ公国においては、強炭酸入りビールはまだまだ
さて、そんなこととは無関係に、クワ・トイネ公国西部方面師団の遠征部隊(歩兵8,000、騎兵500、弓兵2,000、魔導士30)と、堺率いるタウイタウイ部隊陸戦隊(歩兵妖精7,200、戦車55輌、八八式75㎜野戦高射砲30門、同行艦娘4名)は、クワ・トイネ公国とロウリア王国の国境に到達していた。
いや、正確に言えばクワ・トイネ陸軍の兵士たちは、戦友を想って祈りを捧げたし、堺たちも
彼らの前方、距離1㎞ほどのところには、丸太を組んで作られた簡易な柵がある。これは、ロウリア王国とクワ・トイネ公国の国境を示す柵だ。おそらくロウリア軍が、その辺の木を切って急ごしらえで作ったのだろう。その向こう側には、茂みに紛れて金属質の鈍い輝きがあった。国境を守るロウリア軍の兵士たちである。
その総数は、国境全体で10万はいると見られており、さらにワイバーンがまだ100騎ほどは残っている、と見積もられていた(実際には、実働戦力が70騎程度である)。
突破するのは至難の業だろう。
……だが、ノウ率いるクワ・トイネ公国陸軍の兵士たちは、誰1人怯えてはいなかった。何しろこちらには、あの日本軍がついているのだ。
1時間ほど前、公国政府から魔信が届き、宣戦布告状がロウリア大使に手交されたと言われていた。つまり、宣戦布告は済んでいる。国際法上何も問題はない。ちなみに、クイラ王国も2国間同盟に基づいて、ロウリア王国に対して宣戦を布告したそうだ。
(そもそもロウリア軍は宣戦布告なしで、クワ・トイネ国境を破って侵攻してきたので、国際法もクソもないのだが)
そして両軍が静かに対峙する中、時計の針は進み…長針がチッ、と動いて、午前9時を差した。
「撃ち方始め!」
堺の号令とともに、九四式六輪自動貨車に牽引されてきた、30門の八八式75㎜野戦高射砲のうち20門が一斉に火を噴いた。残り10門は、対空警戒のため砲身を空に向け、沈黙を保っている。
事前砲撃の開始である。
砲撃が始まったのを見て、堺は指示を飛ばす。
「やりだしたな……
『了解しました!』
『任されたぜ!』
九四式六輪自動貨車の1輌、その荷台から"萩風"と"嵐"が飛び降りる。そして載せていた装備を実体化させて、地面に設置した。……「WG42」×6コ。
「敵を見つけました。撃ち方、はじめ!」
「さあやってやるぜ! 嵐巻き起こせ!」
2人のかけ声とともに、「WG42」から計36発の30㎝ロケット弾が発射された。それが国境の敵めがけて飛翔し、敵陣にて爆発する。丸太組みの簡易な柵がバラバラになり、敵の兵士たちが吹き飛ばされる。ロケットランチャーの制圧射撃は、効果絶大であった。
10分ばかり、進攻のための事前砲撃が行われた後、
「全軍、前進!」
「前進せよ」
ノウと堺の号令が下る。
砲兵隊は沈黙して砲の撤去にかかり、代わって歩兵隊や騎兵隊が前進を開始する。
ついに、日本軍とクワ・トイネ公国陸軍による、ロウリア国境防衛線への総攻撃が開始された。
「全軍、前進!」
高らかに号令が下り、クワ・トイネ公国陸軍西部方面師団の兵力、騎兵500と歩兵8,000が前進を開始する。騎兵はともかく、歩兵は鎧を着ているため進軍速度が遅い。全力で走っているのだが、傍から見ると人の徒歩程度の速度で、敵陣へと向かっていく。
……と思いきや、1,000人ほど動きの早い歩兵たちがいる。そいつらは、長い剣は持っていても鎧を着ていない。しかし代わりに、
その隣の日本軍だが……読者諸賢の皆様は、もうわかっているだろう。日本軍妖精たちが何をするつもりか。
「大日本帝国の偉力に逆らうとどうなるか、今こそ分からせてやる!」
三八式歩兵銃(銃剣付き)を持ったある歩兵妖精が言う。もうこの時点で、何をする気かよくわかる……
やがて攻撃開始時刻になり、「前進せよ」という堺の命令が伝わるや、
「突撃ぃー!」
抜き身の日本刀を振りかざし、下士官妖精が号令する。と同時に、わーっと
「うおおおおぉぉぉ!」
「突撃ぃぃぃぃぃ!」
「進めー! 叩きのめせ!」
「ィヤアァァァァァァーッ!」
「皆殺しじゃ、攻撃しろぉ!」
「殺せぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「皆殺しだぁぁぁぁぁぁー!」
口々に叫びながら、手に手に銃剣や刀を持った日本軍妖精が、国境線を示す柵……の残骸めがけて走る。
「ウラーーーーー!」
なぜかロシア語を叫ぶ者もいる。満州上がりだろうか。
「かかってこい、キ◯タマついてんのか!?」
「おもらしでもしとんとちゃうかぁ!?」
そんな暴言を、ロウリア軍めがけて吐き出す者もいる。
そして、全員が一斉に唱和し、叫んだ。
「「「「「天皇陛下、バンザァァァァァァァァイ!!!」」」」」
……そう。日本陸軍最大の得意戦法、バンザイ突撃である。
こらそこ、誤解するな! バンザイ突撃は、玉砕の時だけやるものではないぞ!(多分)
勇ましい日本軍妖精に続いて、八九式中戦車50輌と九七式中戦車チハ5輌が、歩兵の走る速度を上回る勢いで前進する。歩兵にとって脅威となる、ロウリア軍の遠距離兵器である矢。それを避ける盾となるべく、前進しているのだ。ちなみに、このチハはただのチハではない。
「来るぞ!」
一方のロウリア軍側、現場指揮官の叫びに緊張が高まる。しかし敵が出してきたものを見て、彼らは驚愕した。
「なんだありゃ!?」
「あれは……生き物なのか!?」
前進してくる日本軍の八九式中戦車を見て、彼らは驚いている。
「正体不明の巨大な動く怪物がいた」くらいの噂は聞いていたが、聞くと見るとでは衝撃が違う。
「弓隊、構え!」
号令一下、ロウリア軍の弓隊が弓を構える。
しかし、矢が放たれる前に、
ズドォン!
八九式中戦車の主砲が放たれた。
対戦車戦闘では使えない砲であるが、対歩兵戦闘なら威力は十分。弓隊は、矢を放つ前に57㎜榴弾の爆発により吹き飛んだ。まあ、射られたとしても矢が通るはずもないのだが。
「くそ! なら、こっちが囮だ! 別動隊、頼むぞ!」
ロウリア軍兵士たちから見て、右前方にちょっとした茂みがある。そこに、剣を持った兵士たちが不意討ちを喰らわせるべく、潜んでいるのだ。
と、八九式の後ろから別の怪物……九七式中戦車が飛び出してきた。しかしその位置は、あと少しで別動隊の攻撃が届く範囲である。
(さあ来い……!)
目を見開き、敵の動きを追う指揮官。
その時、不意に敵の怪物が停止した。先頭に突き出た奇妙な筒が、茂みのほうを向く。
「ま、まさか、バレたのか?」
指揮官が呟いた時だった。
その筒の先に、小さな赤い魔法陣が現れたのだ。
「な!? 魔法か!?」
指揮官が叫んだ瞬間、
ゴォォォォォォ!
魔法陣から、炎が吹き出した。
いや、正確には“燃える液体”が発射されたように見えた。それが茂みに降り注ぎ、茂みを炎の塊に変える。
「ぎゃああああああ!」
「ぐああああああ!!」
「あづいよぉぉあぁぁ……」
全身火だるまにされた、別動隊の隊員たちの悲鳴が響き渡る。
そう。この九七式中戦車、なんと火炎放射戦車なのだ。それもチハ車内に入っているのは、石油をはじめとする可燃性液体だけであり、砲口に展開した炎魔法の魔法陣によって放射した液体に着火、そのまま対象に浴びせる、という仕掛けなのである。
「あんなことまでできるのか!」
生きたまま丸焼きにされる味方を見て、ロウリア軍の士気はガクッと落ちた。
もちろん、その隙を見逃す日本軍ではない。
「進めー! 叩きのめせ!」
「ばんざぁぁぁぁぁい!」
弓隊がいなくなったと知るや、戦車の陰から飛び出して三八式歩兵銃を撃ちまくる。弓矢の射程のはるか外からアウトレンジ攻撃をかけられ、ロウリア軍の兵士はバタバタ倒れていった。
クワ・トイネ公国の部隊も、負けてはいない。
「いけ! これが我ら、新生クワ・トイネ公国陸軍第5歩兵大隊の力だ!」
「進めー!」
「クワ・トイネ公国バンザーイ!」
……ダメだこいつら、もう日本軍に毒されてやがる。
だがまあ、セリフはともかくとして、戦果はなかなかのものを上げていた。さすが、銃を持った近代化部隊であるだけはある。中には、勢い余って銃剣で敵を刺し殺す者までいるほどだ。
「くそ! 駄目だ、強すぎる!」
ロウリア軍の士官たちは、絶望を隠しきれなくなっていた。
数はこちらが圧倒的に優勢。しかし敵は、強力な新兵器を装備しており、こちらの攻撃が届かない距離から攻撃を仕掛けてくる。しかも当たれば、よくて重傷、悪ければ一撃死の威力である。
それに加えて、槍で突こうが弓で射ようが一向に立ち止まる気配のない敵の怪物(戦車のこと)が、絶望感に追い打ちをかける。
『だ、だめだ……あんなのどうやって戦えばいいんだ!?』
『こちら第2防衛ライン、もう保たない! う、うわあぁぁぁ……』
防衛ラインも次々と突破され、兵士たちは精神的に参り始めていた。既に何人か、敵前逃亡が出始めている。
「このままでは…!」
ロウリア軍士官の1人が呟いた時、新たな魔信が前線司令部に届いた。
『こちらワイバーン隊! 先行した6騎が戦場に到着! これより援護に入る!』
「助かった!」
ワイバーン隊の上空援護が来たため、兵士たちは一時的に士気を回復させる。敵にワイバーンは見当たらない。制空権は、取れる。
「全軍、ワイバーン隊の攻撃に合わせて前進! なんとしても敵を押し返せ!」
『司令、見張りより報告です! 上空より敵機が接近中!』
九四式六輪自動貨車の1輌に乗り、指揮を取っていた堺の元に"萩風"から連絡が届いた。
「上空? ワイバーンが来たか。距離と数は?」
『12時の方向、距離ヒトナナマル(17,000メートル。つまり17㎞)、数は6です!』
「了解。萩風は、嵐とともにロケット砲兵隊を指揮しつつ、そのまま上空警戒。
『ありがとうございます、司令官!』
堺は、"萩風"との通信を切るや、すぐに"飛龍"に通信を繋いだ。
「飛龍、敵機だ。蒼龍とともに
『了解! 二航戦攻撃隊、発艦はじめ!』
威勢よく答える"飛龍"。
と、二航戦の2人の空母艦娘が乗り込んでいる九四式六輪自動貨車から、矢が2本放たれた。それは一瞬後には光を放ち、計12機の「
「二航戦2人は、そのまま直掩隊の指揮を執れ。敵ワイバーンを1騎たりとも通すな!」
堺は再び指示を出す。艦娘たちはそれに、威勢のいい「了解!」の返事で答えた。
そうこうするうちに、上空でワイバーンと「紫電改二」の空戦が始まる。結果? 「紫電改二」が一瞬でワイバーンを蹴散らしましたけど、何か?
「クワ・トイネのノウ将軍に聞いてみるかな? 速度上げられないかって」
不意に呟いた堺は、魔信の通信機を取り上げた。
「こちら日本軍司令官、堺。ノウ将軍、応答願います。どうぞ」
ややあって、ノウから応答が届いた。
『こちらノウ、堺殿どうされた?』
あのエジェイでの会戦(という名の一方的虐殺)以来、ノウの態度はすっかり軟化している。
「こちら堺、そちらの部隊の侵攻速度を上げられますか? 上げられるのであれば、このまま我が部隊は前進し、敵前線の突破口を開きたいのですが、どうぞ」
『こちらノウ、了解した。少しくらいなら上げられる。突撃を許可する』
「こちら堺、恩に着ます。突撃開始します」
魔信を切ると同時に、通信回線が開かれる。
「こちら堺。日本軍全軍へ。攻撃を集中し、一点突破だ…突撃せよ、ただ突撃せよ。武運を祈る」
総司令自ら、突撃命令を出したのだ。
さあ、こうなっては日本軍は止まらない。誰にも止められはしない。
「突撃ぃぃぃぃぃぃ!!!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ィヤァァァァァァァーッ!!」
「皆殺しだぁぁぁぁぁぁー!!!」
「皆殺しじゃ、攻撃しろぉ!!」
「手榴弾を投げるぞ!」
「勝利じゃぁぁ!!」
「後始末はきっちりしてもらうぞ。死ね、クズども!」
こいつらに“黙る”という選択肢はないのか、と思うほどやかましく叫びながら、妖精たちが突撃していく。彼らの行く先で九七式手榴弾が爆発し、八九式重
ロウリア軍にその侵攻を止める術はなく、ついにクワ・トイネ公国軍による国境突破を許してしまった。この時点で、クワ・トイネ公国陸軍は戦死者が騎兵24、歩兵57。タウイタウイ部隊は戦死者4。一方のロウリア軍の戦死者は、既に1万人を超えていた。それに加えて負傷者、行方不明者がざっと2万人ばかりいる。圧倒的なキルレシオである。
ロウリア軍国境防衛部隊はズタズタに寸断され、統制指揮も難しく、今や各部隊がバラバラに迎撃している有り様だ。だがそれでも、「国境を越えて王国領内に敵が侵攻した」ということだけは、全員が確実に認識していた。それだけが救いだった、と言うべきか。
しかし、クワ・トイネの国旗を掲げた部隊と出くわした者たちは、まだ幸運だっただろう。ある程度でも“戦える可能性”があったのだから。
異音とともに動く鋼鉄の物体、もしくは赤い太陽の旗を掲げた部隊と出くわした者は不運であった。彼らに振りかかった運命は、蜂の巣にされるか、脳天ぶち抜きか、木っ端微塵かの三択であったのだ。しかも、仮に至近距離で格闘戦に持ち込めたとしても、剣の腕も鍛え上げた精強なる日本陸軍妖精たち相手では、勝ち目は少なかった。
日本軍とクワ・トイネ公国陸軍の侵攻部隊は1時間後には森を抜け、本格的にロウリア王国領内へと踏み込んでいた。しかも、この先は平原が多い。機動力の見せ所である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃。
ロウリア軍の放火と日本軍の空爆により、全体が半ば廃墟と化した街、ギム。そこに、日本軍とクワ・トイネ軍の増援が、補給物資とともに到着しつつあった。
既に日本軍の工兵隊が先に到着しており、チハドーザーでロウリア軍飛行場の滑走路を修復する傍ら、
ギムは、ロウリア軍の残兵が再度侵攻した場合に備え、陣地化されてきていた。そんな工兵隊たちが突貫で建設した仮暮らし用の住宅に、日本軍やクワ・トイネ軍の兵士たちが入っていく。同じく仮建設の倉庫に、37㎜砲弾や武器・食糧が運びこまれる。
またこれを機に、クワ・トイネ公国全域に機関車の線路を敷こうとして、別の工兵隊が線路の敷設を開始していた。まだエジェイまでの線路すらできていないが、それでも半年もすれば、ギムも含めたクワ・トイネ公国西部まで線路を伸ばせるだろう、と見積もられている。
そのうえ、国境突破による陸上侵攻と前後して、海軍も新たな作戦を立てていた。
はい、今回はゲーム「Red Orchestra2」のダウンロードコンテンツから、「Rising Storm」の日本兵の皆さんに、お越しいただきました。やっぱり、日本軍の陸上戦闘部隊といえば、バンザイチャージしてナンボでしょう。天皇陛下バンザイ、大日本帝国バンザイ!
お気に入り82件…皆様、本当にありがとうございます!
次回予告。
ついにロウリア王国内に侵攻したクワ・トイネ-日本連合軍。そしてそれと前後して、堺はタウイタウイ泊地に残る大淀に対し、新たな作戦の開始を命じた…
次回「第二戦線を形成せよ」