鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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今日は4月7日。西暦1945年の今日、坊ノ岬沖海戦が勃発しました。これにより、大日本帝国海軍が誇った世界最強の戦艦「大和」は海の底へと消え去ったのです。それは、大艦巨砲主義の完全な終焉を意味していました…

ということで、マグドラ沖海戦の続きです。
こんな前書きを出した以上、第零式魔導艦隊は…(察し)



111. マグドラ沖海戦(2)

 中央暦1643年4月23日、神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス西方500㎞地点、マグドラ群島。

 神聖ミリシアル帝国海軍が誇る世界最強の艦隊、第零式魔導艦隊は、マグドラ群島の海面に展開していた。

 小型艦が錨を下ろし、沈没したゴールド級魔導戦艦「ガラティーン」の乗組員を収容している。ミスリル級魔導戦艦「コールブランド」と「クラレント」他複数の艦艇は、損傷箇所の応急修理を行っていた。

 そんな中、「コールブランド」の魔力探知レーダーを見ていた乗組員が、切迫した声で報告する。

 

「レーダーに感有り! 機械動力タイプと見られる飛行機械が多数、本艦隊に接近中!

総数……に、200!! 11時の方向、距離50㎞まで接近しています!!」

「なんだと!?」

 

 第零式魔導艦隊司令官クロノ・バッティスタ少将と、「コールブランド」艦長コーミ・クロムウェル大佐は、揃って上空を見上げた。

 空には、まだ雲の他何も見えないが、レーダーは敵の接近を告げている。おそらく事実だろう。

 

「機関始動、錨上げ、急げ!

総員、対空戦闘用意! 繰り返す、総員対空戦闘用意!」

 

 停止していた各艦は、慌てて錨を上げ、航行状態に入ろうとする。

 同時に各艦では警報が鳴り響き、乗組員たちは一斉に持ち場へと走り出した。

 

 対空戦闘の準備が進む中、艦隊司令バッティスタは、「コールブランド」艦橋の窓から外を見ていた。

 青く晴れ渡った空の一角を真っ黒に染めて、多数の影が近付いている。その影は、次第に大きくなり、形をはっきりさせつつあった。

 

「数が多いな……エアカバーに当たる友軍機の数は?」

「はっ、先ほどの敵艦隊への攻撃で消耗し、一部の機体は損傷により出撃不能となったため、13機の出撃が限界です。それと、ここは(へき)()であるため、『ジグラント2』しか配備されておりません。故に、出撃する13機は全て『ジグラント2』となります」

 

 部下からの報告に、バッティスタは苦い顔をした。

 「ジグラント2」は、()()()戦闘爆撃機である。“マルチロール機”である本機は、この世界で使われている航空機としては破格の性能を有している。

 だが、先ほどの敵艦隊の攻撃を見る限り、グラ・バルカス帝国軍の兵器の性能は、神聖ミリシアル帝国のそれとほとんど変わらないようだ。そうなると、飛行機械の性能も「ジグラント2」に拮抗している可能性がある。それが不安な点であった。

 

「せめて、制空戦闘型天の浮舟……(こと)に『エルペシオ3』があればなぁ……」

 

 バッティスタは溜め息を()く。

 「エルペシオ3」は、神聖ミリシアル帝国空軍が誇る、最新鋭の制空戦闘型天の浮舟だ。だが、マグドラ群島のような()()に、そんな機体が配備されている筈も無い。

 更に、敵の数200機に対してこちらの機体は13機と、数では圧倒的に敵が多い。敵のうち、何機が制空戦闘型であるかは不明だが、これほどの“数の差がある”という事実に、バッティスタは不安を抱いていた。

 

「司令、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はまだありません。ご安心下さい」

「うむ」

 

 クロムウェルにそう言われ、バッティスタは不安を押し殺して頷いた。

 そんな彼らの頭上を、13機の「ジグラント2」が飛び越えて、グラ・バルカス帝国航空部隊に向かっていった。

 

 

 「ジグラント2」を駆る飛行隊長オメガは、12機の「ジグラント2」を率いて、グラ・バルカス帝国航空部隊に向かっていた。

 魔光呪発式空気圧縮放射エンジンの甲高い音が、機内に鳴り響く。

 自身の息は荒く、オメガは自分が緊張していることに気付いた。その背筋を、一筋の汗が流れ落ちる。

 

 先ほどの第零式魔導艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊との戦闘では、“信じられない”ことに、第零式魔導艦隊に()()()()()()()ようだった。

 近年、神聖ミリシアル帝国に土を付けた国は無い。今後ミリシアルに“土を付け得る国”としては、第二文明圏に君臨する列強第2位の国家、ムー国が挙げられている。

 

 敵が、どのような戦術を取ってくるかが分からない。

 仮想敵としているムーの戦闘機に対しては、『彼我の速度差を生かした一撃離脱戦法』が有効とされる。そしてオメガ自身、その戦法は正しいと思っていた。

 敵がどの程度の強さを持ち、どんな戦術を使ってくるか分からない以上、“これまでに繰り返し練習してきた一撃離脱を行う”のが確実だ、と彼は判断した。

 

 雲霞のように見える敵航空機の大群を前に、オメガは12機の「ジグラント2」を率いて、上昇を開始する。

 すると敵航空機の一部、およそ40機ほどが分離し、同じように上昇してきた。が、

 

「な……何っ!?」

 

 オメガは驚愕する。

 敵航空機の上昇速度が速い。明らかに、「ジグラント2」の最高速度を凌駕しているのだ。

 まあ、「ジグラント2」の最高速度は時速510㎞、対してグラ・バルカス帝国軍のアンタレス07式艦上戦闘機は最高時速550㎞なので、こうなるのも無理は無い。

 ちなみにこのアンタレス07式艦上戦闘機、旧日本海軍の有名な戦闘機「零式艦上戦闘機」そっくりの見た目と性能である。

 

「まさか、そんな……我が方の天の浮舟の最高速度を凌駕しているというのかっ!?」

 

 信じがたい思いでオメガは叫ぶ。

 すると、彼は“あること”に気付いた。上昇してくる約40機は、機体形状がスリムで翼が薄い。いかにも“空気抵抗が少なそう”なのだ。

 

(まさか、制空戦闘用の機体か?)

 

 敵の機体は、ムー国の戦闘機「マリン」よりも洗練された形状をしている。どう見ても、「マリン」よりも“強力な機体”であることは間違いない。

 今上昇してきているのは、敵の()()()()()だ。であるなら、残りの機体が第零式魔導艦隊に被害を与えるであろう機体となる。

 敵の数の多さと比率、そして敵の性能を見て、オメガは考えた。

 

(これは、生きて帰るのは無理だろうな……。ならば、せめて味方への攻撃を減らしてやる!)

 

 彼は素早く、魔信のスイッチを入れた。

 

「全機に告げる!

前に出てきた40機は無視しろ! その向こうにいる多数の敵が爆撃機だ。一撃離脱で、あの敵の爆撃隊に突っ込むぞ!」

 

 13機の「ジグラント2」は、急降下に移る。そして、その前に立ち塞がる敵の制空戦闘機隊に突っ込んだ。が、

 

『ぐわっ!』

『やられた! 機体を制御できん!』

『うわぁぁぁ……』

 

 敵機とすれ違った途端、5機もの「ジグラント2」がやられた。ある機体は主翼をちぎり飛ばされ、錐揉みになって落ちていく。ある機体は空中で木っ端微塵となり、またある機体はパイロットを射殺されたのか、機首を下げて、煙を噴くこと無く真っ逆さまに落ちていく。

 

「なんだと!?」

 

 オメガが驚いた時、目前に敵機が1機迫ってきた。反射的に、彼は操縦桿を右に倒し機体を右旋回させる。一瞬後、敵機が主翼から放った真っ赤な太い()(せん)が、ついさっきまで彼がいた位置を通過した。

 

(危なかった……!)

 

 オメガは一先ずほっとする。その時、

 

「ん!?」

 

 敵機の一部が、反転しようとしているように見えた。()()()()()()()()。明らかに、“第零式魔導艦隊を狙う動き”である。

 

(我々に狙われていることに気付いている筈なのに……舐めやがって!)

 

 憤怒に駆られ、オメガは自身の機体を敵機に突進させる。

 「ジグラント2」の最高速度は時速510㎞だが、今回は“降下”である以上、重力を味方につけられる。その加速を使えば、追い付ける筈だ。しかも相手は、()()爆弾を抱えている。尚更追い付ける筈である。

 そう確信していたオメガだったが……

 

「あれ!?」

 

 敵機との距離が“縮まらない”。それどころか、少しずつだが敵機が“遠ざかって”いく。

 

「まさか、敵の爆撃機の方が足が速いのか!?」

 

 “信じがたい現実”を突き付けられたオメガだった。

 

(バカな! そんなバカな!!)

 

 だが、敵の爆撃機に注意を取られたのがオメガの命取りだった。

 次の瞬間、反転して突っ込んできたアンタレス07式艦上戦闘機の1機が、両翼に発射炎を閃かせる。そして20㎜機銃の太い火箭が、オメガ機を一撃で粉砕したのだった。

 

 

「勝負にならんだと!?」

 

 驚愕の声を上げているのは、第零式魔導艦隊司令バッティスタである。まあ、いくら“数に大差があった”とはいえ、これまでほぼ()()()()()()自国の天の浮舟が、あっさりと撃墜されたのでは致し方有るまい。

 だが、狼狽していたのも一瞬。バッティスタはすぐに気を取り直した。

 

「全艦、対空戦闘用意! 敵機を撃墜するぞ!」

 

 ミスリル級魔導戦艦の側面には、多数の細長い棒状のもの……アクタイオン25㎜連装対空魔光砲の銃身が突き出ている。それが、一斉に艦隊の上空に向けられた。

 

「対空魔光砲、自動呪文詠唱完了。属性比率、爆21風65炎14!

連射モード切替完了、魔力充填率70、80、90、100%、魔力充填完了! 対空魔光砲、発射準備完了!」

 

 発射口が仄かに赤く輝き、赤い光の粒子が砲口に吸い込まれていく。

 

「対空戦闘開始!」

「対空戦闘開始!」

 

 ミスリル級魔導戦艦「コールブランド」艦長クロムウェルの号令が復唱され、アクタイオン25㎜連装対空魔光砲が一斉に火を噴いた。

 「コールブランド」だけでなく、第零式魔導艦隊の健在な全艦艇から、赤い細かい光弾が多数、高速で射出される。

 上空に向けて上がっていく赤い光弾は膨大な数に上り、その全てがグラ・バルカス帝国の航空機を狙っている。多数の撃墜を狙える……と思いきや、高速で向かってくる敵になかなか当たらない。

 

「なかなか当たらんな」

 

 バッティスタは、多数の弾を撃ち上げたにも関わらず、ほとんど当たっていない対空魔光砲の射撃に焦りを見せる。

 敵機が反転し、降下に移るのが見えた。爆弾を抱えたまま、艦隊に向けて逆落としに突っ込んでくる。ダイブブレーキの作動音が、甲高い金属音となって響き渡り、恐怖を煽る。

 

「面舵一杯!」

「敵機発砲!」

 

 クロムウェルが転舵を命じた直後、見張員から報告が上がる。

 降下してきた敵機……旧日本海軍の「九九式艦上爆撃機」に似た形状をした「シリウス型艦上爆撃機」が、機首の12.7㎜機銃2丁を発射してきたのだ。不快な連続した金属音と共に、機銃弾は次々と「コールブランド」に命中し、明後日(あさって)の方向に弾かれる。

 と、敵機の腹から黒い物がふわりと離れ、落下してきた。

 

「敵機、爆弾投下!」

 

 見張員が叫ぶ。それに被さるようにして、ヒュウウウウ……という風切り音が響く。

 その時、「コールブランド」の艦体が右に旋回し始めた。舵が効き始めたのだ。

 甲高い音がレシプロエンジン特有の機械音に変化し、水平飛行に移行した敵爆撃機が次々と「コールブランド」の上空を通過した。

 

 

 対空機銃の射撃音とダイブブレーキ音、船の魔導機関音、悲鳴、怒号。ありとあらゆる音響が入り交じり、混乱の()(つぼ)となった「コールブランド」の艦上で、対空魔光砲の砲手を務めるアシアント一等兵は、照準器を通して空を見上げながら舌打ちをした。

 

「ちくしょう! 思ったより敵機の速度が速い!」

 

 「コールブランド」を含め、第零式魔導艦隊の各艦は凄まじい対空砲火を撃ち上げているが、なかなか敵機は墜ちない。それどころか、こちらに急降下で突っ込み、爆弾を落としてくる。

 

「こんなとこで……死んで堪るか!」

 

 アシアントは、歯を食い縛った。

 俺は、世界最強との呼び声も高い神聖ミリシアル帝国第零式魔導艦隊、それも最新鋭艦・ミスリル級魔導戦艦の乗員の1人なのだ。不沈艦と呼ばれた「コールブランド」に傷を付けるようなことがあってはならない。

 ここで、何としても敵機を墜とす!

 

「落ちろ!」

 

 叫びながら、彼は狙いを定めてトリガーを引く。その機銃弾は、見事に迫ってきた敵機に直撃した。

 敵機の左の主翼が折れ飛び、敵機はクルクルと回転しながら海面に突っ込んで、巨大な水柱を上げた。

 

「やった! ざまぁ見ろ!」

 

 彼が叫んでいる間に、別の敵機が「コールブランド」に迫り、腹に抱えた爆弾を投下した。

 

「退避! 退避ー!」

 

 誰かが叫ぶのを聞いて、アシアントはふと空を見上げる。すると、“空中に静止したような黒い点”があるのが、彼の視界に飛び込んできた。

 

(あれは? 確か、授業で……)

 

 アシアントは思い出した。

 戦術講義の最中、教官が言っていたことを。

 

『敵機が投下した爆弾が、()()()()()()()()()()として見えるようなら、それは“自分の命が危険に晒されている”ことの証だ。何故なら、“()()()()()()()真っ直ぐ飛んできている爆弾”は、空中に静止する黒い点のように見えるからだ』

 

「まずい! 『今が』まさにそうじゃないか!」

 

 彼は慌てて機銃座を立ち、走り出す。

 しかし、気付くのが一瞬“遅かった”。

 

ドガアァァン!

 

 敵機が投下した250㎏爆弾が「コールブランド」に命中し、機銃が破壊される。同時に、猛烈な爆風が背後から襲ってきて、アシアントは吹き飛ばされた。そして、頭から艦橋基部に激突し、アシアントの意識は永久に閉ざされたのである……

 

 

ドゴォォン! ドカァン!!

 

 敵機が投下した爆弾は多数に上り、うち何発かが「コールブランド」を直撃した。爆炎が戦艦の分厚い装甲の表面を舐め、対空機銃が閃光と共に木っ端微塵に吹き飛び、火災が発生して炎が後部甲板に広がる。

 最終的に、「コールブランド」の被弾は5発を数えた。

 

『第22、24、26対空魔光砲大破!』

『後部副砲、砲身曲損! 使用不能!』

『魔力探知レーダー、ブラックアウト!』

『後部甲板に火災発生!』

 

 次々と被害報告が上がる。それに混じって、戦果も報告される。

 

『敵機撃墜2!』

(2だと!? 思ったより遥かに少ない……!)

 

 バッティスタは、ギリッと歯軋りした。

 更に、艦隊各艦の被害の報告も入ってくる。

 

『戦艦「クラレント」被弾! 火災発生!』

『巡洋艦「ロンゴミアンド」被弾多数! 大破、航行不能!』

『小型艦2、轟沈!』

 

 「コールブランド」艦橋の窓の外には、松明のようになった巡洋艦「ロンゴミアンド」が見える。

 

「くそぅ……!」

 

 バッティスタが舌打ちする。そこへクロムウェルが話しかけた。

 

「味方には、大破する艦も出てきております。航空攻撃では戦艦は沈み()()()が、はっきり申し上げて、この状況はよろしくないですな。“味方のエアカバーを受けられない”ことが、何よりまずい状態です。

現在、本土からこちらに第4・第5魔導艦隊が急行しているとのことですが、間に合いそうもありません。ここは“我々のみ”で切り抜けるしかありません」

「うむ。だが、どうするか……」

 

 その時、2人の会話をぶった切るように、見張員の絶叫が飛び込んできた。

 

『超低空に敵機多数! 10時の方向、距離20㎞! 数は約80機!』

「なんだと!? 近すぎる! しかも数が多い!

くそっ、叩き落とせ!」

 

 バッティスタの号令一下、対空魔光砲は慌てて仰角を下げ、海面を狙い始めた。

 

 

 グラ・バルカス帝国軍の「リゲル型雷撃機」…旧日本海軍の九七式艦上攻撃機に似た見た目の機体80機は、高度20メートルという低空を飛んで、第零式魔導艦隊に迫っていた。

 時速370㎞の高速で飛び、機体下部には重量800㎏の魚雷を抱えている。目的はただ1つ、この世界で最強と謳われる第零式魔導艦隊を()()すること。

 

 上空にいた敵機は全てアンタレス戦闘機が叩き落とし、制空権はこちらが確保していた。なので、空に注意する必要はない。

 敵の艦隊は、先ほどの艦上爆撃隊の攻撃によって炎上し、黒煙を噴き上げている。そのため、()としては非常に目立つ。

 魚雷の航続距離と敵艦隊との距離を勘案すると、魚雷を命中させるにはもっと敵艦隊に肉薄する必要がある。

 

『全機、突撃せよ!』

 

 無線からは、雷撃隊長の指示が流れる。それを聞きながら、分隊長の1人デクスター・パッシム少尉は気を引き締めた。

 敵艦の対空機銃が回転し、こちらに銃口を向けるのが分かる。一瞬後、敵艦が対空砲火を放ってきた。

 細かい水飛沫が大量に舞う中を、リゲルは飛ぶ。

 

『投下ポイントまであと20秒』

 

 死と隣り合わせの恐怖に、パッシムの背中を冷や汗が流れる。

 機内には星形エンジンの轟音が響き、機体は小刻みに振動する。とても“乗り心地が良い”とは言えないし、()としても相応しく無い。

 

(くそっ、何としても生きて母艦に帰る!)

 

 パッシムは、それ()()を考えていた。

 

『あと10秒』

 

 敵の対空砲火は、色が非常に鮮やかだ。全部の弾が曳光弾なのか、とすら思える。

 この機銃弾には、我が方にある近接信管のような機構は無いらしい。それだけが、唯一安心できる点であった。しかし、()()()()爆発するらしく、既にリゲルが1機撃墜されてしまっている。

 帝国の誇る航空機を()()することのできる国がこの世界にあった、ということには驚くが、今回の戦いにおける戦力比は、比べ物にならないほどこちらが優勢だ。気にすることは無い。

 

『3、2、1、投下!』

 

 指示に合わせて、パッシムは投下レバーを引いた。

 重量800㎏にも達する重い魚雷が投下され、機体が一瞬ふわりと浮く。パッシムは操縦桿を前に倒し、高度20メートルを保った。

 魚雷は投下した。あとは、この対空砲火から脱出し、母艦に帰るだけだ。

 

 パッシムを含め81機のリゲル型雷撃機は、複数の隊に分かれて順次魚雷を投下した後、第零式魔導艦隊の対空砲火から離脱していった。

 

 

 神聖ミリシアル帝国海軍第零式魔導艦隊旗艦「コールブランド」の艦上では、見張員が首を傾げていた。

 低空から侵入してくる多数の敵機。それに対し、こちらは対空機銃を撃ちまくって迎撃しているが、なかなか当たらない。

 しかし敵は、()()()()()()()ものと見えて、まだ艦隊との距離があるにも関わらず、“爆弾らしいもの”を海面に投下して離脱していく。

 

「あいつら、いったい何がしたいんだ?」

 

 見張員は呟いた。

 確かに、こちらは物凄い弾幕を撃ち上げている。しかし、相手の数が多い以上、戦力的には相手が優勢の筈だ。それなのに爆弾を投下して離脱にかかるとは、どうも腑に落ちない。

 

「臆病風にでも吹かれたか?」

 

 そんなことを呟きながら、彼は敵機が爆弾を投下した辺りの海面を見て、目を丸くした。

 

「何だ!? あれは!」

 

 敵機が爆弾を投下した辺りの海面から、“白い細い線”が多数伸びて、こちらに向かってくるではないか。

 その瞬間、見張員の脳裏に()()()()がフラッシュバックした。さっき、ゴールド級魔導戦艦「ガラティーン」が沈められた時の光景だ。

 あの時も、海面に白い細い線を引く「何か」による攻撃を受けたではないか!

 

(まさか!?)

 

 彼は、艦内放送用のマイクに向かって絶叫した。

 

「こちら見張り、海面下を“何か”が多数、本艦に向かってきます! 『ガラティーン』が受けた攻撃に酷似! 左37゜、距離700メートル!!」

 

 

「何っ!?」

 

 第零式魔導艦隊司令バッティスタ、「コールブランド」艦長クロムウェル以下の「コールブランド」艦橋クルーは、報告を聞いて一斉に窓の外を見た。

 海面に見える、多数の白い細い線。それらが真っ直ぐに、第零式魔導艦隊へと向かってくる。

 その数はあまりにも多く、加減速、転舵、どんなことをしようとも、確実に何発かは喰らうだろう。

 

 バッティスタたちは知る由も無かったが、これは“魚雷の航跡”であった。魚雷が通った後にできる、排出された空気による泡の線である。

 

 クロムウェルは、大声で指示を飛ばした。

 

「被弾するぞ! 艦体に魔力注入、装甲最大強化!」

「はっ! 艦体に魔力注入! 属性比率は土100! 魔導機関の出力を、全て装甲強化に回せ!」

 

 命令は直ちに遂行される。

 魔力が注入され、「コールブランド」の艦体装甲に含まれる魔導金属ミスリルの力で、装甲の強化が行われようとしていた。

 

「装甲強化シークエンス、作動! 遂行完了まで18秒!」

 

 戦艦「コールブランド」が、仄かな青い光に包まれ始めた。装甲が強化されている証である。

 18秒後、「コールブランド」の艦体は青く光り輝いていた。

 

「装甲強化完了!」

「敵攻撃、着弾まで12秒!」

 

 白い細い線は、もう「コールブランド」のすぐ近くまで来ている。

 

「総員、衝撃に備えよ!」

 

 クロムウェルが命令し、各員が対ショック体勢を取る。

 敵のこの攻撃で、戦艦「ガラティーン」は沈められた。敵の攻撃は、非常に高い威力を持つようだ。装甲強化はしたが、さて、どこまで耐えられるだろうか。

 クロムウェルがそう考えたその時、「コールブランド」のクルーが初めて体験する、“下から突き上げるような衝撃”が襲いかかった。同時に、ズズーン! という鈍い音がして「コールブランド」の左前方に、巨大な水柱が出現する。その高さは「コールブランド」の艦橋すらも越えていた。

 左艦首を下から突き上げられ、「コールブランド」は艦体後部を大きく沈み込ませる。それに対する揺り戻しが来る前に三回、立て続けに強烈な衝撃が襲った。

 更に、「コールブランド」が大きく前にのめったタイミングで、五回目、六回目の衝撃が()()から襲いかかる。“蹴り上げられたような衝撃”に、多くの「コールブランド」クルーが転倒した。

 悲鳴のような金属質の破砕音が連続し、「コールブランド」の巨体が苦悶するように震える。

 最後に一発、左舷中央部から衝撃が突き上がる。この一撃で、クロムウェルは座席から投げ出され、頭を壁にぶつけて血を流した。

 

 最終的に、「コールブランド」は7本もの魚雷の直撃を受けた。最後の衝撃が収まった時、「コールブランド」は黒煙を噴き上げながら洋上に停止し、その艦体は左に大きく傾いていた。

 いや、これは何も「コールブランド」に()()()()()()()()。第零式魔導艦隊は、洋上に残っていた全艦がこれと“大同小異の状態だった”のだ。

 

「くっ……被害知らせ!」

 

 頭から血を流したままクロムウェルが叫ぶと、次々と報告が上がってきた。その報告を上から塗り潰すように、警戒アラームがいくつも鳴り響く。直後、照明が落ちて艦橋は暗くなった。

 

『こちら舵機室、舵故障!』

『こちら機関室、魔導機関停止! 火災発生!』

『敵攻撃、7発被弾! 艦内に多量の浸水発生! 排水が間に合いません!』

『巡洋艦ロンゴミアンド、爆沈!』

『小型艦は全滅しました!』

『戦艦クラレント、航行不能! 艦体傾斜、沈没します!』

 

 左舷に七箇所も破口を穿たれた「コールブランド」は、大量の海水を呑み込み、だんだん左に傾斜していく。既に、傾斜角度は30゜にも達しつつあった。

 

「まさか……こんな! こんなことが!!

作戦行動中の戦艦が、それも()()()()()()()()()()()()()()が、“航空機如きの攻撃”で沈むのか!?」

 

 艦隊司令バッティスタは、最早放心状態だ。

 

「総員離艦! 本艦はもう駄目だ! 全員、速やかに艦を離れろ!」

 

 クロムウェルが号令を下す。

 そうこうするうちに、傾斜角度は45゜を超えた。

 

「艦長! このままでは、カートリッジ型の爆裂魔法回路が衝撃に晒されます!」

 

 主砲発射には、装薬の代わりにカートリッジ型の爆裂魔法魔術回路を刻んだ媒体が用いられている。それが衝撃を受ければ、“連鎖的な爆発”が起きる可能性が高い。

 

「いかん! 総員、退艦急げ!

お前もここはもういい、早く逃げろ!」

 

 クロムウェルと艦橋クルーの1人が遣り取りをしている間に、「コールブランド」の右舷からは、早くも乗組員たちが脱出し始めていた。

 既に、上空に敵機の姿は無く、第零式魔導艦隊の艦艇が上げる黒煙だけが、空に向かって立ち昇っている状態である。

 

「艦長も、早く退艦なさって下さい!」

「いや、俺は責任を取らなければならん。俺のことはいい、お前たちは早く行け!」

 

 しかし空しくも、クロムウェルの心遣いは()()となった。

 急激に浸水が進んだ「コールブランド」は、たちまちのうちに左へ更に傾斜、ついに転覆してしまったのだ。「コールブランド」の艦橋が横倒しとなり、海面に浸かった直後、艦体前方で大爆発が発生した。主砲の装薬となる、カートリッジ型爆裂魔法媒体があちこちへと転がり、衝撃を受けて一斉に爆発し、それが“主砲弾薬庫の誘爆”を誘ったのである。

 主砲弾薬庫の爆発により、「コールブランド」は艦体を真っ二つにへし折ると、第零式魔導艦隊司令バッティスタ、艦長クロムウェル、以下逃げ遅れた多くのクルーを道連れにして、マグドラ群島の海底へと消え去っていった……。

 

 「コールブランド」が沈没した時には、既に海面に浮いている第零式魔導艦隊の艦艇は、ミスリル級魔導戦艦「クラレント」のみとなっていた。その「クラレント」も、艦体後部に集中して魚雷を受けたことで、艦尾から沈みつつあり、艦首が浮き上がってきている。しかし、急速な転覆はしなかったし、主砲弾薬庫の爆発も無かったことから、「クラレント」のクルーは、多数が脱出に成功していた。

 「コールブランド」沈没から30分後、クルーたちが見守る中、「クラレント」は艦首を高々と空へ突き上げ、マグドラ群島の海面に呑み込まれるようにして沈んでいった。

 

 

 かくして、神聖ミリシアル帝国の誇る第零式魔導艦隊…世界最強の艦隊は、グラ・バルカス帝国軍の攻撃によって全滅したのである。

 時に、中央暦1643年4月25日、午前11時09分のことであった。

 

 

 第零式魔導艦隊の全滅を確認したグラ・バルカス帝国海軍東征艦隊は、再度針路を反転してマグドラ群島に接近。そして水上偵察機を発進させて群島全体を偵察した後、空軍の飛行場及び陸軍第17離島防衛隊駐屯地に艦砲射撃を見舞った。

 この砲撃により、空軍基地は管制塔や司令部もろとも全滅し、離島防衛隊駐屯地も大被害を受けたのだが、半地下式になっていた駐屯地司令部が健在であり、第零式魔導艦隊の全滅と空軍部隊の全滅、それにマグドラ群島駐留部隊壊滅の旨を、ルーンポリスに魔信で報告すること()()は可能だった。離島防衛隊の生き残りの面々は、“報告以外に何もできない無念”を噛み締め、グラ・バルカス帝国への報復を誓ったものである。

 

 

 そして陰ながら、その様子を見守る者がいた。堺がこっそり指し回した、独立第1飛行隊のディグロッケ4号機である。光学・魔導・温度・電磁波全てに対するステルスを張って完全に透明化し、マグドラ群島の上空にホバリングしながら、全てをつぶさに観察していたのだった。無論、グラ・バルカス帝国艦隊の戦力も。

 

「こりゃいかん。すぐに、本土と堺司令に報告しなければ!」

 

 ディグロッケ4号機のクルーたちは、即座に報告の打電と魔信を飛ばした。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「急に呼び出して失礼する。提督、緊急事態だ」

 

 4月23日午後0時30分、処は神聖ミリシアル帝国 港街カルトアルパス。

 実務者協議に出ていたリンスイたちから、昼食がてら会議内容の説明を受けていた堺は、港に停泊する艦隊に戻ってきた途端に"(なが)()"に呼び出された。

 

「いったいどうした?」

「これを読んでくれ」

 

 何事かと訝りつつも「長門」艦橋に上がってきた堺に、"長門"は1枚の紙を手渡した。

 

「……これは……!」

 

 それは、ディグロッケ4号機から放たれた報告電である。そこには、マグドラ沖海戦の詳細とグラ・バルカス帝国東征艦隊の戦力、そして今も空母機動部隊捜索中である旨が克明に記されていた。

 

「受信したのは何時だ?」

「11時56分だ。暗号化されていたので、解読に少し手間取ってしまった。解読が終わったのが5分ほど前なんだ」

「そうか、了解。しかし……こうなるとグラ・バルカス帝国は、最初から()()を狙ってたんだな」

「だろうな。昨日宣戦布告してからの、これだ。明らかに“最初から狙っていた”としか思えん。それで提督、どうするんだ?」

 

 実際、宣戦布告があったとはいえ、これは明らかに『想定外の事態』であった。

 

「グラ・バルカス帝国艦隊は、どっちへ向かった?」

「まだディグロッケからの報告が無い。続報待ちだ」

「ふむ、了解」

 

 堺は下顎に手を当て、考え込む。一瞬後、目を見開いた。

 

「襲撃があったマグドラ群島は、このカルトアルパスから西に500㎞。500㎞あるから、今日中に艦隊がここに着くのは無理だが、航空機なら到達できる……まさか!?」

 

 堺の頭に、最悪のシナリオが浮かんだ。「カルトアルパス強襲」である。

 一見すると馬鹿げた誇大妄想にも思えるが、しかし事態の核心を衝いている。カルトアルパスは、紛れもなく神聖ミリシアル帝国の“領土”であり、そこを攻撃することに成功すれば、ミリシアルの顔を潰すことができる。そうすれば、神聖ミリシアル帝国への“求心力”は薄れ、最悪の場合無くなってしまうだろう。

 また、今のカルトアルパスには「世界の強国」として選ばれた各国の代表、そしてそれを護衛する精鋭部隊が集っている。それらを殲滅することができれば、グラ・バルカス帝国は“自国の軍事力の強大さ”を、全世界に知らしめることができる。

 おそらく、こうした事柄はグラ・バルカス帝国の“今後の世界征服”に役立つ筈だ。それに、昨日見たグレードアトラスター級戦艦とこの報告電から考えるに、グラ・バルカス帝国の技術力や戦術は、地球でいう第二次世界大戦(WW2)レベル。ロデニウス連合王国や神聖ミリシアル帝国とは()()()()だ。ムー国以下のその他各国など、“有象無象”としか思っていないだろう。自国の優位がはっきりしているのだから。

 

「やろうと思えば、今日中に空襲の1回くらいはできる、か……!」

「!!」

 

 堺が呟いた一言に、"長門"もはっとした。

 

「提督、では……!」

「ああ。長門、お前はそのままディグロッケからの続報を待て。うちの艦隊(第一護衛艦隊)で最も高い位置に空中線(アンテナ)を持ってるのはお前だ、お前が報告電を受信しやすい。同じ理由で、対空電探を常に入れっ放しにしておいてくれ。空襲があってはまずい。

それと俺は、一時的に旗艦をお前に移す。こうなった以上、最優先すべきは情報収集だ」

「ああ。司令室を開けておくよ」

「すまんな、急に。では俺は、一旦(ゆき)(かぜ)に戻って、司令部移乗の準備をしてくる。そのまま報告の受け取りと対空警戒を続けてくれ」

「承知した。使節団の皆様はどうするんだ?」

「今は確か、マギカライヒ共同体の代表と昼食会中の筈だ。今は無理だ、夜に俺から伝える」

「では、そこはお願いする」

 

 そして「雪風」へと戻った堺は、すぐに「第一護衛艦隊」全艦に対して命令を発した。

 

『缶の圧力を上げ、いつでも出港できる態勢を直ちに整えるべし。グラ・バルカス帝国軍による空襲の可能性あり。各員出港準備並びに対空警戒に努めると共に、敵潜水艦への警戒を怠るべからず。

またこれより、情報収集のため将旗を一時的に『長門』に移す。各員了解されたし』

 

 

 その夜、実務者協議が終わった後で堺はリンスイたちロデニウス使節団の面々を訪ねた。会議の期間中、3人はミリシアル政府が用意したホテルに泊まっているのだ。

 ホテルのフロントで所属と用向きを伝えると、堺はすぐに部屋へと案内された。

 

「おお堺殿、どうしたのだ?」

「いえ、リンスイ卿と皆様への労いの気持ちをこめて、甘味でも差し上げようと思いまして」

「おお、そうか! それはありがたい。さ、どうぞ中へ」

「恐縮です。では、失礼します」

 

 リンスイ直々に出迎えられる堺。だが彼は入室時に、部屋の扉に「入室はご遠慮下さい」の札をかけるのを忘れなかった。そして()()()()で、リンスイは“何か起きたらしい”と察した。

 

「これは堺殿、お疲れ様です」

「ヤゴウ殿、それにメツサル殿。あなた方の方こそ、お疲れ様です。連日の会議でお疲れでしょうから、甘味の差し入れなど如何かと思いまして」

「これはこれは、(かたじけな)い。む? これは……チョコレートじゃないですか! いや、これはこれは……」

 

 堺が差し出した茶色い板状の物体に、目を輝かせるヤゴウ。しかし彼もメツサルも“一廉の外交官”である。リンスイの目の色がおかしいのを見て、彼らはすぐにこれが「甘味の差し入れ」に事寄せた「緊急事態の報告」だと気付いた。

 リンスイは、ちらっと視線だけで部屋の隅に置かれたテレビを示す。意図を察したメツサルが、素早くテレビのスイッチをオンにした。その間にヤゴウが部屋のカーテンの閉まり具合を確かめ、堺は何やら手元のメモ用紙に書き込む。そしてそれを3人に順に示した。

 

盗聴の危険がありますので、ここからは筆談で報告させていただきます

 

 3人が順に頷くのを見て、堺はチョコレートを入れてきた袋にメモを押し込んだ。そしてわざとガサゴソと音を立て、追加のチョコレートを袋から取り出す。

 

「ささ皆様、遠慮なさらずにどうぞ」

「ちょうど甘いものが欲しかったところだ、ありがたくいただこう」

 

 リンスイがそう言って腰を下ろし、ヤゴウが受け取った板チョコを割り始める。その横で堺は、素早く用意した紙に伝達事項を書き込んだ。

 

本日11時頃、カルトアルパス西方500㎞のマグドラ群島にて、ミリシアル艦隊とグラ・バルカス艦隊が武力衝突。ミリシアル艦隊16隻、全滅。群島のミリシアル軍基地は敵航空攻撃と艦砲射撃により被害甚大。カナタ陛下には報告済

 

 紙は3人の手元を一巡した。3人とも口にこそ出さないものの、表情からは明らかに驚愕が読み取れる。そして、リンスイが何やら書き込んで堺に紙を渡した。

 

ミリシアル艦隊の編成は如何に?

 

 堺もすぐさま返事を書き込む。それを横目に、メツサルが「おお、これは旨い」と呟いた。

 

戦艦3、巡洋艦級5、小型艦8

 

 それと一緒に、堺はディグロッケが撮影してきた航空写真を手渡した。炎上し、沈みゆくミリシアルの戦艦が写っている。

 それらの情報を見た瞬間、リンスイの顔が凍り付いた。紙を覗き込んだヤゴウが、「ああ……甘さが染み渡る……」と言いながら固まる。そしてリンスイは、震える手でまた紙に書き込んだ。

 

もしかして:第零式魔導艦隊

 

 それを見て、ヤゴウもメツサルもはっとした顔をした。堺だけが怪訝そうな顔をしているのを見て、リンスイはすぐに文字を書き足す。

 

ミリシアルが誇る、世界最強の艦隊

 

 この説明なら、堺にも腑に落ちた。そして堺は、さらさらと次の報告を書いていく。

 

グラ・バルカス艦隊の残存戦力右の如し。戦艦4、空母4、重巡洋艦3、軽巡洋艦4、駆逐艦19。戦艦は「グレードアトラスター」級1を含む。これは昨日カルトアルパスに来航した艦の模様。進路東、速力16ノットでカルトアルパスに接近中

 

 この情報には、流石に3人の血相が変わった。

 なお、これらの情報もまたディグロッケからもたらされたものである。散々探し回った末に、ディグロッケ4号機はついにグラ・バルカス帝国艦隊を捕捉したのだ。その編成は、グレードアトラスター級戦艦1、ヘルクレス級戦艦1、オリオン級戦艦2、ペガスス級航空母艦4、タウルス級重巡洋艦3、キャニス・メジャー級軽巡洋艦4、キャニス・ミナー級駆逐艦11、エクレウス級駆逐艦8というものである。

 

敵の狙いの1つは本艦隊と思われる。皆様はミリシアルの誘導に従って行動されたし

 

 そして堺が書き込んだ一文に、リンスイは「全てを悟った」と言わんばかりの顔をした。




はい、というわけで第零式魔導艦隊は全滅……対空能力が貧弱すぎたのが不幸でした。
そしてまだ立ち去ってはいないグラ・バルカス帝国艦隊。第零式魔導艦隊に今日降りかかった運命は、「第一護衛艦隊」に明日降りかかる運命となるのか…!?


総合評価7,500ポイント突破!こんなところまで来られるなんて…ご愛読、本当にありがとうございます! そしてまだまだ先は長いです。今後ともよろしくお願い申し上げます!

評価8をくださいましたヘカート2様
評価10をくださいましたf4ejhantom様
ありがとうございます!!
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次回予告。

「第零式魔導艦隊、全滅」の報告は、猛スピードで神聖ミリシアル帝国上層部まで駆け上がった。あまりの事態に震撼するミリシアル政府、迫るグラ・バルカス帝国艦隊。先進11ヶ国会議の行く末や如何に!?
次回「激震のミリシアルと世界会議」

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