鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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いよいよ、タウイタウイの艦隊がムー大陸へ出撃開始です。
グラ・バルカス帝国軍と戦う日も近い…?



126. 出陣、大東洋防衛軍

 中央暦1642年11月25日、ロデニウス連合王国北東部沿岸より北東34㎞地点、タウイタウイ島。

 第13艦隊の面々が訓練に明け暮れる中、司令部の提督執務室では堺が机の上の書類を前にして考え込んでいた。何をしているのかというと、ムー方面に派遣する艦隊の編成を考えていたのである。

 ムー国政府から「軍事同盟に基づく軍事支援」の要請があったことは、堺の耳にも入っていた。そして彼は、連合王国軍総司令官チェスター・ヤヴィン元帥から、「第13艦隊から、ムー大陸方面へ戦力を派遣してくれ」と言われてしまったのだ。このため、彼は誰をムー大陸方面に向かわせるか、言い換えると誰に泊地の留守を任せるか、考えていたのである。

 独立第1飛行隊の活躍により、グラ・バルカス帝国の海軍戦力についてはおよそ判明しつつある。戦力の質自体は地球でいうと西暦1940年代相当と見られ、これは第13艦隊の装備の質と並ぶか少し上であると見られる。そして数がとんでもない。なんと、今判明しているだけでも戦艦30隻前後、航空母艦は大小合わせて40隻、巡洋艦と駆逐艦はもはや数えるのが面倒くさくなるレベル、そして総数は700隻を優に超えると見られているのだ。数で言えば第13艦隊が負けている。航空機の性能でこちらが勝るにしても、非常に厳しい相手であることはまず間違いなかった。

 このため、グラ・バルカス帝国艦隊との正面切っての激突が想定されるムー方面派遣艦隊は、できる限り精鋭を集めて編成しなければならない。しかし、敵が数に物を言わせて別働隊をロデニウス大陸やタウイタウイ方面に回す可能性がある以上、留守を任せる艦隊もまた、同じように精鋭でなければならない。このため、堺はかなり考え込んでいた。

 しかし、いくら考えても「これで良い」と納得できる編成を思い付けない。

 

(仕方ない……。こうなったら、古参組の連中にちょっと意見を聴いてみるか)

 

 そう考えた堺はまず、艦隊の中でもかなりの古参メンバーにあたる”(あか)()”に意見を聴いてみることにした。

 

 

「作戦会議でしょうか?」

 

 呼び出しを受けて、そう言いながら入室してきた”赤城”。どうやら演習中だったらしく、()(そう)を装着して「(かん)(むす)形態」になっている。

 その彼女だが、艤装は明らかに形状がおかしかった。なんと、(ぜん)(しょう)(ろう)として立派な塔型艦橋がそびえ、その前檣楼と後部艦橋の間には2本もの煙突が(きつ)(りつ)している。そして、三連装の大口径主砲が4基、甲板上にデンと据えられているのである。それだけ見れば、どう見ても戦艦なのだが…主砲のすぐ下にある最上甲板は全通甲板となっており、よく見なくても白いラインらしきものが描かれている。それは明らかに航空母艦の要素であった。

 

 実は”赤城”、改二改造を受けたと同時に艦種が変わってしまったのである。今の彼女は「戦艦」でも「正規空母」でもなく、「航空戦艦」でもない。さりとて「戦闘航空母艦」とも異なる。

 彼女の艦種は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「()()()()」である。

 

 

 大事なことなのでもう一度言うが、彼女の艦種は「(せん)(かん)(くう)()」である。

 「お前は何を言っているんだ」と思うかもしれない。だが、本当にこれ以上適切な表現がないのである。

 

 実は、”赤城"は確かに大口径主砲を搭載しているのだが、この大口径砲、実体弾を一切撃たない主砲なのだ。このため、弾薬庫が一切省略されており、砲塔の真下であっても十分なスペースが確保できているのだ。それ故、航空機の発艦に必要な全通甲板と、航空機運用に不可欠である格納庫を確保することができたのである。

 どんな主砲を採用したのかって? それはまた後にお話させていただこう。

 

 ちなみにであるが……読者の皆様は、ロデニウス大陸を初めて訪れた神聖ミリシアル帝国の使節団の面々をピカイアで出迎えた戦艦を、お忘れではないでしょうね?

 そう、あの戦艦の正体こそ、「赤城改二」だったのである。ちょうど改装を終えて新艤装による長距離航海演習を行っていたところであり、そのついでにミリシアルの使節団に自国の実力を見せるため、遠目にであるがお披露目したのだ。陸地からの距離が遠かったため、ミリシアル使節団の面々は甲板に描かれたラインを視認できず、「赤城」を戦艦だと思い込んだのだが。

 

「作戦会議……というよりは相談だな。

ムー国との軍事同盟に基づき、我々はムー救援に向かわねばならん。だが、敵となるグラ・バルカス帝国の軍は、かなりの強敵だ。判明している限りでは、陸軍の装備はボルトアクション式ライフル銃に機関銃、それとチハやハ号に似た戦車。海軍の装備はうちと瓜二つで、特型・(かげ)(ろう)型駆逐艦に5,500トン型軽巡洋艦、(たか)()型重巡洋艦、(しょう)(かく)型航空母艦、(こん)(ごう)型戦艦、(なが)()型戦艦、大和(やまと)型戦艦、それに特型潜水艦のそっくりさん。ただし、数は総勢700隻以上で、第13艦隊より多い。決して油断ができん。航空機は、零戦21型(もど)きに九九艦爆と(すい)(せい)を足して2で割ったような奴、それと九七艦攻擬きだ。ぶっちゃけた話、(しん)(かい)(せい)(かん)相手に戦うようなものと思ったほうが早い」

「これは強敵ですね。慢心してはいけません」

 

 堺の言葉を聴いて、”赤城”も気を引き締めた。

 

「その通り、慢心は厳禁だ。そうなると、本土に残す者もムー大陸へ向かう者も、同じくらい精鋭でなけりゃならない。ムー国政府や第二文明圏全体から期待がかかっている以上、ムー大陸へ派遣する者たちのほうが数が多くなるだろうが……このタウイタウイにも相応の数と質の戦力を残しておかねばらなん。誰を残すべきかと思って、悩んでいるんだ」

 

 堺にそう言われ、”赤城”は一瞬考えた後でこう言った。

 

「お話とご()(ねん)はよく分かりました。では、紙と鉛筆をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わんよ。はい、これ」

 

 堺から紙と鉛筆を受け取り、彼女はさらさらと紙に何かを書き込んだ。そしてそれを堺に返却する。

 

「こんな編成で良いのではないかと考えます」

 

 “赤城”が書き込んだ編成表を見て、堺は満足そうに1つ頷いた。

 

「これは……。なかなか思い切った部分もあるのだな」

「相手が相手ですからね。慢心してはいけません」

「そうだな……そうだった。いや、ありがとう、お前に意見を求めてよかったよ。

演習中に呼び出して済まなかった」

「いいえ、こちらは問題ありません。では、私は演習に戻ります」

 

 そう言い残して、“赤城”は退室した。

 

 

 その後、何人かの古参組の艦娘たちと相談した堺は、”赤城”の案に若干の修正を加えたものを正式に採用し、改めてムー大陸方面派遣艦隊の編成を考えるのだった。

 

 その2日後、堺はヤヴィン総司令官にムー大陸方面派遣軍の編成表を提出し、彼の承認を得た。また、共にムー大陸へ向かうことになる第1艦隊の司令官モース・ブルーアイ中将、陸軍第1軍団の指揮官モッツァラ・ノウ中将、及び海兵隊、空挺隊の指揮官たちとも相談し、いつ出撃するか、日取りを決めたのであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 そして中央暦1642年12月12日 午前7時30分、ロデニウス連合王国 タウイタウイ島。

 タウイタウイ泊地の波止場には、港を埋め尽くさんばかりの大艦隊が集結していた。大小200隻もの艦を収容してなおあまりあるはずの波止場が、船に覆い尽くされている。それはある意味で”異様な光景"と言えた。

 港の周囲には対潜哨戒に当たる水上爆撃機「(ずい)(うん)」、「PBY-5A Catharina(カタリナ)」飛行艇が低空を舐め回すように飛び交い、洋上では泊地残存組の駆逐艦の一部がソナーを通して海中に目を光らせ、敵潜水艦の襲撃に備えている。

 ()(とう)には、ロデニウス海軍が全面的に採用している輸送艦であるルネッサンス型輸送艦やラ・フランス型輸送艦、ウインク型砲艦を改修して作った歩兵輸送艦がずらりと並び、陸軍歩兵や戦車を搭載していく。歩兵の数自体は、陸戦妖精からなる陸軍第13軍団(総勢2万人程度)であるためそう多くないのだが、戦車は別だ。ことにタウイタウイ島を含むロデニウス大陸北東部に数多く配備されているティーガーI重戦車を、輸送しなければならないからである。

 ティーガーIは、ロデニウス連合王国陸軍でも最も強力な戦車だ。垂直装甲とはいえ砲塔前面120㎜、車体前面100㎜、車体側面・後面80㎜の重装甲で(よろ)われており、敵の攻撃をそう簡単には通さない。また、搭載された56口径88㎜砲は凄まじい破壊力を有し、2㎞先からでも84㎜の装甲を穿(うが)つ。この一撃に対応できる戦車は、ティーガーIと同世代の地球の戦車でもそうそういない。ましてまともな陸上機甲戦力のない「この世界」においては、多大な活躍をしてくれるものと期待されている。

 最近の偵察により、グラ・バルカス帝国にも戦車があることが分かっているが、その外見は九七式中戦車チハや九五式軽戦車ハ号に似るそうだ。おそらく性能も、それらと同程度であろうと見られている。それならば、これらの戦車は基本的にティーガーIの脅威にはならない。

 

 駆逐艦の警戒の下、輸送艦は次々と戦車や歩兵を飲み込み、出撃準備を整えていく。艦隊随伴型の補給艦として設計・建造されたサトウニシキ型補給艦も、船内の倉庫に燃料や弾薬を満載し、出撃準備は万全といったところだ。

 タウイタウイ泊地の港内には、(かん)(ろく)のある艦橋を備えた重巡洋艦や見るからに(しゅん)(びん)そうな軽巡洋艦、シャープな艦体に長砲身の高角砲を載せた駆逐艦が()(さき)を並べており、それに混じるようにして丈高い艦橋と長大な砲身の主砲を振りかざした戦艦が、その雄姿を見せつけている。特に目立つのが、戦艦の中では最大の(きょ)()を誇る「()(さし)」だ。他に、海軍の新たな中心戦力となった航空母艦も多数が整列している。

 そして、それらのどの艦よりも……それこそ「武蔵」よりも目立つのが、全長1,600メートル、最大幅400メートルを超えるとんでもない巨体と、そこに据え付けられた4基の巨大なクレーンとが、抜群の存在感を放つ超大型艦である。それこそが、タウイタウイ泊地最大の縁の下の力持ち、改舞鶴(まいづる)型移動工廠艦「(くし)()」である。

 

 今タウイタウイ泊地の港内に集結している艦は、その全てがムー大陸方面へと出撃するものである。盟邦ムー国を救うため、そして世界平和を乱す()(らち)なグラ・バルカス帝国軍に(てっ)(つい)を下すため、ロデニウス海軍第13艦隊は総勢132人もの艦娘を動員して、(ちょう)()ムー大陸へ遠征しようとしていた。

 その編成は、以下の通りである。

 

(戦艦)

金剛型 金剛、()(えい)(はる)()(きり)(しま)

長門型 長門、()()

大和型 武蔵

ビスマルク級 ビスマルク

アイオワ級 アイオワ

(航空戦艦)

()(そう)型 扶桑、(やま)(しろ)

(戦艦空母)

赤城型 赤城

(正規空母)

()()型 加賀

(そう)(りゅう)型 蒼龍

()(りゅう)型 飛龍

翔鶴型 翔鶴、(ずい)(かく)

(たい)(ほう)型 大鳳

(うん)(りゅう)型 雲龍、(あま)()(かつら)()

グラーフ・ツェッペリン級 グラーフ・ツェッペリン

アクィラ級 アクィラ

(軽空母)

(りゅう)(じょう)型 龍驤

(しょう)(ほう)型 祥鳳、(ずい)(ほう)

(じゅん)(よう)型 隼鷹、()(よう)

(重巡洋艦)

高雄型 高雄、(あた)()()()(ちょう)(かい)

アドミラル・ヒッパー級 プリンツ・オイゲン

ザラ級 ザラ、ポーラ

(航空巡洋艦)

()(がみ)型 最上、()(くま)(すず)()(くま)()

()()型 利根、(ちく)()

(軽巡洋艦)

(なが)()型 長良、()()()()()()(くま)

(せん)(だい)型 川内、(じん)(つう)()()

()()()型 阿賀野、()(しろ)()(はぎ)(さか)()

(重雷装巡洋艦)

()()北上(きたかみ)(おお)()()()

(駆逐艦)

()(つき)型 睦月、如月(きさらぎ)弥生(やよい)()(づき)()(つき)()()(づき)(ふみ)(づき)(なが)(つき)

特型 (ふぶ)()(しら)(ゆき)(はつ)(ゆき)()(ゆき)(いそ)(なみ)(うら)(なみ)(あや)(なみ)(しき)(なみ)(あかつき)Верный(ヴェールヌイ)(いかづち)(いなずま)

(しら)(つゆ)型 白露、()(ぐれ)(むら)(さめ)(ゆう)(だち)(はる)(さめ)()()(だれ)(うみ)(かぜ)(やま)(かぜ)(かわ)(かぜ)(すず)(かぜ)

(あさ)(しお)型 朝潮、(おお)(しお)(みち)(しお)(あら)(しお)(あられ)(かすみ)

陽炎型 陽炎、不知火(しらぬい)(くろ)(しお)(おや)(しお)(はつ)(かぜ)(ゆき)(かぜ)(あま)()(かぜ)(とき)()(かぜ)(うら)(かぜ)(いそ)(かぜ)(はま)(かぜ)(たに)(かぜ)()(わき)(あらし)(はぎ)(かぜ)(まい)(かぜ)(あき)(ぐも)

(ゆう)(ぐも)型 夕雲、(まき)(ぐも)(かざ)(ぐも)(なが)(なみ)(たか)(なみ)(ふじ)(なみ)(おき)(なみ)(はや)(しも)(あさ)(しも)(きよ)(しも)

(あき)(づき)型 秋月、(てる)(づき)(はつ)(づき)

(しま)(かぜ)型 島風

Z1級 Z1(レーベレヒト・マース)、Z3(マックス・シュルツ)

マエストラーレ級 リベッチオ

(潜水艦)

UボートIXC型 呂500

三式潜航輸送艇 まるゆ

(強襲揚陸艦)

特殊船(へい)型 あきつ丸

(水上機母艦)

(あき)()(しま)型 秋津洲

(補給艦)

(かざ)(はや)(はや)(すい)

((きゅう)(りょう)艦)

()(みや)型 間宮

(移動工廠艦)

改舞鶴型 釧路

 

兵員輸送部隊

ルネッサンス型輸送艦5隻、ラ・フランス型輸送艦8隻、改ウインク型歩兵輸送艦15隻

 

補給部隊

サトウニシキ型補給艦20隻

 

 実に、第13艦隊だけで戦艦(航空戦艦含む)11隻、戦艦空母1隻、航空母艦16隻、重巡洋艦(航空巡洋艦含む)13隻、軽巡洋艦(重雷装巡洋艦含む)14隻、駆逐艦70隻、潜水艦2隻、その他5隻。それに加えて輸送部隊+補給部隊が48隻。(そう)(そう)たる面子である。

 そして、ここに名前が上がらなかった面々は「留守番組」……万一に備え、ロデニウス大陸を、そしてタウイタウイ泊地を守る者たちである。すなわち、

 

(戦艦)

大和型 大和

クイーン・エリザベス級 ウォースパイト

ヴィットリオ・ヴェネト級 イタリア、ローマ

(航空戦艦)

()()型 伊勢、日向(ひゅうが)

(正規空母)

レキシントン級 サラトガ

(軽空母)

(ほう)(しょう)型 鳳翔

()(とせ)型 千歳、()()()

(りゅう)(ほう)型 龍鳳

(重巡洋艦)

(ふる)(たか)型 古鷹、()()(あお)()(きぬ)(がさ)

(みょう)(こう)型 妙高、()()(あし)(がら)()(ぐろ)

(軽巡洋艦)

(てん)(りゅう)型 天龍、(たつ)()

(ゆう)(ばり)型 夕張

球磨型 球磨、()()

長良型 ()()()()(とり)

(おお)(よど)型 大淀

(練習巡洋艦)

()(とり)型 香取、鹿()(しま)

(駆逐艦)

(かみ)(かぜ)型 神風、(あさ)(かぜ)(はる)(かぜ)(まつ)(かぜ)

睦月型 (きく)(づき)()()(づき)(もち)(づき)

特型 (むら)(くも)(あけぼの)(おぼろ)(さざなみ)(うしお)

(はつ)(はる)型 初春、(ねの)()(わか)()(はつ)(しも)

朝潮型 (あさ)(ぐも)(やま)(ぐも)

(潜水艦)

(じゅん)(せん)3型 伊8

巡潜乙型 伊19、伊26

巡潜乙型改二 伊58

(かい)(だい)Ⅵ型 伊168

特型 伊401

伊13型 伊13、伊14

(潜水母艦)

(たい)(げい)型 大鯨

(水上機母艦)

(みず)()型 瑞穂

コマンダン・テスト級 コマンダン・テスト

(給糧艦)

()()()型 伊良湖

(工作艦)

(あか)()型 明石

 

 以上の面々が、タウイタウイ島に残る者たちである。

 

 また、港内を埋め尽くす132隻の第13艦隊所属艦艇、そして48隻の輸送部隊+補給部隊に混じって、3隻だけ別の艦が浮かんでいた。うち2隻はロデニウス海軍でも採用されている「ウインク型砲艦」に酷似する外見だが、掲げている国旗はトーパ王国のそれである。残りの1隻は戦艦だが、他の艦にはない特徴的な三脚檣を備え、大口径の連装主砲3基を搭載している。そしてメインマストには、ロデニウス連合王国の国旗でも(きょく)(じつ)()でもなく、ムー国の国旗が(ひるがえ)っていた。

 2隻の砲艦はトーパ王国のトルメキア級戦闘艦「トルメキア」と「ロマンシア」、そしてムー国の戦艦は戦艦「ラ・カサミ改」である。

 ロデニウス連合王国からの「大東洋防衛軍結成」の提案には、大東洋共栄圏参加各国は賛成したものの、実際にムー大陸へ出兵するとなると二の足を踏む国が大半だった。そんな中、唯一の例外とも言えるのがトーパ王国で、狙撃部隊2個中隊+砲艦2隻という小規模兵力とはいえ、ロデニウス連合王国に増援を送ってくれたのだ。しかも、この部隊は「コラー中隊」と「サッキア中隊」であり、トーパ王国最強の狙撃部隊である。トーパ王国はグラメウス大陸の監視もしなければならない中で、これだけの戦力を送ってくれたのだ。感謝の言葉しか見つからない。

 そして「ラ・カサミ改」はグラ・バルカス帝国の攻撃によって大破・航行不能となった後、このロデニウス連合王国・タウイタウイ島へ移送され、”釧路”の手で修理されていたのだ。そして、「グラ・バルカス帝国との決戦に際し、ムー本国に帰還せよ」という命令を受けて、ムー国に帰還しようとしていたのである。

 4月のフォーク海峡海戦で大破し、その後ここに運び込まれて修理された(ぜん)()(きゅう)戦艦は今、(ちょう)()(きゅう)戦艦へと生まれ変わった姿を晒していた。

 

「ものすごい艦隊だな、本当に……」

 

 「ラ・カサミ改」の艦橋では、艦長を務めるミニラル・スコット大佐がため息を吐いていた。まあ、大抵の自国の戦艦より遥かに巨大な戦艦を10隻以上も並べられたのでは、そのため息も仕方ないだろう。

 

「はい。まさか、ロデニウス連合王国にこれほどの戦力があるとは思いませんでした」

 

 ミニラルの隣では、副艦長のマーベル・シットラス中佐が「武蔵」を見て目を見開いている。

 

「副長、これならば……この戦力ならば、我々はグラ・バルカス帝国に勝てるだろうか?」

 

 ミニラルの疑問は、(もっと)もであった。

 

「どうでしょう……小官には分かりかねます。グラ・バルカス帝国が強大であることは、疑う余地がありません。ですが、かの国が秘密主義である以上、かの国の力はまだ未知数と言えるでしょう。

しかし今、このロデニウス連合王国の強さもまた、未知数であることが分かりました。未知数同士の対決です……結果がどう転ぶかもまた、神のみぞ知ることだと思います」

 

 慎重に言葉を選びながら発言したシットラスに、ミニラルは「そうだな」と頷いてみせた。

 その時、港に設置されたスピーカーから声が流れ出す。比較的若い男性の声だ。

 

『あーあー、マイクチェック、マイクチェック。よし。

第13艦隊総員に告げる。提督の堺だ。第13艦隊の面々のうち、選ばれた者たちはこれより私と共に出撃、遠くムー大陸へと向かう。その目的は、現在(ゆう)(ほう)ムーを、そして世界平和を(おびや)かしているグラ・バルカス帝国に対し、その軍を破砕し、平和を守り抜くことにある。

第二文明圏の代表国たる我が国の(めい)(ほう)は、我々に頭を下げて、グラ・バルカス帝国軍を撃破してくれと依頼してきた。ならば、我々はそれに全力で応えねばならぬ。故に私は、ムー方面派遣部隊の諸君全員に指令する。我が国を、ムーを、そして世界平和と秩序を脅かすグラ・バルカス帝国軍を、全力を以て駆逐せよ、と。

最後に、今度の敵はこれまでで最も強大だ。深海棲艦を相手にしている……といっても過言ではない。当然、(ごう)(ちん)のリスクは覚悟しておかなければならないが……諸君に厳命しておく。絶対に死に急ぐな。敵の捕虜になったとしても、最期の一瞬まで生存の努力を諦めるな。全員がここに生きて戻れることを、私は心から願っている。

また、泊地に残る皆には、長期にわたって留守を守ってもらわなければならないと思われる。この任務は精鋭でなければ務められない。つまり、ムー大陸へ出撃する者、ここに残る者、そのどちらもが同じように精鋭であるという覚悟を忘れないでもらいたい。

私からは以上だ。ではこれより、第13艦隊出撃の壮行式を執り行う! まあ、壮行式といっても音楽を流すだけになるが……必要ならば今のうちに、姉妹との挨拶を済ませておくように!』

 

 堺の台詞が途切れると、スピーカーからは音楽が流れ出した。最初に流れてきたのは、なんとムー国の国歌である。このタウイタウイに「ラ・カサミ」乗り組みのムー人たちがいるのに配慮して、堺が流すよう命令したものだった。「我々は決して盟邦を軽んじたりしない」という意志の表れである。

 

「これは……我が国の国歌!? まさか、我々に気を遣ってくれているのか!」

「これは、なんとも(いき)な計らいですな……」

 

 これにはミニラルもびっくりである。その隣でシットラスは胸が熱くなっていた。

 ムー国の国歌が終わると続いてトーパ王国国歌、それにロデニウス連合王国の国歌が流され、そして「軍艦行進曲」がこれに続く。「軍艦行進曲」が終わったタイミングで、堺が再び声をかける。

 

『えー諸君、軍艦行進曲が流れたんで、気が引き締まっていることと思う。次の曲を以て壮行式を終了し、我々はムー大陸に向けて出撃する。

最後の曲は、俺からリクエストがあって流すものだ。繰り返すが、我々はムーからも、我が国の政府や軍部からも、そして第二文明圏全体からも期待をかけられている以上、何としてでもグラ・バルカス帝国の勢力を叩き出さねばならんのだ。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

また、我々はタウイタウイ泊地に仲間を残し、遠く離れた地へ向かわなければならないが、これは決して()()()()()()。我々に()()()()()あらば、我々はそれに()()()()()る必要がある。()()()()()()()()()()、とな!』

 

 堺がそう言い終えた瞬間、トランペットやトロンボーンといった力強い金管楽器の音色により、聴いていると何だか勇気を与えてくれそうな曲が流れ出した。

 そう、「宇宙戦艦ヤ◯ト」の前奏である。堺がリクエストしたのは、この「日本アニメの金字塔」といっても過言ではない名アニメの主題歌だったのだ。

 現代日本の海上自衛隊も、遠方へ出撃する際には「必ずここへ帰ってくる」という決意を込めて、この曲を流すことがあるそうである。堺はそれに倣ったのだ。

 

 「宇宙戦艦ヤ◯ト」が流される中、ある1隻の輸送艦では「運命の出会い」が発生していた。

 第13軍団に「第888重戦車小隊」として10輌が配備されているティーガーI重戦車。それらは全て”あきつ丸”の艤装に格納されていたのだが、そこには当然、ティーガーIの乗員たちも乗り込んでいる。その中に、例の”ミハエル・ヴィットマン”と呼ばれる妖精も含まれており、小隊長を担当していたのだが……そこへ、彼の後ろから声をかける者があったのだ。

 

「これは、(たい)()殿!」

 

 現時点で妖精ヴィットマンには、「陸軍大尉」の肩書きが与えられている。……何の因果か、前世と同じ階級(ただし前世では、「大尉」の肩書きの前に「SS」の文字列が付与されていた)だ。

 なので、妖精ヴィットマンが「大尉殿」と呼ばれることは別段おかしくない。おかしくないのだが……呼ばれた瞬間、妖精ヴィットマンはこう感じたのだ。この呼び方は、普通のそれとは違う、と。まるで、ロデニウス連合王国陸軍大尉としての肩書き以上の何かを含んでいるように感じられたのだ。

 妖精ヴィットマンが振り返ると、そこには別の妖精が(たたず)んでいる。直立不動でただ立っているだけなのだが、その身体からは凄みのようなものがにじみ出ていた。

 

「どうした?」

 

 妖精ヴィットマンが尋ねると、その妖精ははきはきと答えた。

 

「は! 我々の搭乗する戦車の整備が終わりましたので、報告に上がりました!

それと、我々は本部隊においては新兵となりますので、一度隊長殿にご挨拶に上がろうと思った次第であります!」

 

 そう言って、その妖精は敬礼したのだが……それを見た瞬間、妖精ヴィットマンは驚きのあまり真円まで目を見開いた。

 ロデニウス連合王国軍における敬礼は、基本的に大日本帝国軍のそれに似ている。右肩を90度外転し、右肘を目一杯曲げ、右手の親指を掌につくまで内転し、そして右手の親指を除く各指の付け根の関節を軽く曲げた状態で、右手の人差し指を額に軽く当てる、という形だ。現代日本の警察官や自衛官がやっている敬礼と似たようなもの、と思ってもらえば良い。

 しかし、この妖精の敬礼はそれとは全く異なっていた。彼はただ、右肩を140度程度屈曲し、右手を上げただけの敬礼をしていたのだ。小学生が発表しようとして手を上げている姿を思ってもらえば、イメージできるだろう。

 

 ……そして、この妖精が行っている敬礼は、ロデニウス連合王国では絶対に知られていないものであった。そう、かのナチス・ドイツ式の敬礼だったのである。

 

(な、何故その敬礼を知っている!? ……まさか!)

 

 思いがけない敬礼に驚きつつも、妖精ヴィットマンはどうにか口を動かした。

 

「君、所属と官姓名は?」

 

 妖精ヴィットマンが尋ねると、その妖精はナチス式敬礼をしたまま答えた。

 

「は! 小官はロデニウス連合王国陸軍第13軍団・第888重戦車小隊……いえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()S()S()()5()0()2()()()()()()所属、クルト・クニスペル(ちゅう)()であります!」

 

「!!」

 

 なんと、妖精ヴィットマンの同郷人だったのだ。つまり、地球からの転生者だったのである。それも、ヴィットマンと同じく武装SSの所属であった。

 しかもクルト・クニスペルといえば、いわゆる「ティーガーエース」の1人だ。つまり、凄腕のティーガー乗りである。頼もしい味方が加わったものだ。

 

「これは失礼した。私はミハエル・ヴィットマン、階級は大尉だ。()S()S()()5()0()3()()()()()()()()、今は第888重戦車小隊の隊長を務めている。

まさか、クニスペル中尉とまた共に戦えるとは思ってもいなかった……。よろしく頼む!」

「こちらこそ、光栄であります。今後ともよろしくお願いします!」

 

 かくて、かつて地球で共に戦ったドイツ軍人は、またここで共に戦うことになったのである。

 

 

 1番から4番までのフルバージョンで「宇宙戦艦ヤ◯ト」が流された後、スピーカーから堺の声が流れる。

 

『ロデニウス連合王国海軍第13艦隊・ムー派遣部隊、出撃せよ!』

 

 号令が下った直後、艦隊の先鋒を務める駆逐艦「早霜」「朝霜」「清霜」が一斉に動きだす。続いて軽巡洋艦の「由良」、それから2隻の利根型航空巡洋艦が外海へと向かう。それに続いて、装いを新たにした「長門」が動き出した。

 “長門"はフォーク海峡海戦で()(そう)を失ってしまったが、艤装を再建造すると同時に(かい)()改造を施しており、結果的にパワーアップを果たしていた。今の彼女の艤装には、新開発の「試製41㎝三連装砲」2基、そして元からある「41㎝連装砲」2基が装備されている。メタい言い方をするなら、ゲーム版「長門改二」の姿になったのだ。

 ただし、ゲーム版「長門改二」とは異なる部分もある。その最たるものが、前檣楼基部に設置された「戦闘情報室」……いわゆるCICだ。

 艦橋とは別にCICを設置するメリットは、指揮系統の全滅のリスクを減らせることだ。たとえ艦橋に被弾したとしても、CICが無事ならば艦の指揮系統が崩壊することはない。十分な艦内通信システムや強力なレーダーを用意できるならば、CICを導入するメリットは大いにある。

 しかし、CICを設置したりする艦内スペースの余裕がない、駆逐艦のような小型艦は仕方ないとしても、旧日本海軍の艦艇で明確な戦闘指揮所を搭載した艦艇は少ない……と言うか無いに等しい。一方、当時の米海軍の艦艇、特に戦艦や空母といった主力艦にはCICが設置されていた。それを問題視した堺の采配により、「この世界」に転移してから改二改造を受けた艦娘の艤装には、CICを積極的に導入しているのである。

 

 今回の出撃における”長門”には、2つの役割が持たされていた。1つは当然、艦隊の主力を担う艦娘の1人として、敵艦隊を迎え撃つ役割。そしてもう1つは……艦隊旗艦である。つまり、彼女は堺の乗艦となったのであった。

 こうなったのには、理由がある。”長門”はフォーク海峡海戦においてグラ・バルカス帝国の戦艦との交戦に敗れ、艤装を失うという屈辱を味わった。また、自身の艤装に所属していた妖精たちを処刑されるという事態にも直面した。それを鑑みた堺の判断により、「(ふく)(しゅう)の機会を持たせる」ということで旗艦を任されることになったのである。

 

 そんな「長門」に続いて、戦艦「陸奥」、航空戦艦「扶桑」「山城」の艦尾が泡立ち、これらの戦艦は波を()()てて出撃を開始する。彼女たちの他にも次々と戦艦や巡洋艦、駆逐艦、航空母艦が(ばつ)(びょう)し、タウイタウイ泊地を出港して外洋へと向かう。その艦隊の中心には、他の艦より(ひと)(きわ)目立つ巨体を有する「釧路」もいた。砲艦「トルメキア」「ロマンシア」と戦艦「ラ・カサミ改」も、この「釧路」と共に艦隊のほぼ中心にいる。艦隊の最後尾を固めるのは、戦艦「武蔵」と複数の軽巡洋艦・駆逐艦だ。

 

 戦艦「長門」の艦橋に立ち、堺は出撃する艦隊を見送っている艦娘たちを眺めている。彼女たちは堤防の上を走ったりしながら、仲間の出撃を「(ぼう)()れ」で見送っていた。

 

(留守は頼んだぜ……。俺は、出撃部隊の面々を生きて帰すから……!)

 

 そう思いながらも、彼は大きな重圧を感じていた。

 グラ・バルカス帝国は、パーパルディア皇国など比較にならないような強大な国家だ。これまでに判明している技術力と物量から考えれば、深海棲艦を相手に戦うようなもの……と言ってもあながち間違いではない。そんな敵である以上、轟沈する艦娘が出てもおかしくないのだ。

 そして、艦娘たちの生死に関わる一切の責任は、艦娘に命令を出す提督たる堺自身にある、ということになる。

 

(ここまでの責任の重さを感じる出撃は、地球でもなかったぞ……)

 

 その責任の重さはそのまま、敵の強大さに直結している。

 

(最善は尽くすが……艦娘たちや妖精たちのうち、いったい何人が、生きてこのタウイタウイの土を踏めるのか……。そして俺自身も、再びこの土を生きて踏めるだろうか?)

 

 それは、恐ろしい予感であった。

 その時、

 

(ん? あれは……)

 

 堺の目は、港の入り口に立つ灯台に向けられた。灯台のすぐ側に、1人の女性が立っている。詳細な容姿は不明だが、かなりの長身にこれまた長いポニーテールを有したその女性が誰であるか、堺には直感で分かった。

 と、その女性の影が何やら布のようなものを右手に持ち、それを振る。それは帽子でも旗でもなく、どちらかというとハンカチかスカーフのような、1枚の布のように見えた。そして、その布の色は……海の青や堤防の白っぽい色とは明瞭なコントラストをなす、赤だった。

 

(ったく、アイツ、(いき)なことしてくれやがる……!)

 

 堺はつい、苦笑いをした。

 

(あの真っ赤なスカーフが()()()()かなんて……俺のためとも取れるし、仲間のためとも取れる。だが、()()()()()()()()()()()()()

そしてそんなもの振られたら、()()()()()()って言わなきゃならねえじゃねえか……!)

 

 そして彼は、進行方向の水平線を睨む。

 

(そうか……そうだったな……。俺はなるべく全員を、生きて返すんだ!)

 

 そんな堺の思いを乗せて、総勢132+48+3隻からなる大艦隊は、タウイタウイ泊地を出港、南下していった。

 

 同じ頃、港街クワ・タウイを根拠地とするロデニウス連合王国海軍第1艦隊、そして多数の輸送船がクワ・タウイの港から出港している。輸送部隊と補給部隊を合わせて100隻もの輸送船が動員されており、それにはモッツァラ・ノウ中将率いる陸軍第1軍団の面々と、これが初実戦となるロデニウス軍第1・第2海兵師団、第1・第2・第3空挺団、そして陸軍第2・第3工兵連隊が分乗していた。それを護衛する、モース・ブルーアイ中将率いる第1艦隊は、戦艦こそいないものの、量産祥鳳型となる専任護衛空母2隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦8隻、駆逐艦40隻が動員されており、第1艦隊所属艦艇の8割にも当たる艦艇が、ムー大陸へと向かいつつあったのである。

 この第1艦隊及び輸送船団と第13艦隊は、洋上で合流(ランデブー)した後連合艦隊を組織して、ムー大陸へと向かったのである。これが、ムー国に対するロデニウス連合王国海軍・陸軍兵力の派遣の始まりであった。

 

 

 そして、ムー国への援軍はこれだけではない。航空部隊の派遣も予定されていた。

 後日、ロデニウス連合王国から多数の航空機がムー大陸に向けて順次飛び立っている。陸軍戦略航空軍から派遣された第11・12戦略航空爆撃団、そして海軍の第11・12・13・14航空艦隊(基地航空隊)であった。

 陸軍戦略航空軍は、爆撃機として「B-29改」、護衛戦闘機として「F-86D改」を装備している。また、海軍の航空艦隊は爆撃機として「一式陸上攻撃機」の各型、護衛戦闘機として「零戦21型」ないし「零戦52型」、「一式戦闘機 (はやぶさ)」の各型、迎撃戦闘機として「三式戦闘機 ()(えん)」、「(らい)(でん)」を装備する他に、”護衛戦闘機兼対地襲撃機”として「()(でん)(かい)()」を装備していた。

 フォーク海峡海戦での交戦記録から、グラ・バルカス帝国の艦上戦闘機は零戦と同等クラスの性能を有すると見られている。零戦と同等クラスだとすれば、最高速度はおよそ時速550㎞前後、航続距離は約2,500㎞内外と見られ、運動性能や取り得る戦術についてもある程度推測できる。その零戦に対して、「紫電改二」の性能の優位は明らかであった。

 「紫電改二」の最高時速は644㎞。時速にして、零戦よりも約100㎞も優速だ。また、防弾装備もしっかりしている他、零戦とも張り合える程度の運動性能を持ちながら、機首13㎜機銃2丁、主翼20㎜機銃4丁と絶対的に優勢な火力を持つため、制空戦闘機としては優秀だ。その上、20㎜機銃は上手くすれば対戦車戦にも使えるし、「紫電改二」は250㎏爆弾2発を抱えて戦闘爆撃機としても運用できる。そして実際、「紫電改二」はカルアミーク王国での反乱鎮圧の際に対地襲撃機として運用され、十分な成績を出している。そうした事情から、「(れっ)(ぷう)一一型」の配備に伴って艦上機としては運用されにくくなった「紫電改二」が、対地襲撃機に転用されたのである。

 また、これと同時に人知れずこっそりと動き出した飛行隊が、独立第1飛行隊である。そう、ディグロッケのようなUFOを装備した飛行隊であった。敵のレーダー網を()(まん)しながら索敵するには絶好の機材を有しているため、戦況に影響するところ大であると堺が判断して、動員したのだ。

 

 

 こうして、ロデニウス連合王国は盟邦ムー国を救うため、そしてグラ・バルカス帝国軍を打ち破り平和を守るため、ムー大陸へ軍隊を派遣した。

 おそらく、戦いの刻は近い。果たして勝利の女神は、ロデニウス軍とグラ・バルカス軍のどちらに微笑むのだろうか……?

 

 

 そして出港してからしばらく時が経ち、ロデニウス大陸の南方400㎞の海域まで来た時、堺は突如(とつじょ)として全艦に進路変更を命令した。そして、こうも命じたのである。

 

「全艦、戦闘配備。航空隊発進用意。目標、ロホテン島」




はい、いよいよグラ・バルカス帝国軍との本格的な衝突が始まろうとしております。ついに出撃を開始した第13艦隊、彼女たちの行く先に勝利はあるのか…?

そして、まさかのクニスペルさんがこちらでも登場。既にアズレンクロスの某二次創作で登場している彼ですが、拙作ではどんな活躍をするか…今後に期待です。


UA62万突破、お気に入り登録2,300件突破…!! それに、総合評価も9,000ポイント到達を目前にするなんて…!
このネタのごった煮がこんなところまで来られたのも、偏に拙作をご愛読してくださっている皆様のおかげでございます。本当に、ただただ感謝の意しかございません…!

評価5をくださいましたニベア様
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評価10をくださいましたsiosaba01様、和太様、元鶏支店長様、sato905様、第一護衛隊群様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!


次回予告。

タウイタウイ泊地を進発し、そのまま一直線にムー大陸へ向かうかと思われたロデニウス連合王国軍・ムー派遣部隊。しかしその前に、堺は艦隊の矛先をロホテン島へ向けさせる。そこには、グラ・バルカス帝国軍の潜水艦隊のための基地が築かれていた…
次回「離島強襲! ロホテン島の戦い」

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