鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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前回についてですが……バッサリ言えば炎上しましたね。ある程度は覚悟しておりましたが、思った以上に反響が大きかったので、正直言って驚いています。ですがこれは、拙作がそれほど多くの方にお読み頂いていることの裏返しと言えるでしょう。
様々なご意見も頂いたわけですが、どれも参考になる意見でした。振り返ってみれば確かにご意見の通りですので、ここで一度見つめ直しを図りたいと思います。初心忘るべからず、とはこういうことなのでしょうね。



133. 揺れ動く世界(1)

 中央暦1643年2月15日、ロデニウス連合王国 首都クワ・ロデニウス。

 日本からの建築工学の伝来や、ムー国の都市開発技術の流入などを受けて、もともとクワ・トイネ公国の公都クワ・トイネだったこの町は、今やすっかり近代都市に変わっていた。()(ぬき)通りの幅は広げられ、アスファルトによって平らに整地されている。その上を多くの自動車が走り抜け、人々が足しげく行き交っていた。戦時下であるにも関わらず、人々の往来は多い。だが、あちこちに戦時国債購入の励行ポスターや徴兵ポスターが貼り出されるなど、戦争の雰囲気が漂っていた。

 戦争になった時、クワ・ロデニウスにおいて最も雰囲気がピリピリするのはどこか、と10人に尋ねたら、10人全員の意見が一致するだろう。それは、連合王国軍総司令部である。

 総司令部は、クワ・ロデニウス北部の郊外に設置された五角形の建物に入っている。これはタウイタウイ泊地から伝えられた、米国の国防総省に倣ったものだ。5階建ての建物の中には、ロデニウス連合王国軍の全てを統括する機能が揃えられている。

 その総司令部において、会議が行われていた。出席者は総司令官チェスター・ヤヴィン元帥、陸軍大臣コルビー・ハンキ大将、海軍大臣ゴーダ・ノウカ大将、空軍大臣ウルダ・アルデバラン大将を中心に、各軍の参謀クラス、陸軍の各軍団や海軍の各艦隊の指揮官、そして空軍・海兵隊・空挺隊の幹部たちが勢揃いしている。

 ただし、少なくとも4人、参加していない者がいる。陸軍第1軍団指揮官のモッツァラ・ノウ中将、同第13軍団の"あきつ丸"中将、海軍第1艦隊の司令官モース・ブルーアイ中将、そして同第13艦隊司令官の(さかい)  (しゅう)(いち)中将だ。この4人は現在、部下たちを率いてムー方面に出撃してしまっているから、致し方ないのだが。

 

「皆集まったようだな。ではこれより、軍事部会を始める」

 

 出席者たちが揃ったところで、総司令官ヤヴィン元帥が重々しい声で開会を宣言した。

 

「今回の議題は2つだ。1つは、各部隊からの近況報告と、それに付随して何か問題点がある場合にはそれへの対処の検討。そしてもう1つは、陸・海軍と海兵隊の3軍合同で提出された"ある作戦案"の検討だ。

諸君には活発な討議を期待する」

 

 彼に続いて、陸軍大臣ハンキ大将が口を開いた。

 

「ではまず陸軍のほうから、近況報告を頼む」

 

 この言葉を受けてまず真っ先に起立したのは、陸軍第2軍団の指揮官カテージ・イフセン中将だった。トーパ王国で魔王ノスグーラの討伐に当たった指揮官である。

 

「我が第2軍団では、第13軍団からの支援を受けて、やっと全兵の機械化が完了しました。ムー大陸のような平地であれば、どの軍団よりも早く展開できる自信があります。ただ、練度はまだ十分とは言い切れません。タウイタウイ島から伝えられた戦術教書を元に、更なる練度向上に努めたいと考えます」

 

 イフセンは早くから、戦車や自走砲を活用した機甲師団に注目していた。もともと彼はクワ・トイネ公国軍で東部方面騎士団を率いており、騎兵を使った機動戦法を研究し、また得意としていた。そのため、歩兵にまで高い機動力を持たせられる機甲師団の戦術は、彼にはうってつけだったのだ。

 さらに、彼は魔王討伐の際に、戦車や自走砲の威力を改めて痛感した。そして、自身の率いる第2軍団を全面的に機械化することを目指したのである。

 それがようやく、全て完成したのだ。今や彼が率いているのは、鋼鉄の軍馬に乗った歩兵であり、また戦車であり、あるいは自走砲であった。

 

「我が第3軍団では、狙撃部隊の帰国が決定しました。どうやら所定の学修要件を満たしたようです。流石にかの国のコラー中隊やサッキア中隊には勝てませんが、それでも大抵の狙撃兵よりは高い技量を得たものと期待しております」

 

 続いて、陸軍第3軍団のクワルク・サムダ中将が発言した。

 サムダはクイラ王国の出身であり、もともと獣人で編成された山岳部隊を率いていた。山岳戦の基本は、地形を生かし、敵になるべく存在を気取られずに戦うことだ。そのため、彼は軍団が組織されて以来、ことさら狙撃に力を入れた。

 そして今回、彼は100人近い部下たちを「交換軍事留学生」としてトーパ王国に派遣し、狙撃の練度を高める実技実習をさせていたのだ。それが修了し、全員卒業と認められたようだ。

 

 トーパ王国は寒冷な気候であり、そのため食糧事情は貧しいものがあった。殊にたんぱく源はそうだった。

 このため、トーパ王国では漁業の他に狩猟も盛んであり、クロスボウによって獲物を遠距離から狩る戦法が流行っていた。それを軍事力に転用して、クロスボウによる弓撃部隊が組織され、この弓撃部隊はその戦闘力の高さから、第三文明圏外の諸外国から一目置かれていたものである。

 ロデニウス連合王国とトーパ王国が国交を開設し、さらに大東洋共栄圏が組織されると、弓撃部隊は瞬く間に装備を更新した。つまり、武器をクロスボウからボルトアクション式小銃に変えたのである。

 ボルトアクション式小銃は極めて高い威力と素晴らしく長い射程を両立し、また命中精度も非常に高かった。他にも、扱い方がクロスボウに似るという利点もあった。このため弓撃部隊は速攻でこの武器の扱いに熟練し、そのまま優秀な狙撃部隊に変貌したのである。その熟練度は凄まじく、トップクラスの狙撃手ならアイアンサイトで300メートル先の人間の頭部を一撃で撃ち抜くこともできる。まさに「異世界に転生したシモ・ヘイヘ」である。こんな化け物が2人もいるのだから、トーパ王国恐るべしである。

 

 その優秀な狙撃部隊に、ロデニウス軍も学んだのであった。

 

「我が第4軍団では、『陸戦は砲火力が全てを決める』を信念に、大型野戦砲の扱いの習熟を目指しています。また、非常に困難な方法であることは承知の上で、同時着弾射撃の訓練も開始しました。第13軍団不在の状況では、同時着弾射撃は非常に困難ではありますが、せめてその真似事はできるようにしたいと考え、訓練に励んでおります」

 

 これは第4軍団指揮官リケッタ・パタジン中将の報告だ。

 「陸戦では砲火力が全てを決める」。パタジンのこの考えは、(せい)(こく)を射ている。現代の陸戦では、砲火力を集中することによって如何に敵の行動の自由を奪うかが、勝利の鍵となるからだ。

 なお、パタジンがこの考えに行き着いたのは、ロデニウス戦役が原因であった。中央暦1639年の4月に、当時のロウリア王国がロデニウス大陸を統一しようとして、クワ・トイネ公国並びにクイラ王国に仕掛けた戦争である。

 あの当時ロウリア陸軍は、突如敵側に参戦してきた謎の部隊……それが日本国のタウイタウイ泊地の部隊だった……から強力な爆裂魔法(だと当時は思っていたが、後から判明したところでは大砲の砲撃だった)を浴びせられた。それも、非常に遠くから撃たれたものであり、ロウリア陸軍は行動の自由を失ったまま敵歩兵に蹂躙され、最後には敗戦したのだ。その戦訓に鑑み、パタジンは砲兵火力を重視するようになったのである。

 

「ふむ……どの部隊も、(きょう)(どう)部隊不在の状況でも訓練に励んでいるようだな」

 

 ハンキがコメントすると、パタジンが応じた。

 

「もちろんであります。第13軍団抜きでも、我々もやることはやれるのだ、と示さねばなりません故」

 

 他の指揮官たちも、同感とばかりに頷いている。

 すると、海軍の提督たちも報告を始めた。

 

「海軍第3艦隊より報告です。第三文明圏のリーム王国海軍は現在、気になる動きは特に見せておりません。ですが、あの私掠船騒ぎを起こした国であり、我が国に対する潜在的敵対国家である以上、油断がなりません。引き続き、フィルアデス大陸方面の監視を続けます」

 

 こう報告したのは、第3艦隊司令官コンテ・パンカーレ中将だ。かつてのクワ・トイネ公国海軍第2艦隊司令である。

 中央暦1641年秋の私掠船騒動以来、ロデニウス連合王国はリーム王国を「潜在的敵対国家」と見なし、監視などの対応と情報収集を行っていた。具体的には海賊の取り締まりを兼ねてフィルアデス大陸沖を哨戒する、商人を装った「草」(現地定住型諜報員)や「そよ風」(移動行商ついでの情報収集)を派遣する、等である。これ以外に、一部で非合法的手段も用いていた。

 なお、「草」「そよ風」は、外務省や大東洋共栄圏総合管理庁で使われている隠語である。

 

 その"非合法的手段"を一手に担う海軍第13艦隊情報局から報告係として派遣されている女性が、手を挙げる。

 

「海軍第13艦隊、情報局長の(あお)()です!」

 

 そう、「第13艦隊最大のパパラッチ」こと"青葉"である。

 

「こちらからは、グラ・バルカス帝国関連とリーム王国関連で報告があります。

まずグラ・バルカス帝国ですが、遡ること10日前、2月5日にムー大陸西部ニグラート連合・バルチスタ岬の沖合いで、世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊が交戦しました」

 

 彼女が話し始めると、全員の視線が彼女に集まった。

 

「結果を先に申し上げますと、世界連合艦隊はグラ・バルカス帝国艦隊の撃滅に失敗、それどころか参加艦艇約500隻のうち約320隻を失い、大敗しました」

 

 その途端、ざわっと全員がどよめいた。

 

「なんだと!? あの世界連合艦隊が、惨敗!?」

 

 第4艦隊司令官のプロヴォロス・シャークン中将が真っ先に声を上げる。

 

「はい、(しょう)(しん)(しょう)(めい)の大敗です」

 

 対して、"青葉"は平然としたものだ。

 

「中央世界と第二文明圏の精鋭を集めた艦隊が、大惨敗だと!? 確かなのか?」

 

 なおもシャークンが詰め寄った時、

 

「あり得る話だろう」

 

 ヤヴィンが口を挟み、ノウカも同意するように頷いた。

 

「堺殿の分析では、グラ・バルカス帝国の技術力は第13艦隊と同等以上とのことだ。それほどの艦隊が相手なら、世界連合が壊滅しても不思議はない。何しろ我々ですら、ムーの艦隊が相手でも余裕で勝てるのだ。その我々が戦列艦などに負ける道理がない。グラ・バルカス帝国も同じだ」

 

 ヤヴィンとノウカは、堺からグラ・バルカス帝国の軍事力について直接聞いているため、予め世界連合艦隊の大敗を予見できていたのだ。

 

「それに、堺殿はグラ・バルカス帝国艦隊を相手取るのは、第13艦隊を敵に回すも同じだと言っていたからな。彼の報告なら、間違いはないだろう」

 

 ノウカがヤヴィンの後を受けた。そして"青葉"に顔を向ける。

 

「それはそれとして、世界連合艦隊の他に神聖ミリシアル帝国が主力魔導艦隊を派遣していたはずだ。それについては、どうなった?」

「はい、実は……」

 

 言いながら、"青葉"は持参していたバッグから写真の束を取り出し、それを会議室のテーブルにぶちまけた。

 

「ご覧の写真の通り、グラ・バルカス帝国艦隊の猛攻撃に遭い、空母部隊は壊滅です。戦艦や巡洋艦を中心とする水上砲戦部隊は、敵と艦隊決戦を行ったものの、弾切れになるまで戦って、結局敵を撃滅できませんでした。ミリシアル艦隊約100隻のうち、少なくとも半数は撃沈され、多くの艦が損傷したようです。

また、神聖ミリシアル帝国の航空機……失礼、『天の浮舟』でしたね、それらはグラ・バルカス帝国の戦闘機に勝てず、射撃の的のようにバタバタ落とされました。公式発表がないので詳細は不明ですが、少なくとも300機は撃墜された、または母艦と共に海没して失ったようです」

 

 彼女がぶちまけた写真は、「ディグロッケ」から撮影されたミリシアル艦隊及び航空隊の戦いぶりだった。撃墜される「エルペシオ3」や、魚雷を受けて沈みゆく双胴の空母らしき艦艇、爆発炎上する戦艦が写っている。

 

「なっ……!?」

「これは……!」

「世界最強のミリシアル艦隊でも、敵を撃滅できなかったのか……」

 

 出席していた幹部たちが、押し合いへし合いしながら写真を覗き込む。ある者は息を呑み、ある者は口をぽかんと開けて絶句し、またある者は冷や汗を流す。軍総司令官ヤヴィンは泰然たる様子に見えたが、よく見ると口元がひきつっていた。

 

「また、神聖ミリシアル帝国はこの艦隊以外に、とんでもないものを持ち出しました。それがこちらです、ご覧ください」

 

 "青葉"はとっておきにしていた写真をテーブルに出した。空中戦艦「パル・キマイラ」を捉えたものである。

 

「何だこれは……!」

「神聖ミリシアル帝国には、こんなものがあるのか……!」

「なんて大きさだ……」

 

 出席している幹部たちも、驚きを隠せない。

 

「これは?」

 

 アルデバランに尋ねられ、"青葉"は説明を開始した。

 

「敵との通信を傍受した結果等から判断するに、これは『パル・キマイラ』という兵器で、どうやらラヴァーナル帝国が作ったもののようです。おそらくミリシアルは、国内で発掘したこれをリバースエンジニアリングし、自国の軍に編入しているのでしょう」

 

 この非常識的な兵器が「古の魔法帝国」……「ラヴァーナル帝国」の産物だと分かり、幹部たちが顔をひきつらせた。

 ただでさえ「この世界」の住人には、古の魔法帝国の恐怖が魂まで刻み込まれている。そのため魔帝絡みのものとなれば、心穏やかではいられないのだろう。平然としているのは、"青葉"のような異星人(エトランゼ)くらいである。

 

「神聖ミリシアル帝国は、バルチスタ沖の戦いにこれを2隻投入しました。その性能は凄まじく、パル・キマイラは単艦で多数のグラ・バルカス帝国機を撃墜し、40隻程度の敵艦隊でも単艦でこれを殲滅しました。しかし、1隻をグレードアトラスター級に撃墜され、撃退されております」

「「「!!?」」」

 

 会議室の空気が凍りついたように、"青葉"には思えた。

 

「まさか……!」

「古の魔法帝国の兵器を、げ、撃墜……!?」

 

 ほとんど何の物音もない、深海のような沈黙が10秒ばかりも続いた後、幹部たちがざわざわと呟き始める。

 

「それは……本当なのか?」

 

 そんな中、"青葉"に重々しい声で尋ねたのはヤヴィンである。

 

「はい、その証拠がこちらです」

 

 "青葉"は新たな写真を出した。空中で爆発し、そして海面でもう一度爆発して沈みゆく「パル・キマイラ」を捉えたものである。

 

「「「………」」」

 

 ほぼ完全な物的証拠を前に、再び出席者たちは沈黙を余儀なくされた。

 

「以上より、グラ・バルカス帝国艦隊が非常に強力な敵であることは、皆様ご承知いただけたものと思います」

 

 "青葉"がそう言った直後、第2艦隊司令官ルーシャン・ドハム中将が挙手した。

 

「グラ・バルカス帝国艦隊だが、非常に強力だということは分かった。我が国の第1艦隊、そしてかの第13艦隊は……勝てるのか? こんな強敵に」

 

 ドハムも、ロデニウス海軍と陸軍から部隊が抽出され、ムー大陸へ派遣されたことは聞き及んでいた。そしてその中に、現在のロデニウス海軍最大最強の艦隊である、第13艦隊が含まれていることも。

 第13艦隊の強さは、ロデニウス海軍関係者なら知らぬ者はいない。今は亡き列強パーパルディア皇国の艦隊を全滅させたばかりか、たった4隻で10倍以上の数のムー艦隊に挑み、これにも打ち勝ったのだ。それも、被害無しに近い状態で。

 このため、第13艦隊はロデニウス海軍最大の切り札と(もく)されていた。

 

「率直に申し上げまして、3対7くらいの割合で不利です。何しろ数が違いすぎます。敵の方が数が圧倒的に多いのですから。

勝機があるとすれば、航空機の性能の高さと戦艦の戦闘力、砲撃命中率、そして艦艇の修理能力です」

 

 流石の"青葉"も、この質問には慎重に答えざるを得なかった。

 

「航空機につきましては、基本的にこちらの方が機体性能が高いです。ということは、パイロットの練度に差がないのであれば、数を質でひっくり返せば勝ちです。

次に戦艦の戦闘力ですが、敵側の戦艦は35.6㎝連装砲の搭載艦が多く、対してこちらの主力戦艦の主砲は41㎝砲です。この火力の差があれば、多少の数の差なら、練度次第で逆転できます」

「だが、グレードアトラスター級はどうなのだ? あの艦は非常に強力な主砲を搭載しているんだろう?」

「仰る通り、かの戦艦は口径41㎝を超える大口径砲を搭載していると見られます。しかし、こちらにはそれに匹敵する火力を持った戦艦が1隻、そして口径50㎝級の砲を搭載した戦艦が1隻います。勝てると考えます」

 

 実際、ムー方面に派遣された第13艦隊戦力には、「アイオワ」と「()(さし)」が含まれている。「アイオワ」は超重徹甲弾を使えば46㎝砲とほぼ同等の火力を叩き出すし、「武蔵」は第二次改造によって超大和(やまと)型戦艦仕様となり、主砲を「51㎝連装砲」に換装しているのだ。勝機は十分ある。

 

「砲撃命中率は、乗員の練度次第ですね。うちの艦隊の面々は熟練してはいますが、戦場では何が起こるか分かりませんから、何とも申し上げかねます。

艦艇の修理能力は……折り紙付きですからね、うちの艦隊は。あの方がいる限り、大丈夫です」

 

 "青葉"の言う「あの方」が誰であるかは、言うまでもない。

 

「話が大分ずれてしまいましたので、申し訳ありませんが一度元に戻します。グラ・バルカス帝国艦隊も、バルチスタ沖大海戦において大きな被害を受けました。具体的には水上艦艇約250隻中100隻の被撃沈破、航空機約300機の喪失です。しかし、グラ・バルカス艦隊は最終的に世界連合艦隊と神聖ミリシアル帝国艦隊を撃退し、ムー大陸西岸の制海権を守り通しました。その相手に、第1・第13艦隊は挑まねばなりません。ここから勝利を祈るしかありませんね」

 

 頭では分かっている。祈る以上のことはできないと。だが、もどかしい気持ちはどうにもならない。

 幹部たちの何人かは、重いため息を吐いていた。

 

「諸君、気持ちは分かる。だが、第13艦隊を率いる堺殿とて、そうむざむざとやられることはなかろう。吉報を待つより他にはない」

 

 ヤヴィンが周囲を(たしな)めた。そして"青葉"に問う。

 

「グラ・バルカス帝国については、それだけか?」

「いえ、あと1点あります。そのグラ・バルカス帝国は、世界連合艦隊を敵に回して戦う裏側で、ムー国の首都オタハイトと商業都市マイカルを狙っていました。なんと世界連合艦隊と戦う一方で別動隊を送り込み、両都市を狙って攻撃してきたのです」

「それほど物量に余裕があるのか……」

 

 彼女が報告すると、シャークンが呆れたように呟いた。

 

「オタハイトを狙ってきた敵艦隊ですが、第13艦隊とムー国の首都防衛艦隊、それにムー航空隊が連携し、首都防衛艦隊に大きな被害を受けながらも、敵艦隊を全滅させ、オタハイトを守り切りました。また、マイカルに襲来した敵艦隊は、第13艦隊が単独で相手取り、1隻の被害もなく敵を全滅させた、とのことです。前哨戦は勝利に終わりました」

 

 "青葉"のこの報告で、幹部たちが少し安堵したような様子を見せた。

 

「グラ・バルカス帝国関連の情報は以上です。

続いてリーム王国につきまして、急速な海軍の拡張を行っているらしいことが分かりました。それがこちらです」

 

 彼女はまた別の写真を取り出した。そこには、リーム王国の王都ヒルキガや飛び地南部の港湾都市セニアのドックが写っている。戦列艦の建造中らしいと見られた。

 

「ご覧のように、急ピッチで戦列艦の建造を行っています。また、ヒルキガ・セニア両都市の港には物資を満載した輸送船が出入港を繰り返しております。明らかに、戦列艦や竜母の建造に必要な資材を運んでいるものと推測されます。

『草』や『そよ風』、大東洋共栄圏総合管理庁からの情報も合わせますと、現時点でリーム王国が保有する戦列艦は約330隻、竜母は約10隻。1年前に比べて、戦列艦が約30隻、竜母が2~3隻増えました。我が情報局では、これはかなりの増加ペースだと見られており、警戒が続いています」

 

 とここで、パンカーレが何かに気付いたように声を上げた。

 

「ちょっと待て。これらの写真、どうやって撮ったんだ?

海から撮ったものだけではなく、空撮写真もあるじゃないか。海から撮ったものにしても、建造中の艦の詳細が見えるほど距離が近い。いったいどこから撮ったんだ?」

 

 この質問に、"青葉"はドヤ顔で答えた。

 

「そりゃアレですよ、海を進んでドックからの距離100メートルくらいまで接近するか、ドックの真上から撮ったんです」

((((((聞きたいのはそういうことじゃない!!))))))

 

 パンカーレを含め、出席者全員の思いが一致した。

 それを悟ってか悟らずか、"青葉"は平気な様子で言葉を続ける。

 

「正直に申し上げますと、海から撮ったものについては、潜水艦で潜航したまま接近し、潜望鏡越しに撮ったんですよ」

 

 これに対し、パンカーレは不審そうな様子で尋ねた。

 

「……リーム王国の領海に侵入してるんじゃないのか、それは?」

「してますよ」

(((((ダメじゃねえか!!)))))

 

 あっけらかんと答えた彼女に、パンカーレ以外の全員が心の中でツッコむ。パンカーレはというと、ますます不審の色を露にしていた。

 

「それ不法侵入だよな? 国際法違反だよな?」

()()()()()()()()()()()()んですよ!」

((((((絶対にそういう問題じゃねえぇぇぇぇーー!!!!!))))))

 

 平然と言い放った彼女に、パンカーレ含めて全員が一斉に胸中でツッコミを入れた。

 全員、息がぴったりであった。

 

 そう、"非合法的な手段"とはこれである。すなわち、「ディグロッケを駆使して全方位ステルス状態でのCTR(近距離偵察)」や「潜水艦でリーム王国本土のドックに接近しての監視」だった。

 国際法も国家主権もへったくれもあったものではない振る舞いであるし、バレれば外交問題待った無しの案件だが、「バレなければ犯罪ではない」の論理で強引に押し切る。それが、第13艦隊情報局のやり方である。

 あんな可愛い顔して、裏ではしれっと恐ろしいことをやっているのである。"青葉"、なんて恐ろしい子……!

 

 なお余談ながら、この情報局、さらに過激な方法も取っている。それが、「妖精さんのサイズを生かして敵の本拠地(例えば王城そのものとか軍司令部とか)に潜り込み、情報を盗み取る」、「魔信を盗聴して暗号解読機にかけ、内容を解読する」とかいうものである。

 特に前者は法律違反も甚だしいものであるが……「バレなければ犯罪にならない」で押し切ってしまうのが恐ろしいところである……。

 

 なんでこんな方法をポンポン取れるのかというと、第13軍団としてロデニウス陸軍に編入されているタウイタウイ泊地の陸戦隊妖精に、旧陸軍中野学校の出身者がいるからである。

 旧陸軍中野学校と言えば、もともと情報戦のエキスパートを養成するため作られた学校だ。後には情報戦のみならず、破壊工作やらゲリラ戦やら敵本拠地への潜入やら、通常の兵士が行わないような活動…いわゆるスパイ活動を行うための専門学校となっている。そしてその学校の卒業生たちは、かの悪名高き「特別高等警察(特高)」や「チヨダ(サクラ、ゼロ等とも呼ばれる。現代日本の治安維持、つまり警察の中枢に当たる組織)」で働く他、情報工作のために新聞社のようなマスメディアに潜っていることもある。どえらい連中ばっかりが揃っているのだ。

 旧中野学校で徹底的に突き詰められた諜報ノウハウが、根強く生きているのである……。

 閑話休題。

 

「話が大きくずれましたので、元に戻しますね」

(((((無理やりこの話題を打ち切りやがった…… )))))

 

 幹部たちが気付いた時には、もう遅い。今の"青葉"の発言により、追及の機会は失われたのである。

 

「まとめますと、パンカーレ閣下が仰った通り、リーム王国は油断ならない潜在的敵対国家です。特にグラ・バルカス帝国の行動によって国際(ちつ)(じょ)がガタガタになっている現状、あの国は何を企むか分かりません。更なる監視を要すると考えます。

以上で、第13艦隊情報局より報告を終わります」

 

 "青葉"の報告が終了し、さらに海兵隊・空挺隊から新型主力小銃(なんと本格的なアサルトライフルである)の配備状況の報告があった後、議題の1つめ「各軍団・艦隊からの報告」が終わった。続いて2つめ、「ある作戦案の検討」である。

 

「先日、陸軍・海軍・海兵隊の3軍共同で、ムー大陸における対グラ・バルカス帝国反攻作戦案が提出された。これについて是非を問いたい」

 

 そう言って、ヤヴィンはテーブルの上に一束の書類を置いた。作戦案を記したものである。幹部たちの視線がそれに注がれた。

 それは、「定期便(ムー大陸とロデニウス大陸を定期的に往復している独立第1飛行隊の装備機のこと)」によってムー大陸から運ばれた、ロデニウス軍・ムー大陸派遣部隊司令部が立案した反攻作戦計画書だった。海上からの反攻は堺が中心になって、陸上での反攻はノウと"あきつ丸"が中心になって考えている。

 

「この作戦は、我が国を中心とする大東洋防衛軍の他に、第二文明圏の文明国、そして神聖ミリシアル帝国までも味方にしての反攻作戦案だ。ミリシアルを巻き込むことで、我が国は国際信義を重視する、という姿勢を示すと共に、ミリシアルやムーを含む各国に我が国の力を見せるのも目的に含まれる。パーパルディアの二の舞を演じる国家が出るのはまずいからな。

レイフォルを含む第二文明圏を解放することで、我が国は平和と国際秩序を重んじる国だと知らしめると共に、グラ・バルカス帝国に出血を強要し、可能なら講和への(みち)を探る。これが、この作戦の最終目標だ」

 

 ヤヴィンは噛んで含めるように、ゆっくりと説明した。幹部たちは誰も一言も発することなく、説明を聞いている。

 

「現時点での進撃ルートは、このようになっている」

 

 言いながら、ヤヴィンは書類をめくって進攻ルート案を示した。"青葉"はというと、泊地から持ち出したタブレット端末でルートを確認している。

 書類にはムー大陸概図が描かれており、ムー大陸の北部・中部・南部の3方向から旧レイフォル領に向けて矢印が突き出されていた。北部の矢印はムー国から直接旧レイフォル領に入っており、中部の矢印はムー国を出発してヒノマワリ王国を突っ切り、旧レイフォル領に入っている。南部の矢印はマギカライヒ共同体を出発し、ニグラート連合とソナル王国を経て旧レイフォル領南部に突入していた。3本の矢印が指す最終目的地は、「レイフォリア」と銘打たれている。

 

「3方向から攻めるのですか」

 

 アルデバランが尋ねると、ヤヴィンは頷いた。

 

「うむ。この3つのうち、ムーは北側のルートを担当し、神聖ミリシアル帝国には南側のルートでの進攻をお願いしたいと考えている。これは、ムー大陸南部の国家群に対しての配慮である。精強な神聖ミリシアル帝国軍が、侵略者を蹴散らし、ムー大陸から追放する様子を見せることで、1日も早くムー大陸に平和と秩序を取り戻したい、というわけだ」

「では、この真ん中のルートを我が軍が担当する、ということですな?」

 

 確認するように尋ねたハンキに、ヤヴィンは頷いた。

 

「うむ。我が軍が、最も厳しいと見られるルートを担当する」

「海軍はどうします?」

 

 今度はノウカが質問を放った。

 

「海軍の派遣部隊は、グラ・バルカス帝国艦隊の撃滅、そして地上部隊の支援に力を注いでもらう。かの堺殿率いる艦隊もいるんだ、彼らを信じよう」

 

 まあ実際、ムー大陸という遥か遠方にいる友軍に対しては、どうすることもできない。勝利を祈るより他にはない。

 

「本土に残っている部隊については、錬成を急ぐと共に哨戒に努めてもらいたい。第13艦隊情報局によれば、敵の物量は膨大なもの、とのことだ。そうだな、青葉殿?」

 

 ヤヴィンに話を振られ、"青葉"は総司令官を真っ直ぐ見据えて答えた。

 

「はい。調査によれば、敵の物量は今年正月の時点で既に800隻に迫っています。それに加えて、今週の初めにもたらされた最新情報によれば、敵は古いタイプと見られる駆逐艦を引っ張り出したり、タンカーないし商船を改造した小型空母を多数建造している、とのことです。現在の増加ペースが続けば、7月には敵の物量は1,000隻を超える、と予想されています」

 

 この数字には、流石に全員が仰天した。

 

「1,000だと……?」

「なんて数だ……」

 

 10秒ばかりの沈黙の後、幹部たちがざわつき始める。

 

「新型の巡洋艦はどうなっている?」

 

 ヤヴィンの質問には、ノウカが答えた。

 

「はっ、新型の巡洋艦……アマトウ型巡洋艦ですが、現時点で1番艦『アマトウ』、2番艦『イチノミヤ』が竣工し、それぞれ第3艦隊、第4艦隊に配備されて訓練中であります。他に3番艦『スイミツ』、4番艦『オウゴン』がクワ・タウイ並びにタウイタウイ泊地にて建造中であり、両艦とも4月には竣工する予定です」

「アマトウ型、戦闘力は非常に高く、駆逐艦なら圧倒できるのだが……大型艦の扱いに習熟するには時間がかかる。敵が早期に動かなければ良いが…」

 

 (ゆう)(しょく)を顔に浮かべるヤヴィン。

 アマトウ型巡洋艦とは、ロデニウス連合王国軍が「ニジッセイキ型軽巡洋艦」に続いて建造を開始した巡洋艦だ。ニジッセイキ型が対空兵装をあまり持たず、魚雷を装備し、水雷戦隊旗艦としての運用を想定されているのに対し、本型は対水上戦闘、対空戦闘にオールラウンドに対応できるタイプを目指している。ただし魚雷はない。

 なお、データ元になっているのは「クリーブランド級軽巡洋艦」である。

 

「大型艦は扱いが難しいですからね。建造するだけでも結構な時間がかかりますし」

 

 "青葉"が同調した。

 

「うむ。だが無い物ねだりをしても仕方ない。今の戦力で勝つ策を考えることだ」

 

 ヤヴィンがそう言ったところで、アルデバランが手を挙げた。

 

「空軍はどのように動けばよろしいでしょうか?」

 

 この質問に、ヤヴィンは淀みなく答えた。どうやら質問を予期していたらしい。

 

「空軍は海軍と連携し、本土の哨戒を強化して貰いたい。先ほど話題に上ったが、敵の物量は多い。先のパーパルディア皇国のように、物量に任せて別動隊を我が国の本土に送り込む可能性を否定できん」

 

 ヤヴィンの言う「先のパーパルディア皇国のように」というのは、中央暦1641年6月初頭にあった「フェン島南方沖海戦」のことである。「カタストロフ作戦」遂行のため単独出撃していた戦艦「大和(やまと)」が、フェン王国南方1,000㎞の沖でパーパルディア艦隊46隻と遭遇、交戦してこれを殲滅した。そのパーパルディア艦隊の目的が、どうやら手薄になったロデニウス本土を奇襲することらしかったのである。

 

「駆逐艦1隻見逃すことのないよう、綿密な哨戒網を敷いて貰いたい。必要なら海軍だけでなく、陸軍航空隊の力も借りて構わん」

「承知致しました」

 

 アルデバランはビシッと敬礼した。

 

「ああ、それと必要なら、大東洋共栄圏各国との竜騎通信も行って貰いたい。魔信や無線通信だけでは、敵に傍受・解析される心配もあるのでな」

「はっ!」

 

 思い出したように、ヤヴィンは付け加えた。

 竜騎通信とは、文書を持った竜騎士が相手国に向けて直接飛行し、文書を相手に手渡す、という通信方法である。魔信よりやりとりに時間がかかるが、情報流出の危険が少ないという利点がある方法だ。

 

「話が逸れてしまったな。つまり、ムー大陸における反攻作戦には、ミリシアルにも参加してもらう、という案が出ている、ということだ。この案に、異議はないか?」

 

 ヤヴィンのこの質問に対し、異議の声はなかった。

 

「では異議無しということで、この作戦案を採用する。国王陛下には私の口からお伝えし、裁可を仰ぐことにする。以上解散!」

 

 かくて、軍事部会は終了した。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 一方その頃、他の国でもバルチスタ沖大海戦の情報が伝わっていた。

 ここは、中央世界西側にある島国、中央法王国。魔導文明で栄える国の1つである。

 この国の魔導文明の発展は、神聖ミリシアル帝国のように古の魔法帝国の遺跡などを解析して魔導工学を発達させるものとは異なる。古代の魔法を研究開発し、個々の大魔導師の力を極限まで引き出す古代魔法に()けている。

 首都にある王城ダール・デラの会議室では、国王アレンデラ6世の他に国の重役たる大魔導師たちが集まり、会議を開いていた。

 

「そろそろ、世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊との戦いの結果が分かるはずだがのぅ」

 

 どこかのんびりした口調で、年老いた国王アレンデラ6世が呟くように言う。

 グラ・バルカス帝国が「先進11ヶ国会議」において全世界に宣戦を布告し、神聖ミリシアル帝国の地方隊に被害を与え、会議に参加していた各国の艦隊にも大きな被害を与えたとの情報は、ここにも伝わっていた。だが、ここに集う者たちは、あれは奇襲によるものである、と考えていた。

 今回はあの時とは違う。中央世界と第二文明圏の各国が連携し、圧倒的な数の世界連合艦隊を組織したのだ。しかも、神聖ミリシアル帝国やムー国も主力艦隊を送り込んでいる。これだけの戦力を揃えて正面から戦えば、負ける訳がない。

 

「我が軍も戦果を上げていれば良いのですが……」

 

 若くしてこの地位まで登り詰めた魔導師が、心配そうに発言した。それに他の魔導師が反論する。

 

「何を言っている? 精鋭を送り込んだのだ、負ける訳が無かろう?」

「いえ、勝つのは当然です。しかし、我が国が送った戦力は、精鋭魔導師ばかりとはいえたったの2隻です。他国が先に敵を滅してしまって、我が国の魔導師たちが全く活躍できなかった、などということになりますと、外交上よろしくないのではないかと思いますが……」

 

 すると、アレンデラ6世が「そちらの心配か」と笑った。

 

「懸念は尤もだ、確かにちと出し惜しみしすぎたかの。今回の世界連合艦隊には、ムー国や神聖ミリシアル帝国までもが主力を送り込んでおる。確かに戦果は上げられぬかも知れぬが、まあ、致し方なかろう」

 

 他の魔導師たちも、互いに頷き合った。

 

「もし敵が強大だったなら、ファルタス提督の必殺技……古代禁呪火炎閃光魔法『イクシオンレーザー』が、火を噴いているかもしれませんな」

「ああ、あれは凄まじいですからなぁ」

 

 その時、ドアが控えめにノックされた。続いて「失礼します」の声と共に、外務卿を務める魔導師が入室してくる。その顔はこわばっており、見方によっては喜びを感じているようにも見えた。

 

「おお来たか。して、結果はどうなった?」

「ぜ……全滅、に近い……」

 

 アレンデラ6世の問いに、何だか言いにくそうに答える魔導師。

 

「やはり、敵を全滅させたか……」

「まあ、当然の結果でしょうな」

 

 魔導師たちは早くも、自分たちが勝ったと考えたらしい。

 が、彼らの会話は続く外務卿の言葉で完全に停止した。

 

「い、いえ……全滅に近い被害を受けたのは……せ、世界連合艦隊の方です!」

「「「……!!?」」」

 

 一瞬にして、会議室の全ての動きが止まった。時間さえ止まったかと思われるほど、部屋の中は静かになった。その静けさを破り、外務卿の声が響く。

 

「世界連合艦隊は……参加艦艇の3分の2と700騎の竜騎士全てを喪失し、撤退に追い込まれました……! 神聖ミリシアル帝国の主力魔導艦隊も、半数以上の艦を撃沈され、グラ・バルカス帝国艦隊を撃滅することは叶わなかった模様……!」

 

 我に返ったかのように、魔導師たちが次々と口を開く。

 

「あのミリシアルの主力艦隊が、半分もやられたのか!?」

「世界連合艦隊が、全滅寸前だと!?」

「あ、あり得ん! グラ・バルカス帝国は、どれほどの強さがあるというのだ!」

 

 そこへ、外務卿がさらに報告を続ける。

 

「世界連合艦隊は、列強ムーの空母機動部隊ですら、グラ・バルカス帝国艦隊と航空機に手も足も出なかったそうです! ミリシアルの主力魔導艦隊ですらも劣勢に追い込まれるに至り、なんとミリシアルは古代兵器、空中戦艦パル・キマイラを前線に投入したそうで……」

「おおおおお!!」

「ぱ、パル・キマイラ! おとぎ話に出てくるあの超兵器は、実在したというのか!」

「ミリシアルでさえ、そんな超兵器という切り札を出さざるを得なかったのか……」

 

 古の魔法帝国が建造したという超兵器、パル・キマイラ。それが投入されたとなれば、これでグラ・バルカス帝国艦隊も一掃できただろう。

 ところが、そう思いかけた魔導師たちに、外務卿がとんでもない報告を行った。

 

「空中戦艦パル・キマイラは、凄まじい戦闘力を有しており、グラ・バルカス帝国艦多数を撃沈したそうにございます。ですが……不確定情報ですが、敵の超大型戦艦の砲撃によって撃墜された、との報告が……!」

「「「「「!!!」」」」」

 

 今度こそ会議室の空気は、完全に凍りついた。古の魔法帝国の兵器が撃墜されるなど、誰にも想像できなかったし、信じられなかったのである。

 沈黙の中、アレンデラ6世が尋ねた。

 

「超大型戦艦、とは?」

「『グレードアトラスター』です」

 

 もはや誰も彼もが沈黙するしかなかった。

 超戦艦グレードアトラスター。旧列強レイフォル国の主力艦隊をたった1隻で全滅させたばかりか、レイフォルという国そのものをただ1隻で滅したと言われる艦。そればかりか、カルトアルパスの戦いでも多くの強国の艦を沈め、旧列強パーパルディア皇国を破ったロデニウス連合王国の戦艦すら撃沈した、と聞いている。それだけでも凄まじいのに、この上古の魔法帝国の超兵器ですら撃沈したとなると、もはやこの世界に「グレードアトラスター」を沈められる兵器などないのではないか、と思わされた。

 

「まさか、古の魔法帝国の超兵器が沈むとは! グラ・バルカス帝国、そして『グレードアトラスター』は、いったいどれほどの力を有しているというのか!」

「して、我が国の大魔導艦隊はどうなったのだ!?」

 

 魔導師の質問に、外務卿は俯いて消え入りそうな声で答えた。

 

「大魔導艦隊からの直接報告がないので、第三国経由の情報になりますが……戦闘開始直後に敵の飛行機械の攻撃を受けて2隻とも轟沈したと……! 一瞬の出来事だった、との未確認情報が入っています……」

「な、何ということだ!」

「ファルタス提督は、反撃の機会さえ掴めずにやられたというのか!」

 

 中央法王国の大魔導師は、基本的に少数精鋭だ。そのため、本戦いでの大魔導師たちの喪失は、国としてはかなり痛い。

 会議の議題はすぐに、今後の国家運営についての方針設定へと移行していった。

 

 

 世界連合艦隊が敗北した、という情報は、大きな衝撃を伴って全世界に伝わった。各国は動揺し、今後どうするべきかを必死で考えようとしていた。特に、グラ・バルカス帝国領レイフォル州に近い位置に国土を持つ第二文明圏の国々の中には、戦わずしてグラ・バルカス帝国に降ることを真剣に検討する国もあった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 同じ頃、第二文明圏最強の列強国ムー国、その首都オタハイトにある統括軍海軍本部の会議室は、大荒れになっていた。何が起きていたのかというと、海軍の高級幹部たちが大勢集まって、会議をしていたのである。

 

「……という訳で、我々の案としてはこの、ロデニウス連合王国でも使用されている『ニジッセイキ型軽巡洋艦』のライセンス生産を……」

 

 幹部の1人の発言に、「ちょっと待った!」と声が割り込んだ。割り込んだのは、レイダー・アクセル少将。バルチスタ沖の地獄を生き延びて、帰ってきた提督である。

 本来なら、作戦目標を達成できなかった指揮官である彼には厳しい処遇があるはずである。実際、レイダーに左遷や降格といった処分を下すべき、との声もあった。だが、ムー統括海軍本部長エルネスト・キングス大将が彼を庇った。

 

「グラ・バルカス帝国艦隊は、神聖ミリシアル帝国の主力魔導艦隊ですら勝てなかった相手だ。その相手に、彼の艦隊が勝てるとは考えにくい。だが彼は、その強敵と戦い、そして生きて帰ってきた。

確かに、信賞必罰は軍隊の鉄則である。しかし今、我々にとって真に必要なのは、敵の戦術を探るための情報源だ。彼はその貴重な情報源である。ここは私に免じて、彼の左遷や降格についてはご勘弁願いたい」

 

 キングスの発言力は、ムー統括軍軍令部でもかなりのものがある。それによりレイダーは庇われ、機動部隊指揮官の座に留まったのだった。

 だが、信賞必罰の鉄則に則り、レイダーには半年間もの減給処分が下されている。また、「二度目の失敗はない」とも言い渡されている。そのため彼も、今度は打てる手を全て打ち、本気でグラ・バルカス帝国艦隊に勝とうとしていた。

 

「そのニジッセイキ型とやら、対空火力は如何ほどあるのか?」

 

 突き刺すようなレイダーの視線に、幹部は一瞬戸惑うような様子を見せた後、質問に答えた。

 

「それは……40口径7.6㎝単装高角砲2基と」

(きゃっ)()だ却下!」

「「「ええぇー!!」」」

 

 台詞を最後まで聞くことなく、一言の元に()ね付けたレイダーに、非難の声が集まる。だが、

 

「そんな貧弱な対空火力ではダメだ! ラ・トラン級と同程度の対空火力を持つこと、それ以外は認めん!」

 

 有無を言わせない口調で、レイダーは言い切った。

 

 何をしているのかというと、彼らは「ムー統括海軍で新たに採用する巡洋艦」について話し合い……という名の(ぜっ)(せん)を戦わせているのだ。

 現在、ムー統括海軍には"ある種の巡洋艦"が圧倒的に不足している。それは、「敵巡洋艦部隊と水上砲戦を戦える巡洋艦」だ。

 今のムー海軍が持っている巡洋艦は、「ラ・デルタ級装甲巡洋艦」、「ラ・ホトス級巡洋艦」、「ラ・グリスタ級巡洋艦」、「ラ・シキベ級軽巡洋艦」そして「ラ・トラン級防空巡洋艦」の5種類だ。これらのうち、ラ・デルタ級(性能的には春日(かすが)型装甲巡洋艦相当)とラ・グリスタ級((ちく)()型防護巡洋艦相当)はまだ良いとして、ラ・ホトス級(()()型防護巡洋艦相当)では性能不足であり、敵の大型巡洋艦やロデニウス海軍の重巡洋艦相手に戦えないと目されている。ラ・シキベ級? 考えるまでもない、「圧倒的性能不足」の一言で片付けられる(性能が()()(やま)型通報艦程度しかない)。ラ・トラン級(アトランタ級)はというと、最新鋭巡洋艦ではあるのだが、役割は「艦隊防空」であり、水上砲戦はあまり考慮されていない。

 

 というわけで、ムー海軍は「敵巡洋艦部隊と水上砲戦を戦えるロ式巡洋艦」を欲していたのである。

 「ロ式艦」とは、ムー国がロデニウスから設計図等のデータ提供を受けて建造した艦のことだ。ラ・コンゴ級戦艦やラ・ラツカ級航空母艦、ラ・ハンマン級駆逐艦などがこれに当たる。もちろんラ・トラン級も、モデルが「アトランタ級軽巡洋艦」である以上、ロ式艦にカウントされる。

 砲火力の大きい巡洋艦となると、候補はいくつか挙げられる。ムー統括海軍上層部では協議の末、次のような仕様要求を決定した。

 

1. 排水量5,000トン~15,000トンであること

2. 主砲として20㎝砲、又は速射性の高い15㎝砲、最低でも14㎝砲を搭載すること

3. 最低でも14㎝砲に耐えられる装甲を有すること

4. 弾着観測用の水上機を搭載できること

5. 索敵用対水上レーダー、及び射撃用レーダーを装備すること

 

 これにより、ムー海軍ではニジッセイキ型……5,500トン型軽巡洋艦を導入しようとしたのだが、そこにレイダーが待ったをかけた。

 バルチスタ沖大海戦で、敵の航空機によって世界連合艦隊が壊滅する様子を直接()の当たりにした彼は、改めて艦隊全体の対空火力を高める必要性を痛感した。そして、たとえ水上砲戦を戦う巡洋艦であっても十分な対空火力を持たせるべきだ、と主張し始めたのである。

 …レイダー自身、去年1月のロデニウスとの合同軍事演習で、「たかが4隻の空母」にこてんぱんに負けてしまった経験があるため、航空機に対してはアレルギーのようなものがある点は否めないが。

 

「そんな(せっ)(しょう)な!」

「本当に対空火力が要るのか?」

 

 そんな声が幾つか飛び出した時、

 

「いや……対空火力は必要だろう」

 

 低く重々しいが、よく通る声が喧騒を貫いた。声の主はキングスである。

 

「先のオタハイト沖海戦において、首都防衛艦隊10隻は敵の小型空母1隻の航空戦力だけでほぼ壊滅した。これは、軍艦が航空機に弱いことを如実に物語る。だが同時に、ラ・カサミ改とラ・コンゴの例から、十分な対空火力があれば軍艦も航空攻撃を切り抜けられることも分かった。

その事実と、レイダー提督が提出したバルチスタ沖の戦いの報告書、及び『マイラス・レポート』に鑑み、新型巡洋艦には十分な対空火力を持たせることとする」

 

 この鶴の一声により、対空火力も持たされることが決まってしまった。

 

「うーん、そうなると……」

「下手すりゃ、アイカ型重巡洋艦とやらでも撥ね付けられるぞ…」

 

 頭を抱え始める幹部たち。

 アイカ型重巡洋艦とは、ロデニウス海軍で採用されている「(たか)()型重巡洋艦」のことだ。12.7㎝連装高角砲4基と25㎜機銃多数を対空装備として装備しているが……対空火力は流石にアトランタ級には負ける。

 

「かといって、ラ・トラン級ばりの防空火力となると……」

「このアラスカ級とかボルティモア級とかは、到底無理ですね……。技術的に厳しいですし、これほどの大型艦を建造・慣熟するには相当の時間がかかるでしょうから、戦争に間に合わない可能性もあります。特にアラスカ級なんてほぼ戦艦ですし」

「いや、ラ・カサミ級よりでかくて火力の高い巡洋艦なんざあって(たま)るか」

 

 ロデニウス連合王国からもらった資料を机に広げ、絶望しきった様子で呟いているのは、情報通信部・情報分析課の代表者たち(ただしマイラス・ルクレール中佐を除く)であった。

 実際よく考えてみると、アラスカ級大型巡洋艦はラ・カサミ級戦艦((しき)(しま)型戦艦)より大きく、圧倒的に火力が高い。艦体の大きさは、アラスカ級が全長246.4メートル、全幅27.8メートルに対して、ラ・カサミ級が全長131メートル、全幅23メートルである。主砲砲門数はアラスカ級が9門、ラ・カサミ級が4門と倍以上あるし、砲身長にしてもアラスカ級は50口径、ラ・カサミ級は40口径なので、装甲貫徹力はアラスカ級の主砲の方が高い。速射能力や命中精度まで考慮すれば、アラスカ級はラ・カサミ級を圧倒する火力を叩き出せるのだ。……戦艦より火力の高い巡洋艦とは、これ如何に。

 

「マイラス君、君には何か名案はあるかね?」

 

 キングスに話題を振られ、マイラスはゆっくりと口を開いた。

 

「は、小官としましては、こちらの艦をお薦めします」

 

 彼はロデニウスから送られた資料の中から、ある1隻の巡洋艦の資料を引っ張り出した。その表題には「クリーブランド級軽巡洋艦」と銘打たれている。

 

「ロデニウスから送られた資料にあった、この『クリーブランド級軽巡洋艦』。この艦は、47口径15.2㎝三連装砲4基を搭載しており、砲弾1発当たりの火力ではアイカ型に劣ります。しかし、速射性能には特筆すべきものがあります。なんとこの15.2㎝砲、次弾装填に6秒しかかかりません。単位時間当たりの投射火力は圧倒的です。この速射性能を生かせば、アイカ型にも()り勝てる可能性があります。さらに射撃用レーダーもしっかり装備していますから、投射火力と命中精度を両立することが可能です。

また、レイダー少将閣下が懸念されていた対空火力ですが、クリーブランド級は12.7㎝連装両用砲……ラ・トラン級の両用砲と同じものを4基ないし6基搭載し、他にロ式41型40㎜機関砲やロ式41型20㎜機銃を大量に装備しています。対空火力はラ・トラン級に勝るとも劣りません。

さらに、これは完全に余談ですが、この艦はその艦体を空母に転用できます。この空母はその名を『インディペンデンス級航空母艦』といって、最高速力31ノット、搭載機数45機の性能を持つ他に、12.7㎝単装両用砲2基、ロ式41型40㎜機関砲26門、ロ式41型20㎜機銃22丁という対空火器を装備します。性能的には、我が海軍のラ・コスタ級やラ・ヴァニア級を凌駕しますし、『ピラーニ』や『カルハリアス』も運用可能です。空母機動部隊の再編に当たり、戦力として期待できるでしょう。

従って、このクリーブランド級軽巡洋艦を量産配備すればよろしいのではないかと、小官は考えます」

 

 マイラスは噛んで含めるように、一言一言を区切ってゆっくり話した。

 

「もし他に案がないか、と問われますと、小官としましてはこちら、ダイドー級軽巡洋艦をお薦めします」

 

 続いてマイラスが引っ張り出したのは、イギリス海軍の防空巡洋艦のデータだった。

 

「この艦は、13.3㎝連装高角砲を5基搭載しています。一見すると、駆逐艦より少し高い程度の火力しかないように思えます。しかしこの主砲、実は砲身長が50口径と長く、その分装甲貫徹力が高くなっています。その高い装甲貫徹力と、高角砲故の高い速射性能を以て、手数で相手を殴り倒すことができます。駆逐艦や軽巡洋艦相手ならそうそう負けませんし、重巡洋艦クラスにもある程度対抗可能です。

主砲の新規開発が難しければ、今現在我が海軍で使用している12.7㎝両用砲を元に、長砲身化などの改良を施した砲を開発する、といった手もございますが、如何でしょうか?」

 

 

 オタハイトで会議が行われる一方、オタハイトから南に数百㎞離れた港街マイカルでも、1人の男が書類を前にして考え込んでいた。

 

「……危なっかしくて、とてもじゃないが使えん、ということか……」

 

 戦艦「(なが)()」の長官公室にて、机に置かれた書類を前に呟くのは、ロデニウス海軍第13艦隊司令官の堺 修一中将である。彼の前に置かれた書類は、マイカル沖海戦の最終報告書、そして”(くし)()”から提出された、今回初めて実戦投入された「例のアレ」についての意見書だった。

 

「やはり、円盤型航空機の運用には困難が伴われるか」

 

 意見書には、要約すると次のような内容が記されている。

 

『今回投入した「ハウニブII」は、少なくとも搭載されたKSK砲については期待以上の威力を示した。しかし同時に、運用面で大きな問題があることが判明した。第一に、燃費が非常に悪い。戦闘機で例えるなら、20分程度の直掩任務で飛んだだけで、最高速度で1時間飛び続けるのと同じだけの燃料を消費したようなものである。第二に、帰還した5号機の点検を行ったところ、無視できない故障が複数発見された。僅かな飛行だけで複数の故障が発生するのであれば、技術屋の観点から見て、過酷な戦場への実戦投入は、とてもではないが勧められない。

従って現状、「ハウニブ」シリーズの円盤型航空機は、どうしても必要な局面以外での運用はこれを控えるべきと強く進言する』

 

 要するに、燃費が悪すぎるのと信頼性が足りなさすぎて、どうにも使いにくいのである。

 

「彼女は、技術には凄まじい技量と強い誇りを持っている。その彼女がここまで書くとなれば、事態は深刻だな。

ハウニブだけでどうにかできるかと思ったが、現実は甘くないか。ここまで信頼性が低いとなれば、信頼性の高い手段を取るしかない。やはり、正面からこの艦隊で殴り込むしかないかな……」

 

 堺は椅子の背もたれを思い切り後ろに倒し、リクライニングシートのように扱いながらぶつぶつと呟く。

 戦争に使う兵器は、その性能はもちろん重要であるが、信頼性もまた重視しなければならない。某赤い彗星さんの言葉を借りれば、どれほど優れた性能の兵器でも「使えなければ(敵にとって)どうということはない」のだ。ならば、信頼性が保証されていない新兵器よりも、多少性能が低くても信頼性が実証された兵器で戦う方が良い。

 

「第二文明圏からグラ・バルカス帝国の勢力を追放するには、ムー大陸と奴らの本土との連絡線を断ち切る必要がある。つまり、ムー大陸西部沿岸部の制海権・制空権の確保が必要となる。ならば世界連合艦隊と同じように、まずはグラ・バルカス帝国の艦隊を撃滅しなければならない。そして、パガンダ・イルネティア両島を攻略し、艦隊用の泊地と飛行場を整備することが必要だな……。こりゃ容易ならん仕事だぜ……」

 

 グラ・バルカス帝国の主力艦隊との激突の刻が近い、ということを堺は薄々感じていた。

 

(だが何としても、1人でも多くの艦娘たち、妖精たちを生き残らせる。そして暁の水平線に、勝利を刻むのだ!)




はい、今回はロデニウス連合王国とムー国を中心に、バルチスタ沖大海戦後の各国の様子を見てみました。
中央暦1643年に突入し、第二文明圏における対グラ・バルカス帝国反攻の気運が少しずつ高まりつつあります。ただ、ムー大陸からグラ・バルカス帝国の勢力を駆逐するには、グ帝本土とレイフォルとを繋ぐ連絡線・補給線を断ち切るために、どうしてもムー大陸西部沿岸部の制海権・制空権の確保が必要になるでしょう。その時はおそらく、第13艦隊が先陣切って動くことになると思います。決戦の刻近し。


次回予告。

早期反攻作戦を指導し、しかしグラ・バルカス帝国艦隊の撃滅に失敗した神聖ミリシアル帝国。この失敗に、ミリシアル上層部に波紋が広がる。その一方でバルチスタ沖大海戦の戦略的勝者にも、驚くべき情報が舞い込んでいた……
次回「揺れ動く世界(2)」

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