鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

15 / 252
おいおい嘘だろ!?
お気に入り155件、平均評価7.65、それに加えて総合評価がいつの間にか415ポイントにまでなってる、だと…!?

しかも、よく見たら日間ランキング21位にまで食い込むなんて…!
本当にどうして(以下略)

総合評価順にして見たら、拙作がトップ10にまで食い込んでる…しかも、周りがみんな名だたる大御所じゃないか…((( ;゚Д゚)))
身に余る光栄であります! 皆様、本当にありがとうございますっ!!

評価8をくださいましたガウリイ様、ライマ様、EF-2000様、評価9をくださいました順順様、評価7から8に上げてくださいましたmugen様、GUNPEI様、ありがとうございます!!
また、お気に入り登録していただいた皆様、そしていつも誤字報告をくださる晶彦様、ありがとうございます!

そろそろ対ロウリア戦役も最終局面。今後の構成をどうするか、考えているところです。とりあえず、今年中にロウリア戦役は終わらせます!



014. 三つ挟みのロウリア

 中央暦1639年5月6日 午前6時、ロウリア王国 王都ジン・ハーク。

 今、街には大王ハーク・ロウリア34世の名において、厳戒態勢が発令されていた。

 三重の城壁は、その城門の全てを閉ざして人々の行き来を全面禁止し、城壁の上には矢避けの盾や投石機が並び、武装した兵士たちが24時間態勢で外への警戒を続けている。市内にあっても、市内に築かれた公園や商店街をそぞろ歩きする市民の姿はなく、商店の大半は店を閉めている。(もっと)も、これにはまだ朝早い、という理由もあるのだが。

 もし貴方が今、この城壁に登ることができたとしたら、ジン・ハークからみて東の方角に、黒煙がいくつもたなびく様子を遠望できるだろう。時々甲高いサイレンのような音、そして遠く爆発音も響いてくる。その方角には、ロウリア王国最大の工業都市ビーズルがある。

 

 市民たちには情報は知らされていなかったが、市民たちも薄々気付きつつあった。今、ジン・ハークの外で、ロウリア王国で何が起きているのか。

 王をはじめとする上層部は、何が起きているのか具体的に知っていた。今、ビーズルの運命は、風前の灯火というべき状態に陥っているのだ。

 

 

 昨日5月5日、侵攻してきたクワ・トイネ公国軍2万は、ビーズルの北方2㎞の位置にある小さな街イェルクに総攻撃をかけた。イェルクに籠る守備隊はわずか3,000。5,000人いた住民たちはできる限り避難させたものの、あと50人で避難完了、という時に総攻撃が開始された。そのため逃げ遅れた50人は戦火に巻き込まれてしまう。

 イェルクの守備隊はこの街を死地と決め、決死の抵抗を試みた。そして2時間にわたる激戦の末、クワ・トイネ公国軍に死傷者百数十人という被害を与えることに成功する。これは、クワ・トイネ公国がロウリア王国に対して攻勢に転じて以来、クワ・トイネ公国が(こうむ)った最大の被害だった。

 しかし、3,000対20,000という兵力の差は如何(いかん)ともし難く、加えて侵攻してきた兵のうち約半数は、ボルトアクション式ライフル銃や機関銃で武装していた。鎧兜を着用して、槍と剣と弓を主力兵器とするロウリア軍では、まったく勝負になっていなかったのである。

 こうして、2時間の戦闘の末にイェルクは陥落。守備隊3,000人は玉砕し、一兵残らず戦死を遂げた。戦火に巻き込まれた住民も、30人ばかり犠牲になっている。

 

 イェルクを落とした敵軍は、もう日も落ちつつあったため、イェルク市街地の建物を利用して夜営の態勢を取った。ビーズルの守備隊はこれを好機と見て、騎兵・歩兵合わせて8,000を送り込み、夜戦による奇襲、という作戦に出る。

 しかし、クワ・トイネ公国軍の指揮官である(さかい)は、敵が夜戦を仕掛けてくるだろうことはとうに理解しており、部隊はそれに備えて、銃口を常にビーズルの方向も含め、全方位に向けていた。結果、作戦を一瞬で見破られたロウリア軍は、(きゅう)(ろく)(しき)(けい)()(かん)(じゅう)(さん)(ぱち)(しき)()(へい)(じゅう)(はち)(きゅう)(しき)(じゅう)(てき)(だん)(とう)で滅多撃ちにされ、ほぼ全滅。生きてビーズルに戻れた者は、数百人にすぎなかった。

 

 そして今朝。

 イェルクを出撃した敵軍は、ついにビーズルに接近し、攻撃を開始した。しかも、ロウリア軍の矢も魔法も届かない距離から、強力な爆裂魔法を大量に撃ち込んでいるようだ。また、敵に巨大な飛竜が加勢し空から攻撃を行っている、との報告も届いている。

 守備隊はなんとか防衛しているようだが、押し込まれているのは間違いなかった。また人的被害の他に、敵飛竜からの攻撃で工場地帯が壊滅的な被害を受けているという。

 

 実は、ロウリア王国東北部の国境を突破してクワ・トイネ公国から攻め込んだ堺の部隊は、自分たちが占領したアイナ平原に野戦飛行場を築いていたのだ。そしてそこに、「一式陸上攻撃機」18機、「一式戦闘機 (はやぶさ)Ⅲ型改(65戦隊)」18機、「Ju87C改(Rudel(ルーデル) Gruppe(グルッペ))」36機を進出させ、ビーズルの工業地帯に対して徹底的な空爆を行っていたのである。

 民家が集まっている地区には、極力投下しないようにしていたが……「隼」やシュトゥーカはともかくとして、一式陸攻の水平爆撃では、風向きなどのため爆弾の落下地点がずれ、住宅街に落ちてしまうこともあった。まあ、誘導性がない以上、多少は仕方ないと言えるだろう。

 

 

「くそっ! このままでは……敵はここまで来てしまうぞ!」

 

 王城内の会議室では、多数の怒号が飛び交っている。王国の大臣級の幹部たちはなんとかしてこの事態に対処しようとしていたが、具体的にはほとんど何もできていなかった。それでもなんとか絶対防衛線を引き、ビーズルから西方都市ギルマ(ジン・ハークとの距離約10㎞)までの範囲を絶対防衛圏と決め、近衛兵団や訓練中の部隊まで投入して、なんとか守り抜こうとしていた。

 そこへドアを乱暴に開け、顔面蒼白になった軍人が1人、飛び込んでくる。

 

「何事だ!?」

「報告します! 王国西方で必死に戦っていた、ギルマ守備隊が全滅! 西方軍司令官ミミネル将軍以下、全員が戦死を遂げました! 西方からも敵が迫っています!」

「「「な、何だってぇぇぇ!?」」」

 

 会議室全体に衝撃が走った。

 西方都市ギルマは、ジン・ハークには及ばないにせよ、人口12万人の大きな都市であり、西部方面軍の後方支援本部が置かれている。そのため、非常に重要な拠点であった。

 しかし、東部方面の情勢が(ひっ)(ぱく)したため、ロウリア軍司令部は西部方面軍から5割にも及ぶ兵力を引き抜き、東部方面に充てた。いくら敵でも、王国西部にまで来るとは思っていなかったのである。このため、ロウリア王国西部には、有力な部隊の展開は不可能となった。

 ところが、去る5月3日の朝、こともあろうにクワ・トイネ公国の国旗と例の赤い太陽の旗を掲げた軍隊が、7,000人規模でロウリア王国西部の港湾都市ピカイアに強襲上陸。ピカイアはあっという間に陥落し、わずかな守備隊はことごとく全滅。そして3国連合軍は東進し、急を知って慌てて出撃してきたミミネル将軍直率の西部方面軍主力6万を、(がい)(しゅう)(いっ)(しょく)(せん)(めつ)してのけたのである。

 さんざん討ち減らされた西部方面軍は、残存戦力をギルマに結集して防衛線を築き、攻め込んできた敵軍相手にさらなる抵抗をかけた。しかし、全くといっていいほど勝負にならず、敵の猛烈な爆裂魔法の嵐により、西部方面軍は全滅。ここまで撤退して指揮を執っていた、ロウリア3大将軍の1人・ミミネルも戦死した。ちなみに、3大将軍の残り2人は、スマーク将軍と今は亡きパンドール将軍である。

 それと同時にギルマは一面の廃墟と化し、逃げ遅れた市民も多くが死んだとされている。そしてギルマを壊滅させた敵は、近日中に出撃して敵の東方軍と協力し、このジン・ハークを包囲せんとしているようである。

 

「なんてことだ…ギルマが陥ちるとは!」

「敵はたかだか1万だろう!? いったい何故、ミミネル将軍までが戦死しているんだ!?」

「そんなことより目先のことだ!

全兵力を集結させろ! 予備役も全員召集だ! 急げ!」

 

 次々と急転する事態に、なんとかして対処しようとするロウリア王国上層部。だが実は、事態はもうどうにもならないところまで来ていた。

 そして彼らの元に、さらなる悲報が届くこととなる。

 

 

 同時刻、ロウリア王国南東部、クイラ王国との国境地帯。

 険しい山々が天然の城壁となっているのと、戦略的に侵攻は必要ないと判断されたため、ロウリア軍はクイラ王国には侵攻していない。また、宣戦布告こそあったものの、クイラ王国からの侵攻もなかった。

 ……そう、今までは。

 

「ふああ……」

 

 ロウリア王国軍が築いた監視塔の上で、ロウリア軍兵士の1人であるシルヴァは、槍を持ったまま欠伸をした。そのまま目をこすりつつ、隣にいる同僚のアクセに話しかける。

 

「ったく、なんで朝早くから、こんなとこの見張りに立たなくちゃいけないんだ? こっちには何もないだろうに。それに、昼には訓練があるってのに……」

「それ以上はよせ。巡回の上官に見つかったら、またどやしつけられるぞ」

 

 眼前の山あいに目を向けたまま、シルヴァに声を返すアクセ。シルヴァも「へいへい」と言ったまま、視線を山々に向けた。

 

「なあ……何かおかしいと思わないか?」

 

 だが沈黙に耐えられず、シルヴァは3分と経たぬうちに、再びアクセに話しかける。

 

「何がだ?」

「今回の戦争だよ。クワ・トイネの亜人ごときが相手なら、数の差で叩き潰せるはずだ。今頃、とっくに奴らの首都を落としているだろう。だが現実には、こっちの遠征軍は返り討ちにされ、それどころかこうして国内にまで攻め込まれている。何か変だろ?」

「ああ、なるほどな」

 

 アクセは、視線を山並みに釘付けにしたまま返事をする。だがシルヴァも視線を山々に向けているため、声が耳に入るのみだ。アクセの表情などは窺えない。

 

「確かに、何かがおかしい。数から考えて、我が軍が負けるわけがな……」

 

 突然、アクセの言葉が不自然に途切れた。

 

「……おい、どうした?」

 

 突然の沈黙を不審に思ったシルヴァは、アクセのほうを見て、ぎょっとした。

 

 アクセの目は、光を失って虚ろに開かれたままだ。口は開いているが、そこから言葉は出てこない。そして。

 

 ……アクセの額の真ん中に、小指の先ほどの大きさの穴が開けられていた。そこから、赤い液体が流れ落ちている。

 

 次の瞬間、アクセの身体は糸が切れたように前方へ崩折れた。そして監視塔の手すりを乗り越え、そのまま地面へ落下していく。

 

「嘘だろ!?」

 

 一瞬、呆然とするシルヴァ。しかしすぐに、何が起きているのか気付いた。

 

「敵し……!」

 

 しかし遅すぎた。

 魔信を取り、敵襲、と叫ぼうとした彼の額に、口径6.5㎜の鉛弾が1発食い込む。シルヴァの言葉は、口から出かかったまま途切れ、シルヴァは監視塔の見張り台に倒れた。

 

 

「……よし」

 

 見張り台から200メートルほど離れた山の斜面の一角で、とある日本軍妖精が呟いた。彼のすぐそばには、まだ銃口から煙がたなびく(きゅう)(なな)(しき)()(げき)(じゅう)がある。シルヴァとアクセをスナイプしたのは、彼だった。

 彼は渡されていた無線機を使い、報告を行う。

 

「ハンター3よりリーダー。ベータ監視塔周辺をクリア。突破口を形成。至急攻撃求む」

 

 

「いったいどうしたというんだ?」

 

 ロウリア王国陸軍の下士官の1人、コルネルは首を傾げていた。

 クイラ王国との国境に築かれた5つの監視塔。そのうちの第2監視塔との魔信が途絶したのだ。どれだけ呼び掛けても、応答がない。

 幸い、第2監視塔は自分が今いる詰所からはすぐだ。見に行ける。

 コルネルは徒歩で監視塔の様子を見に出かけた。しかし、そこで見たものは……

 

「これは……!」

 

 見張り台から落下して地面に叩きつけられたか、無残にひしゃげた歩兵の死体だった。周囲の地面は赤黒く染められ、歩兵の手足はあらぬ方向にねじ曲げられている。

 

「敵襲か? だとしたらいったいどこに……!」

 

 コルネルの疑問は次の瞬間、解消された。突然わーっと叫び声が上がり、森から何かが多数、飛び出してきたのだ。飛び出してきたのは、何体もの巨大な怪物。全ての個体の上部に長さの異なる筒が1本、ツノのように突き出ている。

 

「何だ? アレは!?」

 

 コルネルが叫んだその時、飛び出してきた怪物のうち1体が上部の筒から火を噴き、大音響を発した。直後、コルネルの意識は全身を駆け抜ける鋭い痛みとともに、永久に閉ざされた。

 

 

「進め!」

 

 号令一下、「九七式中戦車チハ」39輌(鉢巻きアンテナの旧砲塔型が19輌、砲身の長い新砲塔型が20輌)、「九五式軽戦車」25輌(いずれも37口径37㎜砲を搭載した後期型)が突進する。少し遅れて、クイラ王国のマーキングを施した「八九式中戦車」10輌と、何輌もの「九四式六輪自動貨車」や「九五式小型乗用車」(いわゆる「くろがね四起」)が続く。九七式中戦車と九五式軽戦車には、どの車輌にも「士」のマークが付けられていた。

 そう、日本軍妖精たちによって組織された、「戦車第11連隊」である。通称は「()(こん)部隊」。ちなみにマークが「士」であるのは、11という数字を漢字で縦書きに書くと「士」の字に見えるから、という理由である。そしてこの部隊は現在のタウイタウイ泊地において、最も機械化された部隊であった。

 ロウリア王国に最後(つう)(ちょう)を手交した後、堺は自ら出陣する傍ら、第11連隊に対し“クイラ王国の領内を鉄道で横断してクイラ王国西方の国境からロウリア王国内に侵攻せよ”という指令を出していた。これを受け同連隊は、クイラ王国内に敷かれていたD51モドキの線路を利用し、クイラ王国を横断。西部まではまだ完全には線路が敷かれていないので、クイラ王国の首都を過ぎた辺りから、自走して国境地帯に突入した。そして今、ロウリア王国の国境線を突破して、同国内に侵入したのである。

 

 ちなみにこの時、クイラ王国軍の兵士たちも実戦参加を求めてきたため、両国の国家元首による会談の末、2つ返事で参戦が決定。八九式中戦車を装備した機械化部隊と、自動車によって移動する機動歩兵隊が参加することになったのである。

 

「急げ急げ! とにかく早く、敵の首都を目指すのだ!」

 

 指揮官車となったチハの上でワイシャツ姿に日の丸鉢巻を巻いた妖精が、抜き身の日本刀を振り翳し、チハの砲塔上ハッチから身を乗り出して指示を飛ばす。

 戦車が故障しないことを願いつつ、全速で首都ジン・ハークに向けて突進する第11連隊。かつてドイツ軍がポーランドやフランスで見せた「電撃戦」を思わせる進行速度に、ロウリア軍は全くついていけない。国境突破を許してしまったロウリア軍は、慌てて部隊を戦闘態勢にして展開させるも時既に遅く、第11連隊とクイラ王国軍はとっくに通過した後。運良く第11連隊の前方に展開できた部隊は、同隊を食い止めるべく戦おうとした。……が。

 

 バズーカだのパンツァーファウストだのどころか、対戦車ライフルはおろか火炎瓶や梱包爆弾すら持たぬ歩兵隊が、戦車を止められるわけがなかったのである。

 

 自分達の想定を超える速度で突撃し、火炎魔法を撃とうが矢で射ようが一向に止まらず、砲弾と機関銃弾を雨霰と降らせる戦車に、ロウリア軍は犠牲を増やすばかり。止めようとしても、止められないのである。

 結局、ある程度の戦闘や燃料の補給などがあったため、日中の時間全てを走り続けられたわけではなかった。だがそれでも、この日1日だけで第11連隊&クイラ王国軍は250㎞も前進。鋼鉄の楔となって、一気にジン・ハークに迫った。

 

 

「何ということだ……! たった1日でここまで迫られるとは……!」

 

 5月6日午後8時、すっかり日も落ちた王都ジン・ハーク。

 次々と舞い込む凶報に、ロウリア王国の軍事や政治に直接関わる幹部たちの顔はすっかり青ざめてしまっていた。

 本日朝6時頃、突如としてクイラ王国方面からクワ・トイネ公国の旗と、クイラ王国の旗に加えて赤い太陽の旗を掲げた軍隊が侵攻。瞬く間にクイラ王国とロウリア王国の国境を突破した。彼らは多数の怪物を使役しており、それらからは高威力の爆裂魔法が次々と放たれたという。そして馬より早い速度で、あっという間にロウリア王国内を駆け抜けていったのだ。

 その結果、その敵はもうジン・ハークの南東60㎞まで進出してきている。本気で来られれば、明日の昼頃にはもうこの辺に着いているだろう。

 この敵をなんとか食い止めるべく、ロウリア軍は4万の部隊を展開させた。その指揮はスマーク将軍が執っている。ロウリア三大将軍のうち、最後の生き残りの名将である。

 

「なんとかして、あの敵を食い止めてくれればよいが……」

 

 

 その夜遅く、ロウリア軍の総司令部では、ロウリア軍総司令官にして、王国防衛騎士団将軍であるパタジンが途方に暮れていた。敵軍の動きを地図上に描いてみると、どうみても彼らはこのジン・ハークを包囲しようとしている。

 

 最初は東北部国境からの報告だった。クワ・トイネ公国軍に奇襲を受け、国境を突破されてしまったとの報告が入った時、彼は驚きこそしたがまだ事態を楽観視していた。国境突破は許したが、まだ王都までは距離も兵力も十分にある。それに対して、敵は2万。それもクワ・トイネ公国内を突っ切っての遠距離侵攻だ。疲弊している。きっと潰せる。そう思っていた。

 

 ところが、敵は潰れるどころかこちらの守備隊を返り討ちにし続けた。このため、消耗した兵力を回復させるべく、西部方面軍や南部方面軍から兵力を抽出せざるを得なくなる。それでも敵は勢いは止まらず、ついにビーズルまで侵攻。ビーズルは王都からたった4㎞しか離れておらず、もう王都の目と鼻の先である。

 しかも、敵がこちらへ迫りつつあった頃、別の敵軍が西部ピカイアから上陸してきた。これにより兵力が減っていた西部方面軍は壊滅。西部方面総司令官にしてロウリア三大将軍の1人だったミミネルも戦死する。そしてこの敵軍も、ジン・ハーク西方10㎞まで進出してきた。

 

 そこへ、これだ。第3の敵軍の侵攻。しかも今度は、クイラ王国側からの侵攻ときた。

 南部方面軍は、各戦線に兵力を割いてしまっていてもう数が残っていない。それでもなんとか4万の兵力をかき集め、指揮はスマーク将軍に委ねた。明日には決戦となろう。

 

(頼むぞ、スマーク。なんとかして、奴らを撃破してくれ……)

 

 そう願いつつ、パタジンは眠りに就いた。

 一国の軍の司令官といえど人間だ、当然のように疲れるものである。パタジンは、このところの状況悪化でかなりのストレスを受けていた。彼は、吉報を待ちつつ夢の中に落ち……

 

 

 しかし彼は午前3時という、あまりにも早い時間にたたき起こされた。

 彼を起こしたのは、部屋に駆け込んできた部下の1人である。

 

「パタジン様、起きてください! 緊急報告ですっ!」

「……んぁ……なんだ?」

 

 寝起きのせいで、まだパタジンの頭は完全には起きていない。

 

「一大事にございます。本日未明、南東の敵軍が夜中に我が南部方面軍を奇襲! スマーク将軍以下4万名、総員戦死し、全滅しました!!」

 

 寝起きであり、まだまともに動かない頭を動かしながら、パタジンは聞き返した。

 

「……は? え? ……今なんと?」

「ですから、スマーク将軍以下4万の守備隊が、今しがた全滅したと、申し上げているのです!」

 

「……な!? 何ぃぃぃ!!!??」

 

 まさかの事態に、パタジンの頭は完全に覚醒した。

 

「な、何があった!? スマークの隊が全滅だと!?」

「はい。敵軍はどうやら、我が軍が完全に寝静まる頃を見計らい、夜闇に紛れての奇襲を決行したようです。スマーク将軍の隊は寝込みを襲われ、ほとんど何もできぬまま全滅したもよう!」

「お……おのれぇ! それで、敵の動向は!?」

「闇のため、はっきりとはわかりかねますが……おそらく、このジン・ハークに向けて進軍中と思われます!」

「くそっ! 王都にいる全騎士団に、緊急戦闘配置を発令しろ! ワイバーン隊には、日の出とともに出撃し、敵を焼き払えと伝えろ!」

「ははっ!」

 

 ここまでの戦いでかなりの数がやられてしまっているが、ロウリア王国軍は、まだ10万におよぶ兵力が王都に籠城しており、ワイバーンもまだ50騎いる。尤も、この50騎がもともと500騎いた竜騎士団の“最後の生き残り”なのだが。

 

「ええい、なぜだ!? なぜこうも、クワ・トイネの亜人ども“ごとき”に連敗するのだ!?」

 

 朝早くにたたき起こされたのと、凶報が相次いだのとで苛立つパタジン。

 しかし実は、事態は彼が思っている以上に悪化していたのだった。

 

 午前5時をすぎると、空もだんだん明るくなってきた。

 それに伴って、王都の城壁の外側もなんとか見えるようになってきたのだが……

 

「なっ、何だと!?」

「いつの間に……!」

 

 監視塔に上がっていた見張りの兵士たちから、驚愕と恐怖の叫び声が上がる。

 なんと、夜の間に3つの敵軍は、全てこのジン・ハークに接近。街の北と東とに布陣し、ジン・ハークを半包囲するように展開していたのだ。

 

 ギルマを陥落させた第2軍は、夜の間に北にぐるっと大回りして堺直率の第1軍と合流。そして夜が明ける前に南東より進撃してきた第3軍とも合流して、ジン・ハーク郊外に陣取ったのだ。

 

 こうして、ロウリア王国の王都ジン・ハークは、攻め込んできたクワ・トイネ公国陸軍、クイラ王国陸軍、そしてタウイタウイ部隊陸戦隊によって完全に包囲された。それに加えて、アイナ野戦飛行場の航空隊、そして堺が連れている二航戦の上空援護まである。

 もはや、ロウリア王国の命運はここに尽きようとしていたのである。




ようやく士魂部隊が再登場しました。さんざんフラグを立てていただけに、この展開は皆様予想できていたのではないでしょうか?


次回予告。

ついにロウリア王国軍は、ジン・ハークにまで敵軍の到達を許してしまった。パタジン以下の王都防衛騎士団10万人は、王とジン・ハークの住民を守るため、この凶悪極まる力を持つ敵軍に対し、最後の抵抗を試みる…
次回「ジン・ハークに陽は落ちて」

それと、先に申し上げておきます。次話は「シンクロ率1942%で」お待ちください。
いいですか? シンクロ率1942%ですよ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。