鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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さーて、そろそろドンパチパートですよっ!



140. 始動!「剣閃作戦」

 中央暦1643年4月8日、第二文明圏 列強ムー国。

 フォーク海峡海戦やバルチスタ沖大海戦の結果が報じられて以降、ムー国民は……いや、ムー国民も含めて第二文明圏に残る独立国の民は皆、グラ・バルカス帝国の影に怯えていた。

 あろうことか、世界2位の力を持つ列強ムー国が最精鋭の主力艦隊を出撃させたにも関わらず、グラ・バルカス帝国艦隊との戦いは痛み分けに終わり、世界連合艦隊は参加艦艇の3分の2を失って壊滅。第二文明圏からグラ・バルカス帝国を叩き出すという戦略目標を達成することもできなかった。

 しかも世界最強の国家たる神聖ミリシアル帝国の主力魔導艦隊ですら、多数の艦艇を損耗し、母艦航空隊の戦力も壊滅。この世界では自他共に認める最強国家の軍でも、グラ・バルカス帝国に勝てなかったのだ。

 あの海戦以降、各国はグラ・バルカス帝国をひどく恐れるようになり、もはや滅亡か、それともグラ・バルカス帝国に降伏するかしかないと考える者が多数に上ったのである。

 

 しかし……そこに、一筋の希望が現れた。

 

 バルチスタ沖大海戦と同時に、グラ・バルカス帝国艦隊の別動隊がムー国の首都オタハイトと商業都市マイカルを襲撃。これに対して、オタハイト沖海戦ではロデニウス連合王国による改造を受けた「ラ・カサミ改」が奮戦し、航空隊と共にグラ・バルカス帝国艦隊を全滅させている。それにマイカル沖海戦ではロデニウス連合王国の艦隊がグラ・バルカス艦隊と直接対峙し、損害ゼロで敵を全滅させた。

 

 ロデニウス連合王国。東の列強パーパルディア皇国を滅ぼしたこの国は、今度はかつてない強敵グラ・バルカス帝国軍を破っている。彼らの力があれば、グラ・バルカス帝国を退けられる、とムー国が期待するのも無理はなかった。

 そして今。かの国の軍は、このムー大陸にいる。それも、あの「第13艦隊」が。

 この海軍戦力に対し、ムー国は大いに期待していた。この艦隊は大型の航空母艦や戦艦を多数揃えており、それどころかあのグレードアトラスター級戦艦に並ぶ性能を持つ「ヤマト級戦艦」すら配備している。彼らならば、もしかするとグラ・バルカス帝国艦隊にも勝てるかもしれない……と考えていたのだ。

 また、ムー大陸南部にはロデニウス陸軍第13軍団・戦車第11連隊が先行して展開した他、ムー大陸各地にロデニウス軍の航空部隊が展開しつつあった。

 

 ムー国の西部にある、大陸縦断鉄道の駅の1つがある要衝の街キールセキ。そこに設置されたムー統括軍キールセキ駐屯地のとある会議室には、多数の人々が集まっていた。

 いずれも各国の軍の指揮官クラスである。未だ独立国としてグラ・バルカス帝国に抵抗しているムー国、ニグラート連合、マギカライヒ共同体、ソナル王国。それから、既に祖国はグラ・バルカス帝国に降伏したものの、王族や軍の一部が降伏に反対、ムー国に脱出して同国内で建国を宣言した自由ヒノマワリ王国。そして、ムー国に援軍を出撃させてきたロデニウス連合王国。

 これらの国家は集まって、「第二文明圏連合軍」を結成しようとしていたのだ。

 

「それでは、全会一致の総意を以て、ここに第二文明圏連合軍の結成を宣言し、侵略者グラ・バルカス帝国をムー大陸から追放し、ゆくゆくはグラ・バルカス帝国を降伏に追い込むまで、我々は共に戦い抜くことを、ここに誓います!」

 

 議長の言葉に、大きな拍手が起こる。

 この場に集う者たち、その思いは皆1つだ。

 

 許しがたき侵略者グラ・バルカス帝国を、撃破する。

 

 それだけを、皆が考えていた。

 

「それではこれより、我が国の軍部が考案しました『剣閃作戦』の内容についてご説明します」

 

 作戦総司令官に任じられたムー陸軍の指揮官アスティア・モンドルキリ中将が、全員の前に立ち、黒板に貼られたムー大陸の地図をあちこち指示棒で指しながら説明し始める。

 モンドルキリ中将は、筋骨逞しいドワーフ族の壮年男性だ。彼の祖父は、かつてムー国内で発生した内戦「南北戦争」で輝かしい武勲を残している。その素質を引き継いだのか、彼自身も優れた軍人であり、ムー統括陸軍将兵たちの信頼は篤い。

 

「今回の作戦の目標地点は、旧レイフォル領でも我が国に近い所にある、グラ・バルカス帝国の最前線基地です。敵方ではバルクルス基地と呼んでいるそうですが、その攻略を目指します。

これは、ロデニウス連合王国軍部の提案により近々実施が計画されている、グラ・バルカス帝国への全面反攻作戦の先陣になります」

 

 迎撃戦であり、しかも他国の援助があったとはいえ、グラ・バルカス帝国に対して勝利を収め、自信を付けた列強ムー国による、国家の意地とプライドを賭けた作戦。それが、グラ・バルカス帝国がムー国との国境の西方30㎞の地点に建設しつつある最前線基地……グラ・バルカス帝国呼称バルクルス基地の攻撃だった。

 第二文明圏として、いや、世界初とも言える本格的な反攻作戦であるため、ムー側はかなり気合いを入れているようだ。

 モンドルキリは少し興奮が見え隠れする口調で、説明を続けた。

 

「まず、作戦の第一段階として、ドーソン基地に展開するロデニウス連合王国軍が、バルクルス基地に対して空から攻撃を行います。これにより、敵基地の滑走路やレーダー塔、航空機格納庫、燃料タンクといった重要目標の破壊を狙います。また同時に、ロデニウス連合王国の戦闘機がバルクルス基地の上空を制圧、上空にいる戦闘機を撃墜して制空権を奪い、後続する攻撃隊の道を拓きます。

第二段階として、ロデニウス連合王国、及びムー国の航空隊によって、第一次攻撃で破壊しきれなかった敵基地の構造物を攻撃します。この時、ムー空軍はバルクルス基地を目標とし、ロデニウス連合王国軍はその周辺にある基地を狙います。これにより、敵から制空権を完全に奪い、バルクルス攻略を容易ならしめます。

我が国ムーは今作戦のために、ドーソン基地やこのキールセキに併設されたエヌビア基地を始め、内地からも航空隊をかき集めました。今作戦に投入される空軍戦力は、まず間違いなく我が国の歴史上始まって以来の大軍となります。

第三段階として、ロデニウス連合王国軍の第1空挺団がバルクルス基地に空から降下し、敵バルクルス基地の制圧に当たります。

最終段階として、第二文明圏連合軍の竜騎士団300騎(内ワイバーン100騎、ワイバーンロード200騎)、及び大型火喰い鳥1,600羽による空挺作戦を実施します。大型火喰い鳥には騎士1人の他に3人の陸軍兵士が搭乗し、ワイバーンには竜騎士の他1名の陸軍兵士が搭乗します。こうして運搬された兵士5,500人による空挺作戦を行って、バルクルス基地を完全に制圧します。空挺作戦完了後、火喰い鳥は各基地に帰投します。竜騎士団はバルクルス上空に留まり、ロデニウス連合王国軍やムー軍の航空隊と共に制空権確保、導力火炎弾による上空支援、及び敵増援兵力に対する見張りに当たります。

なお、空挺に当たる陸軍兵士は、マギカライヒ共同体が開発した小型銃、もしくはロデニウス連合王国から輸入された短機関銃を装備することとします」

 

 これほど多数の国家が、これほど多数の陸軍を動員して行う作戦は、史上初である。そのため、各軍の指揮官たちも驚きを隠せず、会議室がざわついている。

 

「質問であります!」

 

 そこへ、ムー航空隊の指揮官の1人が挙手し、質問を求めた。

 

「はい、どうぞ」

「先ほど、作戦の最終段階で大型火喰い鳥を用いる、と伺いましたが、大型火喰い鳥は文明圏外国であっても第一線を退きつつある航空戦力です。そんな戦力では、我々のレベルの航空戦にはついていけないと思うのですが」

 

 火喰い鳥。それは地球で言うところの火喰い鳥とは違い、人を乗せて飛ぶことができる大型の鳥類のことである。口から炎を吐くことができるため、「火を食している」と考えられた結果、「火喰い鳥」と命名され、太古の時代から長く空戦兵器の主力として君臨していた。

 だが、火喰い鳥の最高速度は時速110㎞と、通常型のワイバーンに比べても脚が遅く、火炎放射の射程距離もワイバーンの導力火炎弾とは比べものにならないほど短い。それにより、ワイバーンを空戦に使用する国が勢力を伸ばしてくると、徐々に各国の空戦の主力がワイバーンに移行し、火喰い鳥は戦闘目的では使用されなくなっていった。

 この鳥は、世界各地に生息域が散らばっており、よほど寒冷な地でなければだいたいどこにでも生息している。そして約1,400年前に、南方の島々で火喰い鳥よりも大きな鳥が発見された。火喰い鳥に比べると遥かに大きい体躯だが、生態、見た目、どれを見ても火喰い鳥だったため、「大型火喰い鳥」と命名された。そのまんまのネーミングである。

 火喰い鳥に比べて大型で翼面積も広く、威圧効果が期待できたことから戦場に登場したこともあった。だが、小回りが効かず使い勝手が悪いため、空戦兵器として使用する国家は減っていき、今やほぼゼロとなっている。ただし、大型火喰い鳥は火喰い鳥やワイバーンよりも多少は重い物を運べるため、現在は空戦用ではなく商用の輸送鳥として各国で愛用されている。

 

「仰る通りです、空戦能力は期待していません。火喰い鳥に求めるのは単純に輸送能力です。

本来であればワイバーンもしくはワイバーンロードが良かったのですが……バルチスタ海域での戦闘の折、敵航空隊による基地爆撃も合わせて行われたため、多くのワイバーンが地上撃破されてしまい、竜が足りません。しかし、竜騎士の多くは生き残っており、また竜騎士は基本的に火喰い鳥を操ることができます。よって、本件作戦では竜を失った竜騎士に火喰い鳥を操ってもらうこととなりました。

なお、ワイバーン及び火喰い鳥がバルクルスに到達する頃には、敵の反撃能力はほとんど残されていないと予想されております。おそらく陸軍兵士たちは残骸の上に降り立つことになり、戦闘をすることは無いだろうと想定していますが、万が一の場合に残存兵力の除去と、迅速な防御陣地の設置等による防御力の確保、そして敵の援軍が来た場合の一時的防御措置を担当します」

「分かりました。ありがとうございます」

 

 指揮官が着席すると、続いて会議に出席していたムー国の技術士官マイラス・ルクレール中佐が手を挙げた。彼は自軍の航空機の技術点検と、ついでにロデニウス連合王国の兵器を見ておこうとして来ていたのだ。

 

「ロデニウス連合王国の方にお伺いしたい。バルクルス基地への第一撃は貴国の軍が担当する、とのことですが、グラ・バルカス帝国にも貴国にもレーダーという兵器があって、電波を駆使して遠距離から敵を探知するそうですね。敵はそのレーダーを使って綿密な早期警戒網を張っていると思うのですが、貴国はそれをどうやって破るおつもりでしょうか?」

 

 各国の指揮官たちの目が、一斉にロデニウス連合王国の代表……第1軍団の指揮官モッツァラ・ノウ中将と第13軍団の書類上の指揮官堺、そして第13軍団の実質的な指揮官である"あきつ丸"に向けられた。

 確かにそれは気になるところである。ロデニウス連合王国軍は強力だとは聞いているが、どうやってグラ・バルカス帝国の防空網を破るつもりなのか?

 その疑問に答えるべく起立したのは、堺だった。

 

「はい、今回の攻撃では我が国が新たに配備した新兵器を、実戦投入しようと考えています。この兵器は既にドーソン基地に配備されており、作戦開始命令があり次第すぐにも発射準備を整えられます」

「ほう、どんな兵器でしょうか?」

 

 マイラスの追撃に、堺は一瞬考えた後、口を開いた。

 

「我が軍が使用しようとしているのは……ロケット兵器と呼ばれるものです」

「ロケット兵器? どんな兵器ですか?」

「それにつきまして、今からご説明いたします。こちらをご覧ください」

 

 そう言うと、堺は前に進み出て、黒板に紙を貼り付けた。それには、奇妙な三面図が2つ描かれている。片方は小さな航空機のような形をしており、もう片方は爆弾を細長くして先端を尖らせたような形状をしていた。

 

「これらが、我々が使用する弾道ロケットの三面図になります。まずはこちら、『RV-1飛行爆弾』の性能からご説明します」

 

 堺は左側に描かれた、小さな航空機のような図を指差した。

 

「これは、いわば爆弾に翼とエンジンを付けて飛ばすものです。これの最高時速は644㎞、射程は約400㎞あります。これを敵陣に向けてドーソン基地から発射すれば、後はこの爆弾が勝手に飛行して、敵陣に突入、爆発するという仕掛けです。しかし、航空機が飛べる高度を飛行する上に、最高時速が644㎞と遅いので、敵の戦闘機に迎撃され、被撃墜もしくは空中爆発の危険があります。これが、RV-1飛行爆弾の特徴です」

 

 これが、「RV-1飛行爆弾」こと「フィーゼラーFi103改」の性能である。元となった兵器は、ナチスドイツ第三帝国の有翼飛行爆弾「フィーゼラーFi103」、通称「V-1」である。

 最高時速644㎞、という数字が出てきたところで各国の士官たちから驚きのざわめきが広がった。無理もない、ワイバーンロード(最高時速350㎞)やムー国の航空機(平均で最高時速400㎞)くらいしか速く飛べるものを知らない彼らには、時速644㎞なんて、到底想像できる数字ではないのだ。

 

「次に……」

 

 堺は続いて、右に描かれた奇妙な物体を指し示した。

 

「こちらが『RV-2ロケット』になります。最高時速はマッハ2……失礼、音速の2倍にもなり、射程距離は300㎞、上昇限界高度は1万メートルにも達します。これは、地表からほぼ垂直に撃ち上げられながら、敵陣に向けて飛行した後、遥か高空で反転して落下、敵陣に突入する仕掛けです。これはレーダーには捉えられないので、敵に対して完全に奇襲となるでしょう。欠点は、これの着弾地点に誤差があることですね。今は誤差50メートル以内に抑えることに成功しましたが、最初は15㎞以上もの誤差があったものです」

 

 これまたとんでもない兵器が登場し、各国士官たちのざわめきが大きくなった。

 こちらは、ナチスドイツのロケット兵器「V-2」が元ネタである。世界初の実用弾道ロケット兵器であり、音を置き去りにして超高速で飛来するため、特にロンドン市民に恐れられた兵器だった。

 なお、「RV-2」は燃料をアルコールではなくヒドラジンにした上に、射程及び速力の向上、そして精密化を図っている。

 

「なるほど、解説ありがとうございます。ちなみにこれは、科学技術でできた兵器ですか?」

「はい、どちらも純粋に、科学技術のみで作られた兵器です」

「分かりました、ありがとうございました」

 

 堺に礼を言いながら、マイラスは肝が冷えるのを感じた。未知なる兵器への興奮3割、恐ろしさ7割で構成された鳥肌が、彼の背中に立った。

 マイラスは気付いてしまったのだ。RV-2の本質的な危険性に。

 

(パッと聞いただけじゃ気付きにくかったけど……このRV-2ロケット、よく見たらアレと同じ仕組みじゃないか……! ロデニウス軍は、そうと分かった上で配備しているのか!?)

 

 そしておそらくだが、もしこの場にミリシアルの空中戦艦「パル・キマイラ」艦長メテオスがいれば、彼もマイラスと同じことに気付いただろう。

 

「今回の作戦では、我々はRV-1飛行爆弾とRV-2ロケット各50発をそれぞれ敵基地に向けて順次発射、これを攻撃します。

そしてこちらをご覧ください。これが、敵の基地……『バルクルス』という名前らしいですが、それを捉えた写真です」

 

 堺は今度は大きく印刷した画用紙2枚分くらいのサイズの写真を、黒板に貼り付けた。それを見て、各国の軍人たちがざわつく。

 

「何だこの精巧な写真は……!? こんな鮮明な写真、見たことがないぞ!」

「しかもこれ、空中から撮った写真だから、敵の基地の真上に侵入して撮ったんだよな!? 敵に見つからずにどうやってこんな写真を撮ったんだ!?」

 

 そう、その航空写真は、とても精巧だった。しかも、敵の基地を真上から撮影したものである。どうやって撮ったのか想像もつかない。

 なお、ネタばらしをすると、この写真はディグロッケを使って撮影したものである。電磁ステルスと光学ステルスを張っていたため、グラ・バルカス帝国軍のレーダーには捉えられず、肉眼でも見えなかったのだ。ドイツの科学技術はァァァ世界一ィィィィィー!!!

 

「ご覧ください、ここの2つの赤丸が敵のレーダーです。この広い道路のようなものは滑走路、その脇にあるこれらの構造物は、航空機をしまっておく格納庫と思われます。敵は既に航空戦力の運用を開始しており、極めて危険な状態です。

この中央の建物は、無線のアンテナが建っていることから考えて、敵基地の司令部と推定されます。ただし、工事用とみられる車輌の動きが活発であることから、まだ建設中と推定されます。それ以外に用途不明の構造物が幾つもありますが、敵の基地の性格と規模から考えて、陸上侵攻用の車輌や基地建設のための重機、及び兵員の宿舎であると見られます。その他基地のあちこちに対空砲を備えた陣地が見受けられます。この地図の青丸の部分は全てそうです」

 

 言いながら、堺は1つ1つ指し示していく。

 

「理想としては、先行して撃ち上げるRV-2ロケットで基地のレーダーを2つとも破壊し、さらに滑走路を破壊して敵機を空に上がれなくすると同時に、上空に上がっている敵の戦闘機を我が方の戦闘機で撃墜する、という流れです。この時出撃する我が軍の戦闘機ですが、時速1,000㎞以上で飛行できる上に、『サイドワインダー』という新型の空対空誘導弾を発射できるため、損害ゼロで敵戦闘機を殲滅できるものと確信しております」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

 その瞬間、会議室に激震が走った。

 今この男は何と言った、と全員が信じがたい思いを持った。「サイドワインダー」という新型の()()()()()()だと!?

 

「すみません、今何と? ゆ、誘導弾と仰いましたか?」

 

 震えた声でマイラスが質問した。

 

「はい、正真正銘の誘導弾です。一度狙ったら絶対に外しません」

 

 平然とそう言い放った後で、堺は思い出したように「あ、今のは内密に願います」と付け加えた。……今さら手遅れという気がしなくもないが。

 

(((((今さら内密にとか言うなァァァ!!!)))))

 

 案の定、各国武官たちの考えたことは一致していた。

 

「そしてレーダーが使えず、上空援護の戦闘機もいなくなった敵基地になるべく多数のRV-1を命中させ、対空砲陣地を沈黙させて後続の攻撃隊に道を拓きたいと考えております。なお我が方の戦闘機や爆撃機につきましては、既にエヌビア基地に配備されておりますから、ご覧になりたいのでしたらどうぞご覧くださいませ。

以上で、私からの説明を終了いたします」

 

 堺が着席した後、ほとんど言葉を失っていたモンドルキリがやっと我に返った。

 

「えー堺殿、ご説明ありがとうございました。

それと、制圧が完了し作戦が終了した後の流れですが、援軍としてロデニウス連合王国陸軍の第1軍団がバルクルスに進出し、機甲師団戦力をもってバルクルスの防衛に当たると同時に、バルクルスをグラ・バルカス帝国に対する全面反攻の橋頭堡とする予定です。まだ完全には詳細が煮詰まっておりませんので、総反攻作戦につきましてはおいおい皆様にお伝えいたします。

それと、敵の海軍戦力が未だ健在であり、我々はムー大陸西方の制海権を喪失した状態が続いています。言うなれば、敵の海上輸送網が健在であり、ムー大陸において損害を出したとしても、彼らは補給が自由に行える状態です。

ですが現在、ロデニウス連合王国海軍の艦隊によってグラ・バルカス帝国艦隊を……バルチスタ沖大海戦で世界連合艦隊を撃滅し、神聖ミリシアル帝国艦隊ですら痛み分けに終わったあの艦隊を、撃破する作戦が立案されています。この敵艦隊撃滅が成功し、ムー大陸西岸の制海権が奪還されれば、その時こそ全面反攻開始となるでしょう。

それではこれを持ちまして、作戦説明会を終了させていただきます。他に質問がある方は、後で私のところに来ていただければ、可能な範囲でお答えいたします」

 

 こうして作戦説明会は終了した。

 

 

 その数時間後、キールセキの街とエヌビア基地から西に300㎞ほど離れたところにあるドーソン基地に、マイラスの姿があった。ロデニウス連合王国が使用するという「ロケット兵器」とやらを、この目で見ておこうとしたのだ。

 

「三面図で見た奴とそっくりなのは……あれか……。何とも面妖な形だな……」

 

 マイラスの視線の先には、地上に設置された巨大なカタパルトと、それに乗せられた「フィーゼラーFi103改」……つまり「RV-1飛行爆弾」の姿があった。カタパルトには乗せられているものの、まだ燃料が入っていないため飛ばすことはできない。

 その隣には、巨大な鉄塔に寄り添うようにして立つ、白と黒のツートンカラーに塗装された尖った物体の姿がある。あれが、音を超える速度で飛翔するという、「RV-2ロケット」なる代物であろう。

 

「こんなものが、本当に魔法なしで作れるのだろうか……? RV-2は、悪名高い『アレ』と似た動作原理の兵器だ。それを、科学技術だけで作れるというのは本当だろうか?

もしこれを我が国でも作ることができるなら、古の魔法帝国が復活した時に相当の威力を発揮するはずだ。いや、もしかすると音を超える速度で飛ぶという魔法帝国の航空機にすら命中させることが可能な、より高性能の誘導弾を開発できているかもしれない……!」

 

 マイラスは思わず呟いた。

 

(それにしても、この科学技術で作られた『アレ』といい、音速1歩手前の速度を叩き出す戦闘機といい、高度1万メートルなんていう頭おかしい高度を飛べる爆撃機といい、ついに登場した誘導弾といい、ロデニウス連合王国の、いや、日本国の技術は計り知れないな……! 我が国も、こうした技術をどんどん取り込み、より強力になっていかなかれば……! そしてムー国の強化を担うのは、この俺だ!)

 

 マイラスは、何としてもムー国を今より強くしようという使命感に燃えながら、夕日を浴びて鎮座する「RV-2ロケット」をいつまでも眺めていた。

 

 

 

 そして……ついにその日は来た。中央暦1643年5月1日。

 それは、第二文明圏連合軍の総反攻の始まりとなる、バルクルス攻撃作戦「剣閃作戦」の発動の日であった。そして奇しくも、グラ・バルカス帝国軍も時を同じくしてアクションを起こした。

 

 最初に動きがあったのは、ドーソン基地である。基地司令部に、緊急事態を告げる報告が飛び込んだのだ。

 

「哨戒中のロデニウス軍機より急報! バルクルス基地から、グ帝機多数が離陸中! 数は戦爆連合約100機、ドーソン基地への爆撃が目的とみられる!」

 

 この報告は、電光石火の勢いでエヌビア基地司令部へ、次いでオタハイトのムー統括軍軍令部まで駆け上がった。直ちに命令が下される。

 

「ドーソン基地には、航空部隊による迎撃を命令! アルーの住民は急ぎ、屋内や防空壕に避難させろ!」

「エヌビア基地に集まっている『剣閃作戦』参加部隊は、出撃体制のまま待機! まずは向かってくる敵機を迎撃する!」

 

 命令は電話と無線によって、即座に伝達された。

 アルーの街に、ムー建国以来久方ぶりの警報サイレンが鳴り響く。不吉な響きを伴う甲高いサイレン音に、住民たちは緊張した、あるいは不安そうな表情でスピーカーを見上げる。サイレン音がしばし続いた後、スピーカーから声が流れ出した。

 

『空襲警報発令! 空襲警報発令!

グラ・バルカス帝国軍機多数、西方からアルーに接近中! 全市民は直ちに建物内の地下室、もしくは防空壕に避難せよ!

繰り返す、グラ・バルカス帝国軍機多数、西方からアルーに接近中! 全市民は直ちに建物内の地下室、もしくは防空壕に避難せよ!』

 

 再び鳴り始める空襲警報、市民はそれに追い立てられるようにして、建物や防空壕(ロデニウス連合王国から伝わった書物にこれが書かれており、それを元に再現された)に避難していく。

 また同時に、空洞山脈西端にあるドーソン基地では、早急に戦闘態勢が整えられ始めた。

 

 

 そして、ドーソン基地で急ぎ迎撃態勢の構築が始まった頃、ムー統括軍軍令部には凄まじい激震が走っていた。それこそ、あのグレードアトラスター級戦艦(もといヤマト級戦艦)の詳細性能が判明した時よりも遥かに凄まじい衝撃が、駆け抜けていたのである。……ただし、総司令官の公室にだけ。

 

「これは……確かなのか?」

 

 震える声で尋ねた総司令官に、真っ青になっているマイラスが声を震わせて答えた。

 

「はい。まず間違いなく、仕組みは同じです」

「うむぅ……そうか……。まさかロデニウス連合王国が、誘導弾を実用化しているとはな……。しかも、まさかアレに似た兵器まで配備しているとは……」

 

 これまでになく痛む胃を押さえながら、言葉を震わせる総司令官。

 その胃の痛みの原因にして、激震の原因となった報告書……例によって「マイラス・レポート」の仲間入りを果たした……には、こう記されていた。

 

『ロデニウス連合王国の戦闘機は、時速1,000㎞以上という桁違いの速度で飛行することができる。この戦闘機が相手となった場合、我が国の最新鋭戦闘機「バミウダ」(なお、「バミウダ」はF4Fワイルドキャットのムー国産機である)でも、対抗は全く不可能である。また、同機には「サイドワインダー」と呼ばれる空対空誘導弾が搭載されている。そう、「古の魔法帝国」が使用していたとされる「誘導魔光弾」、これと同じようなものを、ロデニウスの戦闘機は持っているのだ。

さらに、ロデニウス連合王国軍が今回投入する新型ロケット兵器「RV-2」は、その仕組みをよく調べると恐ろしいことが分かる。このRV-2は、かの「古の魔法帝国」ことラヴァーナル帝国の最終兵器「コア魔法」に酷似した仕組みを持っているのである。古代文献の分析結果を元にこの「RV-2」を分析する限り、「RV-2」は威力はともかくとして、仕組みは「コア魔法」の同類であると考えざるを得ない。音速の2倍もの速度で飛翔し、レーダーで捉えることもできないこの兵器は、現状我が国では迎撃は不可能である。

加えて、この「RV-2」は科学技術のみで作られたとのことである。さらに、「サイドワインダー」についても「誘導弾」であって「誘導魔光弾」でない以上、科学技術で作られた兵器である可能性がある。つまり、グラ・バルカス帝国も同じ兵器を配備している可能性が危惧される。これは非常に危険な事態であると考える。

しかし同時に、これは朗報でもある。科学技術によって成り立つ我が国においても、コア魔法や誘導魔光弾、もしくはそれに類する兵器を作ることができる可能性が示唆されたのである。今後は、ロデニウス連合王国との連携を一層密にし、「RV-2」やのような大型ロケット兵器及びその迎撃システムの開発・量産配備、及び「サイドワインダー」のような誘導兵器の研究・量産配備を、強力に推進するべきと考える』




今回の作戦は、原作でいう「第一次バルクルス基地攻撃」と「第二次バルクルス基地攻撃」の合同型ですね。さらに言えば、バルクルス基地はまだ建設中です。
そこへと攻撃に向かう第二文明圏連合軍合同部隊……勝利の女神は、彼らに微笑むのでしょうか?

マイラス「分かっちゃった……けどRV-2ロケットって何これヤバい(真っ青)」
オレンジ頭の某直感型ウマ娘もびっくりの洞察力。さすがムー稀代の若手技術士官マイラス。この恐るべき事態が分かったところで、さて彼はどうするやら。


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次回予告。

先手を打ってムー国を爆撃するべく、動き出したグラ・バルカス帝国陸軍航空隊。それに対し、ドーソン基地から飛び立つのはムー空軍の「マリン」と「アラル」。そして、ロデニウス軍の元「加賀」戦闘機隊と「近衛飛行隊」の妖精たちに、密かに用意された「彗星」だった……
次回「ドーソン基地航空戦」
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