鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

16 / 252
お…お、お気に入り185!?総合評価468ポイント!!?平均評価7.58!!??
しかもまた日間ランキング入りしてたし…!

皆様、ご愛顧のほど、本当にありがとうございますっ!!
リアルの忙しさを考慮しつつも、嬉しさのあまり、一気に書いてしまいました。


前回の予告において、事前にお伝えした通りの内容になっております!
それでは、「魔法のパスワード」の準備をお願いします!

え? パスワードのヒント? それは、「大日本帝国陸軍が、最大の得意戦法を披露する時のかけ声」です。


それでは、本編開始前にパスワードをご唱和ください!
せーのっ!




















天皇陛下、バンザァァァァァァイ!








015. ジン・ハークに陽は落ちて

 中央暦1639年5月7日 午前6時、ロウリア王国の王都ジン・ハーク。

 そこには今、すさまじい殺気を伴った沈黙が垂れ込めていた。ロウリア軍の鎧を着た兵士たちが城壁の上を走り回り、バリスタの弾を配り、(たい)(まつ)と油の入った壺をあちこちに置いていく。監視塔にいる兵士は目を血走らせ、城壁の外をにらみつけている。気の弱い人なら、目と目が合っただけで気絶しそうなその視線の先には、3種類の旗が(ひるがえ)っていた。

 

 1つは、緑地に黄色で麦穂を模した模様を、Uの字のような形に配置し、その内側に白布で豊穣の女神を図案化したものを付けた、クワ・トイネ公国の国旗。

 

 1つは、黄色い布地に、黒で円環を描き、その中心に黒い猛禽のようなマークを描いた旗。クイラ王国の国旗である。

 

 そして1つは、白地の布に赤で太陽を描いた旗。赤い円だけではなく、そこから放射状に伸びる光も赤で描かれている。この太陽の旗(旭日旗)の軍隊こそ、栄えあるロウリア王国軍をことごとく破ってきた部隊である。もちろん正体は、日本国海上護衛軍・タウイタウイ泊地の部隊である。

 

 両軍の兵力は、以下の通りとなる。

 

 

ロウリア王国 総司令官パタジン

竜騎士団 50騎

騎兵 5,000

歩兵 9万3千(うち重装歩兵2万5千、弓兵8,000を含む)

魔導士 2,000

(この数には国王近衛兵団1万人も含む)

 

VS

 

2ヵ国連合軍

第1軍団(ロウリア王国東北部より侵攻)

クワ・トイネ公国軍 総司令官ノウ

騎兵 400

歩兵 7,500

(うち1,000名は三八式歩兵銃装備)

弓兵 1,900

魔導士 30

タウイタウイ部隊(堺直率)

歩兵 7,000

八九式中戦車 50輌

九七式中戦車チハ(魔導火炎放射戦車)5輌

八八式75㎜野戦高射砲 30門

同行艦娘 4名("(あらし)"、"(はぎ)(かぜ)"、"(そう)(りゅう)"、"()(りゅう)")

 

第2軍団(ピカイア上陸部隊)

クワ・トイネ公国軍 総司令官ハンキ

歩兵6,800(大半が三八式歩兵銃装備。一部九六式軽機関銃または九七式狙撃銃装備)

八九式中戦車 4輌

九七式中戦車チハ 2輌(ドーザーブレード別装備)

九四式六輪自動貨車 多数

九八式高射機関砲 8門

八八式75㎜野戦高射砲 4門

一式戦闘機 (はやぶさ)Ⅱ型 18機

一式戦闘機 隼Ⅲ型甲 9機

 

第3軍団(クイラ王国国境より侵攻)

クイラ王国軍 総司令官イフセン

歩兵4,000(いずれも三八式歩兵銃装備)

八九式中戦車 10輌

タウイタウイ部隊・戦車第11連隊(()(こん)部隊)

九七式中戦車チハ 19輌

九七式中戦車チハ(新砲塔型) 20輌

九五式軽戦車ハ号(後期型) 25輌

その他九四式六輪自動貨車、九五式小型自動車多数

 

 

 お分かりいただけただろうか。

 つまり、少なくとも5万人以上の敵軍が、ロウリア王国の王都ジン・ハークを包囲しているのである。

 

 世の中には、「攻撃3倍の法則(人によっては、3対1の法則、というほうが分かりやすいか)」というものがある。これは、戦闘において有効な攻撃を行うためには、攻撃する側は防御する側の3倍の兵力が必要である、とするものである。聞いたことがある方も多いだろう。

 この法則に従えば、ジン・ハークに立て籠る10万のロウリア軍を叩くためには、クワ・トイネ、クイラ2国連合軍はその3倍、30万人の兵力が必要となるわけだ。しかし戦いに参加している兵士の数は、同数である10万にも届いていない。ということは、有効な攻撃はできない、ということになる。

 

 ただし……それは「攻撃側と防御側の武装などが同じだった場合」の話だ。

 

 今回の戦いで見ると、ロウリア軍の装備は基本的に、剣と槍。遠距離攻撃兵器は、竜騎士団の導力火炎弾や魔法やバリスタ、弓。よくて投石機が関の山である。

 対する2国連合軍は、一部が剣や槍の装備であるものの、半数以上がボルトアクション式ライフル銃を装備しており、一部兵士は機関銃を持っている。また、スペックが低いとはいえ戦車や大砲を持っており、それらの有効射程は弓なんぞより遥かに長い。また、基地航空隊も展開しており、「一式陸攻」や「Ju87C改」が爆弾を落とし、「隼」が機銃掃射して援護してくれる予定である。

 そう考えるとどうだろう。攻撃側は3倍以上の力を持っているのではないだろうか?

 

 緊迫した空気の下、双方のにらみ合いが続く。

 堺率いるタウイタウイ部隊、そのうち三八式歩兵銃を装備した歩兵たちは、弾の装填機構に異常がないか確認したり、銃身の先端に銃剣を付けたりして、戦いの用意を進めている。その中で、ある一角にいる歩兵たちから声が上がった。

 

 ……いや、声ではない。歌だった。

 

我は(かん)(ぐん) 我が敵は

天地()れざる (ちょう)(てき)

 

 日本軍における、かなり古い軍歌「抜刀隊」である。

 

敵の大将たる者は ()(こん)()(そう)の英雄で

 

 たちまち、全ての歩兵たちが口を開き、歌いだす。

 

これに従う (つわもの)

ともに(ひょう)(かん) 決死の士

 

 彼らは興奮し、そして恐れていた。

 これから始まるであろう、すさまじい戦いのことを。

 

()(しん)に恥じぬ 勇あるも

天の許さぬ 反逆を

起こしし者の 昔より

栄えし試し 有らざるぞ

 

 彼らは、彼ら自身の恐れを、興奮を、そして闘志を、歌に変え、声を張り上げる。

 

敵の滅ぶる それまでは

進めや進め 諸共に

玉散る剣 抜きつれて

死ぬる覚悟で 進むべし!

 

 その後も、歩兵たちは声を限りに歌い続けた。

 

 

「やれやれ……いいねぇ、あいつらは」

 

 その様子を眺めていた、()(こん)部隊のある戦車の車長が、ため息まじりに呟く。

 

「うちはそーゆー歌ないからなァ……。1曲だけあるにはあるけど、アレは日本の歌じゃないしな」

「なら、うちはコレにしときますか? すっごい季節外れですけど」

 

 すると、その戦車の操縦手が声を上げ、歌い出した。たちまち全員が、そして他の戦車乗りたちもそれに従う。

 

雪の進軍 氷を踏んで

どれが(かわ)やら 道さえ知れず

馬は倒れる 捨ててもおけず

ここは何処(いずく)ぞ 皆敵の国

ままよ大胆 一服やれば

(たの)み少なや 煙草が2本

 

 そう、「雪の進軍」である。

 今は5月なので、季節外れも甚だしいのだが、北方で戦っていた士魂部隊らしい、と言えるだろう。

 

 

「なあ萩ぃ、俺たちも何か歌う?」

「えー? わざわざ歌わなくても……」

 

 他の兵士たちが、自分たちに馴染みのある軍歌を歌っているのを聞いて、駆逐艦娘"嵐"が"萩風"に問う。形のいい眉をハの字にして、困ったような顔をする"萩風"。

 その時、

 

「私たちで歌って言ったら、やっぱこれだよねー。守るも 攻むるも (くろ)(がね)の~♪」

 

 "飛龍"が歌い出したのである。

 

「もう、飛龍ったら……。浮かべる城ぞ 頼みなる~♪」

 

 続いて"蒼龍"。

 

「ほら行くぜ! 浮かべる その城 日の本の~♪」

 

 "嵐"はノリノリである。

 

「もう……しょうがないなぁ、()(くに)四方(よも)を 守るべし♪」

 

 ついに"萩風"も歌い出す。

 彼女たちが歌っているのは、「軍艦行進曲」。ここは陸の上であり、海軍要素など欠片もないので、傍目には違和感バリバリなのだが、彼女たちは全く気にしていない。

 

 

「いやぁ……戦闘の直前に歌を歌うことで、士気の高揚なんかに繋がる、とは聞いてたけど、これは……」

 

 タウイタウイ部隊の本陣にて朝飯を食べながら作戦計画を見直していた堺は、苦笑いを顔に浮かべた。

 周囲からは、タウイタウイ部隊の兵士たちが歌う声が聞こえてくる。それが感染したのか、クワ・トイネ公国やクイラ王国の国歌も聞こえてきた。兵士達の士気はバッチリのようだ。

 

「んじゃ、こっちもやりますか」

 

 言うが早いか、堺は1人歌い出す。

 

「見よ東海の 空明けて……」

 

 その途端、他の軍幹部たちも一斉に続いた。

 

(きょく)(じつ)高く 輝けば

天地の(せい)() (はつ)(らつ)

希望は踊る (おお)()(しま)

 

 かつての日本で、第2の国歌としても定められた歌、「愛国行進曲」である。

 

おお(せい)(ろう)の 朝雲に

(そび)ゆる富士の 姿こそ

(きん)(おう)()(けつ) 揺るぎなき

我が日本(にっぽん)の 誇りなれ

 

 

 かくして、歌うことで士気を整えた後。

 戦いは、午前7時にスタートした。

 

「てぇーっ!」

 

 号令が響くや、

 

ズドォォォォン!

 

 34門の八八式75㎜野戦高射砲が、八九式中戦車が、九七式中戦車チハが、九五式軽戦車ハ号が一斉に砲撃を放つ。距離数百メートルという近距離での砲撃は、狙い違わず着弾した。ジン・ハークを囲む三重の城壁、その最も外側の城壁に連続して爆発が起きる。監視塔の一部が崩れ落ち、バリスタが吹き飛び、多くのロウリア軍兵士が吹っ飛ばされた。

 さらに、

 

ダダダダダダダダ!

 

 九六式軽機関銃による掃射。こちらは戦果のほどは確認し辛いが、城壁に火花が走り石が砕けたと思われる白い粉が舞っているのを見るに、確実に命中はしていると思われる。

 

「航空隊の支援攻撃は?」

「はい、間もなく到着します。報告では、第一次攻撃隊は制空のための隼が8機。それと、魔王(ルーデル)の部隊です」

 

 牽制砲撃の最中、堺は上空からの支援について尋ねてみた。部下から返ってきた答えがこれである。

 

「やはり来たか……。あの城壁の中には、恐らくどっかにワイバーンの飛行場があると思う。そいつを叩くよう、魔王大佐に言っといてくれ」

「承知しました!」

 

 通信兵に指示を出した後、堺は戦闘指揮に注意を戻した。

 

「萩風と嵐はしばし後方で待機。蒼龍と飛龍は戦闘機を上げて上空援護! 他の部隊は撃ち方続けろ!」

 

 

「パタジン将軍! 敵、攻撃を開始しました!」

 

 肉を挟んだパンで、急ぎ朝食をとっていたパタジンの元に、幹部の1人が駆け込んできた。と同時に、遠くから次々と爆発音が響いてくる。

 

「なに!? もう攻撃してきたのか!」

 

 パタジンは、朝食もそこそこに立ち上がる。

 

「第1城門に詰めている騎兵隊400を、威力偵察に向かわせよ! 竜騎士団は全員飛び立て!

他の者はバリスタか弓か魔法で射撃! 届くようなら投石機も使わせろ!」

「はっ!」

 

 こうして、ジン・ハーク攻防戦は開始された。

 

 しかし……

 

「ぎゃあああ!」

 

 威力偵察に出撃した騎兵隊を待ち受けていたのは、八九式重擲弾筒と三八式歩兵銃、九六式軽機関銃による弾幕の嵐だった。加えてあちこちに設置された鉄条網が、騎兵の進撃を阻む。

 鉄条網で機動力を制限されたところを、機関銃で狙い撃ちされてはひとたまりもない。騎兵隊400は、あっという間に全滅してしまった。

 

 騎兵隊全滅の報を受け、パタジンが急いで重装歩兵部隊を編成している間、竜騎士たちは愛騎のワイバーンを叩き起こし、飯を食わせて離陸を急ぐ。

 しかし、敵はそれを許しはしなかった。アイナ平原の野戦飛行場に進出していた、「Ju87C改(Rudel Gruppe)」36機と直衛の一式戦闘機「隼」8機が襲ってきたのである。

 

 

「行くぞ、相棒!」

 

 王都防衛にあたっていた、ロウリア王国王都防衛隊・第2竜騎士団。その新人竜騎士であるターナケインは、先輩たちに続いて離陸を開始していた。

 その時、上空から甲高い音が響いてきたのである。

 

「な、なんだぁ!?」

 

 ワイバーンの手綱を必死に繰りながら上を見上げた彼の目に、ほぼ垂直に急降下してくる飛竜が映り込んだ。

 

「やっ、ヤベェ!」

 

 慌てて相棒を離陸させたその時、悲鳴じみた甲高い音を立てながら突っ込んできた敵飛竜から、黒いものが投下された。

 次の瞬間、さっきまで彼が走っていた滑走路が猛烈な音とともに黒煙に包まれる。離陸があと一瞬遅れていたら、間違いなく自分は()()()(じん)にされていただろう。

 

「危なかった……!」

 

 ところが一難去ってまた一難、今度は彼の相棒のワイバーンが言うことを聞かない。彼としては、先輩たちとともに戦うべく、高度を上げたいのだが、相棒は敵飛竜が立てる甲高い音にビビって、全く高度を上げようとしないのである。

 

「おい、言うことを聞いてくれ……!」

 

 その時、鼓膜が破れるかと思うほどのすさまじい爆発音が後方から轟いた。彼は、咄嗟に後ろを振り返る。

 

 ……飛行場が、やられていた。

 

 飛行場は、滑走路から何から、猛烈な黒煙に包まれて、全く姿が見えない。どう考えても、ワイバーンの発着は不可能になっている。また着陸できたとしても、おそらく竜舎も粉微塵にされているだろう。

 

「くそ! こんなにもやられるなんて……」

 

 ターナケインは呟く。そして前に視線を戻したその時、彼の目の前を黒い大きなものがよぎった。両側に翼を伸ばしている。

 彼は一瞬、敵の飛竜が落ちたのかと考えた。しかしすぐに、それは間違いだと悟る。

 落ちていくもの、それに乗っている人らしきものは鎧を着ていたのだが、その鎧はロウリア軍で制式採用されているものだったのだ。つまり、落ちていったのは味方だ、ということになる。

 

(くそ、敵の導力火炎弾か。早く上がって、仇討ちを……!)

 

 だがターナケインは気付いていなかった。先輩の体は焦げてなどおらず、寧ろ血を流している、ということに。

 

 なんとかして、相棒を上がらせようとするターナケイン。その耳に、タタタタタという小刻みな音が響く。

 

「この音は……?」

 

 思わず呟きながら、ターナケインは上を見て絶句した。

 

 両翼に赤い丸を描いた飛竜が空を乱舞し、先輩方が次々とやられて落ちていたのだ。

 

 赤い丸を描いた飛竜は、ワイバーンをはるかに上回るスピードと機動力で、第2騎士団の騎士たちを追い回す。騎士たちが敵飛竜の後ろを取っても、優速を生かしてすぐ振り切られてしまう。逆に後ろを取られたら、どれだけ足掻こうとも逃げ切れなかった。

 そして後ろを取った敵飛竜は、導力火炎弾を発射…するのではなく、鼻先をチカチカと連続して光らせ、タタタタという連続音を上げる。するとロウリア軍の竜騎士たちは、血飛沫を上げて愛騎もろとも墜落していくのだった。敵飛竜はワイバーンが首を下に下げ、血が吹き出るのを見ると、それ以上の深追いはせず、次の飛竜に挑んでいく。

 たった8騎の敵飛竜の前に、ロウリア王国第2竜騎士団40騎は総崩れとなっていた(残り10騎は、発進前に地上で撃破されている)。

 

「そんな……!」

 

 唖然とするターナケイン。その時、視界の端に何かが映る。

 ちょうど敵の飛竜が1騎、同じくらいの高度を飛んでいた。さっき攻撃を終え、離脱しようとしているところのようだ。距離は近い。幸い、こちらには気付いていないらしい。

 

「見てろ、先輩たちの仇!」

 

 呟くや、彼は相棒の低空飛行を利用して、家々の間を縫うように飛び、相手の右後方から接近していく。攻撃の戦果を確認しているのか、相手は低い所をゆっくり飛んでいた。チャンスだ。

 

(焦るな、焦るな……)

 

 高鳴る胸を抑え、冷静に相棒の手綱を操る。じわじわと、相手に近付いていく。

 そしてついに、相手を自分のリーチに捉えた。

 

「いっけぇっ!」

 

 ターナケインは一声叫んで、相棒の手綱をぐいと引く。

 相棒は彼の指示に応え、家の影から飛び出して敵飛竜に突進した。相手との距離がみるみる縮まり…導力火炎弾の射程に入る。

 

「喰らえ!」

 

 相棒の口にエネルギーが集まり、導力火炎弾として発射された。火炎弾はしばし空中を飛翔し…みごとに相手の飛竜の右の翼に命中した。

 

「やっ……」

 

 やった、と言おうとしたその時、相手が動いた。背中についている細長い棒が、こちらを向く。そして、

 

ダダダダダダダダ!

 

 その棒が、連続音とともに火を吹いた。ヒュンヒュンという風切り音。赤い液体が水玉となって宙を舞う。

 次の瞬間、相棒のワイバーンがガクンと首を下げた。

 

「おい、相棒!? うわあぁぁぁ」

 

 悲鳴を上げ、ターナケインはワイバーンの背中に乗ったまま、墜落した。

 が、幸い商店の(ひさし)に突っ込んだため、ターナケイン自身は奇跡的に無傷で済んだ。

 

「相棒! しっかりしろ!」

 

 墜落と同時に相棒の背中から放り出された彼は、起き上がってすぐ相棒に駆け寄り……息を飲んだ。

 

 相棒の顔は一面真っ赤に染まり、顔面の数ヶ所に穴が開けられていたのだ。

 もちろん、相棒はとっくにこと切れている。

 

「相棒……! くっ、でも奴は落とし……」

 

 涙声で言いながらターナケインは涙を拭って空を見上げ、唖然とした。

 さっき一撃を喰らわせた敵は、落ちていなかった。導力火炎弾で右の翼の先端5分の1ほどを失い、翼に火がついてフラフラしていたが、それでもまだ飛んでいる。そして右の翼から黒煙を噴き出しながら、そのまま城壁を飛び越えて見えなくなってしまった。

 

「嘘だろ……!? どれだけ頑丈なんだ……!」

 

 涙を流したまま、ターナケインは1人呟いた。

 

ロウリア王国軍第2竜騎士団、ほぼ全滅。生存者はターナケイン1名のみ。

タウイタウイ部隊、妖精ルーデル搭乗の「Ju87C改」は、被弾により右主翼5分の1喪失。アイナ平原の野戦飛行場にどうにか帰還した後、再出撃不能と判定された。

なお、他のシュトゥーカが500㎏爆弾で攻撃する中、ルーデルのみ1トン爆弾で攻撃した。ターナケインが聞いた、鼓膜を突き破るような爆発音の正体はこれである。

 

 

 その後もパタジンは重装歩兵、弓兵、騎兵、魔導士と、あらゆる兵力を動員して攻撃を試みたのだが……いずれも多大な損害を出して悉く跳ね返された。

 当たり前だ。いくら遠距離攻撃として魔法や風魔法付きの弓があっても、射程はせいぜい50メートルが限界。対して2国連合軍の主力兵器である三八式歩兵銃は、有効射程だけで460メートルもあり、ボルトアクション方式なので精度も良い。このため、立ち止まって魔法や矢を撃とうとしている魔導士や弓兵、直線的に突っ込んでくる歩兵に対してこれらの銃は極めて強力であり、彼らははるか遠くから射撃を受けてバタバタと倒れていった。

 

 ならば、とジグザグに走ったり、馬の機動力で突破しようとすると、九六式をはじめとする機関銃が待ち構えている。有効射程800メートル前後を誇り、すさまじい連発性を持つ機関銃の前では、機動力は全く通じなかった。結果、数少ない貴重な騎兵が、次々と無駄死にする事態となったのである。

 

 最も悲惨だったのは、重装歩兵隊であった。ただでさえ全身に鎧を着て、重い剣や槍を持ち、そのうえ巨大な盾まで持っているのだ。機動性は劣悪であり、しかも戦術上、歩兵などとともに固まって最前列で動くことが多い。これが何を意味するかというと。

 

 銃や大砲を持った兵士にとっては、いい的でしかないのである。

 

 目立つ模様が描かれた盾の群れをめがけ、戦車の57㎜榴弾や野戦高射砲の75㎜砲弾、そして擲弾といった爆発物をかたっぱしから撃ち込まれ、あっという間にやられてしまう。そして隙あらば銃弾も撃ち込まれるのだ。

 盾には砲弾どころか、銃弾を防ぐ力さえほとんどなく、かといって味方の先頭に立っているうえに重装備なので、逃げることもままならない。

 というわけで、重装歩兵は好き放題に狙い撃たれて全滅してしまう事例が相次いだのである。

 

 

 6回にも及ぶロウリア軍の攻撃は、全て失敗に終わった。今やロウリア軍の残存兵力は、歩兵29,300、重装歩兵6,000、弓兵800、騎兵3,000、魔導士600のみである。対して2国連合軍は、報告からパタジンが判断する限り、大した被害もないようだ。それどころか“ゼロ”かもしれない。

 特に重装歩兵の被害は最悪で、現時点で出撃して生還した者はたった1人しかいない。話を聞くと、どうやらその者は、古の魔法帝国製だという盾を持って参加したのだそうだ。そして味方がバタバタ倒れていく中、彼1人だけあのすさまじい弾幕の中を生きて戻ってきたのである。しかも、盾はまだ使えそうだ、というではないか。

 

(さすが、神話に名高い魔法帝国だな)

 

 パタジンは一瞬そう考えたが、彼の事例は()()()()()だ。それ以外は、ほとんど全滅しているではないか。

 しかも敵は、飛竜を使ってはるか高空から爆発物を降らせ、市街地と言わず兵舎と言わず破壊していっている。市民の間には動揺が広がり、兵士たちの間には焦燥感が募っている。

 

「こりゃまずい……ひとまず会議だ! どうすべきかを協議しなければ……! 我々は、なんとしても勝つ!」

 

 

 その後、日が沈む頃に会議が行われ……新たな作戦として夜襲が決定した。

 動員兵力は、王都防衛軍の第3騎兵大隊の騎兵2,000。指揮を執るのはパタジンも信頼を置く「知将」カルシオ。キツネのような細い釣り目が特徴の男性だ。彼は、王国の拡大期にパタジンを支え、多大な功績を上げてきた有能な将軍の1人である。

 

 

「これだけ大勝利しているとなると、敵軍も気が弛むはず……今頃勝利の宴でもしているかもしれない。我々は、そこを突く!」

 

 すっかり日が落ちて真っ暗になった頃、星空の下で王都西門を出撃しながら、カルシオはそう呟く。

 敵軍が展開しているのは王都の東門から北門にかけて。なのでそれを迂回して急襲するべく、彼らは西門から出撃している。

 王都の城壁を右に見ながらしばらく進むと、敵の夜営拠点と思しき一帯が近づいてきた。兵士たちに緊張が走る。

 

「足音を立てるな。慌てず静かに、しかし急いで、敵に接近するのだ!」

 

 忍び声で命令が伝達される。

 そして、体感で1時間もかかっているのではないかと思えるほどの時間の後……ついに、敵との距離をおよそ500メートルまで詰めることに成功した。

 

(あと少し!)

 

 その思いを全員が抱いた時だった。

 不意に敵陣から何かが複数、夜空に向けて打ち上げられた。

 

(何だ?)

 

 部隊の先頭に立つカルシオが疑問を抱き、その物体を見つめていると、それらは自軍の上空に達して……眩い光を放った。その一帯だけ、夜の闇が少し駆逐される。光の中に、騎兵たちの姿がはっきり浮かび上がった。

 

「まずい!」

 

 カルシオが事態を悟った瞬間、

 

「てぇー!」

 

ズドォン!!!

ズダダダダダダダダダ!!

 

 擲弾、砲弾、機関銃弾……ありとあらゆる攻撃が彼らを襲った。

 (こう)(かつ)(しん)(かい)(せい)(かん)を相手にし続けてきた堺が、夜襲の可能性を見落とす訳がない。こんなこともあろうかと、軍を配置しておいたのだ。加えて夜戦は、日本軍の()()()でもある。

 カルシオの作戦は、最初から見破られていたのだ。日本軍は、フクロウのごとき夜目を持つ見張り員の力で、接近する敵軍を見つけ出し、自分達のリーチまで誘い込んだ。そして、八九式重擲弾筒で照明弾を打ち上げて敵を照らし、一斉攻撃を浴びせたのである。

 

「ぐああぁぁ!」

「ぐふっ!」

「この……く……そ……っ!」

 

 騎兵たちは突然の明かりに照らされ、さらに集中砲火を受けて、その数を一気に減らしていく。

 

「作戦失敗だ、全軍撤退しろ! 繰り返す、全軍撤退しろ!」

 

 必死に叫ぶカルシオ。そして、バラバラにではあるが、撤退していく仲間たちを視界に収めたその時、彼自身は75㎜砲の直撃で吹き飛ばされた。

 

 

夜襲作戦、失敗。カルシオ以下1,500名戦死、行方不明者400名弱、100名以下の少数のみ城壁内に帰還。第3騎兵大隊壊滅。

 

 

「くそ……! 作戦失敗か……!」

 

 這々の体で帰還してきた騎兵から話を聞いて、パタジンは歯軋りした。

 聞けば、第3騎兵大隊は敵に一撃も与えられぬまま一方的にやられたのだとか。そしてカルシオは先頭にいたというから、おそらく助かってはいまい。

 

「奴ら、どれだけ手強いんだ……!?」

 

 ここまでやられるとは予想していなかった。もう王都防衛騎士団には、有力な部隊はほとんど残っていない。

 

「こっちの部隊の再編成も必要だし……ここは外からの援軍を待って、再度反撃に出るか……」

 

 王都の敵包囲の外側には、まだ友軍が残っている。それと合流すれば、まだ勝機はある。

 パタジンは、援軍の到着を待つことを決断した。……が。

 

 それに付き合う必要のない敵軍は、とんでもない手に出てきた。

 

 

「第1歩兵大隊と第3歩兵大隊は壊滅か…第3の方は解隊して、第1歩兵大隊に再編するか……」

 

 夜食のパンを(かじ)りつつ、編成を考えようとするパタジン。

 その時突然、大音響が響いてきた。まず大きな爆発音。続いて、何か巨大な木製の物体が叩き割られ崩れ落ちるような音。そのセットが3回、連続して響く。

 

「な、何だ!?」

 

 パタジンが呟いた直後、幹部の1人が血相を変えて飛び込んでくる。

 

「大変です! 敵の強烈な魔導により、王都北側の城門が3つとも破壊されました!」

「何だと!?」

 

 カルシオらを撃退した後、堺の命令により"萩風"と"嵐"が展開し、「WG42」の30㎝ロケット弾を以て、王都北側の城門を全てぶち抜いたのだ。パタジンが聞いた大音響は、ロケット弾の爆発音と、分厚い木でできた城門が崩壊する音だったのだ。

 

「まずい! 全兵力を北側城門に集結させよ!

敵が侵入してくる! 絶対にここへ向かわせるな! 食い止めよ!」

「ははっ!」

 

 パタジンの命令はすぐに伝えられ、王都防衛騎士団はただちに動き出した。

 しかし、敵軍の攻撃はあまりにも素早かった。

 

「突撃ぃぃぃぃぃ!」

 

 鋭く号令がかかる。

 城門を破るというチャンスを見逃すことなく、連合軍は突撃に踏み切ったのだ。

 え? クイラ王国軍? 2ヶ月ほどの間にとっくに大日本帝国陸軍色に染め上げられていますが、何か問題でも?

 

「陛下の御為に、攻撃ぃ!」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「進めー! 叩きのめせ!」

「皆殺しだぁぁぁぁぁぁー!!」

「ばんざぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

「ypaaaaaaaaaa!」

 

 戦車隊を先頭に日本軍が、クワ・トイネ公国軍が、クイラ王国軍が突撃する。目指すはただ1点、ハーク城。撃ちてし止まむの精神で、彼らはひたすら突撃する。

 ちなみにロシア語が混ざっているが、ソ連兵がいるわけではない。転移前の世界の満州で、ソ連軍と戦った者が叫んでいるらしい。ただそれだけである。

 

「敵の歩兵隊を発見!」

「敵軍、歩兵じゃ!」

「大和魂を見せてやる!」

「皆殺しじゃ、攻撃しろぉ!」

「(手榴弾が)爆発するぞー!」

 

 ものすごい勢いで、銃を持った歩兵や騎兵が、城門の中に雪崩れ込む。

 

「砲撃支援を要請する!」

「砲兵隊に標的を指示せよ!」

「上官殿、この地点に砲撃願います!」

 

 通信機を持った歩兵が、城壁の外にいる砲兵隊に座標と砲撃支援要請を送っている。その手にはジン・ハークの簡易な地図があった。空襲に参加したパイロットたちから話を聞き、大急ぎで作った地図である。

 その要請を受け、砲兵隊は「WG42」の発射準備にかかる。

 

 既に第3の城門、つまり三重の城壁のうち最も内側の城壁の門で、激しい白兵戦が始まっていた。突っ込んでくるロウリア軍の歩兵隊に、九七式中戦車チハが火炎放射を浴びせる。城壁に潜んだ弓兵が、下に向かって矢を射かけると、2国連合軍の歩兵が短い絶叫を上げて倒れる。仕返しとばかりに銃弾が撃ち込まれ、手榴弾が投げられる。それを生き延びた弓兵は、再び矢を射ようと身を乗り出した瞬間、待ち構えていた機関銃で蜂の巣にされた。

 

「進めー! 叩きのめせ!」

「殺せぇぇぇぇぇぇ!」

「バンザァァァァァァイ!」

 

 しかし、いくらロウリア軍が奮戦しようとも、戦車を前面に押し立てて突っ込んでくる部隊の足止めにはならなかった。しかも、歩兵隊はボルトアクション式ライフル銃を装備しているのだ。槍と剣で戦う軍が勝てるわけがない。

 第3の城門は短くも激しい攻防戦の末に突破され、連合軍はついにハーク城へ到達しつつあった。その時、大気を切り裂いて飛んできた30㎝ロケット弾が、ハーク城に次々と着弾する。砲撃支援が始まったのだ。

 そして、そのうちの1発が宮殿の正面玄関に着弾。重厚な玄関ドアを吹き飛ばして大穴を開けた。城の玄関ホールが剥き出しにされる。

 

「突撃ぃぃぃぃぃ!」

「天皇陛下、バンザーイ!」

 

 兵士たちは叫びながら、宮殿の中に突入していった。

 

 その後、ランド率いる近衛兵団が宮殿のあちこちで侵入してきた2国連合軍を迎撃するも、強力な武装を持つ2国連合軍の敵ではなかった。宮殿は近衛兵たちの断末魔と、たまたま近くで戦闘を目撃した、あるいは巻き込まれてしまった文官、女官たちの悲鳴、そして銃の発砲音や剣のぶつかりあう金属音、バタバタと走る足音で満ち溢れた。

 

 

 かつて、クワ・トイネ公国、クイラ王国に対する戦争を許可した会議室兼謁見室。その隣の私室でロウリア王国大王、ハーク・ロウリア34世はガタガタ震えていた。

 

 6年もの時間と、もはや服従といってもいいほどの屈辱的な条件を飲むのと引き換えに、列強パーパルディア皇国から得た軍事支援。

 数万人規模の兵士や、大量の軍船やワイバーン。列強式の兵隊教育により、兵の練度も引き上げてきた。資材も資金も、国力のギリギリまで投じ、数十年先まで借金をして作り上げた、“ロデニウス大陸において最強の軍隊”。

 クワ・トイネ公国の軍にも、クイラ王国の軍にも、負ける要素はなかった。それどころか圧倒的な大勝利以外の未来はあり得ず、負けることなど120パーセントあり得ないとすら思っていた。

 

 しかし、現実はどうだ。

 

 ロウリア三大将軍と謳われたパンドール、ミミネル、スマークはいずれも戦死し、クワ・トイネ侵攻軍は甚大な被害を出して撤退。それどころか国境を突破され、国内深くにまで攻め込まれてしまった。何万もの兵士たちが戦闘で死に、あるいは心身に傷を負って戦えなくなった。また、幾多の国民が戦火に巻き込まれ、命を落とし、あるいは家財を失った。

 

 そして今、敵はジン・ハークどころかハーク城の内部にまで攻め入ってきている。

 

 500騎もの数を誇った竜騎士団は全滅し、50万の大軍も見る影もなく、王都防衛騎士団すら全滅寸前。そして、難攻不落のはずの城壁を敵軍は難なく突破し、宮殿中で戦闘を繰り広げている。近衛兵団は激しく抵抗しているようだが、戦況はかなり厳しいようだ。

 

 あれだけ苦労して築き上げた軍隊は、そのほとんどが失われてしまった。

 いったいどうして、こうなってしまったのだろう。

 

 クワ・トイネやクイラを、亜人国家と侮らず、もっとよく情報を集めてから戦争を仕掛ければよかったのではないか。

 

 そうだ、きっとそうだ。

 パタジンは以前に言っていたではないか。敵を知っておけば、それだけで負ける可能性を減らし、勝つ可能性を上げられる、と。

 最近の2国の状況を知っておけば、こうはならなかったのではないか。

 

(余は……選択を誤った……!)

 

 悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない。

 もう、どうしようもない……

 

キンッ。ガキン!

ダン!ダン!ダン!

 

 謁見室から剣がぶつかりあう音、兵士たちの悲鳴、そして聞いたことのない乾いた音が聞こえる。

 もう敵は、すぐそこまで来ている……

 

バタン!

 

 私室のドアが乱暴に開けられ、くすんだ緑色の妙な服を着た者たちが数人、飛び込んでくる。

 彼らは鎧を全く着ていない。頭に兜を被ってはいるが、黒塗りのお椀のようなもので、我が軍の兜と比べると地味である。

 そして、彼ら全員が反り返った長めの剣を腰に下げ、手には小さな黒い筒状の物体を持っていた。魔法の杖だろうか。ということは、この者たち全員が、魔導士なのか。

 その杖(杖ではありません。十四年式拳銃です)が、一斉にハーク・ロウリア34世に向けられる。それを見て、王は神話に残る古の魔法帝国軍のおとぎ話を思い出した。

 

「ま……まさか……魔帝軍か!?」

 

 ハーク・ロウリア34世の声は、恐怖で震えていた。

 その質問に飛び込んできた者のうちの1人が、王に近づきながら答えた。

 

「マテイグン、というのは良く分からんが、我々はそうではない。我々は日本国海上護衛軍・タウイタウイ部隊の者である。ハーク・ロウリア34世、貴様にはクワ・トイネ公国の都市ギムにおいて、大量虐殺を指示した廉で逮捕状が出されている。逮捕状は別の者が持っていて、今ここにはないので緊急執行とする。逮捕状は後でお見せする。さて、我々とともに来てもらおう。両手を前に出せ」

 

 ハーク・ロウリア34世の手に、ガチャリと音を立て、手錠がかけられた。

 

 

 こうして、ロウリア王国大王、ハーク・ロウリア34世は、タウイタウイ部隊によって捕縛された。

 それを受け、パタジンら残存部隊はこれ以上の戦闘は無意味であるとして、武装解除のうえ2国連合軍に投降し、ジン・ハーク攻防戦は終わった。

 

 中央暦1639年5月7日 午後10時42分。

 ロデニウス大陸の3国を巻き込んだ戦争は、ロウリア王国の敗北で終結した。

 いずれの国にも大なり小なり被害の出た、痛ましい戦争であった。

 

 

[最終的な各国の被害]

 

クワ・トイネ公国

戦死者約1,000名、負傷者約400名

 

クイラ王国

戦死者約200名、負傷者約350名

 

ロウリア王国

戦死者約60万名、負傷者約10万名

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 同時刻、ロデニウス大陸から北西に遠く離れた海の上を、夜の闇の中を航行する1隻の船があった。その船の帆にはロウリア王国の紋章が描かれている。先日、ムーの船と入れ替わるような形でピカイアを出港した大型船だった。

 船の甲板に立つのは、ロウリア王国の将軍クラスの1人だったアデム。彼は、あの時点で既にロウリア王国を見限っており、本国に報告に行くと見せかけて、国外に脱出したのだ。ロウリア王国に残してきていた、配下の魔獣兵団を引き連れて。

 

(今頃ロウリア王国は、敗北しているだろう。クワ・トイネの亜人どもの殲滅は失敗だ。だが……)

 

 彼の口元に、不気味な笑みが浮かぶ。

 

(これから向かうかの国なら、やってのけるだろう。クワ・トイネ公国の殲滅を)

 

 船の向かう先は、フィルアデス大陸にあるパーパルディア皇国。

 闇の中を、船はゆっくりと進んでいった。




今回は、戦闘時間が夜だったせいもあって、空挺部隊の出番はなしでした。
日本軍には空挺は不要ッ! 正面突撃でぶち破るのみ! 天皇陛下バンザァァァァァァイ!

でも空挺部隊はないわけではなくて、ちゃんと存在しています。どこかで出番を作らなきゃな…

これにて、第一章「ロデニウス大陸の夜明け」は終了となります。次回より、新章突入です! 今後ともよろしくお願い申し上げます!
あと、小話「003.5. クワ・トイネ公国の新たなるブーム(1)」も、できればお読みいただけますと幸いです!


次回予告。

戦争はついに終結した。結ばれる講話条約、しかし新たなる戦いの火種が燻る…。そして、クワ・トイネの政治体制が…?
次回「戦の終わり、苦難の始まり」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。