鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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今話ですが、一言で申し上げれば「カオス」です。なかなかカオスなことになっております。そして当然のようにネタ入りです。
また、今話は本編に強く関連するものではありません。
以上2点、お読みになる前にご承知くださいますようお願い申し上げます。

あと、私事ですみませんが、喪中の身ですので新年の挨拶は「今年もよろしくお願いいたします」とだけ申し上げます。あけおめの方は、堺に言ってもらいます。



新年、異世界より愛を込めて

 西暦2022年1月1日 午前7時、タウイタウイ島 ロデニウス連合王国海軍第13艦隊司令部。

 え、作中暦は6月上旬だしそもそも中央暦じゃないのか、って? 細けぇこたぁ良いんだよ!

 何はともあれ、タウイタウイ泊地司令部(@異世界)から、読者の皆様に新年のご挨拶を申し上げる、ということで。

 

「「「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」」」

 

 新年の飾りを施された提督室で、畳に正座した(さかい) (しゅう)(いち)、"大和(やまと)"、"武蔵(むさし)"の3人が、手をついて深く頭を下げる。3人とも晴れ着としての袴姿だ。堺は青、大和型姉妹はそれぞれ赤と黒の袴を着用していた。

 ムー大陸に出征していたはずの堺と"武蔵"が何故ここにいるのか、という話であるが、端的に言えば「一時的に戻ってきた」のである。どうやって戻ったかって? そんなの、ハウニブ使ったに決まっているでしょう。あの機体なら、時速4,000㎞は余裕で出せるから、ムー大陸まで片道5時間もかからないのである。

 

「あの、提督、それに武蔵も。帰ってきていただいたのはありがたいんですが、戦線を空けてしまって大丈夫なのですか?」

 

 当然の"大和"の質問に対し、堺は事もなげに答えた。

 

「さすがにグ帝の連中の動きを見てから来てるよ。ムー大陸周辺に展開しているグ帝軍は、海軍、空軍共に即時行動できる状態にない、又は動けても航続距離が足りない等の理由から、1日で我が艦隊を攻撃圏内に捉えられない。つまり、半日くらい戦線を空けても大丈夫と判断されたんだ。

それに、第1艦隊司令のブルーアイ中将にも、あの規模の艦隊を指揮する経験を持ってもらいたいと思ってたし」

 

 実際、第1艦隊には船団護衛などに使われる小型空母はあるが、正面切って敵国の正規軍とガチ殴り合いができる正規空母や戦艦がない。それだけではなく、モース・ブルーアイ中将をはじめロデニウス連合王国海軍の主だった将官には、100隻以上の艦隊や戦艦・正規空母を含む主力艦隊の指揮経験が少ない。それを憂慮し、堺は一時的に第13艦隊の指揮をブルーアイに委任してきたのだ。これも経験の1つである。

 

(まあ、それにこうして顔見せておかないと、"大和"のメンタルが気になるからな)

 

 堺はそのことを口に出さなかった。

 

「それで、新年の(あい)(さつ)ってことだったが、何を言うつもりなんだ?」

 

 これは"武蔵"の質問である。

 

「それなんだがな、簡単にいえば今後の方針だよ。というか、逆にいうとそれしかない」

 

 そう言うと、堺は一呼吸置いて話し始めた。……どこからか取り出したカンニングペーパーを持って。

 

「えー、私たちの戦いが始まってはや3年、昨年もご愛読いただきましてありがとうございました」

 

 堺の後ろで、「誰に向かって言ってるんだ?」「さあ……」とひそひそ声が聴こえた気がしたが、気にしない。

 

「現在、ロデニウス海軍第13艦隊に所属する艦娘たちは、提督の指揮の下グラ・バルカス帝国と交戦中ですが、有力な敵艦隊を撃破し、ムー大陸西岸の制海権を取り戻しかけています。この後は『ユーラヌス作戦』として、グラ・バルカス帝国に占領されているパガンダ島を攻略しましたから、この島を第13艦隊の拠点の1つとします。また同時に、ムー統括軍がその力を尽くしてイルネティア島……かつてはイルネティア王国と呼ばれていた地ですが、そこをグラ・バルカス帝国から奪回する予定です。第13艦隊は、そのムー統括軍の側面援護を行います。

しかし、第13艦隊の作戦行動はこれで終わりではありません。『ユーラヌス作戦』終了後、ムー大陸ではムー統括軍及びロデニウス連合王国軍を中心戦力として、グラ・バルカス帝国に対する一大反攻作戦が予定されています。第13艦隊は、旧レイフォル国を中心にムー大陸西岸のグラ・バルカス帝国勢力圏に圧力をかけると共に、ムー大陸への増援・補給船団を撃破すること、そしてグラ・バルカス帝国が制海権奪回のための軍事行動を起こした場合に、これを破砕する役割を担うことになります。ムー大陸は広大ですから、ムー大陸総反攻作戦には少なくとも半年はかかるものと見られます。それが終わった後は、一旦グラ・バルカス帝国に降伏を促し、外交で事態の解決を図ることになると思われます。

どうやら中央暦1643年のクリスマスには帰れそうにありません。ですが、最低でも皆で生きてタウイタウイ泊地に帰れるように努力しますので、応援よろしくお願いいたします」

 

 淀みなく言い終えると、堺はカンニングペーパーをしまいながら直ちに口調を切り替えた。

 

「そんじゃ、これで挨拶終わり!」

 

 スピーチ嫌いの堺にしては、これはなかなか頑張ったほうではなかろうか。

 

「俺もあんまり長くはいられないんだが、雑煮とおせち料理を食う時間くらいはある。それに(ほう)(しょう)さんが心を込めて作ってくれたんだ、冷めないうちに食わないとな!」

 

 3人の後方にはちゃぶ台があり、その上におせち料理と3人分の雑煮が用意されていた。雑煮の湯気が少なくなってきており、明らかに冷めてきつつある。温かいうちに食べるのが礼儀というものだろう。

 かくてつつがなく挨拶が終わり、3人が雑煮とおせち料理に箸を付けようとした、その時だった。

 バタン! と大きな音を立てて提督室のドアが勢い良く開けられ、そこから1人の長身の艦娘が飛び込んできたのだ。

 

「緊急事態だ相棒よ!」

 

 鬼気迫る表情で飛び込んできたのは、褐色の肌とツインテールの銀髪が目立つ大柄の艦娘。大和型2番艦"武蔵"である。こちらは改二衣装、つまり灰色を基調とする衣装をしっかり着こんでいた。

 

「「……え!?」」

 

 堺と"大和"の目が丸く見開かれた。次いで2人の視線が、今飛び込んできた"武蔵"と袴姿の"武蔵"との間を往復する。

 

「「武蔵が、2人!?」」

 

 ケッコンした絆の証か、驚愕の叫びまで一致していた。

 その一方、飛び込んできた"武蔵"は、もう1人の"武蔵"に敵意の視線を向けている。その相手はというと涼しい顔だ。

 

「まさか私の偽者とはな! 相棒と姉上を(たぶら)かすとは、(なに)(やつ)!」

 

 ずかずかと歩み寄る"武蔵"。その途端、

 

「く、くふふふふ……」

 

 袴を着た、「偽者」と呼ばれた"武蔵"が笑いだした。そして、

 

「おっしぇぇぇぇぇぇい! ドッペルゲンガー作戦だいせいこーう!!」

 

 奇声を上げたのである。

 

「「「!?」」」

 

 これには一瞬、"武蔵"ですらあっけにとられた。その隙に、

 

「"イセ"だけに、異世界にも伊勢エビがいるなんてな! いただきマンティコアーっ!」

 

 偽武蔵は、テーブルの皿に乗っていた伊勢エビ(正確には、伊勢エビっぽいこの世界の甲殻類)を素早く奪い取った。

 

「知ってっか? 海老(えび)(たい)を釣るってのは、こういうことを言うんだぜ?」

 

 そしてどこから取り出したのか、明らかに鯛と見られる赤い魚を空中に放り投げ、受け止める。

 

「貴様!」

 

 "武蔵"が飛びかかり、見事相手を押し倒した……と思ったのは幻想だった。"武蔵"が床に押さえつけたのは、袴だけである。取り押さえられる寸前で、相手は高々とジャンプしながら袴を脱ぎ捨て、ル◯ン三世もびっくりの早着替えを敢行したのだ。

 床に着地した相手はドレスめいた真っ赤な衣服に身を包み、すらりとした健康的な下肢と抜群のプロポーションを見せつけていた。あと、顔にもマスクをしていたらしく、褐色の肌ではなく白い肌を見せている。どうやら本来の肌の色は白っぽいらしい。

 だが、堺が注目したのはそこではない。何せ彼は、グラマラスな身体など飽きるくらい見ているのだから(主に嫁カッコカリのせいである)。

 彼が注目したのは、この謎の侵入者の頭部だった。ツインテールの銀髪……を模したアデランスが外れ、その下からお団子ヘアにまとめられていた長い銀髪が現れたのである。

 なぜ地毛と同じ色のウィッグなんかしているのか、という堺の疑問は、一瞬後に氷解した。解けたお団子ヘアの中から、天に向かって突き立つ2つの物が現れたのだ。角……ではない。根元からぴくぴくと動いているからだ。あの形はむしろ……

 

「侵入者だ! 出合えー! 出合えー!」

 

 床に倒れたまま"武蔵"が叫ぶ。それと同時に、泊地内に警報が鳴り始める。

 謎の侵入者はどこからかセーラー帽に似た帽子を取り出して頭に装着すると、ニヤッと笑ってみせた。

 

「そんじゃ、さよなら三角また来て死角! あ、おせち美味かったぜ!」

 

 ここに並んでいる料理に手を付けられた痕跡は、一切ない。となると、どうやらこの侵入者は、厨房でおせち料理を盗み食いしてきたらしい。

 今年のおせち担当は"鳳翔"であるが……盗み食いが発覚した場合に彼女がどうするか、堺はちゃんと知っていた。この侵入者は果たして、元祖一航戦の怒りを捌ききれるのだろうか。

 

「待て貴様!」

 

 起き上がった"武蔵"が飛び出すが、一足遅かった。

 

「かかってきな……最強の焼きそば屋になりたければなぁ!」

 

 謎の侵入者は逃げ出した。しかも、その脚はヒトとは思えないほど速い。自動車と競走しても勝てるんじゃないか、と思えるほどだ。

 "武蔵"も27ノット(およそ時速50㎞)の全速力で追いかけるが、相手の方が速い。みるみる離されていく。だがその時、心強い援軍が現れた。

 

「かけっこですか? 負けませんよー!」

 

 たまたま近くにいた"(しま)(かぜ)"だ。何だかんだ"鳳翔"と仲の良い彼女は、堺に掛け合ってハウニブに同乗し、ムー大陸からこっちに戻ってきて、"鳳翔"のおせち作りを手伝っていたのである。

 40ノットの全速力を発揮し、"武蔵"に代わって"島風"が侵入者を追いかけていく。……"島風"が事情を完全に理解しているのかは怪しいが。

 

「島風は、速いから!」

「おっ、やんのか? いいぜ、来いよ! 大ゴルシ洋の果てまで探検といこうぜ!」

 

 侵入者と"島風"の姿は、みるみる小さくなっていく。追跡を断念した"武蔵"は、無線で艦隊に追撃命令を出していた。即座に応じられる艦娘は少なかったものの、おせちを食べられて怒り心頭に発した"鳳翔"の航空隊が真っ先に飛び出し、追撃にかかっている。

 

「相棒、それに姉上、大丈夫か?」

 

 一方の提督室では、戻ってきた"武蔵"が堺と"大和"に尋ねていた。

 

「あ、ああ。伊勢エビ擬きを持ってかれたけど、それ以外は実害無しだ」

 

 そう答えて、堺は気を取り直した。

 

「まあ、邪魔は入ったが、ほぼ実害ないんだから、現場は一旦鳳翔さんにでも任せて、おせち料理と雑煮食いますかね。冷めねーうちに食べちまおう、戦場じゃ『食える時に食って寝られる時に寝とけ』ってのが鉄則なんだから」

 

 この一言で状況は決着。堺と"大和"、それに本物の"武蔵"は、揃ってちゃぶ台に付くのだった。

 

 なお、おせち料理を堪能した後、堺と"武蔵"は独立第1飛行隊の「ハウニブⅠ」に乗り込み、ムー大陸へと戻っていった。ガス欠を起こしてヘロヘロになった"島風"を連れて。




侵入者「三女神のお告げで、なーんかこっちにもアタシの出番があるらしいってんで、ちょっくら挨拶に来ただけだぜ! 信じる者は掬われるってな!
それにしてもオメーのその水上スケート、おもしれーな! って、おっ、何だかんだアタシにもできんじゃん! あばよぉ~嬢ちゃーん! アウフ・ヴィーダーゼーエンでしてよ〜!」(逃走中)
"島風"「かけっこなら負けないよ! 島風は、速いから!」(全力ダッシュ)
堺「いったい何だったんだ……?」(呆然)
"鳳翔"「盗み食いは許しませんよ! 全艦載機、突撃!」(ガチギレ)
うp主「ゴルシワレェェ! どっから沸いて出たァ!」(ブチギレ)

【速報】
大和型姉妹と一緒に新年を祝おうとしたら、"武蔵"が何故かゴー武蔵ップになってたんだが

はい、というわけで今年の正月挨拶でした。まさか、"武蔵"が「不沈艦」になっていたなんて、思いませんよね。
何故このネタが出てきたかというと、「武蔵って銀色の長髪に抜群のスタイルじゃん。これ、あの葦毛の不沈艦と同じじゃね?」と私が考えたからです。ちなみに肌の色については、マスクと化粧で無理やり誤魔化していました。

なおこの後、"鳳翔"航空隊はあろうことか目標を失探(ロスト)し、"島風"も燃料(スタミナ)切れで航行不能……つまり、侵入者に逃げられました。
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