鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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海戦の描写が想像を超えて字数過多になってしまったので、急遽分割せざるを得なくなりました…。

前回の最後に、"Iowa"が思わせぶりなことを言っていましたが、果たして…?

もちろんですが、や り ま し た。
ここから先はロックがかかっており、パスワードが要ります。以下の台詞に続く一言を言えた方は、チキンブリトーを片手に先へとお進みください。

『死は避けられない。あんたも死ぬし、俺だって死ぬ。みんないつか死ぬ。』
さあ、台詞の続きをどうぞ!





















答えは……『だが今日じゃない。』



163. イルネティア解放戦(8) [Battleship Iowa, sally, go!]

 中央暦1643年6月26日 午前8時頃、イルネティア島の北北東500浬地点。

 この海域では、グラ・バルカス帝国海軍・本国艦隊第42地方隊と、ムー統括海軍・イルネティア救援部隊護衛艦隊が戦闘を繰り広げている。だが今、そこに新たな勢力が加わらんとしていた。

 

「1番管、3番管、Harpoon装填良し!」

「目標識別パターン入力良し、着弾部位制御プログラム構築良し! レーダーロックオン完了、発射準備良し!」

 

 ロデニウス海軍第13艦隊である。といっても、戦艦「アイオワ」と駆逐艦「(ゆき)(かぜ)」の2隻しかいない。

 だが、その2隻ともが只者ではない。(かた)や米国が産んだ最高傑作の戦艦にして、第二次世界大戦を過ぎて冷戦の時代になっても第一線にあった強者。片やどれほど絶望的な戦況であろうと、その大半をほぼ無傷で乗り切り、数々の戦場エピソードを残した「奇跡の駆逐艦」。

 役者は(そろ)った、と言い切って良いだろう。

 

「見てなさい…Fire!」

「1番・3番発射管、Harpoon ready. …Fire! サルヴォ!」

 

シュボボボボォ!!!

 

 “Iowa”の号令を戦術長妖精が復唱する。

 次の瞬間、「アイオワ」の艦体右舷中央付近にオレンジ色のけばけばしい炎が広がった。巨大な鏃のようなものが8つ、白煙の尾を残して猛烈な速度で飛び出す。

 艦対艦誘導弾「Mk.98 Harpoon」だ。この8発が、「アイオワ」右舷発射管に残っていた最後の対艦ミサイルである。左舷発射管にはまだ残っているが、こちらも一斉射分しかない。

 

「Harpoon全弾、順調に飛行中! ……弾頭カメラにて目標捕捉、識別よし、ロックオン完了。目標、タカオ・タイプ2隻、センダイ・タイプ4隻、フブキ・タイプ2隻! 突入箇所設定、魚雷発射管!」

 

 発射されたハープーン艦対艦誘導弾の弾頭にはカメラとCPUが仕込まれており、まず捉えた敵艦を識別する。そしてCPU内のデータベースと照合し、もしデータがある艦種であれば即座に相手の種類や特徴を割り出し、「どんな速度かつどんな角度でどこに命中すれば、最大効率で相手を破壊できるか」を計算するのだ。

 恐るべき「お利口さん誘導弾」である。

 

 グラ・バルカス帝国の軍艦は旧日本海軍の軍艦に酷似した姿・性能を持つ。このため、ハープーンのデータベースにかかれば即座に種類を識別されるのだ。

 そして……対艦魚雷を装備する巡洋艦や駆逐艦だと認識された場合、ハープーンの突入箇所は高確率で「魚雷発射管」に設定される。魚雷という兵器の特性上、発射管は必ず剥き出しになっているため、ハープーンの機動力を以てすればほぼ確実に発射管を撃ち抜ける。それだけではなく、発射管に装填されている魚雷を誘爆させることができるのだ。

 如何に重巡洋艦であっても、複数本の魚雷が艦上で爆発したのでは最低でも大破である。まして駆逐艦や、それに毛が生えた程度の防御力しかない軽巡洋艦であれば、命中=轟沈確定だ。

 

「全弾、直撃コースに突入! 命中(インターセプト)10秒前!」

 

 ハープーンの弾頭カメラから送られてくる映像の中では、敵艦隊が対空機銃を撃ち上げる様子が映し出されていた。だが、航空機より遥かに小さく、かつ航空機より遥かに高速のハープーンを、目視照準の対空機銃で撃墜するなど、できたら奇跡というものだ。そしてグラ・バルカス帝国艦にとって残念なことに、今回は奇跡は起きなかった。

 

「5、4、3、ready……, mark intercept! 全弾命中!」

 

 「アイオワ」CIC内で戦術長妖精が歓喜の声を上げた時、「アイオワ」航海艦橋の双眼鏡では、敵艦隊のど真ん中に8つの太陽が現れる瞬間がはっきりと捉えられていた。ハープーンの直撃で魚雷発射管の魚雷が爆発し、グラ・バルカス帝国の巡洋艦6隻と駆逐艦2隻がたった一撃で消し飛んだのだ。

 

「爆発閃光視認、数8! 敵艦8隻、轟沈!」

 

 航海艦橋に詰めていた見張員妖精は、嬉々としてその報告をCICに上げた。

 この一瞬だけで、グラ・バルカス帝国海軍本国艦隊・第42地方隊はいきなり戦力の50%以上を失うこととなった。ムー艦隊に対して容赦のない攻撃を加え、装甲巡洋艦1隻撃沈・防空巡洋艦1隻中破・軽巡洋艦(事実上の駆逐艦)3隻撃沈でいい気になっていたところに、バケツ8杯の氷水を頭からぶっかけられたのである。

 今や第42地方隊の残存戦力は戦艦2隻、軽空母2隻、駆逐艦4隻しかいない。このうち駆逐艦2隻と軽空母2隻は少し離れたところにいるから、ムー艦隊と直接対峙しているのは戦艦2隻、駆逐艦2隻だけになったのだ。

 

「Harpoonは良い仕事をしてくれたわね。続いて砲戦行くわよ!

目標、敵戦艦2番艦! 第1、第2主砲、砲撃用意!」

「全速前進! 敵との距離を詰めて打ち据えてやる!」

 

 立て続けに指示を出す“Iowa”。機関音が急速に高まる。

 戦艦「アイオワ」の機関出力は、なんと21万馬力を超える。これは列国のどの戦艦よりも抜きん出た数字だ。あの大和(やまと)型ですら15万馬力弱なのだから、どれほどハイパワーのエンジンを積んでいるのか良く分かる。このハイパワーエンジンのおかげで、「アイオワ」は16インチ(40.6㎝)三連装砲3基を搭載しながら33ノットという高速を出せる。

 33ノットの最高速度で敵の戦艦部隊に突進する「アイオワ」。それに対して、(こん)(ごう)型によく似た敵戦艦に付き従っていた2隻の駆逐艦が、慌てたように反転して向かってくる。

 

「艦長、戦闘配置は完了していますが、1発も撃たずにこのまま突っ込む気ですか?」

 

 副長妖精が疑問を呈する。

 確かに、未だ発砲命令は出ていない。敵戦艦のうち1隻はこちらを狙ってくるだろうし、敵駆逐艦がこちらに魚雷を撃とうとしているらしいにも関わらず、である。

 それに対し、“Iowa”は片目だけ閉じてウインクしながら答えた。

 

「副長、『復讐者』よ」

「Huh?」

 

 意味が分からず、副長妖精が首を傾げる。

 

「分からない? じゃ、Avengerと言ったら分かるかしら?」

「??」

 

 意味が分からない。Avengerと言ったら雷撃機ではないのか。副長妖精はますます訳が分からなくなった。

 その時、助け舟を出すかのように戦術長妖精が口を出す。

 

「艦長、こういうことですか? 『撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれない』?」

Exactly(その通りよ).」

「まあ、うん、どうするのかは分かりましたが…本当に発砲後は撃たれずに済みますかね?」

God knows(分からないわ).」

「嫌なことを(おっしゃ)る……」

 

 これは何を言っているのかというと、「最初は撃たずにとにかく相手との距離を詰め、ゼロ距離射撃で確実に倒す」という意味である。あまりに分かりにくい表現だが。

 

「主砲、目標変更。新たな目標、敵駆逐艦!」

「アイアイマム、主砲目標を敵駆逐艦に変更。諸元の再計算急げ!」

「対空レーダーに感、上空に敵機(ボギー)。数10、本艦からの方位35度、距離7,000、高度4,000。急降下(ダイブ)爆撃機(ボンバー)と思われる」

 

 そこへ、レーダー担当の妖精が新たな脅威を伝えてきた。一瞬だけ考え、“Iowa”は命令を下す。

 

「数が少し多いわね、CIWSだけだと撃ち漏らす危険がある…よし、新兵器を使うわよ!

対空戦闘、毒針を撃ち込みなさい!」

「アイアイマム! 対空戦闘、毒針(スティンガー)用意!」

 

 第二次バルチスタ沖大海戦の時には間に合わなかった新兵器、携帯式防空ミサイルシステム「FIM-92 Stinger」。これを初めて実戦で使おうというのだ。

 

「慌てる必要はないわ、相手が投弾コースに乗ったらぶっ放しなさい。それで大体どうにかなるわ。失敗してもCIWSがあるから落ち着いてやりなさい!」

「アイアイマム…!」

 

 なお、今使おうとしている「スティンガー」はA型、つまり初期生産型である。RMP型(いわゆるFIM-92C)の配備は間に合わなかったが、レシプロ機が相手ならこれでも十分な性能だ。

 甲板には複数の妖精が飛び出し、そのうち何人かが前部上下に巨大な箱状の物体を付けた筒を肩に担ぎ、上部に付いた箱を目に当てる。これが「スティンガー」ミサイルの発射装置だ。次弾を手に待機する妖精もいる。

 

「敵距離2,000、高度4,000!」

『こちら航海艦橋、敵機直上! 急降下!』

「発射!」

「OK, fire!」

 

 命令が伝わるやトリガーが引かれ、担がれた筒から円筒形の物体が飛び出す。10メートルばかりも飛び出したところで、物体は白煙の尾を引きながら猛烈な速さで空へと駆け上がった。これが「スティンガー」対空ミサイルである。

 竜もかくやという速度で空へ昇った「スティンガー」は、狙った敵機に容赦無く突き刺さり、その威力を解放した。携帯式ミサイルなので炸薬量はそこまで多くないが、百発百中の一撃である、あまりにも痛すぎた。急降下に入っていたグラ・バルカス帝国の「シリウス型爆撃機」にこれを避ける術はなく、一斉射で10機のうち6機が空中分解。残り4機は肝を潰しつつも突進してきたが、待ち受けていたCIWSによってあっさりと散った。

 この時点で敵戦艦隊との距離は15,000メートル、突進してくる敵駆逐艦隊との距離は6,000メートルまで詰まっている。もう十分に射程に入っているが、“Iowa”はまだ少し距離を詰めるつもりでいた。

 その時、

 

『航海艦橋よりCIC。敵駆逐艦変針! 魚雷を発射した模様!』

 

 航海艦橋から叫び声が飛び込む。対水上レーダーでも、敵駆逐艦が反転する様子が捉えられていた。

 程なくして、航海艦橋から「雷跡視認、数20! こちらへ向かってきます!」という追加報告が来る。それと同時に“Iowa”が命じた。

 

「主砲右旋回、右砲戦用意!」

「「!?」」

 

 まさかの指示に、CICに詰めている妖精たちが一斉に顔を見合わせる。てっきりこのまま直進し、魚雷をやり過ごしてから舵を切るものと思っていたのだ。

 

「どういうつもりですか、艦長!?」

「このまま変針して砲戦に入るわ。『ライオンはラビットを狩るにも全力を尽くす』…全火力で敵駆逐艦を秒殺し、その後敵戦艦を倒す!」

「変針なんてどうやって…!」

「見てなさい、策があるの」

 

 副長妖精にそう言って、“Iowa”は航海艦橋を呼び出した。

 

「艦長より航海、敵魚雷との距離は!?」

『こちら見張、敵魚雷多数、距離4,500!』

 

 それを聞いた瞬間、“Iowa”は意外な命令を下した。

 

「左舷(いかり)降ろせ!」

「「「!!???」」」

 

 まさかの命令に、妖精たちの動きが一瞬止まる。命令を理解しきれなかったのだ。

 

「左舷錨降ろせ、今すぐ(ライト・ナウ)!」

 

 鋭い口調で“Iowa”に命じられ、ついに妖精が腹を括った。ええいままよ、と言わんばかりにレバーを操作する。「アイオワ」艦首左舷に付けられていた錨が、海に投げ込まれた。ガリガリと音を立てながら、錨鎖が錨を追うように海へと落ちていく。

 

『敵魚雷多数、急速に接近します!』

「どうするんですか艦長! 皆死にますよ!」

 

 航海艦橋からは航海長妖精の絶叫が飛び、CICでは戦術長妖精が顔面蒼白で叫ぶ。

 しかし“Iowa”はCICの中央に仁王立ちしたまま、平然とした口調でこう言った。

 

「死は避けられない。あなたたちも死ぬし、私だって死ぬ。皆いつか死ぬ」

 

 その直後に凄絶な笑みを浮かべ、彼女は付け足した。

 

「でも今日じゃないわ!!」

 

 その瞬間、凄まじい遠心力が襲いかかった。同時に艦首の方で、ギャリギャリギャリと耳障りな金属の擦れる音が響く。錨が海底に到達し、「アイオワ」の艦体がそれに引っ張られたのだ。

 魚雷の群れに右の横腹を突き出しながら、「アイオワ」はどこぞの(とうげ)の走り屋のクルマもびっくりのスピードで左に回っていく。それは明らかに、ドリフト機動だった。

 「アイオワ」の右舷側には、大量の水飛沫が上がっている。ドリフト機動で突っ込んだため、大量の海水が押し退けられ、かなり大きな波が起きているのだ。そこに、グラ・バルカス帝国の駆逐艦が放った複数の魚雷が突っ込んでいった。

 魚雷の航跡を示す白い線が、「アイオワ」が引き起こした波にぶつかり……何も起きない。「アイオワ」の横腹に白い水柱が突き立つことはない。

 

「「「なっ!!?」」」

 

 魚雷を発射したグラ・バルカス帝国駆逐艦の乗員たちは、皆一様に驚愕した。

 

 タネを明かせばなんてことはない。

 戦艦「アイオワ」は、ドリフトに伴って発生した強烈な水圧により、己に向かってきた魚雷を全て弾き飛ばしたのだ。21万馬力の出力を全開にした状態での水圧は凄まじく、魚雷などあっさりと弾き飛ばしてしまったのである。このため「アイオワ」に命中した魚雷はなかったのだ。

 そのついでに、「アイオワ」の艦橋を狙って放たれた敵戦艦2番艦の射弾は、「アイオワ」のドリフトによって見事に外れた。派手な水柱をバックに、錨鎖によって左に引っ張られ、傾いていた「アイオワ」の艦体が徐々に水平に戻っていく。そして……主砲も両用砲も、発射準備が整っていた。

 ここで下される命令など1つしかない。

 

「痛いのをぶっ喰らわせてやりなさい!!」

 

 当然これである。

 

「Fire!」

 

 砲術長妖精が命令を復唱した瞬間、「アイオワ」の艦体を凄まじい衝撃が襲った。被弾ではない。艦砲発射の反動だ。

 50口径16インチ砲9門、38口径5インチ両用砲右舷3基6門が、一斉に火を噴く。どれも敵駆逐艦を標的としたものだ。

 敵駆逐艦は魚雷を発射するために、「アイオワ」からの距離10,000メートル以下にまで接近している。この状況では、“Iowa”にとっては砲撃を外す方が難しかった。

 発射から20秒ほどで砲弾は海面に到達し、海面に大小の水柱が噴き上がる。それに混じって巨大な爆炎が沸き立った。

 水柱が収まった時には、敵の駆逐艦は1隻が姿を消していた。「アイオワ」の16インチ砲弾が直撃し、()()()(じん)に消し飛んだのだ。もう1隻はというと、16インチ砲弾の至近弾1発と5インチ両用砲弾の直撃弾2発を受け、炎上しながら速度を大きく落としている。そこへ5インチ両用砲の第2斉射弾が殺到し、(またた)()に止めを刺した。

 これでもう敵の駆逐艦はいない。残るは戦艦のみだ。

 

「急がないと、愛しのラッサン君がやられる……全速前進! コンゴウ・タイプごときに、このアイオワは負けないわ!」

 

 覚悟を決め直す“Iowa”。

 実は、史実におけるアイオワ級戦艦は金剛型への対抗を想定して設計されている。当時の米海軍空母の護衛は巡洋艦と駆逐艦が主体だったのだが、敵となる日本軍の空母部隊の護衛に金剛型戦艦がいることが想定され、それに対抗できない可能性があった。それを覆すため、防御力・火力で金剛型を圧倒する戦艦として、アイオワ級が作られたのである。

 

「錨鎖を切れ!」

「面舵90度!」

「全速前進!」

「主砲、右砲戦! 目標、敵戦艦2番艦!」

「目標、敵戦艦2番艦。測的始め!」

 

 息を吐く暇もなく、立て続けに指示を飛ばす“Iowa”。

 海面に投げ込まれた左舷側の錨の鎖が切られ、「アイオワ」は再び航行の自由を取り戻す。その少し後に面舵が切られ、艦首がくるりと右へ回った。その艦首が敵戦艦部隊へ向く直前、「戻せ、舵中央!」の指示が飛ぶ。

 蒸気タービンエンジンが力強く鼓動し、回頭によって低下した速力が瞬く間に回復する。敵戦艦2番艦の射弾が落下し、水柱が突き立つ海面を、長剣(ロング・ソード)を思わせる「アイオワ」の艦体が切り裂いて進む。

 

「目標、敵戦艦2番艦。測的よし、照準よし!」

「第1・第2砲塔装填よし。主砲、射撃用意よし!」

 

 射撃準備が整った。

 

「まだまだbattleshipの時代は終わらないわ…見てなさい! Fire!」

「ファイア!」

 

 咆哮する16インチ三連装砲。装填されていたSHS(超重徹甲弾)が、音をも超える速度で目標に向かって飛翔する。それに対して、敵戦艦も撃ち返してきた。

 双方の砲撃は大量の海水を噴き上げただけであり、どちらも命中弾無しに終わる。だが“Iowa”は、敵の注意を分散させることはできたと判断した。

 

「これでラッサンも少しは戦いやすくなったはず。でも、あくまで彼の勝ち目が1対9から3対7になったに過ぎないわ。とっととこいつを叩き潰して、ラッサンの勝率を10対0にするわよ! 第2射、撃て!」

「Fire!」

 

 再度、「アイオワ」の艦体を発砲の衝撃が震わせる。と、「アイオワ」の発砲から10秒ほど遅れて、敵戦艦の艦上に発射炎が煌めいた。どうやら敵戦艦の主砲の装填速度は、40秒/発らしい。

 

「だんちゃーく、今!」

 

 当然ながら、弾着も「アイオワ」の方が先だ。

 

「全弾近。うち1発至近弾!」

「仰角上げ50。第3射用意!」

 

 “Iowa”の号令と入れ替わりに、大気を震わせて敵の射弾が飛来する。全弾が「アイオワ」の上を飛び越え、海面に落下して水柱を噴き上げた。

 

「射撃用意よし!」

「Fire!」

 

 至近弾が出たのだから、次で当たってもいいはず…“Iowa”はそう考えていた。

 敵戦艦も第3射を放ってくる。それと入れ替わるようにして「だんちゃーく!」の報告が入った。その瞬間、「アイオワ」の航海艦橋からは、敵戦艦の艦上に発砲炎とは異なる閃光が閃き、そして黒煙が噴き出す様がはっきりと見えた。

 

『航海艦橋よりCIC、命中!』

 

 待ち望んだその報告を受けるや、“Iowa”は凛とした声で命じる。

 

「次より斉射!」

 

 主砲の照準が合ったのだ。後は如何に素早く戦いを終わらせるか、である。

 主砲の装填を待つ間に敵の射弾が落下する。飛来した4発の砲弾は全て遠となったが、1発が至近弾になった。

 

「装填よし、射撃用意よし!」

「オーケイ! ファイア!」

 

ズドドドドオォォォン!!!

 

 これまでに倍する砲声が「アイオワ」を揺さぶる。16インチ主砲の全門斉射だ。

 弾着の直前、敵戦艦の艦上に発射炎が閃く。その直後、「だんちゃーく!」の声と共に、敵戦艦の艦上に明らかな爆発光が走った。

 

『航海艦橋よりCIC、命中弾1!』

 

 たった1発しか当たっていないが、されど1発である。何せ命中したのは16インチ砲弾、それも大和型戦艦の46㎝砲弾に匹敵する威力を持つSHSだ。金剛型の装甲では、どこに命中しても貫徹できる。

 

「次で決める、それくらいのつもりで撃ちなさい! Fire!」

 

 “Iowa”の号令一下、16インチ砲の全力咆哮が響く。その残響が消える前に、押し潰すような重低音が上方から降ってきた。

 敵砲弾の着弾と同時に、「アイオワ」の艦体が激しく揺れる。衝撃の大きさから見て、直撃はしなかったらしい。だが、

 

『航海艦橋よりCIC、(きょう)()されました!』

 

 敵の照準も合ったようだ。ならば、できるだけ早く敵を倒す必要がある。

 弾着のタイミングから少し遅れて、航海艦橋から報告が入ってきた。

 

『2発命中! 火災発生!』

 

 結構なダメージが入ったようだ。上手くやれば、次弾で決められるかもしれない。

 「アイオワ」の第3斉射と敵の第1斉射は、同じタイミングだった。だが、砲口初速は35.6㎝砲弾の方が少し速い。そのため敵戦艦の射弾が先に落下することになった。

 弾着と同時に「アイオワ」の艦体は激しく震え、甲高い金属音が悲鳴のように響き渡った。明らかに直撃弾を受けたのだ。

 

『航海艦橋よりCIC、艦体前部・第1砲塔付近に被弾!』

 

 報告を聞くや、“Iowa”はすぐに第1砲塔を呼び出した。撃てるかどうか確認しようとしたのだ。

 

「CICより第1砲塔、大丈夫か!? 状況を報告せよ!」

『第1砲塔よりCIC、砲旋回装置・揚弾機構・装填装置いずれも異常無し! 主砲発射可能です!』

 

 そこへ追加で、応急処理チームからも報告が入る。

 

『ダメージ・コントロール・チームよりCIC。先の被弾による損害は軽微! 戦艦が簡単に沈むか!

 

 この様子なら大丈夫だろう。

 “Iowa”が安堵したところに、「だんちゃーく!」の報告。そして航海艦橋から歓喜の声が伝わってきた。

 

『航海艦橋よりCIC。敵戦艦2番艦大火災、戦闘不能と認む!

敵戦艦1番艦は「ラ・コンゴ」と交戦中、複数の射弾を浴びている模様。火災発生中!

戦艦「ラ・コンゴ」は火災発生、主砲塔1基損傷の模様! 損傷程度は中破と思われる!』

「よし、新たな目標、敵戦艦1番艦! とっととぶちのめしてthe endよ!

砲術長、初弾命中いけるわね?」

「少々難易度が高いかもしれませんが、やってみます!」

「OK、交互撃ち方なんてケチくさいことは言わず、ハナっから全門斉射で行くわよ!」

「アイアイマム!」

 

 この頃には、主砲の次弾装填は完了していた。

 砲塔が僅かに旋回し、砲身が水平線よりやや上方を指向する。

 

「主砲1番、2番砲用意よし! 主砲、射撃用意よし!」

「Fire!」

 

 これで終わらせる…その覚悟と共に、“Iowa”は主砲発射を命じた。

 必中を期して放たれた9発の16インチ超重徹甲弾は、音より速い速度で10,000メートルをひとっ飛びし……そのうち数発は「だんちゃーく!」の報告と同時に、見事に敵戦艦に突き刺さった。

 「アイオワ」の航海艦橋からは、敵戦艦の艦体後部で大規模な爆発が発生するのがはっきりと見えた。

 

『命中っ! 敵戦艦大火災!』

 

 この報告に、CIC内では誰かがヒュウッと口笛を吹いた。その時、

 

ゴガァン!

 

 全く唐突に、小さな、しかし確かな衝撃が「アイオワ」艦体の下方から伝わった。

 

「What the f●ck!?

ダメコンチーム、艦体右舷中央部に被雷の兆候あり、確認せよ!」

 

 突然の事態に“Iowa”は一瞬狼狽しながらも、直ちにダメコンチームに指示を飛ばす。

 今のはおそらく喫水線下に何かが命中した音だ。こんな外洋に機雷が仕掛けられるとは思えないから、当たった物はただ1つ、魚雷以外に考えられない。しかし、被雷にしては衝撃が小さかった。もしかすると、不発の魚雷が突き刺さったのかもしれない……。

 

 この後ダメージ・コントロール・チームは、「右舷中央に魚雷命中1、なれど不発。1部屋浸水あれど被害軽微、航行・戦闘に支障無し」との報告を挙げた。

 

 最後まで戦っていたグラ・バルカス帝国の戦艦…オリオン級戦艦「アルヘナ」に取って、いきなり突き刺さった4発もの16インチ砲弾はあまりにも痛すぎた。強烈な貫徹力を持ったこの徹甲弾は、「アルヘナ」の装甲をぶち抜いて艦の心臓部で炸裂し、タービンや発電機室といった心臓部がズタズタにされた。そこに「ラ・コンゴ」の主砲弾が艦橋を撃砕したため、ついにこの戦艦も止めを刺されてしまった。

 

「な、何とか勝ったな、艦長……」

「ええ。しかし危ないところでした……」

 

 戦艦「ラ・コンゴ」艦橋では、ムー海軍の新たな機動部隊司令官ボイシ・マーカス准将と、「ラ・コンゴ」艦長ラッサン・デヴリン大佐が、疲れ切った様子で言葉を交わした。

 ムー期待の新鋭戦艦「ラ・コンゴ」は、この一戦だけでもうボロボロにされていた。第3砲塔が大破し、飛行甲板もカタパルトも損傷、右舷側の対空機銃と両用砲も大半が破壊されている。喫水線下に被弾しなかったことだけが唯一の救いという有り様だった。

 そしてボイシ指揮下の艦艇も、半数が撃沈されてしまった。肝心要の空母が無傷で済んだだけ、まだマシであるが。

 

「我が軍では、まだグラ・バルカス帝国の大規模艦隊を相手取るには力不足だな…」

「今回のことで、それを思い知らされましたね。ですが…それ以上に怖いのは、ロデニウスの戦艦でしょう」

 

 ラッサンは声のトーンを落とした。

 

「敵に撃ち込まれたあの謎の飛行物体……司令もご覧になったかと存じますが、ロデニウスの戦艦が発射した『あれ』は飛行中に明らかに向きを変えて、寸分の狂いなく敵艦や敵機に命中していました。あれはもしや…」

「誘導魔光弾……か? まさか、そんな……ミリシアルでも実用化できているか怪しいだろうに、ロデニウスがそんな物を…?」

 

 ボイシとラッサンは、2人揃って戦々恐々としていた。




前回の本文の最後で思わせぶりな台詞を"Iowa"に言わせたので、察しがついている方も多かったのではないかと思いますが…今回は見事に映画「バトルシップ」のネタが集結です。そりゃあせっかくアイオワ級戦艦を出したんだから、このネタ使いたかったんですよ!
「戦艦はすごい艦だ。恐竜みたいなもんだ。ガンガン殴られても平気な浮かぶパンチングマシンさ。」
この台詞を体現できていると皆様が感じておられるなら、必死で描いた甲斐があったと思います。

あと、本当に小さいですが、ひっそり仕込んであった「A-10訓」と「宇宙戦艦ヤマト 完結編」のネタにはお気付きになりましたでしょうか?

(小説の)更新終了は避けられない。あの作品はエタってしまった、こっちは完結した。この作品だって更新が止まる。みんないつか更新停止する。だが今日じゃない!
さて、次回を描く前に栄養補給だ……チキンブリトーを食べて、英気を養わなくてはな。
そして次回、駆逐艦はすごいぞ、最高だ!


UAがもう96万を超えてる…ご愛読、本当にありがとうございます!

評価8をくださいました2ndPink様
評価9をくださいましたKOTmusen様、starship様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!


次回予告。

激戦続くイルネティア島北部海域。戦艦「アイオワ」がド派手な戦を繰り広げる傍ら、小さき勇者が1対4の戦いに挑む。その勇者の名は、「雪風」だった…!
次回「イルネティア解放戦(8) [雪風、ムー艦隊をお守りします!]」
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