鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
中央暦1643年6月14日 午前4時30分、第三文明圏外 アルタラス島。
王都ル・ブリアス郊外のルバイル空港には、爆音が響いていた。それは、長大なテーパー翼を生やした巨体から放たれる、4つのレシプロエンジンの暖機運転の音である。
ルバイル空港を拠点として展開している、ロデニウス連合王国陸軍・第15戦略航空爆撃団の「B-29改 スーパーフォートレス」である。多数の整備員や兵器員がその周りに群がり、エンジンやラダーのチェック、爆弾の搭載といった作業に追われていた。
その近くには、後退翼を持つ鋭角的な灰色のシルエット……「F-86D改 セイバードッグ」の連なりが翼を休めている。こちらももう少しすれば、爆撃隊の護衛にあたるためエンジンに火を入れられることだろう。
けたたましい爆音が響く駐機場とは別に、施設内のブリーフィングルームには多数の人々が集まっている。それらの人々を前にして、指揮官らしい人間が説明を行っていた。
「今回の我々の攻撃目標は、リーム王国飛び地の中でも内陸部にあるここ。リーム王国では『リスタ』と呼ばれる町だ」
黒板に貼られた地図に指示棒が伸び、一点を指し示す。
「町の規模は中規模程度。ここは新生パールネウス共和国領に近く、言わば国境の町だ。当然、ここには相応のリーム王国陸軍の部隊が詰めており、駐屯地も構築されている。
諜報員からの情報によれば、敵の駐屯地は要塞化されており、攻勢発起点としても防衛拠点としても使えるようになっている、とのことだ。また、拠点の規模から見て人員数はおよそ1万、地竜リントヴルムやワイバーンロードの姿も見られたとのことである。実際このように、海軍第13艦隊指揮下の偵察飛行隊の空中写真にも、滑走路がくっきりと写っている」
黒板に写真が貼り付けられ、指示棒がその上でくるくると円を描く。その中には、第三文明圏内外でよく見られる土の滑走路があった。どうみてもワイバーンを運用するための飛行場だ。
「ここを攻撃することで新生パールネウス共和国に対する武力侵略の可能性を潰すと共に、我々の行動可能範囲の広さをリーム王国に知らしめるのが、今作戦の目標だ。皆そのことを心に置いて、作戦に取りかかってほしい。
なお、以前からリーム王国は我が国に私掠船をけしかけるなど、卑怯な振る舞いに出ている潜在的敵国である。そのため、リーム王国の軍事拠点を攻撃する際は多少民間への誤爆があっても気にするな、との通達が連合王国軍総司令部から出されている。民間施設への故意の爆撃は厳罰に処するが、軍事基地を狙った爆弾が風に流れてしまった、といったものならやむを得ない事象として扱われるので、気にせず爆撃してもらいたい」
その後簡単な質疑応答が行われ、ブリーフィングは終了。搭乗員たちは建物を飛び出すと、各々の愛機に乗り込んでいくのだった。
パーパルディア皇国との戦争で港湾都市レノダに爆弾の雨を降らせて以降、すっかり乗り慣れた機体。それが今また、鴎翼を広げようとしている。
目指すはリーム王国領の内陸部。
◆◇◆◇◆◇◆◇
アルタラス島で爆撃隊の出撃準備が行われている頃、リーム王国領(飛び地)南端 港湾都市セニア。
その日、セニアの人々はいつもとは異なる朝を迎える羽目になった。
市民たちは家から外に飛び出し、あるいは窓を開けて南の空を見上げている。どの顔にも困惑と恐怖が見え隠れしていた。
彼らのその視線の先には……めまぐるしく空を飛び回るワイバーンと、羽ばたかない何かの姿があった。
ロデニウス軍の先制空襲である。シオス島を発進した海軍第15航空艦隊(基地航空隊)の「一式陸上攻撃機」、そして「零戦52型」と「零戦62型」が襲ってきたのだ。これに対して、哨戒にあたっていたリーム王下直轄軍の竜騎士団が応戦しているというわけである。
しかし、戦況は一方的だった。リーム王国の竜騎士が、バタバタと撃墜されているのである。というのも、そもそも数に差がついていたことに加えて、戦闘機とワイバーンロードの性能差がモロに出てしまったのだ。
早朝の哨戒にあたっていたワイバーンロード8騎はあっという間に全滅し、ロデニウス軍の航空部隊は市街地の上空を通過して街の北部郊外に設置されている飛行場基地に襲いかかった。先頭を切るのは零戦62型である。その翼下には爆弾ではなく、ロケット弾が装着されていた。いわゆる「ワイルド・ウィーゼル」の役割である。
リーム王下直轄軍も、哨戒部隊からの通報によって事態を把握していた。そして、急いでワイバーンロードを離陸させようとしていた。だが、早朝ということもあってワイバーンロードの反応が鈍い。何とか叩き起こし、機嫌を損ねたワイバーンロードを宥めすかして、やっと滑走路まで引っ張ってきた時には、既に零戦は攻撃態勢に入っていた。
零戦62型の主翼下から白煙の筋が噴き伸び、4発のロケット弾が飛び出す。それは次々と滑走路に着弾し、土煙を噴き上げた。
さらに、零戦は滑走路に出ようとしているワイバーンロードを見つけるや、容赦なく機銃掃射を見舞う。頑丈なワイバーンロードの鱗も、20㎜機銃が相手では何の役にも立たなかった。身体に大穴を開けられたワイバーンロードがその場で倒れ伏し、滑走路や誘導路を塞いでしまう。
「ああ! 滑走路が!」
「くそっ、これじゃ飛び立てないぞ!」
「何とかしてアレを退けろ!」
地上ではリーム王国の兵士や竜騎士が騒いでいるが、ただでさえ図体の大きいワイバーンロードの死骸を移動させるのは容易ではない。まして今は空襲の真っ最中である。
まごまごしている間にも、滑走路には新たなロケット弾が突き刺さる。と、唐突に滑走路にオレンジ色の光が走り、次の瞬間には青い炎が立ち昇った。零戦のロケット弾で、滑走路に埋め込まれた魔石が破壊されたのだ。青い光は徐々に滑走路を覆っていく。
ワイバーンロードは(この世界においては)主要な航空戦力の1つだが、滑走距離が長いため短い滑走路では飛び立つのが難しい。それに対応すべく、世界各国の軍が取っている方法は、滑走路そのものを長くするか、ワイバーンに短距離滑走の訓練を積ませるか、もしくは風魔法などを封じた魔石を滑走路に埋め込んで離陸を補助するというものである。ちなみに竜母も、飛行甲板に魔石を仕込んでいる。
その魔石が破壊され、内部に込められていた魔素が炎に反応して青色に光っているのである。
「しまった、魔石をやられた!」
「これじゃ、あのワイバーンロードを退けたとしても飛べないぞ!」
「くそ、こうなりゃバリスタで1騎でもあいつらを……」
滑走路が使用不能になった今、リーム王下直轄軍の兵士たちにできることは少ない。せいぜい避難するか、もしくはバリスタや魔法で応戦するくらいである。
しかし、目標を変更した零戦が今度はバリスタにロケット弾を浴びせる。破壊された木の破片が散らばり、バリスタに取り付いていた兵士の姿が一瞬で消失する。空に向かって「ファイアボール」を放っていた魔導士たちが、機銃掃射で蹴散らされる。地上からの反撃手段は、徐々に削られていった。
滑走路を封じられ、バリスタや魔法による対空戦闘もほとんど意味を成していないリーム王下直轄軍。そこへ、笛のような音が何重にも重なって響き始めた。もちろんこれは笛ではない。「一式陸攻」が投下した250㎏爆弾の風切り音である。
ヒュウウウウウ……ドドドドドドーン!!
横一線に広がって飛んできた「一式陸攻」は、各々4発の250㎏爆弾を投下する。リーム王下直轄軍のワイバーン飛行場に、その爆弾は次々と命中した。
滑走路のど真ん中に派手な土煙が上がり、ワイバーンロードを収用していた竜舎が直撃弾で叩き潰される。屋根に大穴が開いた直後、落下した爆弾が爆発して中にいたワイバーンロードや竜騎士たちを薙ぎ倒す。飛行場を見渡す管制塔が炎に包まれ、メリメリという破壊音と共に地上に倒れていく。兵員用の宿舎などにも爆弾が落下し、建物が黒煙を噴き上げて燃えている。
滑走路脇などの何もない地面を耕す爆弾もあるが、大抵は目標に命中したようだ。リーム王下直轄軍の飛行場は、一面から黒煙と炎を噴き上げている。
爆撃を終えたロデニウス軍の航空部隊は、空に立ち昇る幾条もの黒煙を尻目に、
セニア北部のワイバーン飛行場が爆撃を受けている頃、セニア南部ではリーム王下直轄海軍の第4艦隊が航空攻撃に晒されている。
海面すれすれを飛ぶ「一式陸攻」が魚雷を投下する。海面を進んできた白い筋が、大急ぎで出港しようとしていた50門級戦列艦の側面に突き刺さった。瞬く間に巨大な白い柱、そして赤い柱が天に向かって突き立ち、戦列艦は真っ二つに折れて沈んでいく。
別の戦列艦は対空用のバリスタを「一式陸攻」に向け、矢を放つ。しかし当たらない。逆に「一式陸攻」は、機首に搭載された7.7㎜機銃を掃射し、銃弾を浴びた兵員が血飛沫を上げて倒れる。
第4艦隊には竜母が1隻配備されており、12騎のワイバーンロードを搭載しているのだが、「一式陸攻」に向かうワイバーンロードはいない。「一式陸攻」の護衛としてついてきた零戦との空中戦に忙殺され、それどころではないのだ。そのワイバーンロードも、零戦の優れた運動性能と最高速力の前に、次第に数を減らしていく。やがてワイバーンロードの最後の1騎が撃墜され、ワイバーン隊は奮戦虚しく全滅した。
その頃には艦隊は大きな被害を受けている。竜母は生き残っていたが、戦列艦は次々と沈められ、艦隊総数40隻のうち生き残っているのは21隻に過ぎない。他の艦は魚雷で海底送りにされていた。ただ、大被害を受けた艦隊とは裏腹に、軍港のほうは何のダメージも受けておらず健在である。
攻撃を終えた航空部隊は南に反転し、シオス王国の飛行場へと帰還していった。
空襲は終わったと判断し、回避運動のため一度外洋に出ていたリーム王下直轄海軍第4艦隊は、ほっとして港へ帰投した。何とかワイバーンロードを補充すると共に、「風神の魔石」をはじめとするいくらかの物資を補給するためである。
ところが、その補給の真っ最中に多数の航空機が殺到してきた。今度の相手はいずれも鼻先に高速回転する物体を1つ着けた小柄な機体……単発機ばかりである。
まさかの敵襲に、第4艦隊は大混乱に陥った。補給は直ちに中止され、司令部から命令を受けた各艦は急いで出港しようとした。
しかし、一度畳んだ帆を広げて再加速するのは容易ではない。ようやく2隻ほどが出港した時には、敵機は既に第4艦隊の上空に殺到していた。
先頭に立つのは、酒場に置かれたビール樽のような太い胴体と、四角く切り取られたような翼を持つ機体。その翼端と胴体には白い星が描かれている。その機体が、獲物に襲いかかる鷹のように一直線に戦列艦へと向かってくる。と、その翼から白煙の筋が噴き伸び、黒い矢のような物体が戦列艦に撃ち込まれた。
着弾したそれは爆発し、戦列艦のマストが倒れる。次の瞬間、最上甲板を破って飛び込んだ物体が砲列甲板で炸裂し、魔導砲の砲弾の誘爆を引き起こした。凄まじい火柱を上げ、戦列艦は一瞬で真っ二つとなって沈んでいく。
黒い物体を撃ち込んだ機体……空母「サラトガ」から発艦した「F6F-5 ヘルキャット」は、HVARロケット弾を使い切るや即座に機銃掃射に移行する。
その時、艦隊上空に甲高い金属音を伴ったエンジン音が響き始めた。尖った機首を持つ「
急角度で突っ込んできた「彗星一二型甲」が、腹に抱えた500㎏爆弾を投下する。海上に爆発音が轟き、直撃を受けた戦列艦が次々と炎の塊になった。1隻残っていた竜母にも500㎏爆弾が2発命中し、同艦はマストと「風神の涙」を失ってしまった。
竜母は飛行甲板が左舷側に大きく張り出しており、そのカウンターウェイトとしてマストなどを利用している。それがなくなった竜母は、飛行甲板の重みであっという間に左へ傾斜し、燃えながら横転している。
ロケット弾を持った戦闘機と急降下爆撃隊が戦列艦を攻撃している間に、艦上攻爆撃機「
原始的なクレーンが轟音と共に倒壊し、ドック内で建造中の竜母を押し潰す。整備のため別のドックに入っていた戦列艦に800㎏爆弾が投げ落とされ、戦列艦は艦中央に大穴を開けられた。爆発による強烈なエネルギーによって竜骨が折れてしまっており、廃艦の運命は免れない。
魔信施設が800㎏爆弾の直撃で破壊され、細かな石材の破片と化して飛び散る。兵員の宿舎になっている木造の建物は、炎に包まれて黒煙を上げている。魔導砲や「風神の涙」を作る工廠も爆撃され、凄まじい炎で近付くこともできない状態だ。
攻撃を終えた「F6F-5 ヘルキャット」、「彗星一二型甲」、「流星」がエンジン音の凱歌を上げて帰還の途についた時には、リーム海軍の第4艦隊は全滅し、軍港もその機能の大半を失っていたのだった。
ところが、これだけで済むと思ったら大間違いである。というのも、空襲自体はこの1回で済んだのだが……空襲から3時間が経った頃、セニアの沖合いに複数の鋼鉄艦が姿を表したのだ。ロデニウス海軍第13艦隊の航空戦艦「
「航空戦艦の真の力、思い知れ!」
"日向"の発言が、開戦のゴングとなった。
陸地を指向した4基の「35.6㎝連装砲」が火を噴く。セニア上空には既に「日向」から飛び立った「
「主砲、狙って、そう……撃てぇー!」
"日向"に負けじと、"古鷹"も主砲の射撃を開始する。彼女の主砲は"日向"のそれより小さい20.3㎝砲だが、その分砲弾が軽く、次発装填が早い。手数を生かして、軍港を徹底的に叩くつもりである。ちなみに"加古"は軍港への攻撃には参加せず、敵水上艦隊の出現に備えて警戒している。
軍港側も黙ってやられるつもりはない。先の空襲を生き延びていた沿岸砲台が、侵入者を追い返さんと砲弾を放つ。
しかし残念ながら、沿岸砲台の最大射程はたった2㎞である。10㎞沖に展開している軍艦には、全く届かなかった。仮に届いたとしても、特に「日向」は装甲で砲弾を弾いてくるだろうが。
沿岸砲台の位置を知った「古鷹」が目標を変更し、「瑞雲」からの情報を頼りに砲撃を撃ち込む。降り注ぐ砲弾は正確に沿岸砲台陣地に命中し、沿岸砲台は次々と破壊されていく。弾火薬庫に引火して
「古鷹」が沿岸砲台を黙らせる一方、「日向」は軍港への砲撃を続けている。1隻だけでリーム陸軍の砲兵部隊のそれを大幅に上回る火力を持つ戦艦の集中砲火に、近世程度の軍港が耐えられるはずもなかった。30分ほどの砲撃で軍港は完全に炎の海に沈み、セニア市街地にも流れ弾が落下して火災が起きている。
「……まあ、そうなるな。
よし、作戦終了だ。ここを離れる」
戦果十分と判断した"日向"の命令と共に、3隻は反転してセニア沖を立ち去った。一度シオス王国に戻って砲弾と燃料を補給するのである。その後再び出撃し、リーム王国本土と飛び地を結ぶ海上交通路を完全に断ち切るつもりだ。
この頃には、アルタラス島にいる陸軍第15戦略航空爆撃団とシオス島にいる海軍第15航空艦隊が連携し、リーム王国領飛び地の各地に爆弾を投下している。町、工場、ワイバーン飛行場などといった各種の重要施設が爆撃に晒され、破壊されてその機能を失っていった。
リーム王国に対する制海権確保&海上封鎖作戦「アークアンセム作戦」と、リーム王国飛び地に対する戦略爆撃作戦「イクサプロド作戦」は、確実に遂行されつつあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
中央暦1643年6月15日、リーム王国 王都ヒルキガ。
王城であるセルコ城の大会議室には、国政を担う幹部たちが集い、彼らの囲むテーブルの上座に国王バンクスが座っていた。緊急王前会議である。
「これより緊急王前会議を開催します。議題は、ロデニウス連合王国の宣戦布告に関する現況報告と、今後の対策です」
司会が宣言した通り、議題はロデニウス連合王国関連である。
6月9日、グラ・バルカス帝国艦隊が来航したどさくさに紛れて、リーム王国はロデニウス連合王国に海軍第2艦隊と陸軍部隊を乗せた輸送船団を派遣した。グラ・バルカス帝国軍への対処で手一杯になるだろうロデニウス軍の隙を衝いて、ロデニウス大陸を征服しようと目論んだのである。しかし、大将軍リバルの見込みとは裏腹に、ロデニウス軍はまだ対応できる力を残していた。そのため遠征は、ロデニウス大陸を目前にしてロデニウス艦隊の迎撃を受け、わずか数隻の戦列艦のみが帰還するという大失敗に終わった。
その数日後には、ロデニウス連合王国はリーム王国に対して宣戦を布告。そして今に至るというわけである。
「へ、陛下、まずはセニア方面の現状並びに第4艦隊に関する報告です…。
現在、セニアを中心とするフィルアデス大陸南部の飛び地は、アルタラス島もしくはシオス島から出撃したとみられるロデニウス連合王国軍によって、攻撃を受けています。彼らの攻撃手段は飛行機械と軍艦であり、……我が軍は……我が軍は、苦戦を強いられております……」
説明するリバルの声は、途中からかなり小さくなった。まあ無理もないだろう。
「海軍によれば、セニア方面で第4艦隊がロデニウス艦隊と交戦中とのことですが、戦況は思わしくないそうです。彼らの軍船は数は少ないのですが、その分艦体が大きく、搭載された魔導砲はかなりの大きさと見られる、とのことです。
また、断続的に飛来するロデニウス軍の飛行機械に対して我が竜騎士団が迎撃にあたっていますが、彼らにも損害が出ております」
リバルの言は、完全な嘘ではない。ただ過小申告がひどい。
海軍第4艦隊はこの時既にロデニウス軍の攻撃で軍港もろとも全滅に追い込まれており(この全滅のため、リバルの元にまだ最新情報が届いていない。従ってリバルの報告は「交戦中」で止まっているのである)、竜騎士団は「損害が出ている」どころか「手も足も出ずに一方的に負けている」状態である。それにそもそも、「B-29改」はワイバーンロードの上昇限界を超えた高空を飛んでいるため、全く手出しができていない。このため空襲に関しては「やられっぱなし」なのである。
「うーむ、やはりロデニウス軍の飛行機械は手強いか…。飛び地に展開する竜騎士団の全兵力を投入して、何が何でも王国の空を守れ」
「ははっ! オーデル団長に厳命しておきます」
バンクスは竜騎士団の総動員令を出したが、この命令が招く事態を読者の皆様は既に想像できているだろう。どう考えても、兵力の消耗による航空戦力の枯渇にしかならない。そしてそれは、もし仮にロデニウス軍の上陸侵攻が始まったとなれば、強力なロデニウスの陸上兵力を航空支援抜きで迎え撃たねばならないことを意味する。そうなればリーム軍側の勝算は無いに等しいであろう。
「時にリバル、この王都の守備はどうなっておる?」
「はっ、王都周辺の諸侯には既に私兵の動員を命令しており、現在続々と王都周辺に展開しつつあります。展開が完了したと報告の上がった兵力だけでもおよそ4万、予定ではさらに6万以上増えることになっております。また、王都周辺の飛行場には王下直轄軍竜騎士団の展開を完了し、総計600騎のワイバーンロードが展開を完了しております。さらに王都東沿岸部の砲台陣地も、戦闘準備が進んでおります」
「よしよし、こちらの準備は順調のようだの。ロデニウス軍を上陸前に水際で食い止める、その要となるのが沿岸砲台だからな、しかと準備せよ」
「はっ!」
そこへ、
「国王陛下! 会議中に失礼とは存じますが、緊急事態発生につき報告に上がりました!」
会議室のドアを蹴破るようにして、息を切らしたキルタナが駆け込んできた。
「如何した、キルタナ?」
「これをご覧ください! 外務省に届けられた多数の魔信です!」
そう言うや、キルタナは両手に抱えた紙の山を押し付けるようにしてバンクスに渡した。何事かと訝りながら紙を受け取ったバンクスは、1枚目を読むや否や目が点になる。
「な……なっ……!? なっ!?」
直後、絶句したのか言葉にならない声を発するバンクス。
渡された紙には、要約するとこう書いてあったのだ。
『新生パールネウス共和国よりリーム王国へ達する。
誇りある新生パールネウス共和国は紛れもなく大東洋共栄圏の一員であり、共栄圏の安寧が危険に晒されている現況を座視することはできない。新生パールネウス共和国はロデニウス連合王国と共に、貴国リーム王国に対し宣戦を布告、共和国国防軍を動員する。
仮にリーム王国の陸軍が我が領土を通過することがあれば、我々はこれを総力を挙げて邀撃する』
お忘れの方もいるかもしれないが、新生パールネウス共和国といえば旧列強パーパルディア皇国だ。未だに第三文明圏大戦の大被害から立ち直りきれず、賠償金の支払いにも
キルタナが抱えていた大量の魔信の正体は、第三文明圏内外各国から届けられた宣戦布告状であった。当然だが大東洋共栄圏に参加している国ばかりである。パンドーラ大魔法公国、マール王国、アルタラス王国、フェン王国、マオ王国、トーパ王国etc……数えればキリがない。そしてなんと、第二文明圏の列強ムー国からの宣戦布告状まであった。
これだけ揃えば凄まじい威力がある。地理的条件から考えると、リーム王国は大東洋共栄圏参加国……言い換えれば敵国……によって、すっかり包囲されてしまったのである。本土と飛び地は完全に寸断され、魔信以外の方法で直接連絡を取るのは不可能だ。包囲が開かれているのは、リーム本土から見て東……海の方角しかない。
しかも列強序列第4位のロデニウス連合王国(ロデニウス連合王国はパーパルディア皇国の後釜として列強入りしたため、格付けは4位に仮設定されている)だけでなく、序列第2位のムー国までもが宣戦布告している辺り、政治的・経済的・国際的な影響も非常に大きい。たった1つのニュースであっても「列強が動いた」というのは、この世界では非常に大きな意味を持つのだ。
「な……!?」
リバルも愕然とした。
第三文明圏にもグラ・バルカス帝国の脅威が及んでいることは、リーム王国も知っていた。そして、グラ・バルカス帝国は今年2月に世界連合艦隊を打ち破ったことから、どんな国であってもグラ・バルカス帝国には勝てないとリバルは考えていた。だからこそリバルは、グラ・バルカス帝国艦隊が来ている今をこれ幸いと、バンクスに「第三文明圏内外統一計画」を実行するよう進言し、そしてロデニウス連合王国に出兵したのだ。もちろん、グラ・バルカス艦隊が来ている以上はロデニウス軍もそれへの対応で手一杯となり、そして全滅するだろうと見込んでのことだった。
ところが、ロデニウス連合王国は大東洋共栄圏と共に、リーム王国に宣戦布告してきた。
事前の想定とは状況が全く異なる。いったい何が起きているのか、リバルには全く理解できなかった。
(いったい何が起きている? ロデニウス連合王国には、グラ・バルカス帝国を相手にしながら同時にこちらにも対応できる能力があるというのか?
まさか! あのミリシアルでさえ太刀打ちできなかったグラ・バルカス帝国軍だぞ? ロデニウス軍がそれに勝つなんて不可能だ。
では、何が起きたというのだ……?)
必死に考えるリバルだが、残念ながら彼はとんでもない思い違いをしている。
ロデニウス連合王国軍は、襲来したグラ・バルカス帝国艦隊を撃破したばかりか、その残党を追撃してニューランド島の拠点もろとも全滅させてしまったのだ。しかもその片手間に、リーム海軍第2艦隊を返り討ちにするだけの余裕を残した状態で。
そしてグラ・バルカス帝国の脅威がなくなり、本土に残る全軍をフィルアデス大陸方面に向けられるようになったロデニウス連合王国は、舐めくさった真似をしてくれたリーム王国を許すまいと、主力部隊を動かしたのである。海軍第13艦隊、それも戦艦や正規空母を含む部隊を動員しているところから、その本気度が窺えるだろう。
「こうなれば、飛び地の北部にいる陸軍部隊を本土に移動させるなどの措置によって、本土の防衛力の強化を図るしかありません。陛下、部隊の移動許可を願います」
「それは分かったが、移動できるのか?
陸路で飛び地から本土に移動するとなると、新生パールネウス共和国かドーリア共同体のどちらかは必ず通らねばならんぞ? それらの国の軍の攻撃も予想されるが、果たして通過できるのか?」
バンクスの指摘は
「ご心配には及びませぬ陛下。確かに他国の領土を通過しなければなりませんが、ドーリア共同体はデュロを擁するとはいえ、軍の規模は我が方より小さいですし、パールネウスに至っては軍備も大きく制限され、賠償金にも喘いでおりますれば、精強なる我が陸軍の脅威にはならないと考えます。通行は可能と思います」
「ふむ……そういうことならば、安心した。すぐに飛び地にいる陸軍部隊を増援として、陸路で本土に帰還させよ」
「ははっ!」
リーム王国は、陸軍部隊の大規模移動を決定した。
だが、この情報は即座にロデニウス連合王国の知る所となった。というのも、セルコ城内には既に「青葉メディアグループ」…もとい第13艦隊情報局の諜報員妖精が潜んでおり、その小さいサイズを活かして諜報活動に勤しんでいるからである。
「現地諜報員からの報告か。それも王城に潜んでいる者からだと?
これは、信憑性は非常に高いな」
ロデニウス連合王国軍総司令部にて、第13艦隊情報局長"青葉"から報告を受け、総司令官チェスター・ヤヴィン元帥は言った。
「よし、直ちにこの情報を大東洋共栄圏総合管理庁に報告して、新生パールネウス共和国やドーリア共同体、パンドーラ大魔法公国等に警戒を促そう。念のためマール王国にも通知しておいた方が良さそうだな。
その上で新生パールネウス共和国には、もし軍を動かしてリーム王国軍と交戦するような事態や、敵方の有力な情報を掴んだ場合には、その有効性に応じて賠償金の減額を受け入れる用意がある、と通達してはどうか、とも提案してみよう。
青葉殿、情報提供感謝する」
「いえいえ、これが仕事ですから!
では、青葉は失礼します。また何か良い情報が入りましたら、報告しますね!」
"青葉"は退出した。
この後すぐ、大東洋共栄圏参加各国のうち第三文明圏に国土を持つ国には、ロデニウス連合王国から情報が提供された。
同日夜、リーム王都ヒルキガ セルコ城。
「あああぁぁぁーーー!!
あああああぅうううぉぉぉぉぉぉ!!!」
突然、王城の中に響き渡る奇声。
「国王陛下! どうされました!?」
「ああああぁぁぁぁぁーーうぁぁぁぁーー!!!」
奇声の主は国王バンクスだ。泣き叫びながら顔をひっかき、付近の花瓶を叩き割る。その他にも周囲の壁にかかっていた絵画に手をかけたらしく、ビリビリに破かれた紙のようなものが床に散乱していた。
「お気を! お気を確かに!!」
「奴らが、大東洋共栄圏が一斉に攻めてくる! 終わりだ!! 何もかも終わりだぁぁぁぁ!!!
信じていたのに!! グラ・バルカス帝国なら、どこの誰にも負けないと信じていたのに!! ロデニウスが、大東洋共栄圏が攻めてくる!! 無理だ。無理だぁぁぁぁ!! おおぉぉぉぉ」
国王バンクスの泣き叫ぶ声は夜通し王城に響き渡るのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
飛び地からリーム本土へ移動しようとしたリーム王下直轄陸軍の部隊であったが、その行手に新生パールネウス国防軍が立ちはだかった。
「てーっ!!」
パールネウス国防軍の隊列に号令が響くと同時、
シュパパパパパパッ!!!
パールネウス国防軍の兵士たちの列から一斉に矢が飛び出す。と思いきや、その矢は空中で後部から白煙を噴き出し始めた。明らかに普通の矢ではない。
一瞬あっけにとられたリーム陸軍、そこへ飛んできた矢が降り注いだ。次の瞬間、
ドドドドドドドドンッ!!!
飛んできた矢は地面や人体、馬などに命中するや爆発した。あたり一面に白煙が立ち込め、悲鳴が響き渡る。
「なっ!? 何が起こった!?」
「分からん!」
「なんで……なんで矢が爆発するんだよ!? 爆発魔法か!?」
リーム陸軍の兵士たちは大混乱に陥った。
そう……新生パールネウス共和国国防軍が使ったのは、あの「ブラストアロー」である。
新生パールネウス共和国国防軍は、パールネウス講和条約の影響で大砲や魔導砲をまともに装備できない。しかし第三文明圏の国際秩序が怪しくなる中、不安を抱いたパールネウス国防軍司令部はロデニウス連合王国と交渉し、その結果ある言質を取り付けたのだ。
『確かに、必要以上の大砲や魔導砲の装備は禁じられている。しかし、ロケット砲を規制する規定はない。故に、新生パールネウス共和国はリーム王国内部やリーム王国軍の動静に関する情報をロデニウス連合王国に提供する見返りに、ロデニウス連合王国はパールネウス国防軍に対してロケット砲の配備・指導・運用訓練の便宜を最大限に図る』
ということで、新生パールネウス共和国国防軍は大々的にロケット兵器の導入を行ったのである。そのロケット兵器の一部に、この「ブラストアロー」が含まれていたのだ。パールネウス国防軍は、これをボウガンの矢として兵士に支給したり、飲料水の樽に見せかけた専用の多連装発射装置に詰め込んで陸軍に配備していたのである。
供与されたのはこれだけではなく、なんと「WG42」や
なお、これらの兵器の導入にかかった費用は、なんと実質タダである。さらに、「特例でリーム王国と戦闘状態にある時点に限り、賠償金の支払いの一時停止を許可する」という取り決めまで交わしている。……無茶しやがって、というツッコミはしないで欲しい。
「ブラストアロー」1発辺りの威力は30㎏爆弾相当と小さいのだが、数が多い。1発辺りの威力の低さを分かっているからこそ、パールネウス国防軍も多連装ロケット砲として面制圧兵器にしているのだ。
一斉に発射された数百本もの「ブラストアロー」が炸裂し、舞い上がった土埃が風に吹き散らされる頃には、リーム陸軍の将兵は完全に腰を抜かしていた。死者そのものは多くないが、多数の破片が飛び散ったことで負傷した者が多いのだ。また、爆発という分かりやすい脅威によって、戦意が
リーム王国陸軍の動きが鈍った隙を衝いて、パールネウス国防軍のリントヴルムが前に出る。このリントヴルムもまた、「リントヴルム・アーマー」なる
「リントヴルム・アーマー」は、元々旧パーパルディア軍が開発・使用していたリントヴルム用の装甲をベースに、ロデニウス連合王国との技術連携によりパールネウス国防軍が産み出した新兵器だ。複合装甲の金属板の表面に魔方陣を描き、水魔法と風魔法を軸とした防御魔法を発動させることで、対物理・対魔法防御を高める防具である。
見た目は重装騎兵隊の馬よろしく、リントヴルムの全身に装備する鎧であるが、その防御力はかなり高い。物理的防御としてはマスケット銃の銃弾どころか、ブローニング12.7㎜重機関銃にすら耐えられるのである。また、魔法的防御としてはなんと、ワイバーンロードの導力火炎弾に耐えられる。
そのアーマーを装着したリントヴルムが、ゆっくりと前進する。するとその時、キュラキュラという奇妙な音が聞こえ始めた。そして、新生パールネウス共和国の紋章を着けた、全身を鉄板で固めたらしい異様な怪物が、リントヴルムの影から飛び出してくる。
それは、パールネウス国防軍単独では絶対に配備し得ないはずの兵器であった。戦車である。それも、馬に引かせる「チャリオット」ではない。「タンク」…無限軌道と回転砲塔を有する、マジモンの戦車だ。
実はこれ、「もはや使い所がないから」という理由でロデニウス連合王国が
無論だが、「八九式中戦車」も戦時特例供与品である。「絶対に外征には使用しない」という条件を付け、ロデニウス連合王国軍の厳しい監視の元でパールネウス国防軍に提供されたものである。
なお、もし違反が発覚した場合、ロデニウス軍は問答無用で供与された戦車を全て破壊し、同時に新生パールネウス共和国に対して武力懲罰を実施するつもりである。
次々と出てきた「八九式中戦車」は、順次停止して主砲を発射する。中には砲塔を回し、背面のかんざし機銃で掃射をかけるものもいた。
八九式中戦車の短砲身57㎜砲は、対戦車戦闘には全くと言って良いほど向かない砲だが、歩兵を相手にするなら十分な性能がある。57㎜砲から発射された榴弾が炸裂し、リーム陸軍のリントヴルムが耳を塞ぎたくなるほどの絶叫を放って倒れる。機銃掃射を受けたリーム陸軍の歩兵は、草刈り鎌にかかった雑草のようにバタバタと倒されていく。
しゃにむに戦車に向けて突撃するリーム騎兵などもいたが、リントヴルムの火炎放射がそれを迎え撃つ。実はパールネウス国防軍の戦車部隊は大急ぎで編成されたせいもあり、まだ練度が低いのだ。特に敵に肉薄されるとまずいのである。それを補うべく、パールネウス軍にとって扱い慣れたリントヴルムと連携させて地上攻撃に当たらせている。
混乱する戦場に、さらに新たな戦力が参加してきた。それは空を飛ぶ4隻の木造帆船である。そのマストに掲げた旗は、パンドーラ大魔法公国の国旗だ。
パンドーラ大魔法公国の戦力「飛空船」である。飛空船そのものは航空機と同じく民間の飛行移動手段として、第三文明圏内外で親しまれているものだが、パンドーラ大魔法公国は新型の飛空船を軍用に開発、建造していた。
この新型飛空船の特徴は、船体両側に大きく張り出したテーパー翼だ。その先端には、パンドーラでも最新鋭の機構にあたるレシプロエンジンが回転しており、プロペラの回転と帆によって揚力を得て飛んでいる。
なお、レシプロエンジンとして使用しているのはなんと魔導エンジンである。これは、旧パーパルディア皇国が試作していた魔導機関をパンドーラ大魔法公国が接収し、その後ロデニウス連合王国と共同研究で改良したものだ。2年間の研究開発の末に、彼らは飛空船用魔導エンジンの実用化にこぎ着けたのである。
4隻の飛空船は戦場上空に達すると、船首を僅かに下向けて緩降下に入った。その進路の先にはリーム陸軍が展開している。
次の瞬間、飛空船の両翼が少し光り輝き、そこから多数の小さな矢が飛び出した。その矢は、空中で後部から白煙を吐き出し、まっすぐリーム陸軍に突っ込んでくる。お察しの通り「ブラストアロー」だった。小さいので扱いやすく、その上「ルーンアロー」より高性能とあって、パンドーラ軍では一躍人気の兵器となり、ボウガンを持つ歩兵隊から飛空船、果てはワイバーンロード竜騎士に至るまで制式採用しているのである。
自国のワイバーンロードの護衛を受けつつ、パンドーラ軍の飛空船は「ブラストアロー」を雨のように撃ちまくる。「ブラストアロー」が尽きた後は、船体側面に装備された魔導砲を使って近接航空支援にあたった。砲弾が尽きるまで空から攻撃できる飛空船は、制空権さえ確保されていればワイバーンロードより遥かに恐ろしい脅威となるのである。
その飛空船に向けて、リーム王国軍のワイバーンロードが突進していく。しかし、周辺空域にはパンドーラ軍のワイバーンロードが展開しており、なかなか手出しができない。どうにか接近できる個体が少数ながら出た……と思いきや。
「敵ワイバーン接近!」
「ロデニウスから供与された新兵器を使え! あれの対空能力はこれまでの『ルーンアロー』とは違うぞ!」
「了解!」
パンドーラの飛空船の甲板に設置された、黒く細長い筒のようなものが、リーム王国のワイバーンに向けられた。その筒の後部には、箱のような構造体が上向きに突き出ている。
そう、なんと「九六式25㎜単装対空機銃」が積んであったのである。もちろんロデニウスからの供与品であった。弾倉15発と継戦能力は高いとは言えないが、その連射性は「ブラストアロー」とは桁違いである。
「撃てーっ!」
ダンダンダンダンダンッ!
照準器の中央にワイバーンロードを捉え、銃手がトリガーを引く。青白い曳光弾が空へと昇っていき、ワイバーンロードに襲いかかった。
次の瞬間、ワイバーンロードが夥しい量の血を撒き散らし、項垂れたように首を下げた。そのまま真っ逆さまに落ちていく。
「よっし、仕留めた!」
「油断するな、まだ来るぞ! 弾込め急げ!」
「装填ヨシ!」
「外すなよ! 撃て!」
何度か射撃を繰り返し、100発近い25㎜弾がばら撒かれた後には、リーム軍のワイバーンロードは1騎も空を飛んでいなかった。
かつてパーパルディア皇国の属国にされ、対パーパルディア感情が最悪だったパンドーラ大魔法公国。そのパンドーラが、パーパルディアの後継国たる新生パールネウス共和国を支援するという胸熱展開である。
かくして、パンドーラと新生パールネウスの連合軍により、リーム陸軍は新生パールネウス共和国国境で足止めされ、追い払われたのだった。
リーム王下直轄軍の必死の抵抗も空しく、リーム王国の飛び地の海と空はロデニウス軍によって完全に制圧され、飛び地から本土へ物資を輸送することは不可能となってしまった。それどころか、陸軍の移動すらままならない状態である。
そして……バンクスもリバルもキルタナも気付いていなかったが、ロデニウス軍の矛先がヒルキガに迫りつつあったのである……。
「アークアンセム作戦」と「イクサプロド作戦」は順調に進んでいるようですね。
そしてパンドーラと旧パーパルディアが協力し合うという胸熱展開。怨讐を超えて関係を再構築するって、個人的には展開としては良いと思うのです。
時が経つのは早いもので、拙作の投稿が始まってからもう4年目になります。これまで拙作をご愛読くださいました皆様、本当にありがとうございます!
これからも拙作を、どうかよろしくお願い申し上げます!!
次回予告。
飛び地の制空権・制海権を掌握し、リーム王国の本土と飛び地を断ち切ったロデニウス連合王国軍。いよいよ「戦略名:審判」の第三段階「カーディアーカ作戦」が発動する。その土台固めとして、ヒルキガにいる海上戦力及び航空戦力を撃破すべく、ロデニウス軍は行動を開始する……
次回「ヒルキガの海と空は燃ゆ」