鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

2 / 230
え?え?
待って待って、投稿して1日2日ですよ!?なんでもうお気に入りが8にもなってるんですか!?

…皆さんこの「日本国召喚」が、お好きなんですね。

ここからは、原作になるべく沿う形で、転移してしまったタウイタウイ泊地と、ロデニウス大陸各国との交流の様子を描いていきます。
今話と次話とを使い、タウイ側とロデニウス側、2つの側面からファーストコンタクトを描きます。今回は、前半で索敵に飛び立った空母艦娘「瑞鶴」所属の、彩雲が見たものを描き、後半からは、それを受けての堺の行動を描きます。どうぞ。


002. ファーストコンタクト ー堺と瑞鶴索敵隊4号機の立場からー

「稼働機、全機発艦!」

 

 堺の命令が下った直後、ツインテールの髪型が特徴的な航空母艦の艦娘"(ずい)(かく)"は、索敵機「(さい)(うん)」を放った。合計6機の「彩雲」が、エンジンの音を響かせて空に舞い上がる。

 旧日本海軍が保有していた艦上偵察機「彩雲」。全長約11メートル、全幅約13メートル、全高約4メートルの大きさを持ち、小型かつ高出力の誉エンジンを載せた、日本海軍機動部隊の索敵の要となるべく設計され、生産された機体である。直線的な胴体と大径のプロペラを持つスマートな機体だ。"(あか)()"いわく「アイスキャンディーっぽいですね」とのことである。

 

 "(ほう)(しょう)"が割り振った区域担当は、

 

"赤城"・"()()"→泊地から北方向担当

"(そう)(りゅう)"・"()(りゅう)"→泊地から南東方向担当

"(しょう)(かく)"・"瑞鶴"→泊地から南西方向担当

"(じゅん)(よう)"・"()(よう)"→泊地から北東方向担当

"(しょう)(ほう)"・"(ずい)(ほう)"→泊地から南方向担当

"()(とせ)"・"()()()"→泊地から北西方向担当

その他空母→待機

 

 となっている。それに基づき、"瑞鶴"の索敵4号機は、南西よりもやや西南西に近い方向の索敵を担当することとなり、索敵線に沿って飛んでいた。しかし、飛び上がっても、辺りは一面青い海。加えて水平線のほうには、まだ霧が残っている。

 

「周囲って言われても……この辺海多いですよね? なんで、わざわざこんな辺りを索敵しないといけないんでしょうか?」

 

 偵察員を務める新米の妖精が、機長と操縦員を兼ねているベテラン妖精に尋ねている。

 

「俺にもわからんが……(てい)(とく)は言っていたろ? 何か、とてつもないことが起きたらしい、と。だから、泊地の周りに異常がないか、確かめているんだ。わかるか?」

「はあ……」

 

 そうは言ったものの、操縦員妖精は、新米には分かりにくいかな、と腹の中で呟いた。

 いつの間にか霧は晴れわたり、水平線までちゃんと見えるようになっている。

 

「んー……?」

 

 違和感があった。

 

「なあおい。なんか、水平線が遠くなったように感じないか?」

 

 操縦員の質問に、偵察員は「え? そうですか?」と返す。だが、

 

「ですよね? 私もなんだか遠くなったと思ってました」

 

 電信員妖精はそのように返事してきた。

 

「だよな……」

 

 ベテランの操縦員は、自分の感覚を信じた。

 

「タウイタウイに打電しろ。『水平線が遠くなったように思われる』と」

「はい」

 

 電信員はすぐさま、モールス打鍵器を叩き始める。

 

「えー? そうすか?」

 

 偵察員はまだ信じられない様子だったが、先輩2人がそう考えている以上、そんなもんなのかと考え直した。

 そのまま一直線に飛び続けること4分。

 

「おい、正面に陸だ! かなりデカいぞ!」

 

 操縦員が叫んだ。

 見ると、水平線の一部が黒く、低く盛り上がっている。近づくうちに、若干だが、緑が見えてきた。

 

「ありゃなんて島だ? おい、今の位置は?」

 

 操縦員妖精の質問。

 

「現在位置、タウイタウイより8時の方向、距離34㎞と見られます」

 

 対して、電信員妖精の答え。

 

「「「……え?」」」

 

 3人とも、見事に意見がハモった。

 

「いやいやいや、おかしいでしょ? タウイ近くでデカい島って言ったら、ボルネオ島ですよね? でも、ボルネオとタウイタウイは100㎞くらい離れてるっすよ?」

「だよな。地図がおかしくなったのか、それとも俺たちが幻覚を見てんのか……。ともかく、タウイに打電しろ! 『我、広大な陸地見ゆ。タウイより8時の方向、距離34㎞』と」

「了解」

 

 機長兼操縦員が言っている間に、陸はどんどん近くなってきた。

 

トートト ト ト トトトートートー トトトトトー トートートートートー トトトトトー トト トトト トトー トトートー……

 

 電信員が打鍵機を叩く。モールス信号の甲高い電子音のみが機内に響く。

 

「畑があるのか? 何ヵ所か、黄色くなってんな」

 

 陸地を見ていた機長が呟いた時、

 

「前方、未確認飛行物体発見!」

 

 偵察員が声を上げた。

 

「何だありゃ……り、竜なのか!?」

 

 機長もそちらを見て、声を上げる。

 前方から、鳥より大きな何かが、羽ばたきながら接近してくる。しかも、現在の「彩雲」の飛行高度である、高度500メートルを飛んでいるのだ。

 機長と偵察員が、未確認飛行物体を気にしていたその時、パシャリという機械音が機内に響いた。電文を打ち終わった電信員が、支給されているカメラを引っ張り出し、写真を撮ったのだ。

 

「地上にある(ふう)(しゃ)を撮影しました。どう考えても、人間と同等レベルの知的生命体が社会生活を営んでいます」

 

 電信員は、地上に目を向けていたのだ。そして、地上に何か塔のようなものがあるのに目を付けた。しばらく観察するうちに、その塔の上部に同じ形の羽が4枚、ゆっくり回転しているのに気付いて、風車だと判断し、撮影したのだ。

 

「おい、正面の未確認飛行物体も撮ってくれ」

「わかりました。偵察員に撮らせましょう」

 

 電信員はすぐさま、カメラを偵察員に渡した。そして自らは、今見たものをタウイタウイ泊地に大急ぎで打電する。

 

『陸地には多数の畑と風車あり。農耕が営まれている模様』

 

 この内容の文章が、モールス信号に変換されて、タウイタウイ泊地に待機している戦艦娘「大和(やまと)」に送信される。

 

「お、おい! あれ、人が乗っていないか!?」

 

 電子音を遮るように、偵察員が大声を上げた。あまりの驚きに、敬語を使うことも忘れているようだ。

 

「は? そんなことあるわけが……」

 

 言いかけたまま、機長は絶句する。

 ちょうど、その飛竜と「彩雲」はすれ違うところだった。そして、「彩雲」のコックピットのすぐ右を、矢のように飛びすぎる飛竜の背中に、人が乗っているのを、機長は確かに見た。偵察員もまた、カメラのフレームを通して見た。

 その時機長は、竜の背に乗った人間と、確かに目が合った。竜の背に乗った人が、驚いた顔をしているのが見えた。

 

 「♪目と目が合う…瞬間好きだと気付いた…」なんてことになるわけもなく、

 

「タウイに通信急げ! 『我ドラゴン見ゆ! 人と思われる存在がドラゴンに乗っている』!」

 

 機長は怒鳴った。

 偵察員は急いでカメラのシャッターを切り、電信員は返事の代わりに高速でモールス打鍵機を叩き始める。

 いったんすれ違った、と思いきや、飛竜は反転してこちらを追いかけてきていた。だが、速度に大きな差があるらしく、ぐんぐん引き離されていく。

 

「どうやら、速度はこちらが上のようだな」

 

 機長はちらっと後ろを見て、飛竜が遠く引き離されたのを確認して言った。速度計によると、現在この「彩雲」は時速350㎞で飛んでいる。

 

「だが……あれ、どこかの国家に所属しているものだよな?」

「でしょうね。(くら)に、見慣れない紋章が描かれていました」

 

 偵察員が、機長に同意する。

 

「そして、それは多分、この畑や風車を保有する国家でしょう」

 

 電信員が後を引き継いだ。

 

「つまり……俺たちはどこかの国の領空侵犯をやらかしてるわけだ。いまに迎撃機が上がってくるかもしれん、高度を上げるぞ。ヨンマル(高度4,000メートル)まで行こう」

 

 機長の言葉には、2人とも反対しなかった。

 

 

 

 高度を上げ、索敵線に沿って飛び続けること10分。

 眼下の大地には、緑を切り取ったように黄色い四角形……おそらく、畑に植えられた小麦の(たぐ)いだと思われた……が多数並ぶ。ところどころ、道らしい茶色の線も見える。そうした景色を見ながら飛んでいた、その時。

 

「おい、ありゃ街じゃないか?」

 

 ふいに機長が声を上げた。「彩雲」の進行方向に、赤や黄色の屋根らしきものが多数集まっているのが見える。さらに、街の北側には、巨大なアーチ状の岩で仕切られた、青いものが広がっている。帆船らしきものが浮かんでいること、白い波っぽいものが見えるから、海だろう。

 

「ありゃ街ですね。間違いありません」

()()だけに?」

「下手な冗談だなオイ」

「もう少し気の利いたことを言ってくださいよ……」

 

 電信員の冗談に、機長と偵察員がツッコミを入れている間に、「彩雲」は街の上空に達していた。

 

「んじゃ、ここで何度か旋回しよう。撮影頼む」

「任せてくださいよ」

 

 偵察員は連続でカメラのシャッターを切る。

 飛行機乗りに求められる、すさまじく高い視力を以て、街の様子をよく観察すると、いろいろなものが見えてきた。

 まずどうやら、街路は石畳で舗装されており、建物も石かレンガ造りらしい。屋根は、瓦葺きのようだ。さらに、幾つかの窓辺に陽光が反射して、キラキラ光っていたから、ガラスの技術もあると見ていいだろう。

 さらに、教会か何かの尖塔らしいものもあり、しっかり鐘が釣り下がっているように見えた。宗教も存在するのかもしれない。

 その他、旗が何本も見えた。緑地の布に、黄色でUの字を描き、その内側に白で人の上半身を描いている。よく見ると、Uの字の上のほうには、黄色で点がいくつも描かれている。麦の穂か何かがモチーフだろうか。

 

「アレが麦の穂なんかだとしたら、旗から見る限り、どうやら農業で成り立つ国のようだな」

 

 機長が呟いた時だった。

 

「前方、敵機接近! 数は12!」

 

 偵察員が大声で報告する。

 見ると、さっきすれ違ったのと同様の飛竜が12匹、横一線に並んで顔をこちらに向けていた。口が大きく開き、そこから炎が漏れている。もちろん、偵察員はその様子をカメラに収めることを、忘れはしなかった。

 

「ほう、ここまで上がってきおったか」

 

 機長はのんびりした口調で呟いた。

 

「落とそうってのか? だが残念、喰らいはせんよ」

 

 言うなり、機長は操縦桿を手前に引き倒す。

 「彩雲」はぐいっと機首を上げ、ぐんぐん上昇していった。すると、飛竜たちは口を閉じ、困惑したように下を飛び回る。

 

「どうやらあいつら、こんな高空は飛べんらしいな」

 

 機長が呟く。

 

「だが、それはこっちも同じだ。そろそろこいつのエンジンがぐずるかもしれん。偵察はここまでだ! 泊地へ帰投する!」

 

 それを合図に、「彩雲」は機首を翻し、もと来た進路を取って、タウイタウイ泊地へ帰還していった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 3時間後。

 

「ふむ……南西を担当した、瑞鶴の索敵3号機と4号機は陸地の上を飛び、そのうち4号機が街らしいものを見つけた、か…」

 

 提督室にて堺は、各索敵機のパイロットたちの報告書を読んでいた。

 

「さらに畑らしいものもある、か。ありがたい、艦娘ってのは食費がかかるもんだ。この国と国交締結して、食糧確保できないかな」

 

 堺がそう呟いたその時、バタン! と大きな音がして、ノックもなしに扉が開かれた。

 

「提督、大変ですっ!」

 

 飛び込んできたのは、上着が白、下が青のスカートという、セーラー服を着た桃色の髪の(かん)(むす)。工作艦の"(あか)()"である。

 

「どうした? 世の中焦らなきゃいけないようなことなんて、そんなにないよ」

「ぱ、パイプが……当泊地とタウイ油田を結ぶオイルパイプが切断されていました。原油が来ていません! それどころか、タウイ油田とも交信が途絶えています!」

「ごめん、前言撤回」

 

 見事な手のひらクルックルワイパーである。

 

「嘘だろオイ!?」

「本当です!」

マンマミーヤ(なんてこった)! それじゃ、原油がないから、艦隊を動かせない……!」

 

 ここにきてまさかの事態である。

 艦娘というのは、確かに人の形の存在だが、人として動いている時はともかく、()(そう)をまとって海に出て、作戦行動を取るとなれば、燃料(石油)や弾薬も消費する。しかし、それらは簡単には補給できない。

 特に堺は、一度燃料切れをやらかして、艦隊を動かせなくなったことがあるだけに、燃料の残りには人一倍敏感である。その彼の目の前で発生した事態が、「タウイ油田とのパイプ途絶、原油供給不能」であった。

 

「『お号作戦』のために大量に備蓄はしてあったけど、このままではジリ貧だ……。ということは、まずするべきことは決まったな。食糧および水の供給先の確保と、原油供給先の確保だ」

 

 堺は明快に言いきった。

 

「タウイタウイ泊地全体で見れば、食糧の消費量は年間30万トン。これは嗜好品の類も含んだ数字です。転移が事実だとすると、魚の生態系すら変わっている可能性もありますし、獲れた魚にしたって食べられるかどうかは別問題です。

よって、今のタウイタウイ泊地には、食糧を入手する手段がありません。どこかの国から手に入れられるかどうかを検討するほうが、賢明です」

 

 "(おお)(よど)"も賛成する。

 

「なんとかして、石油が手に入る見込みが立つまで、今の備蓄でやりくりしないとな。それと…国交開設の準備だ。今日、瑞鶴から出撃していた索敵隊の連中に、概略でいいから地図を書くよう伝えてくれ。明日、俺が瑞鶴に乗って、直接交渉に行ってくる。とくに、瑞鶴4号機が見つけた街は、アテになるはずだ。

日の出の頃にタウイを出れば、向こうの行政機関が本格的に動き出した頃くらいには着けるはずだ。頼んだぞ、大淀」

「了解しました」

 

 かくて方針は決まった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 翌日。

 午前7時半頃に、"瑞鶴"の索敵4号機が発見した街……マイハークの沖合いにどうにかたどり着いた堺は、クワ・トイネ公国と名乗る国の船から、臨検を受けることになる。そこで堺は、以下の内容を伝えた。

 

・自分は、日本国の海上護衛軍・タウイタウイ泊地の総司令官、堺修一という。日本国の特使だと考えていただけると、ありがたい。

・今回、どうやら元いた世界から転移してしまったようで、本国である日本国を含め、周辺国との通信の一切が途絶してしまった。そこで、周囲の状況を確認すべく、航空機を飛ばして、周囲を哨戒していた。

・その際、誤って貴国の領空を侵犯してしまったことについて、深くお詫び申し上げる。

・ここに来た目的は、国交を開設することにある。

・国交開設の手続きは、できればお早めにお願いしたい。それが叶うのであれば、自分が指揮下においている陸、海、空軍すべてが貴国の指揮下に入ることになっても構わない。

 

 最後の項目については、"瑞鶴"が「本国に確認も取らずに、勝手にそんなことやっちゃっていいの!?」と詰問してきたが、堺は「今のところ、本国とは全く連絡が取れていないし、それに地球の地図とは地形が全然違うようだ。ならば、ここは地球ではないのだろう。だったら、本国に確認を取ってる暇はない。それに、我々も食い繋げなけりゃならんしな」と答えた。答えた直後に爆撃されたが、どうということはないので割愛する。

 そして、ご(あい)(さつ)にと、間宮の(よう)(かん)(転移と同時に砂糖や小豆の供給も途絶したため、艦娘たちに特に人気のこの羊羮は、今やすさまじくお値段の張るものになっている)を10本ばかり渡し、また臨検に来た兵士たちに、(ささ)やかではあったが甘味を振る舞って、友好を図った。兵士たちは、甲板に出してあった戦闘機「試製(れっ)(ぷう) 後期型」を見て騒いだり、周囲の帆船と比べて(けた)(ちが)いの大きさを誇る「瑞鶴」に驚いたりしていたが、妖精たちはそうした反応を温かい目で眺めていた。

 

 そして翌日。

 堺はこの「クワ・トイネ公国」の首相、カナタなる人物から直々に呼び出しを受け、マイハークへ向かうこととなる。優秀なる秘書艦たる"大淀"と"大和"によって、国交開設の申請書や食糧支援の要請書類はすでに出来上がっていた。堺は3名ほどの妖精をお供として、内火艇に乗り込んで、マイハークへと向かっていった。

 

 数時間に渡って続いた交渉は、最終的に堺がほぼ望んでいた形で決着した。

 具体的な内容としては、

 

 

・堺の率いる部隊は、クワ・トイネ公国軍部の指揮下に入る。ただし、堺の部隊の装備と、クワ・トイネ公国軍とは、装備も戦術思想も全く異なるので、形だけ指揮下に入ることとなり、事実上の(ゆう)(ぐん)的存在となる。

・堺の率いる部隊は、クワ・トイネ公国軍部の命令に応じ、率先して動くこと。ただし、遊軍としての行動の自由も認められ、最悪は事後でも構わないから申請を軍部に出した上で、ある程度自由に動くことができる。

・クワ・トイネ公国は堺の部隊に対し、年間30万トンにおよぶ食糧の支援を、全面的に請け負う。

・堺の率いる部隊は、その見返りとして、クワ・トイネ公国および同国軍に技術と装備を供与する。なお、技術とは、食糧を輸送したりするための道路の整備や、軍艦の設備の設計を生かしたインフラの建設、および(主に)陸軍に対する装備の提供と訓練指導である。陸軍に供与する装備は、「(さん)(ぱち)式歩兵銃(銃剣付き)」、「九六式軽機関銃」、「九七式手榴弾」、「十四年式拳銃」、「九七式狙撃銃」、「八九式重擲弾筒」、「九四式37㎜速射砲」、「九〇式野砲」、「八八式75㎜野戦高射砲」、および「八九式中戦車」、「九五式軽戦車」である。

 

 

 というものである。

 どうみてもクワ・トイネ公国が圧倒的に得をしているようにしか見えないが、気のせいだろうか?

 だが、堺は別に気にしていなかった。むしろ食糧支援を確保できたことに喜んでいたのである。

 

 正式に国交を開設したことで、少し気をよくした堺は、カナタに周辺国家について聞いてみた。

 カナタの話すところによれば、このクワ・トイネ公国は「ロデニウス大陸」と呼ばれる島にあり、「クイラ王国」と協力しあって、「ロウリア王国」に対抗している、とのことである。

 そして、クイラ王国について堺が尋ねると、カナタはこう話してくれた。

 

「あそこは、国土の大半が砂漠地帯で、農耕に適さない土地が大半なんですよ。しかも、どこであれ地面を掘ったら、使い物にならない燃える水が湧いて出てきますし」

 

「燃える水!?」

 

 その瞬間、堺の目の色が急に変わった。

 

「その水って、もしかして黒い水ですか!?」

 

 勢いこんで、カナタに尋ねる。

 

「あ、は、はい。黒い水ですよ」

 

 いきなりの変貌ぶりにドン引きしながらも、カナタは堺の質問に答えてくれた。

 

「それって、ドロッとしてます!?」

「え? ええ。しかし、よくご存じですね」

 

 カナタの言葉は、もう堺の耳には入っていない。

 堺は驚愕していた。もし、カナタの話が本当なら、クイラ王国は……

 

「これは、ひょっとしたら……」

 

 ……国土のあちこちから、石油があふれ出ている!?

 

 堺は、「国交開設と食糧支援のお約束、ありがとうございました。すみません、ちょっとクイラ王国の方に、燃える水を見せてもらってきます」と言うが早いか、大急ぎで退出した。そして、待機させていたくろがね四起に乗り込むや、全速で車をぶっ飛ばして、クイラ王国へ行ってしまった。

 (すい)(せい)のごとき勢いで国境地帯を突破し、クイラ王国へ入った堺は、信じがたいものをみる。それは、黒い(かん)(けつ)(せん)……正確には、間欠泉のごとく吹き上がる、原油であった。それも、大量の。

 

 サンプル検査の結果、地球にある石油と成分が全く変わらない、ということを発見するや、堺はただちにクイラ王国とも条約を締結。原油をはじめ、各種資源をを輸出してもらう代わりに、インフラの整備や、(主に)陸軍の新装備導入と訓練を行う条約を取り付けた。道端の石(クイラ王国における原油に対する認識は、そんなものなのである)にも等しい燃える水や燃える石、その他(もろ)(もろ)の石ころを売るだけで、夢のような技術と強力な陸軍が手に入るという取引を、クイラ王国が拒む理由はどこにもなかった。

 結果、タウイタウイ泊地は、転移して約1週間という驚異的なスピードで、「食糧」と「資源」という二大問題を、一気に解決する糸口を見つけ出してしまったのだった。ただ、クイラ王国の資源は精製のための施設を作らないと利用できないので、それまでは備蓄分で我慢することになる。




後半が、ちょっとやっつけ感があるなぁ…暇があれば、少し書き直そうかな。
今回はそこそこネタを入れてみました。
ちなみに、前話に「この◯ば」ネタを入れていたのに、気付いた人はいるのだろうか…


次回予告。

ファーストコンタクトを果たした堺たち。では、クワ・トイネ公国の側から見れば、この出会いはどのようなものだったのだろうか…?
次回「ファーストコンタクト ークワ・トイネ公国の立場からー」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。