鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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また2人連れのようです。今度はどなたがいらっしゃったのでしょう。


(あらすじ)
「天使の実」を食することで、食した人やその人と共通点を持つ人が、夢の世界のバーに集まり、談笑や食事を楽しむことができる。今宵の夢のバーには、既に複数人数が集まり大入りになっているが、そこに新たなる参加者が姿を見せた。



新年、夢の世界より ……なんかやべー方々まで来られたんだが?

 新たに響いたノックの音。

 

「「どうぞ!」」

 

 最も早く反応したのは、ドアに一番近いところにいた堺とフレッツァのペアだった。

 ドアが開かれた瞬間、堺は思わず天を仰ぎたくなった。

 

(だから何でとんでもない方ばっかり来られるんだ! しかも今回はどう見ても人外みたいじゃねーか! おまけに片方は完全武装してるし!)

 

 入ってきたのは2人連れの女性。片方は堺より少し背が低く、長い黒髪と整った顔立ち、そして深い蒼色の瞳を有している。が、左右側頭部から木の枝のような形の黒い角が生えており、普通の人間ではないことをはっきり物語っている。旧日本海軍のそれに似た白い軍服の上から2列ボタンの黒いコートを羽織っている。年齢としては堺よりやや若く、20代前半というところか。

 もう片方はかなり…端的にいえば「目のやり所に困る」見た目だ。身長は堺と大差ないようで、170㎝前後だろう。…が、見た目の方がかなりグラマラスだ。艶やかな長い銀髪、ややつり目の整った顔立ち、黒いノースリーブの上着では全く隠せていない双丘、黒いスカートの左足部分に入った深いスリットから見える太もも…しかも太ももに関しては、黒いニーソと金色のブーツ、それにスカートの黒に挟まれているため余計に(なまめ)かしい。そしておそらく、年齢的には堺と大差ない20代であろう。

 しかし堺が注目したのはそこではなく、その女性の右腰のホルスターに収まった2丁の黒いリボルバー拳銃と左腰に吊り下げられた日本刀、そしてスリットから覗く左足に装備された1丁の白い拳銃だった。これほどの重装備、いったい何を敵に回そうとしているのか。

 

(ヤバいよこれ! まかり間違ったら一撃で脳天に(かざ)(あな)が開くか、首と胴体が泣き別れする奴じゃん!!)

 

 さっきのフレッツァに続き、何故一晩に二度も命の危険に晒されねばならぬのだ…と、堺は嘆きたくなった。そこへ、

 

「ほう、同業者か。」

 

 恐れる様子もなくしれっと呟くフレッツァを見て、堺は二度驚く羽目になった。

 

(同業者だと!? ということは、この2人もKAN-SENの指揮官か!

そしてフレッツァさんは何でこんな重武装した相手に平気でいられるんだよ!?)

 

 そこへ、新たに入室してきた2人が歩み寄ってきて、フレッツァに話しかける。

 

「はじめまして。貴方も『指揮官』ですね?」

 

 初対面で普通に相手の正体を見破る銀髪の女性。

 

「ああ。そういうお前さん方もだな? そして特に銀髪の方、普通の人間じゃないな?」

 

 平然と挨拶するフレッツァ。

 

「はい。あ、申し遅れました。

私は白銀(しろがね) (くろ)()、人間のように見えるかもしれませんが、種族はセイレーンです」

 

 その瞬間、堺は思わず身構えてしまった。『大和(やまと)』の話を思い出したからだ。

 

(セイレーンって人類の敵じゃねえか! 何でそんな存在が、こんなところにいるんだよ!?)

 

 そんな堺をよそに、黒烏の自己紹介は続いている。

 

「ロデニウス連邦・()(おう)(とう)基地にて、KAN-SENを主体とする艦隊の指揮官、及び『第四文明圏条約機構』軍の総司令官を務めております。ちなみにセイレーンではありますが、人類に敵対する気は全くありません。その点は安心してくださいね」

「だろうな。お前さんからは敵意を感じない。」

「信じていただきありがとうございます」

 

 そう言って、黒烏と名乗った銀髪の女性が自己紹介を終えると、角の生えた黒髪の女性が口を開いた。

 

「私はカグヤ・エムブラと言います。海上要塞ヴァルハラを拠点として、KAN-SENたちを率いております。ちなみに種族は龍種の亜人とヒト種のハーフで、後天的な半セイレーンです」

(こっちもセイレーンの血が入ってるのかよ! マジモンの人外じゃねえか!)

 

 どうやら新しく入ってきた女性たちは、軍人である以前に人外だったらしい。ずいぶんと「濃い」メンバーが揃ってきたものだ。

 

「俺はクリストファー・フレッツァ、アズールレーン・サモア指揮官だ。俺もロデニウス連邦の艦隊司令なんぞやってるが…どうやら俺と黒烏さんのいる世界線は別物らしいな。お前さんみたいな軍人を俺は聞いたことがない。もちろん、カグヤさんとも異なる世界線だろう。」

「私も同じです。フレッツァさんのような方がアズールレーン陣営にいる、というのは初耳です」

 

 ちなみに実は、黒烏は一度《重桜》本土に潜入していたことがあり、そこで機密情報を覗き見てアズールレーン側の情報を手に入れていた。その情報の中に、フレッツァの名はどこにもなかったため、黒烏もこの金髪の大男は別世界の人間だとすぐに理解していた。

 そこへカグヤが口を開く。

 

「どうやら私たちは、世界線こそ違えどKAN-SENを指揮する身分にあるようですね。でしたら、同じ指揮官同士として交流するのみならず、…厚かましいお願いではあるのですが、ここにいる他の方への紹介もお願いしたいのですが」

「話は分かった。

ただな、俺もまだここに来て間もないんだ、ここにいる全員に挨拶できてない。ちょっと先に挨拶してきたいんだ。

というわけで……」

 

 言いながら、フレッツァは丸太のような腕をひょいと伸ばした。そして、

 

「お前さん方、ひとまず彼と話してみたらどうだ?」

 

 堺の腕を掴むや、有無を言わさず引きずり出したのである。

 

「……へ?」

 

 理解が追い付かず、堺は一瞬きょとんとした。

 

「ついさっき会って話をしたばかりだが、こいつは良い奴だ、保証する。ああそれから、彼からは面白い話が聞けるかもしれんぜ?

俺はちょっと他の方々に挨拶してくる、また後でな。」

 

 そう言うや、ひらひらと手を振って行ってしまうフレッツァ。

 ここに至ってようやく理解が追い付き、堺はハメられたことを悟った。

 

(や、やられたぁ……!

何しれっとこの方々への対応を丸投げしてくれてんだよぉぉぉフレッツァさん!!)

 

 こうなってしまってはどうしようもない。

 (てい)よく仕事を任された(「押し付けられた」という方が適切か)堺は、フレッツァに軽く恨みを覚えるしかなかった。

 

「ええと、フレッツァさんに引きずり出されてしまった訳ですが……はじめまして。私は堺 修一と申します。ロデニウス連合王国海軍第13艦隊の司令官を務めております。黒烏さん、カグヤさん、本日はよろしくお願いいたします」

 

 礼儀を尽くすべく、まずは自己紹介する堺。

 

「ええ、よろしくね。ところで……貴方、ずいぶん面白い方のようね。私たちKAN-SEN指揮官に似た雰囲気は微かにあるけど、気配が全然違うわ。もしかして、KAN-SENとは違う軍艦の女の子を指揮してたりする?」

 

 あっさり黒烏に職業を見抜かれた。

 

(ったく、フレッツァさんといい、KAN-SENの指揮官は揃いも揃って切れ者ばかりなのか!? なんでこんなにあっさり見破られるんだよ!?)

 

 そう考える堺の前では、

 

「え? 黒烏さん、分かるのですか?」

 

 カグヤが黒烏に尋ねている。一口にKAN-SEN指揮官と言っても、全員が全員特殊能力持ちという訳ではないのかもしれない。

 

「何となく、ね。そんなオーラがにじみ出てるわ」

「へぇ……私には分からないですけど……」

 

 カグヤへの返答を終えるや、黒烏はいきなり堺にキラキラした目を向けた。それはまるで、新しいおもちゃを見つけた子供のようで。

 

「さっきフレッツァさんが言ってた『面白い話』はこのことね!? 貴方のところには、どんな子たちがいるの!? うちのKAN-SENの子たちと良い勝負できるかしら!?」

 

 いきなりマシンガントークである。どうやら堺のことがよほどお気に召したようだ。

 

「あ、それは私も気になります! どんな勝負ができるか…!」

 

 そして《勝負》という言葉が出た瞬間、カグヤの口調も変化した。その美しい見た目からは想像できないが、彼女はどうやら戦闘好きなのかもしれない。

 

「え、ええと……」

 

 2人の勢いにしどろもどろになりながらも、堺は何とか言葉を紡ぎ出した。

 

「黒烏さんの見立ての通りです。私も『軍艦の女の子』を指揮しておりますが、どうやらKAN-SENの皆さんとは全く異なるようです。私たちは『艦娘』と呼んでおります」

「カンムス、ね。どんな見た目なの?」

「えっと、例えばですが……」

 

 再びポケットからタブレット端末を取り出す堺。ところが、丸めてあったそれを広げた瞬間にカグヤが食い付いた。

 

「何これ!? タブレット端末を丸めるなんてことができるの!?」

「え、ええ、はい。少なくとも、私が元いた世界ではそうでした。これは最新のモデルに近い物です」

「へぇー…私の世界でも、タブレット端末はあったけど、丸められる物があるなんて知らなかったよ。まだまだ技術発展の余地がありそう…」

 

 黒烏も目を丸くしている。

 

「すごい、タブレット端末がここまで進化するとは……。私もこれ欲しいわね、どうやったら作れるかしら?」

「失礼ですが、お二方の世界線のタブレット端末とはどのようなものでしょうか?」

「私のはこれよ」

 

 黒烏が取り出したのは、21世紀の日本でよく見られる代物である。(かじ)られたナシのロゴマークが付いた板状のアレだ。

 

「私のも同じです」

 

 カグヤが見せてきたのも、同じようなものだ。ただ、こちらの方が少し薄い気がする。

 

(そうか、そりゃ丸められるタブレット端末なんて初めてだわな)

「なるほど、こういうことでしたか。それなら、私のこれが珍しく見えるのも道理ですね。

ただ、申し訳ない、私は技術者ではありませんので、どうやって作るかまでは……」

「分かってるわよ。でもこれ、うちの技術者陣だったら作れるかしら……」

 

 黒烏の呟きに、カグヤも考え込むような仕草を見せる。

 堺は静かに戦慄した。

 

(やれやれ、"(くし)()"に限らずどこの世界線にも、トンデモ技術者ってのは少なからず存在するのかね…)

 

 それはそれとして、話題を戻す必要があるだろう。今はかなり脱線した状態なのだから。

 

「えっと……こちらをご覧ください。これが、艦娘の一例です」

 

 堺がタブレット端末に呼び出した"大和"の画像に、黒烏とカグヤは興味津々で見入っている。

 

「これは…戦艦の方でしょうか?」

 

 これはカグヤの質問である。

 

「はい、そうですよ。ちなみにこれ、うちの嫁カッコカリなんですが……何という名だと思います?」

 

 堺の質問に、2人の指揮官は画像を食い入るように見つめる。

 

「三連装砲で戦艦……艤装がかなり大きいわね、かなり大型の子かしら。ビッグセブン……いや、もしかするとそれ以上……?」

「この靴下に書かれた文字を見る限り、漢字を使う陣営のようですね。《東煌》にそんな戦艦はいなかったはず……ということは、私たちでいう《重桜》でしょうか? ケモミミも尻尾もなく、《ロイヤル》や《ユニオン》のようなちゃんとしたヒト人間ですけど」

 

 するとここで、黒烏が何やら唸り始めた。

 

「《重桜》で戦艦…しかも三連装砲…。ちょっと待って、何か引っかかってるのよね。うーんと、うーんと……」

 

 しばらく考えた後、黒烏は何かを思い出したようだ。

 

「ああ、思い出した! 《重桜》に行った時に見たあの映画! そう、確かあれの作品名は『宇宙戦艦ヤ◯ト』よ!」

 

 その瞬間、堺は飛び上がるほど驚いた。

 

「え!? い、いま『宇宙戦艦ヤ◯ト』と!?

ま、まさか、そちらの世界線にもその作品が!?」

「確かあったわよ。そしてその映画に出てきた戦艦が、ちょうど三連装砲だったのよね!」

 

 意外な情報であった。まさか異世界に『ヤ◯ト』が存在するとは!

 

「ということは、この方の名前って《ヤマト》かしら?」

「正解です黒烏さん。こちらが戦艦娘の"大和"。大和型戦艦の1番艦です」

 

 黒烏とカグヤは揃ってため息をついた。

 

「いいわねぇ、大和型戦艦……。うちにも460㎜三連装砲があるのよ、だからいつか配備したいのよね。まだ見つかっていないんだけど」

「私のところにも、大和型戦艦のKAN-SENはいないですね。()(さし)には会ったことはありますが……彼女は転移によって《重桜》本土に取り残されてしまいました。もしかすると寂しがってるかもしれないですね…少し心が痛みます。

それはそれとして、460㎜砲持ちってことは、火力はすごく高そう……機会があれば、うちのKAN-SENたちと演習させてみたいですね!」

 

 堺は逆に質問してみた。

 

「失礼ですが、戦艦のKAN-SENにはどのような方がいらっしゃるのですか?」

 

 これに答えたのはカグヤである。

 

「色々いますね。《重桜》陣営だと、武蔵、(なが)()()()()()日向(ひゅうが)()(そう)(やま)(しろ)

(この辺は当然いるか……どこの世界線でも同じようなものなのかな)

「それと()()()()

「へ!? と、土佐!?」

 

 堺は思わず、すっとんきょうな声を上げた。

 堺の知る限り、戦艦「土佐」は進水こそしたものの、ワシントン海軍軍縮条約の煽りを受けて建造中止となり、最終的に砲撃試験の標的艦として沈められたはずだ。戦艦としては完成していない。また、艦娘の"土佐"もいない。

 だというのに、KAN-SENには土佐がいるのか。

 しかも「紀伊」までいると来た。堺の知る限り、「紀伊」は超大和型戦艦に付けられる名前の1つだったはずである。

 

(いや待てよ? 「紀伊」は確か使い回された名前の1つだったはず。俺の記憶違いでなければ、「紀伊」は未成に終わった大和型4番艦に付けられる予定だったとか、聞いたことがある。それから、確か八八艦隊の戦艦にこの名前が使われる予定だったはずだ。ということは、この「紀伊」は八八艦隊モデルの可能性もあるか? うーん、どれだろう……)

 

 そう考えていた時、カグヤが言った。

 

「どうしたの? 土佐って聞いた瞬間にびっくりして」

「失礼しました。いや、うちの"()()"がたまにその名前に言及するんですが、うちには"土佐"なんて艦娘はいないもので……」

「そういうことでしたか。うちの土佐は410㎜連装砲を装備した、立派な戦艦のKAN-SENですよ」

「いいなあ、うちの"加賀"が聞いたら会いたがるでしょう。そして410㎜砲装備ってことは、長門や陸奥と同じ、八八艦隊計画の艦なのですね」

 

 実際に艦娘の"加賀"とKAN-SENの『土佐』を会わせてみたらどんな反応をするかな、と気になる堺であった。

 

「それと、駿(する)()もいますね。そうそう、あと()(かさ)

「はい!?」

 

 まさかの名前が飛び出してきた。

 

「み、三笠!? 確か(こん)(ごう)より小さい戦艦じゃありませんでしたか!?」

「そうですよ」

「驚いたな……KAN-SENには三笠がいるなんて」

 

 戦艦「三笠」。日露戦争にて、バルチック艦隊を(かん)()()きまでに打ちのめした連合艦隊の旗艦として有名な戦艦である。

 まさかそれがKAN-SENになっているとは思わなかった。日本の艦娘は金剛型が最も古い世代であり、それより前の世代の「三笠」は艦娘になっていないのである。

 

「あと加賀もいますね」

「加賀!? 戦艦でですか!?」

「はい。あ、空母KAN-SENの加賀も同時にいますよ」

「何だこれは……たまげたなぁ……」

 

 もし艦娘の"加賀"が聞いたら、羨ましがるだろう。何せタウイタウイの"加賀"は、「私、戦艦として活躍する夢をまだ諦めていないので」とか言い出して、改装の際に空母であるにも関わらず41㎝艦首軸線砲を要求してきたほどなのである。

 

「あとは巡洋戦艦として、金剛、()(えい)(はる)()(きり)(しま)(あま)()ですね」

 

 土佐がいるくらいなのだから、巡洋戦艦の天城がいたっておかしくない。このため、こちらには堺は特に驚かなかった。

 

「かなりたくさんいるんですね…。私のところは、《重桜》に相当する国の子は12人だけです。土佐や駿河、紀伊、天城、三笠がいない代わりに、"大和"と"武蔵"の姉妹がいるんです」

「いいなー460㎜砲姉妹……」

 

 黒烏が羨ましそうに呟く。

 

「460㎜砲か…戦いがいがありそう…ふふふ……」

 

 好戦的な笑みを浮かべるカグヤ。

 

(やっぱりカグヤさんは戦闘好きなのかね…。これでもし、"武蔵"が510㎜砲持ちになっている、なんて知れたら、大変なことになりそうだ)

 

 そう思いながら、堺は別の画像を表示した。

 

「さて、この子は誰か分かりますか?」

 

 堺が示した画像に写った艦娘を見た瞬間、黒烏とカグヤは異口同音に答えを出した。

 

「サラトガかしら?」

「《ユニオン》空母のサラトガさん?」

「い、一瞬でしたね……正解です。なぜお分かりに?」

「そりゃあ、ねえカグヤさん?」

「はい。何となく似ているんですよ、KAN-SENのサラトガに。それによく見たら、後ろの艤装に『SARA』って書いてありますし」

 

 言いながら、カグヤが自前のタブレット端末でサラトガの画像を呼び出した。

 

「こんな感じなので……ヘアスタイルは違いますけど、頭部の煙突艤装とか髪色とか、あと艤装の主砲とか、共通点が多いんです」

「へえ、これがKAN-SENのサラトガ…確かに少し似ていますね」

 

 正解される訳である。

 

「そういえば、艦娘にも複数の陣営があるのかしら?」

 

 そこへ、黒烏が疑問を提起した。

 

「そうですね、陣営というよりは『国家』という表現が適切です。私の知る世界では、《重桜》は日本、《ユニオン》はアメリカと名乗っています。それから、これがビスマルクなんですが……」

 

 言いながら堺が示した"Bismarck(ビスマルク) Drei(ドライ)"の画像を見て、黒烏とカグヤが目を見開く。

 

「これがビスマルク!? KAN-SENと全然似てない…!」

「艤装がまるで違いますね……うちのビスマルクは『騎士』という感じの印象だけど、艦娘のビスマルクはこう、『守護神』的な感じかな……」

 

 カグヤさんが言うほど『守護神』じゃないけどな、と堺はそっと苦笑を隠した。

 

「ビスマルクは確か、《鉄血》という陣営なんですよね?」

「あら、知ってるの?」

「黒烏さんたちが来る少し前に教えていただきましたので…。《鉄血》は私の知る世界ではドイツと名乗っていましたよ」

「なんか、名前がかっこいい……」

 

 カグヤが少し目を輝かせた。

 

「あと、《ロイヤル》がイギリス、《サディア》がイタリアに相当するみたいです」

「艦娘さんたちも国際色豊かなのね。うちのKAN-SENたちといい勝負してるじゃない」

「いやいや、うちの子たちは弾幕を撃てないので、おそらく演習でぶつかったら負けちゃいますよ」

 

 そんなに簡単に負けるタマでもないと思うけど、という意見を堺は口に出さなかった。そしてここで新しい質問を思い付く。

 

「そういえば、お二方に少しお聞きしたいのですが…」

「何でしょうか?」

「いやぁ、お二方は人間でいうと女性の見た目じゃないですか。それで、その、KAN-SENの方とケッコンしたりとかはしているのかな、と……」

 

 堺がそう言った瞬間、黒烏もカグヤも目の色を変えた。そして黒烏が真っ先に口を開く。

 

「結婚した相手はいるか、って? そんなのいるに決まってるじゃない!

何人に指輪渡したっけ、えーと(あや)(なみ)、リットリオ、エクセター…後は…」

 

 負けじとカグヤも続く。

 

「私は今のところ、ローン1人だけですね。ただ、何らかの形で愛情表現してくるKAN-SENの子は多いですよ」

 

 そこへ黒烏がツッコミを入れた。

 

「あらあら、カグヤさんのところの子たちは随分と積極的みたいね」

「誉め言葉として受け取りましょう。そういう黒烏さんなんて、いったい何人と結婚するつもりですか…」

「あ、私もそこはカグヤさんに同意です」

「あら、堺さんは男なんだし、ハーレムめいたことをしてるのかなと思ったんだけど」

「とんでもない、私の嫁は"大和"1人だけですよ」

「たくさんの子たちと関係を持つのも良いけど、誰か一筋というのも良いですよね。そう思いませんか、堺さん?」

「カグヤさんに完全同意しますよ。というか私の場合、自分で言うのも何ですが事務処理能力がアレですから、もし他の子とケッコンする羽目になっても書類の処理を忘れて未入籍、なんてことになりかねません」

「あらあら……それじゃあ私の管理能力は十二分にあるということね」

「そうかもしれませんなぁハハハ。というか黒烏さん、そんなに嫁さんがいるのなら、日中の業務が終わった()の方が大変なんじゃないですか?」

「あら、分かっちゃった?」

「それくらいすぐに察せますよ、とっかえひっかえなんて…」

「この剣の切れ味、味わってみる?」

「いえ全力でご遠慮させていただきます」

 

 嫁談義になったとたんにこの始末である。どこの世界線に行っても、提督や指揮官といった職業に就いている者は、得てしてこういうネタに事欠かないのであろうか……。

 

「あら、そういえばあとお一人、まだ来ていないみたいですね」

 

 カグヤが切り出した内容に、堺は聞き耳を立てた。

 

「え、分かるのですか?」

「ええ。というのも、この部屋の入り口に来訪者の名前を書いた札がかけてあって、私たちが到着した時点では私たちを含めてあと3人来る予定のようなんです。それで、あと1人まだ来られていないのかな、と思いまして…」

「そうでしたか、これは全く気付いていなかったな…。ちなみに、何というお名前の方だったのですか?」

「ええと、確か……」

 

 カグヤがそう言いかけたのと、ドアノッカーの音が鳴り響いたのは同時であった。




次の方で来訪者は最後です。いやー、そうそうたる面子が集まりましたね。
次回の公開は0500時です。
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