鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
アクエリアス杯も勝って終わったと思ったら、息つく暇もなく艦これのイベントとピスケス杯ですか…忙しいの何の。
それでも、忙しかろうがバクシンバクシーンッ!
ここからしばらく「バグラチオ作戦」です。
そしてまさかのまさか、こんなものを描いていただけるとは…!
なんと、堺 修一提督のAIイラストをいただきました! 製作してくださったサモアオランウータン様、本当にありがとうございます! 深謝です!
同氏から許可をいただきましたので、ここに掲載させていただきます。
【挿絵表示】
中央暦1643年8月31日、グラ・バルカス帝国領ヒノマワリ州東端部 田舎町オクライト。
この町は、旧ヒノマワリ王国の数ある町の中でも、最もムー国との国境線に近い町である。そのためこの町にはいつムー統括軍を始めとする敵軍が攻めてきても良いように、またムー国攻略の尖兵となるべく、グラ・バルカス帝国陸軍第8軍団の第5機甲連隊と第7歩兵師団が配備されており、それ以外に国境警備隊の本部が置かれていた。小規模だが飛行場も建設されており、シリウス型爆撃機40機とアンタレス型艦上戦闘機が60機配備されている。
午前3時30分、そのオクライトにて、グラ・バルカス帝国軍の兵士たちは緊張した面持ちで飛行場や市街地の復旧作業に当たっていた。
このところ、ロデニウス連合王国軍のものと見られる4発レシプロエンジンの大型爆撃機が多数、ヒノマワリ州各地に爆弾を投下している。それはこのオクライトにあっても例外ではなかった。既に市街地は半分以上が瓦礫と化しており、防衛陣地も4割方が破壊されている。復旧作業自体はやっているのだが、焼石に水という有り様である。
それだけではなく、既に航空戦力が払底した状態となっていた。ロデニウス軍の空襲が始まった頃は多数の「アンタレス」が迎撃に上がっていたのだが、この大型爆撃機にはとんでもない戦闘機が護衛として付いていた。銀色一色に塗装されたその戦闘機はプロペラがなく、機体後部から一筋の炎を吐き出し、「アンタレス」の倍以上もの速度で空を飛び回るという怪物だった。そして、帝国の誇った”無敵の戦闘機アンタレス”を赤子扱いし、自身は何の損害も受けずに片っ端から「アンタレス」を撃墜していったのである。今やヒノマワリの空を飛ぶ機体は、ほぼ全てがロデニウスかムーの機体という状態であった。
それに加え、第8軍団指揮下の精鋭部隊である第3師団によるバルクルス奪還が大失敗に終わったとの噂も流れていた。これまで向かうところ敵無しを誇ったグラ・バルカス帝国陸軍、それも無敵のハウンド中戦車を装備した精鋭が敗北したのだ。それによる兵士たちの動揺もただならぬものだったのである。
午前5時。早い朝食を済ませ、復旧作業にかかろうとした兵士たちの表情が凍りついた。基地と市街地全体に不吉な響きを持ったサイレンの音が響き渡ったのだ。空襲警報である。
普通なら「アンタレス」に搭乗員が駆け寄り、エンジンを始動して暖機運転を行い、空に飛び立っていくはずであるが、飛行場は静かなままだ。「アンタレス」は1機も動かない。
というのも、もう動かせる機体がないのだ。ここ1ヶ月に及ぶ空襲で、この基地及び周辺の飛行場の戦闘機戦力は完全に無くなってしまい、迎撃機を上げたくても上げられる機体がないのである。そのため、グラ・バルカス帝国兵たちは対空砲陣地に駆け寄ると、憎々しげな目つきで空を見上げ、射撃を開始する。
75㎜野戦高射砲が砲撃を始め、晴れた空に散発的に黒い雲が花開く。しかしそれに捉えられる機体は一切無く、50機を超えるだろう大型の敵機はオクライト上空に達した。
ヒュウウウウウ…という甲高い音が、いくつも降ってくる。敵機が投下した爆弾が、迫ってきたのだ。兵士たちが慌てて逃げ出していく。
次の瞬間、家並みからぱっと赤い火の手が幾つも上がり、家並みの一部が一瞬で消滅した。位置エネルギーを味方に付けた爆弾が、家を一撃で破壊したのだ。さらに、市街地外周の防御陣地や基地にも爆弾が降り注ぐ。塹壕の一角が大きく吹き飛ばされ、対戦車壕に入ったままだったハウンドI中戦車が一瞬で消滅する。基地もあちこちから炎が吹き上がり、特に滑走路脇に落下した爆弾が燃料タンクを直撃して、耳をつんざく轟音と共に目を焼く真っ赤な火柱と火球を上空高く噴き上げた。
大空を悠々と飛ぶ大型の爆撃機…爆弾投下を終えたロデニウス軍の「B-29改 スーパーフォートレス」は、護衛の「F-86D改 セイバードッグ」と共に、1機の被害もなく悠々と引き上げていく。グラ・バルカス帝国陸軍の兵士たちは、その様子を苦々しげに睨みつける以外になかった。
ところが、悲劇はこれだけでは済まなかった。続いて国境警備部隊から「敵襲!」の報告が寄せられたのだ。しかも、「敵は高性能の戦車を多数伴う」と続報が付け足されていた。
その国境警備部隊が築いていた陣地は、無惨な姿になっている。防御用に築かれていたトーチカ類はその大半が破壊され、地面はあっちもこっちも大穴だらけ、塹壕は至る所で寸断され掘り返され、周囲には兵器などの残骸や将兵の死骸が散らばっている。1時間にも渡って、敵の砲撃を受けた結果であった。
そんな防衛線だが、まだ生き残っている兵士も多い。それらの兵士たちは、ある者は獲物である歩兵銃や軽機関銃を握りしめ、ある者は奇跡的に生き残った野砲や対戦車砲に砲弾を込め、引き金に手をかける。彼らの顔には、どれにも緊張の色が浮かんでいた。
彼らの視線の先には……地平を埋め尽くさんばかりに広がって進撃してくる、巨大な戦車の群れがあった。よく見ると三角形の、楔のような陣形を作っている。
グラ・バルカス帝国の誇る2号中戦車ハウンドより二回り以上も大きく、どっしりした幅広の履帯に支えられた箱型の車体には、凶悪な主砲が搭載されている。その砲口は真っ直ぐに、彼らを睨み据えていた。
「撃て!」
号令が飛び、その途端に37㎜対戦車砲が火を噴いた。直後に野砲や歩兵砲も砲弾を放つ。
迫り来る敵戦車の周囲に、次々と弾着の土煙が立つ。しかし、それらを乗り越えて敵戦車が迫ってくる。
37㎜対戦車砲が再び発砲する。その直後、先頭に立つ敵戦車の前面にパッと火花が散った。
「当たった…!?」
グラ・バルカス帝国兵たちが喜んだのも束の間、敵戦車は水をかけられたカエルのように平然とこちらに向かってくる。
「効いてないぞ!」
「そんなバカな! ハウンドの装甲を800メートルで貫く威力があるんだぞ!?」
「なんで効かないんだ!」
叫びながら、兵士たちは三度対戦車砲を撃つ。敵戦車はさらに接近し、距離300メートルほどにまで迫っていた。飛んでいった砲弾は見事に命中する。だがそれだけだ。金属質の嫌な衝突音と火花が散るだけで、装甲を貫徹できない。敵戦車の脚が止まらない。
「何で…!」
兵士たちの叫びは、砲声によってかき消された。
防衛線に接近してきたロデニウス軍の戦車部隊、その先頭に立つ「ティーガーI E型」は、37㎜対戦車砲の砲撃を弾いて接近し、走りながら破壊の返礼をし始めた。88㎜砲が火を噴き、榴弾が陣地内に着弾して大きな爆発が起きる。
それだけではなく、「ティーガーI」は主砲の横に設置された同軸機銃を使って歩兵を掃討し始めた。まさか敵戦車が主砲の隣に機銃を持っているとは思わず、グラ・バルカス帝国の兵士たちは悲鳴を上げながら血煙に斃れていく。
グラ・バルカス帝国陸軍の主力戦車となっている「2号中戦車ハウンド」シリーズと「2号軽戦車シェイファーII」も、確かに機銃を持ってはいる。だが、それらの戦車は砲塔の背面に機銃を装備しており、いわゆる「かんざし機銃」の配置となっている。このため、主砲と同時に機銃を使うことができない。
その常識に染まっていたグラ・バルカス帝国の兵士たちは、同軸機銃の存在に気付くことができなかったのだ。
「くそ、対戦車砲が全滅だ! 戦車はまだか!」
「待ってろ、今奴を倒す!」
剥き出しの対戦車砲を操作していた兵士たちは、敵の機銃で撃ち倒されてしまった。敵戦車は全く脚を止めずに、もう第一防衛ラインの塹壕陣地を突破しつつある。
「喰らえ!」
九七式中戦車チハに似た形状をしたグラ・バルカス帝国の主力戦車「ハウンドI」が、主砲の18口径57㎜砲を放つ。これまで幾多の敵を屠ってきた、自慢の砲だ。
発射された砲弾は敵戦車に向かって飛翔し、
ガキン!
弾かれただけで終わった。
「…は?」
何が起きたのか理解できず、固まる「ハウンドI」の乗員たち。
その硬直が、命取りとなった。
直後、急停止した敵戦車がその長大な砲身を「ハウンドI」に向け、砲撃を放った。その一撃は「ハウンドI」の装甲をあっさり貫通し、主砲の弾薬が引火誘爆。「ハウンドI」は一瞬で炎に包まれた。
「な…な、何だとっ!? 無敵のハウンド中戦車が、たった一撃で…!」
「ダメだ! シェイファーIIも全部やられた、もう防ぎきれない!!」
戦車も大砲も大半を失った国境警備部隊に、もはやなす術はなかった。
「て、撤退! てった、ぐわぁぁぁ!」
恐慌状態に陥った軍曹の声を、その肉体ごと「ティーガーI」の履帯が踏み潰した。
ロデニウス軍の戦車隊が築いていた三角形の陣形。それは、「パンツァーカイル」と呼ばれるものだった。第二次世界大戦時にドイツで考案された戦法で、戦車を楔のような三角形の形に配置し、その後方に自走砲と機械化歩兵を続かせて、戦車の重装甲と打撃力により敵の防衛陣地を突破して素早く制圧する、という方法である。史実ではソ連軍の強固な防衛陣地を破砕したこともある、強力な戦法である。
あのソ連軍の陣地すら破砕する戦法を、ソ連軍より貧弱な対戦車戦術・装備しか持たないグラ・バルカス帝国軍の防衛陣地が防ぎ切ることは、ほぼ不可能だったのだ。
第二文明圏連合軍の中で真っ先に動き出したロデニウス陸軍第1軍団は、あっさりとヒノマワリ・ムー国境の防衛線を突破。それに続く形で、ムー統括陸軍第2軍の戦車部隊が国境を越えた。彼らの攻略目標は、ヒノマワリの国境都市オクライトである。そこを解放し、今後のヒノマワリ中央部進攻の橋頭堡とするのだ。
国境防衛線が突破された、というまさかの報告にグラ・バルカス帝国陸軍オクライト駐屯部隊は大慌てとなり、歩兵たちは急遽武器を持って塹壕や建物の狙撃ポイントなどに配置につく。その一方、基地に残っていたハウンド中戦車やシェイファーII軽戦車、市街地外周の防衛陣地にいたハウンドI中戦車の生き残りは、集まって対戦車戦の用意を整え、外周陣地では機関銃や野戦砲、対戦車砲が構えられる。ついに攻め込んできた強敵を前に、気を引き締めていた。
程なく国境警備隊からの通信が途絶え、それからしばらくしてオクライト東方の山の稜線付近に多数の土煙が上がり始めた。それを見て、市街地外周部の防御陣地にいる兵士たちは、不退転の決意で敵を迎え撃とうとした。
ところが、敵がその姿を現した時、グラ・バルカス帝国陸軍の兵士たちは驚いてしまった。敵は非常に長い砲身を持つ戦車を先頭に出し、その後方に対空戦車と自走砲、装甲車や自動車に乗った歩兵たちを続かせるという、明らかな機甲師団の編成であったのだ。
しかも、どうやらロデニウス・ムーの2国合同軍らしい。それでも恐れることなく、グラ・バルカス帝国軍は迎え撃った。ハウンド中戦車を中心とする戦車部隊がムー陸軍に向かい、砲兵陣地がロデニウス軍を迎え撃つ形だ。
真っ先に火を噴いたのは、グラ・バルカス帝国軍の防御陣地に据えられた37ミリ対戦車砲だった。しかし、ロデニウス軍の先頭を走る「ティーガーI」の100㎜装甲や、ムーのラ・スタグ自走砲(III号突撃砲F型)の80㎜装甲、ラ・シマン戦車(M4シャーマン中戦車)の前面50㎜装甲にも全く通用せず、火花を立てて弾かれるだけに終わる。
慌てたグラ・バルカス帝国陸軍は対戦車砲や76㎜野戦砲の連続発射を浴びせ、さらに迫撃砲、機関銃陣地も攻撃を開始する。それに対し、綺麗なパンツァー・カイルを組んで進撃してきたロデニウス軍戦車隊は、一斉に停車するや主砲を発射。瞬く間に対戦車砲が爆砕され、野戦砲の砲弾が誘爆して炎と黒煙が踊り、破片が空中に放り上げられる。火箭を吐き出していた機関銃も、「ラ・スタグ」や「ラ・シマン」の75㎜砲の咆哮と共に沈黙を余儀なくされる。さらに、後方に展開したハノマーク装甲車が発射したネーベルヴェルファー30㎝ロケット弾や「ブルムベア改」の150㎜砲弾が、グラ・バルカス帝国軍陣地に降り注ぎ、これを次々と爆砕していった。
一方、ムー陸軍に襲い掛かったグラ・バルカス帝国軍戦車隊は、ラ・スタグ自走砲やラ・シマン戦車の火力と装甲で返り討ちにされ、あっという間に戦力の4割を喪失して敗走。それを追撃するムー陸軍は、そのまま防御線を踏みにじって市街地外縁部に迫り、外周防御線拠点が置かれていた家を包囲して集中砲火を浴びせた。自走砲に援護されて歩兵部隊が突入し、両軍は激しく戦った末にグラ・バルカス帝国軍が全滅、拠点は占領された。
その頃には先に市街地に入ったロデニウス連合王国軍が、対戦車ライフルで装甲車をやられたりしながらも、グラ・バルカス帝国軍の抵抗を粉砕して、役所が置かれている市街地中心部の尖塔のある建物に接近。このタイミングでムー陸軍の上空支援が到着し、「アラル」戦闘機の機銃掃射や「ソードフィッシュ」による爆撃が行われた。市役所も20分に渡る激戦の末陥落し、ロデニウス・ムー連合軍は次の攻勢の矛先を国境警備隊司令部に向ける。
圧倒的な火力で押し切られた国境警備隊は壊滅に追い込まれ、国境警備隊駐屯地も占領。そしてロデニウス・ムー連合軍はついに、市街地全域を占領した上で飛行場へと進撃。グラ・バルカス帝国軍は、破壊された戦闘機から機銃を取り外して必死で撃ちまくったが、どうにもならなかった。
市街地外周部で戦闘が始まってからたった2時間半で、グラ・バルカス帝国軍は駐屯地すらも失って敗走。レイフォル州解放作戦「バグラチオ」は幸先の良いスタートを切った。
そしてこれは、あくまでも始まりに過ぎない。何故なら、反攻を開始したのは中央軍集団だけだからだ。ムー本土から直接旧レイフォル領へ突入する北方軍集団も、南のソナル王国やニグラート連合、マギカライヒ共同体から突き上げてくる南方軍集団も、まだ動いていない。
総反攻作戦「バグラチオ作戦」は、まだ始まったばかりである。
すみませんが、今回は少し短めで切らせていただきます。ちょうどうちの施設がオープンしたばかりで、まだ仕事の勝手が掴みきれず、なかなか文章を考える余裕がない…!
それでもエタらせるつもりはありませんので、ゆるりとお待ちいただけますと幸いです。
UAがもう115万を超えてる……皆様、本当にご愛読ありがとうございます! 励みになります。
評価10をくださいました弥生味噌様、ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
次回予告。
旧ヒノマワリ王国解放にあたって、ひとまず橋頭堡を確保した第二文明圏連合軍。しかし、総反撃はこれからが本番である。グラ・バルカス帝国軍の目を引きつけた中央軍集団に続き、いよいよ北方軍集団と南方軍集団が動き出す!
次回「激闘! ムー大陸戦線!」