鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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4月1日とは、「四月ばかの日(エイプリルフールズ・デイ)」。ということで、ある種の嘘を交えた話になります。
もちろんながら、この話は本編とは独立しております。本編の話の流れに影響を与えるものでは断じてありません。



エイプリルフール特別編 起

 遠い未来 とある世界線の

 召喚世界で・・・

 

 

 

 

鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。

 

 

エピソード i

現実(ストレンジリアル)か、夢幻(エイプリルフール)

 

グラ・バルカス帝国との戦争が終結し、戦後処理もあらかた完了したため、長きに渡る遠征を終了したロデニウス連合王国海軍第13艦隊・ムー派遣部隊は、全員揃ってタウイタウイ泊地へ帰還した。妖精さんの戦死者はかなりの数に昇ったものの、艦娘の轟沈は誰一人発生しなかったことから、帰還した艦隊を迎えた留守番組の雰囲気は、比較的明るいものだったという。

 

通常状態に戻ったタウイタウイ泊地及び第13艦隊司令部であったが、新たな異変が足元に迫っていることに、司令官の堺 修一も艦娘たち・妖精たちの誰も、気付くことはなかった。タウイタウイ泊地は再び、異変発生の刻を迎える……

 

 

 

 

 

 ある日の朝、夜が明けると同時にタウイタウイ泊地司令部は騒然となった。

 

「クワ・タウイの(あお)()情報局支局との通信不能! 魔信も無線も繋がりません!

さらに、TV・ラジオの各放送も途絶!」

「首都クワ・ロデニウスの軍司令部、5分前から無線で呼びかけていますが応答ありません!」

「クワ・タウイの第1艦隊司令部とも連絡が取れません!」

 

 上から順に、"青葉"、"(おお)(よど)"、"大和(やまと)"の報告である。

 

「くそっ、こんな朝っぱらから……! いったい何が起きたというんだ!?」

 

 焦りながらも、(さかい)は必死で寝起きの頭を回そうとする。

 

(何かが起きたのは間違いないんだが……ロデニウス大陸と連絡が取れない、というのはあまりにおかしすぎる。魔信も無線も通じないとは思わなんだ。こんなの、この世界にいきなり飛ばされた時以来じゃないか。

……ん? 「飛ばされた」? これはまさか……本当に!?)

 

 不意に頭をよぎった考えに、堺は天啓を得たように思った。そしてすぐに指示を飛ばす。

 

「大和、今から言う艦娘に緊急出撃の命令を出せ。メンバーは(はる)()(きり)(しま)(しょう)(かく)(ずい)(かく)(ずい)(ほう)()()()()五十鈴(いすず)(あさ)(しも)(あき)(づき)時雨(しぐれ)(ゆき)(かぜ)だ」

「分かりました。実弾装備ですね?」

「ああ。頼む」

「出撃の目的は?」

「万が一に備えて、泊地から西方向に進撃。ひとまずロデニウス大陸があるかどうか、確かめてきてもらいたい。

こんな突然連絡が取れなくなるなんておかしい。もしかすると、また転移させられたかもしれん。だから、確かめてきてもらう必要がある」

「!?」

 

 命令の内容が内容だったため、"大和"は一瞬息を呑んだ。だが、すぐに我に帰る。

 

「分かりました。命令出します!」

 

 堺が頷くのを確認して、"大和"は提督室を飛び出していった。

 

「青葉、泊地全域に第1種非常体制を発令しろ。状況が判明するまで、全艦娘は即時出撃可能なよう待機させよ。あと、基地航空隊の各機もスクランブル発進に備えて待機命令」

「了解です!」

 

 堺が指示を出す間にも、"大淀"が必死で無線機に呼びかけているが、応答はないようだ。空電音だけが虚しくスピーカーから聞こえていた……

 

 

 緊急編成された艦隊から報告が入ったのは、それから20分後のことだった。

 

「ロデニウス大陸が消えている……!? やっぱりか……」

 

 嫌な予感が当たったことを悟り、堺は嘆息した。しかし同時に、とある可能性をも考え付いた。

 

(そういえば、水平線の遠さが変わった、という報告がないな。魔信も繋がらないだけで普通に使えている……ということは、もしや今回は別の星に飛ばされたって訳ではないのか? でなきゃ、ロデニウス連合王国がある世界の魔信がそのまま使える、なんてことは考えにくいか…。

こうなった以上、今タウイタウイが世界のどの辺にあるかを知るには、別の方法を考えるしかないな)

 

 そうなると、やるべきことは1つである。艦娘たちを集めて艦隊を編成し、タウイタウイ島周辺の海を調べる必要がある。同時に、脚の長い偵察機を駆使しての航空偵察も重要だ。

 

「出撃中の艦隊には、そのまま西へ70浬ほど進め、と伝えてくれ。そこまで行って何も見つからなければ、一度帰還してもらう」

「了解です」

 

 "大和"が通信を送り始める傍ら、堺は次の艦隊編成を考え始めた。

 西の方角の情報は少し入ってきたから、残る3方向にも同様の規模の艦隊を繰り出し、周辺の状況を探る必要がある。誰をどの方向へ送るべきか。

 と、その時、提督室の電話が鳴った。ベルの鳴り方からして内線である。

 

「提督室、どうぞ?」

『提督!』

 

 堺が受話器を取った瞬間、"(くし)()"の声が飛び出してきた。

 

『第1レーダー塔、感あり!』

「なに!?」

 

 第1レーダー塔は、島で最も高い位置に設置された、対空レーダーを装備した監視塔だ。そこに感があったということは、飛行している何かをレーダーで捕捉したということである。

 

「よく分かったな?」

『いや、たまたま私がレーダーを点検している時に反応したもので……』

「了解。反応の諸元は?」

『泊地からの方位5度、距離200浬、高度5,000メートルです! 反応の飛行速度はおよそ時速400㎞、大きさから見て航空機と推定されます!』

「航空機だと!?

分かった、飛行場に緊急発進(スクランブル)を下令する。そのままレーダーの監視を頼む!」

『了解です』

 

 新たな情報が入ったのであった。

 

「第203防空隊、直ちに発進。発進後は、島から見て方位(ベクター)5、距離(レンジ)37、高度(エンジェル)5の空域を目指せ」

 

 命令は迅速に伝えられ、程なく滑走路を蹴飛ばすようにして2機の「F-104G スターファイター」が飛び立っていった。

 しかし、スクランブルから5分後。

 

『不明反応、レーダー走査圏外に脱しました。探知不能です』

「……了解」

 

 一歩遅く、航空機と思われる存在に逃げられてしまったのだった。

 

「スクランブルした飛行隊には帰還命令を出してくれ」

『分かりました』

「それと、今から艦隊編成を考え直さなきゃだな……くそぅ、落ち着いて朝飯も食えやしない」

 

 慌ただしいタウイタウイ泊地の朝であった。

 

 

 事態が発覚してからおよそ2時間後。

 ロデニウス大陸を確認すべく西方へ出撃した艦隊は、無事に全員が帰投した。だが、彼女たちの報告によってロデニウス大陸が消滅したことが確認され、タウイタウイ泊地は厳戒体制が敷かれている。依然として自分たちが世界のどこにいるのか分からない上に、食糧や資源の支援が期待できなくなったためである。

 

(脚の長い「(さい)(うん)」を飛ばして周囲の状況を探っているが、今のところ何か見つけたという報告はない……か。もっと先に脚を伸ばすべきか?

「二式大艇」なら、「彩雲」より脚が長いから、さらに遠方の情報を集められるはず。ちょっと飛行プランを検討するか……)

 

 と、堺が頭を捻っていたその時だった。

 

「彩雲3号機から緊急報告!」

 

 無線機と格闘していた"大淀"が、声を上げたのである。

 

「何か見つけたか!?」

「はい! 『国籍不明ノ艦隊見ユ。位置、《タウイタウイ泊地》カラノ方位5度、190浬。数ハ3、巡洋艦2、戦艦1ト認ム』とのことです!」

「艦隊か!」

 

 明らかに文明の産物である物が見つかったのだ。それも巡洋艦に戦艦となると、相手には相応の国力・技術力があるらしい。

 これは願ってもないチャンスだ。もしかすると、相手方からの食糧や資源の融通が期待できるかもしれない。

 

「よし、迷っている暇はないな。神が垂らした()()の糸と信じよう。

出撃準備だ! 北方への偵察に出す予定だった艦隊を投入する。それ以外の子は全員、非常体制で待機!

それと念のため、『スターファイター』を装備する基地航空隊にスクランブルを下令せよ。1個飛行隊4機で良い、装備は対艦兵装とせよ」

「分かりました!」

 

 "大淀"が召集をかけ始める傍ら、堺はそばに控える"大和"を振り返る。

 

「大和、これは俺が出るべき案件だ。留守を頼む」

「分かりました。何があっても、ここを護り抜きます」

 

 覚悟の籠った"大和"の瞳を見て、堺は安心した。背中を預けられる仲間ほど頼もしいものはない。

 

 

 しばらくの後、タウイタウイ泊地から十分数隻の艦艇が出撃した。泊地を出た後に北に針路を転じ、発見した不明艦隊へと向かう。

 編成は戦艦「アイオワ」、航空戦艦「()()」、航空母艦「サラトガ」「瑞鳳」、重巡洋艦「摩耶」「(ちょう)(かい)」、軽巡洋艦「(じん)(つう)」、駆逐艦「(はつ)(かぜ)」「雪風」「(あま)()(かぜ)」「(とき)()(かぜ)」「朝霜」「(しま)(かぜ)」である。堺は「アイオワ」に座乗していた。

 よく見ると、艦隊のメンバーには「幸運な」子が多い。これは堺なりのある種の神頼みである。

 また、艦隊の出撃と時を同じくして、4機の「F-104G スターファイター」が対艦兵装を抱えて飛び立ち、北方へと向かっていった。

 

 そして、泊地を出港して約30分後。

 

「スクランブルした飛行隊から入電しました! ですが、それが……」

 

 報告が入ってきたのは良いが、通信長妖精が何故か言い淀んでいる。

 

「怒ったりしないから、正直に言いなさい」

 

 "Iowa"に命じられて、どうやら腹を括ったらしい。

 

「報告によれば、『艦隊ハ《イージス艦》型駆逐艦2隻、戦艦1隻。全テ灰色ニ塗装サレタリ』とのことです!」

「何だと!?」

 

 堺は思わず叫んだ。

 転移前の世界と転移後の世界が同じ世界線のものだとすれば、この世界は、現時点で最も進んだ技術を持つ国であっても第二次世界大戦頃の技術しかない。そんなところにいきなりイージス艦が現れるのは、いくらなんでもおかしすぎる。

 

「イージス艦だと!?

どういうことだ!? そんな軍艦を運用する国があるなんて聞いたことないぞ!」

「私も疑問に思いました。ですので索敵機に問い直したのですが、『見間違イニ非ズ』とのことで……」

 

 通信長妖精も困惑気味である。

 

「ふむぅ……分かった、ひとまず信じるとしよう。

おそらくだが、もうすぐ接触するはずだ。全艦に戦闘配置を発令、但し別途指示あるまで発砲は厳禁とする。向こうと平和的に接触できるなら、それに越したことはない」

「Okay! 総員、対水上戦闘用意!」

 

 "Iowa"の号令と共にブザーが鳴り響き、妖精たちが一斉に持ち場へと走り出した。

 

 

 30分後。

 

「あれか……」

 

 水平線付近に見えてきた灰色の艦影を3つ認め、堺は双眼鏡を手に取った。

 大型艦が1隻、両脇に護衛と思われる小型艦を従えて接近してくる。2隻の小型艦は、遠目にはイージス艦のそれを思わせる幅広の艦橋を持っていた。だが、堺の知るどのイージス艦とも、艦影が一致しない。

 

「イージス艦なんぞ持ってるってことは、結構近代的な国ってことだな。多分ミサイルもあるだろう……レーダー、相手からの射撃レーダー波の照射はないか?」

反応無し(ネガティブ)! 索敵レーダー波と思われる電波は受信していますが、射撃レーダー波や通信波は探知しておりません!」

「了解した」

 

 緊張感が「アイオワ」艦橋を支配する。

 

「どうなることやら……」

 

 と、堺が呟いた、その時。

 

『こちら朝霜! 提督、聞こえるか!?』

 

 無線機から"朝霜"の叫び声が飛び出してきた。

 

「こちら提督。どうした?」

『海中に機関音と思われるノイズだ! だが音がかなり大きい! アクティブソナーの使用許可をくれっ!』

「ネガティブ、アクティブソナーは許可できない。相手に敵対行動だと取られる可能性がある。パッシブソナーにて索敵を行え」

『チッ……しょーがねーな。分かった。

目標だが、かなり大きいと思うぜ。多分だけど……大きさだけで言えば原子力潜水艦、いやそれ以上かな』

「何だと?」

 

 堺の片眉がつり上がった。

 

「原潜でそんなにやかましい、なんてことはないだろ……」

『いや、現にそんな音なんだよ』

 

 同時に"五十鈴"からも同じ報告が上がってくる。

 パッシブソナーを起動しているのは現状2人だけだ。そのため、本当にやかましいのか確かめるべく、堺は他の艦娘にもパッシブソナーの起動を命じた。するとどうだろう、全員が同じ返答である。

 

「ふーむ、こりゃマジで何かデカい奴がいるな。しかも潜ってる奴か……そりゃ航空偵察じゃ分からんわな」

 

 と堺が呟いた時である。

 

『提督、不審な水中音の高まりを確認! 速度を上げ上昇してくる!』

 

 "五十鈴"が報告してきた。

 その直後、艦隊前方の海面が大きく盛り上がる。そして、

 

「何だありゃ……! せ、戦艦だと!?」

 

 堺は思わず叫んだ。

 なんと、海中から非常に巨大な艦が飛び出してきたのだ。その全長は、どれだけ少なく見積もっても3,000メートルは下らないだろうという、途方もない大きさである。砲口径60㎝以上はあるだろう巨大な五連装砲を多数搭載しており、戦艦であることは間違いないだろう。

 あまりにも桁外れに大きいため、堺と艦娘たちにしてみれば、スターウォーズの「インペリアル級スター・デストロイヤー」でも現れたような感覚である。

 

「おいおい嘘だろ! 何だよあの大きさは…!

そりゃあパッシブソナーにデカい反応が入るのも道理だわ……!」

「Wonderful! Big one!」

 

 流石に衝撃的すぎて、堺も"Iowa"も一瞬絶句した。しかし堺はすぐに我に返り、すばやく思考する。

 

(仮にアイツが敵だとしたら…勝てるか? いや無理だな。アイオワのハープーンならワンチャンあるかもしれんが、それ以外の子は鎧袖一触に撃破されるだけだろう。もし敵なら、このアイオワを盾にして、他の子には全力で逃げてもらうしかないな。それでも何人生き残れるか……)

 

 そう考えつつ、堺は指示を飛ばす。

 

「ひとまず、相手の出方を見る。前方の巨大艦に無線で呼び掛けろ。内容はこうだ。

『こちらロデニウス連合王国海軍第13艦隊・戦艦アイオワ。貴艦隊は我が方の領海に進入しようとしている。貴艦隊の所属並びに航行目的を伝えられたし』。

大陸共通語と英語で呼び掛けろ」

『了解、送信します。って、英語ですか?』

「ああ。念のため、前世界の言語もひとつ試してみる」

『了解です』

 

 CICに詰めている通信長妖精が、無線電波を打ち出した。

 

「それと念のため、火器管制レーダーを入れろ。あのデカブツにロックオンしておけ。

ハープーン発射準備!」

 

 一通りの指示を出してしまうと、あとはお祈りくらいしかすることがない。

 

「さて、お相手さんがどう動くやら……」

 

 堺は、期待と不安をない交ぜにした視線を前方の巨大艦に投げかけた。

 すると3分後、

 

『射撃レーダー波を探知! ロックオンされたと思われます!

それと、前方の巨大艦より通信波を受信!』

 

 CICから報告が上がってきた。

 

『これは、大陸共通語です!

読みます。「こちら大日本皇国海軍・戦艦『日ノ本』。我が方に敵対の意思無し、貴艦隊との接触、及び国交を含む交流の開設を希望する」。以上です』

「何!?」

 

 堺は飛び上がるほど驚いた。

 

(おい嘘だろ? 今お相手さんは「日本」と名乗らなかったか!? しかも「大日本皇国」だと!? 帝政が続いてんのかよ!!

ってことは、この「日本」と、俺が知ってる日本は別物か!)

 

 まさかの事態であった。

 

「お相手さんの話は分かったが……どうしよう。うちから向こうに行くなんて、なかなかキツいぞ、ヘリとかないしな……」

 

 そこへ再度、相手から通信が入ってくる。

 

『相手から新たな入電。「回転翼機により貴艦隊に代表団を送り、交渉の席を設けることを希望する」とのことです!』

「向こうから来るのか?」

 

 正直なところ、堺からすると願ってもない話である。

 

「よし、分かった。お相手さんに返信しろ、『貴軍の回転翼機の着艦を許可する。戦艦アイオワの後部甲板に降りられたし』と送れ」

『了解!』

 

 通信を送らせるや、堺は無線のチャンネルを艦隊内無線(フリート・イントラ)に変更するよう指示した。そして無線機に声を張り上げる。

 

「提督より全艦、こちら堺。これより相手艦隊の代表者と接触する。万が一に備えて全周警戒を続けろ。そしてもし、相手との交渉が決裂し武力衝突となった場合には……俺を見捨ててでも泊地に撤退せよ。これは最優先命令だ」

 

 提督というものは、こういう時にきちんと方針を明確にしておかねばならないのである。味方の被害を最小限に減らすためだ。…たとえそれが、提督自身を見捨てるようなものであっても。

 

「巨大艦より回転翼機の発進を確認。機数1!」

『CICより艦橋。射撃レーダー波の照射が消えました』

 

 少しして、その報告を受け取った堺は1つ頷いた。

 

「よし、こっちも火器管制レーダーをオフにしろ。

アイオワ、お相手さんの出迎えを頼む。会談は艦長執務室を借りるぞ」

「Okay、任せて!」

 

 これからどこの馬の骨(悪い言い方をすればこうなる)とも分からぬ者たちと出会うというのに、非常に気さくな様子で返事をし、"Iowa"はあっさりと艦橋を出ていった。

 まあ、堺も何の根拠もなしに任せた訳ではない。彼女は自身の筋力として21万馬力のパワーを出せるため、そう簡単には制圧されないだろうという打算である。

 

「大日本皇国とか名乗ってたが、ちゃんと話が通じる人々であれば良いんだが……」

 

 

 さらに少し時間が経過し、ついに"Iowa"が大日本皇国の代表者を連れてきた。

 艦長執務室に入ってきたのは2人のヒト族の男性。片方は堺より少し身長が高く、ざっと180㎝くらいだろうか。身体の線は細いが、黒い軍服に包まれた身体はつくべき筋肉がきっちりついていることが、堺には一目で分かった。ツーブロックの黒髪と何とも野生味溢れる顔付きをしており、女性受けの良さそうな感じがある。

 もう片方は紺色のスーツ姿で眼鏡をかけた、身長170㎝後半くらいの男性(髪は黒髪のモダンショート)だ。体つきは中肉程度で、こちらはおそらく軍人ではないだろう。理知的で人当たりの良さそうな印象がある。

 

(こちらのスーツの人は、多分お役人か外交官ってところかな。こっちと交流したいとか言ってたし)

 

 そう考えつつ、堺は自己紹介を行った。

 

「戦艦『アイオワ』へようこそお越しくださいました。ご足労いただき、ありがとうございます。

私はロデニウス連合王国海軍・第13艦隊司令官、堺 (しゅう)(いち)と申します。本日はよろしくお願いいたします」

 

 すると、軍服の男性が口を開いた。

 

「こちらこそはじめまして。私は大日本皇国統合軍総司令長官、(かみ)() (こう)(ぞう)と申します。よろしくお願いします」

(ちょい待て待て!? 軍のトップじゃねえか!

そんな大物が来るなんて聞いてねえぞ!? というか、そんなの予想できるかよ!)

 

 のっけから凄まじい衝撃を受ける堺。

 

「私は外交官の(かわ)(やま) (しん)()(ろう)と申します。堺司令、お会いできて光栄に思います」

 

 スーツ姿の男性は、堺の見立て通り外交官だった。

 

「神谷様に川山様ですね。改めてよろしくお願いいたします。

それで……」

 

 と堺が切り出しかけた時、神谷が「本題に入る前に、少しよろしいでしょうか?」と尋ねた。

 

「はい、何でしょう?」

「その、私たちをここに案内してくれた彼女なのですが……」

 

 言いながら、神谷はちらっと"Iowa"に視線をやった。

 

(ああ…あれで艦長って本当なのか、とか言われるパターンだなこれ)

 

 と思った堺だが、飛び出してきた言葉は意外なものだった。

 

「あの、本当に彼女は『アイオワ』という名前なのですか?」

「へ?」

 

 思わず素の反応が出てしまう堺。

 

(どういう意味の質問だ、今のは? まあ、あれが彼女の名前であるという以外に答えようがないんだが…)

「間違いとかではないですよ。アイオワというのが、本当に彼女の名前なんです」

 

 堺がそう答えた瞬間、神谷が急に前に乗り出しながら叫ぶように言った。

 

「そ、それじゃ、彼女は艦娘だということですか!?」

「ちょ、浩三!?」

「な!?」

 

 こればかりは、堺も仰天するしかなかった。

 

「な、なぜ艦娘なんて存在をご存知で……?」

「ええと、少し信じがたい話かもしれませんが……実は大日本皇国でも、艦娘という存在が知られているんです。といっても実在する訳ではなく、二次元……ゲームの中の存在なのですが」

「え?」

 

 にわかには信じがたいが、どうやら神谷は艦娘に関して何かを知っているらしい。

 ちなみに川山は何か言いかけたようだが、堺と神谷のやり取りが一気に進んだのを見て声をかけるタイミングを逃したらしい。

 

「ちょっと失礼します」

 

 そう言って神谷はスマートフォンを引っ張り出した。

 

(歴史の教科書で見たことのある物が出てきたな…スマホの初期型の実物なんて、初めて見るよ)

「これをご覧いただきたい」

 

 神谷が示した画面には、確かに"Iowa"が写っていた。指輪が一緒に表示されているところから見て、どうやらケッコンした時のスクショらしい。

 

「な、これは…!? まさか、ゲーム内でケッコンカッコカリした時のスクショですか?」

「その通りです。こんな感じで、私たちの知る艦娘はゲームの中の存在なのです。まさか、実物に会えるなんて……!」

「なんとまあ、そんなことが…」

 

 とんだ偶然もあったものである。

 

「まさか艦娘がゲームの中だけの存在とは……。そんなことがあるなんて…(さい)(おう)(うま)、とはよく言ったものですね」

「全くです。ちなみに堺さんは、嫁はどなたですか?」

「私ですか? "大和"一筋ですよ」

「大和か…! 良いですよね彼女も、まるで日本人が抱くイメージそのものを具現化したような存在でしょう?」

「全くもって同意しますよ」

 

 そこへ、半ば置き去りにされかけていた川山が割り込んだ。

 

「ちょっと待ってください堺さん。今、大和について『日本人が抱くイメージを具現化した』という言葉に同意しましたね?

ということは、もしや貴方は日本人ですか?」

(さすが川山さん…あの一言でバレたか)

「降参です川山さん。あの一言だけで気付くとは、さすがですね。

最初に『ロデニウス連合王国』と名乗りましたが、私自身は日本人です。と言いましても国名は『大日本皇国』ではなく『日本国』ですよ」

「国名が違う…? それではもしや、いわゆるパラレル・ワールドでしょうか?」

「おそらくそうでしょう。そうでなければ、似て非なる国が2つも揃うなんて考えられません」

 

 相手が『大日本皇国』と名乗っていた訳が、これで分かった。

 ともかく、アイスブレークとしては十分であろう。互いに相手を事実上の同国人だと確認できたことで、信頼関係の構築がずいぶん楽になったはずだ。

 

「事実上同じ国同士となりますと、『国交の開設』というのも些か妙な感じになりませんか、堺さん?」

 

 川山が本題を切り出した。

 

「確かにそうですね。ただ、書類上は『新たな国と国交を開設した』とすることになるのではありませんか? その方がいろいろと処理が楽でしょうし、それに私は『ロデニウス連合王国』と名乗ってしまいましたから、公式の通信記録にそれがばっちり残っているでしょう」

「確かに……では、そういう形にしましょう。そうなりますと、国交開設後は食糧支援と資源の支援が必要なのではありませんか?」

「実際、それで悩んでいたところです。私の視点から言えば、ロデニウス大陸が突然消えてしまった訳ですから、食糧と資源の供給元が消えたも同じなのです。このままでは私自身と、艦娘たち総勢約200名、それに妖精たちが全員立ち枯れとなるでしょう。それだけは避けたいところです」

 

 実際、このままではタウイタウイ泊地は立ち枯れの運命を免れない。ならば国号を変更する羽目になってでも、生き残る途を取るべきだろう。

 

「では、国交を仮開設するという形にしましょうか。

食糧と資源に関してはこちらから支援する、ということでいいか、浩三?」

 

 川山の最後の言葉は神谷に向けられたものである。

 

「いいんじゃねーかな。多分、(けん)()(ろう)も事情聞いたらOKするだろ」

「すみません、健太郎…とはどちら様でしょう?」

(いっ)(しき) 健太郎は、大日本皇国の総理大臣ですよ。私たち2人とは幼なじみなので、食糧と資源の支援については二つ返事でOKしてくれるでしょう」

「それを聞いて安心しました。ただ、こちらとしてもただで支援を受けるばかり、というのも申し訳ないですね。かといってこちらから輸出できそうなのは大半が時代遅れの工業製品ばかり…ん?」

 

 この時、堺はピンときた。

 軍艦や回転翼機を見る限り、大日本皇国の技術力は疑うべくもない。堺たちが以前いた、西暦2199年の地球にも匹敵するだろう。

 だがおそらく、その突出した技術力故に周辺国への技術供与に関しては、かえって苦労している可能性がある。今からレシプロ機の製造方法なんざ復習しようとしても、無駄に金がかかることになるだろう。それならば…。

 

「川山さん、少々確認したいのですが、大日本皇国は周辺の各国と国交を有していますよね?」

「はい」

「それらの周辺諸国に、技術供与ってしていますか?」

「ええと……」

 

 少し考えた後、川山は口を開いた。

 

「正直なところ、(なん)()している状態です。何分にも我々からすると、この世界の国々はかなり昔の技術しか有していませんからね。そうした技術レベルに合わせるのに苦労しているところです」

「それでしたら、食糧や資源の提供の見返りとして、こちらから支援させていただきたく存じます。見ての通り我々はレシプロ機の製造や技術伝授はお手のものですし、陸軍の装備も火縄銃から自動小銃まで対応可能です。戦車も八九式中戦車なんて代物までありますし。

また、大日本皇国に対しても輸出できそうなものが一部あるんですよ」

「ほう、どんなものでしょうか?」

「例えば、今神谷さんが見せてくださったスマホですが、それが厚紙くらいの薄さになり、紙のように丸めたり折り畳んだりできる…と言ったらどうでしょう?」

「何ですと?」

 

 さすがの大日本皇国にも、丸められるスマホなんて物はない。

 そう、こうした技術支援にこそ、自分たちの生き残る可能性がある、と堺は踏んだのだ。どうやらそれが当たったらしい。

 

「これは一本取られましたな。

どうする浩三、丸められるスマホなんて初耳だぞ」

「確かにな……。

よし、とりあえずこれで本土に一度持って帰るか? 閣議にかけて検討しなきゃならんだろ」

「そうだな。

ということで堺さん、ひとまずこの案件を本土まで持ち帰り、検討したいのですが、よろしいでしょうか?」

「構いませんよ、こちらも生き残る途を見つけねばならぬ身です。色よい返事を期待しております」

「それと、現在のタウイタウイ泊地の食糧事情は大丈夫ですか? 必要ならばすぐにも輸送船を手配しますが」

「今の備蓄なら1週間は保つと思います。緊急に必要というわけではありませんが、なるべく早めにお返事をいただけるとありがたいです」

「分かりました。それでは、今回はこの辺でということで…」

「こちらこそ、ありがとうございました。ああそうだ、訪問してくださった御礼に、こちらをどうぞ」

 

 堺は、傍らの机に置いていた箱を開けて見せた。中身は"()(みや)"の(よう)(かん)2本である。

 

「間宮の羊羮です。当泊地自慢の甘味ですよ」

「おお、これはありがとうございます。いただきます」

 

 こうして、大日本皇国とのファーストコンタクトは終了した。

 

 

 その後、艦隊を連れて泊地へ帰還した堺は、講堂に艦娘たちを集めて説明を行った。どうやら生き延びられる可能性が出てきたと分かり、泊地内には喜びの声が(あふ)れたものである。ただ、「大日本皇国では、艦娘は二次元の中にしか存在しないらしい」と堺が話した時には、艦娘たちの多くは変な顔をしていたが。

 

「さて、これでどうにか首の皮は繋がったかな。とりあえずは向こうの検討結果待ちか」

 

 説明会の後、提督執務室に戻った堺は、手元の紙切れを見詰めてそう呟いた。そこには複数の数字が書かれている。

 それは、別れる直前に神谷が渡してくれた、軍用無線の周波数帯のメモだった。連絡手段が必要だろうということで、割り当ててもらったのである。

 また同時に、タウイタウイ島の北方300浬の位置に大日本皇国の本土があることも説明された。300浬なら、艦艇でも往復に苦労しない距離である。どうやら比較的近くにあったようだ。

 

「それにしても、最後の別れの時に釘を刺してくるとはな……向こうもまだ、完全には信じてないってことか。まあ、仕方ない話だわな」

 

 実は会談終了後、後部甲板まで移動する最中に神谷は堺にこう言ったのだ。

 

「うちの部下には血の気の多い奴が多いんですよ。普通に敵艦に乗り込んでそのまま制圧するような部隊です。しっかり手綱は握っとかないと」

 

 つまり、あの「アイオワ」の弾幕を突破して白兵戦を仕掛け、そのまま制圧してしまうような連中がいるのだ。それと同時に、そんな部隊の存在を匂わせたということはつまり、こちらに対する警戒がまだ完全には解けていないことも示しているのだろう。

 

(となると、独立第一飛行隊のUFOによる隠密偵察も少々危ういな…。何なら向こうは人工衛星持っていて、格納庫から飛び立とうとするこっちのUFOも捉えているかもしれん。

少なくとも今は、迂闊な真似は止した方が良いな)




この話の内容に察しがついた方もいるでしょう。

…そう、正月に続いてまたコラボです。
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