鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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第三次バルチスタ沖大海戦の第2話目は、主にグラ・バルカス海軍西部方面艦隊の視点でお送りします。



197. ムー大陸西方大海戦 eins 第三次バルチスタ沖大海戦(弍)

 中央暦1643年12月3日 午前9時45分、パガンダ島西方400浬地点。

 海原を騒がせて、何隻もの鋼鉄製の軍艦が海を東へ進む。それらの軍艦のマストには、白線で十文字に区切られた赤い円を描いた旗が、潮風に翻っていた。グラ・バルカス帝国の国旗である。

 グラ・バルカス帝国海軍西部方面艦隊は、二手に分かれて海を東へ進んでいた。その上空には、何機もの戦闘機が飛び回っている。上空直掩機である。

 艦隊の目的は、ムー大陸西岸の制空権・制海権を再奪取すること。そのためには、ムー大陸西部沖に陣取るロデニウス艦隊の排除が必要不可欠である。

 西部方面艦隊を率いるガルディオ・ガリデー中将は、身長は161㎝と低いが、体育会系熱血教師を思わせる黒い短髪に筋肉質のがっちりした身体を有している。そのため、その積極果敢で攻撃的な指揮ぶりと相まって「猪武者」と呼ばれることもある。

 そのガリデーは、ヘルクレス級((なが)()型に酷似)戦艦「アルファ・ケンタウリ」に座乗し、第1任務部隊を率いている。もう片方の第2任務部隊は、副司令のジョニー・ハーパー少将に任せている。

 発見したロデニウス艦隊に向けて、威勢良く第一次攻撃隊を進発させたガリデーであったのだが…

 

「なに!? 敵艦隊の対空迎撃があまりに熾烈で、攻撃隊はろくに敵艦に損害を与えられぬままほぼ全滅だとぉっ!?」

 

 第一次攻撃隊の臨時指揮官ダン・クールビット少佐から送られてきた報告を聞かされ、愕然としていた。まあ無理もない。

 西部方面艦隊の航空部隊は、グラ・バルカス帝国海軍の中では東部方面艦隊や特務軍艦隊に並んで練度が高い。それゆえ、敵空母の1隻や2隻くらいは軽く仕留めてくれるだろう、とガリデーは思っていたのである。

 それが蓋を開けてみれば、まさかの「戦果僅少、かつ攻撃隊は壊滅状態」であった。

 

「空母群からの報告をまとめますと、帰還機は戦闘機31機、爆撃機22機、雷撃機に至っては全空母合わせてたった9機しか帰還していません。つまり、第一次攻撃隊は過半数の機体を失い、壊滅状態です。それに引き換え、敵艦隊への攻撃では護衛艦1隻に爆弾命中を確認していますが、確実な戦果はそれだけです。敵の空母には文字通り、指1本触れられませんでした。

攻撃隊からの報告によれば、敵艦隊は高角砲のような小口径砲にまで『焼空弾』を全面配備し、これまでに我が艦隊が対峙した敵とは比較にならないほど激しい対空弾幕を張ってきたようです。数少ない爆撃隊や雷撃隊の生き残りのパイロットは、『小隊規模の編隊の維持すらままならなかった』『生きて帰れたのは奇跡だと思う』『あれに飛び込むのは自殺志願者だけ』などと報告しています」

「それほどとは……」

 

 通信参謀マーティ・ガルーダ中佐の報告に、ガリデーはそれだけ言うのが精一杯だった。

 パイロットたちは皆技量が高く、勇敢な戦士である。その勇敢な戦士たちがこんな弱音を吐くほど、敵の対空射撃は苛烈だったというのか。そうだとすれば、ロデニウス連合王国の艦隊は、これまでと同じ「蛮族の二流海軍」などという枠組みには到底入らない。むしろ、これまでグラ・バルカス帝国軍にはなかった"格上の相手との戦闘"になるだろう。

 

 …そんな考えは別として、ガリデー率いるこの艦隊の目の前に、脅威が迫っていた。

 

「ピケット駆逐艦『クラズ』から入電! 『我、対空レーダーにて敵編隊を探知。艦隊より2時の方向、距離95㎞、高度4,500メートル、数は70機以上』!」

 

 通信士が、キャニス・ミナー級(吹雪(ふぶき)型に相当)駆逐艦「クラズ」からの報告を伝えてくる。敵の攻撃隊が飛来したのだ。

 

「敵機か……直掩隊を迎撃に向かわせろ!」

「はっ!」

 

 ガリデーの命令が下ってしばらくすると、レシプロエンジンの轟音が東へと消えていった。

 西部方面艦隊第1分艦隊は、直掩機として「アルコル」20機、「アンタレス」38機を上げている。敵機の方が数が多いが、戦闘機の数はおそらくその半数程度、多くても40機程度のはずだ。ならばまだ、やりようはある。

 およそ10分後、ガルーダ中佐が慌てたような声で報告した。

 

「直掩隊から報告!

敵は約70機、機体は全て『ウラノス』と『アンタレス擬き』だそうです!」

「戦闘機ばかり70機だと?」

 

 航空参謀キース・トライバル大佐が驚いたような声を上げる。ガリデーも目を見開いた。

 機動部隊を攻撃するのに戦闘機だけを出しても、意味がない。直掩機を落とすことはできても、艦艇に有効なダメージを与えられないからだ。

 

 ……直掩機?

 

「してやられたっ!」

 

 瞬間的に状況を悟り、ガリデーは提督席を蹴倒しかねない勢いで立ち上がって叫んだ。

 

「奴らの狙いは直掩機だ!

最初に戦闘機だけを送り込んで直掩機を掃討し、その後に本命の攻撃隊を出してくるつもりだ!」

 

 その言葉で、トライバル大佐がはっとした顔をした。

 

「そうか、ロデニウスの連中は『アルコル』の性能を知っているから、わざわざ戦闘機だけを繰り出して絶対に『アルコル』を落とそうと…!」

 

 以前に中央第2艦隊がロデニウス艦隊と交戦した際、「アンタレス改」もとい「アルコル」の性能の高さが実戦で証明されている。「アルコル」はロデニウス軍の戦闘機に対しても十分戦えることが分かったのだ。

 逆にいえば、この交戦の際にロデニウス軍は「アルコル」の性能を推定し、数で圧殺するという手段を思い付いたのだろう。

 

「直掩隊に、引き返すよう命じますか?」

「いや、もう遅い。彼らは既に交戦を開始しているだろう」

 

 ガルーダの質問に、ガリデーはため息混じりに答えた。

 もはやこうなった以上、直掩機が1機でも多く生き残ってくれることを祈るだけだ。

 

「ロデニウスの連中も頭を使うもんだな…くそっ!」

 

 出し抜かれた悔しさに、ガリデーは提督席のひじ掛けを握り拳でドンと叩いた。

 

 

 およそ20分後、敵機が退避し始めたとの報告が入り、それから15分ほどすると直掩隊が帰還し始めた。

 戻ってきた直掩隊は、悲惨なことになっていた。数が明らかに減っており、エンジンから黒煙を吐きながら飛んでいるもの、ふらついているものなど様々である。着艦を待つ間に力尽きて海面に墜落したり、着艦と同時に着陸脚が折れて胴体着艦してしまう機体すらある。

 飛行甲板に擱挫して動けなくなった機体は、作業員たちが無理やり飛行甲板の端まで引きずり、海中へと投げ落としている。

 

「どこのどいつだ! 『アルコル』なら『ウラノス』なぞ一捻りだ、なんて抜かした奴は!」

 

 機体を失ったのだろうか、パイロットの1人が甲板上で悪態を吐いている。

 集計の結果、敵「ウラノス」の撃墜破数はおよそ50機程度と弾き出されたが、帰投後に再出撃不可と判定されて海中投棄された機を含めると「アルコル」9機、「アンタレス」はなんと31機が失われ、パイロットは全部で30人が未帰還、5人が負傷して医務室に担ぎ込まれている。特に「アンタレス」はボロ負けであった。

 

「くそ、これからが本番だってのに、戦闘機と搭乗員をこれほどの数失うとは…やってくれる…!」

 

 ガリデーの歯噛みも無理はない。

 ロデニウス軍の策略により、西部方面艦隊第1分艦隊は直掩機の過半数を失ってしまった。まだ第二次直掩隊として温存された戦闘機が15機ほど残っているが、この数でロデニウス軍の攻撃隊を食い止められるか、と問われると不安が残る。

 ロデニウス軍も、数は少ないだろうとはいえ攻撃隊に護衛戦闘機を付けているはずだ。それを突破して爆撃機や雷撃機を叩けるかどうか。

 

「『クラズ』より報告!

『対空レーダーに感、敵航空部隊第2波が接近中。数は150機前後と推定』!」

 

 早くも、ロデニウス軍の第二次攻撃隊が迫ってきた。

 

「第二次直掩隊、迎撃に向かえ!」

 

 ガリデーの命令を受けて直掩隊が突撃していくが、その数は先ほどと比べて明らかに少ない。この数で果たして食い止められるだろうか。

 

(頼む、1機でも多く食い止めてくれ!)

 

 それが、ガリデー以下西部方面艦隊司令部の面々が共通して願っていたことだった。

 しかし現実とは、時として人の願いや希望を残酷な形で裏切るものである……それも、無慈悲に。

 

『こちら直掩隊! 一部の敵機の速度が速すぎる! 突破を許してしまった!

それと、水平線上に黒煙を発見。ピケット艦がやられたものと思われる!』

 

 直掩隊の隊長機から送られてきた報告に、ガリデー以下の西部方面艦隊司令部一同が落胆したのは言うまでもない。

 そして実はこの時、既に駆逐艦「クラズ」は沈没しかけていたのだ。どうしたのかというと、ロデニウス側の第二次攻撃隊を構成していた部隊の1つ「零戦62型(爆戦/(いわ)()隊)」8機が()(しゃく)な駆逐艦めがけて突進し、翼の下に抱えたロケット弾を次々と撃ち込んだのだ。

 まさか自分たちを狙ってくると思っていなかった「クラズ」乗員たちは、機首を向けて突進してくる敵機に対して慌てて応戦したのだが、時は遅く、彼らの対空砲の照準が合う前にロケット弾が飛んできた。

 無誘導のロケット弾であるため、命中率はさして高いとは言えなかったが、それでも8発もの100㎜HEロケット弾がまんべんなく「クラズ」に撃ち込まれた。艦橋に飛び込んで炸裂したロケット弾は、艦長以下首脳部の面々を瞬時に薙ぎ倒し、別のロケット弾が命中したマストは根元から折れて海面に落下し、主砲は1基が使用不能となり対空機銃も多数が損傷、それらの兵装に取りついていた乗員たちはその場で戦死するか、破片で身体を傷付けられて聞くに耐えない悲鳴を上げている。そして煙突に命中したロケット弾炸裂のエネルギーが、煙路を逆流して機関を傷付けた結果、「クラズ」は航行不能となり、消火活動もままならずに燃えながら沈没しかけていたのである。そしてロケット弾がマストを破壊した際に無線送受信用のアンテナも海没したため、味方に連絡が取れなかったのである。

 

 西部方面艦隊第1分艦隊が対空戦闘の準備を整えた頃、ロデニウス軍の攻撃隊がやってきた。

 水平線付近の空に突然、黒い雲のようなものが現れ、それがだんだんと近付くにつれて黒いゴマ粒の集団のような姿に変わっていく。

 

(敵機の数は多いな……だが、こちらには近接信管付き対空砲弾があるし、優れた対空戦闘能力を持つ新鋭のハレー級駆逐艦も4隻いる。そう簡単にやられはせん!)

「全艦対空戦闘始め!」

 

 頃合い良しとみて、ガリデーが命令した。

 直後、戦艦「アルファ・ケンタウリ」の主砲たる45口径41㎝連装砲が火を噴く。しかしそれより早く、敵機は幾つもの小集団に分かれ始めた。

 

「くそ! 奴らも分かってやがるな…!」

 

 舌打ちしてガリデーは呟いた。

 第二次バルチスタ沖大海戦で東部方面艦隊と戦った際に、ロデニウス軍は戦艦による近接信管付き対空砲弾の射撃を見たにちがいない。それを基に彼らは対抗手段を編みだし、実践してきたようだ。

 戦艦部隊が撃った対空砲弾が到達した時には、ロデニウス軍の攻撃隊はとっくに散開した後だった。もちろん、この対空射撃は何の意味もなさなかった。

 戦艦部隊の主砲は空振りに終わったが、ならばこれでどうだとばかり、駆逐艦や巡洋艦が搭載した主砲を撃ち、戦艦の高角砲もこれに加わる。近接信管付きの対空砲弾が爆発し、空に黒煙が漂い始めた。しかし……

 

「ちっ、密度が薄い!」

「ロデニウスの連中が分散したので、対空砲火もそれにつられて分散しています!」

「何てこった! これじゃ有効な対空射撃とは言えないぞ!」

 

 いつもなら空の色が変わるほどに撃ち上げられる対空砲は、今日に限って密度が薄い。ロデニウス軍の攻撃隊が分散して接近してくるせいで、対空砲火も分散してしまい、効果的な対空射撃ができていないのだ。

 敵機は1機また1機と被弾し、黒煙の尾を引いて墜落するか、空中で爆発しているが、阻止には到底足りない。西部方面艦隊第1分艦隊も必死に応戦したものの、敵機の接近を許してしまった。

 

「なっ、何だあれは…! あれが噂に聞く、我が帝国で構想中だという『高速航空機』か!」

 

 襲来した敵機の第一陣を見て、ガリデーは衝撃を受けた。

 敵機はプロペラを持っておらず、代わりに主翼の下に巨大な円筒形の機構を2つぶら下げている。そして、時速700㎞以上という高速を叩き出し、「アルコル」すら振り切って突っ込んできた。それに加えて…

 

「ば、馬鹿な! 爆弾が、向きを変えて追尾するだとっ!?」

 

 更なる衝撃を受けるガリデー。

 敵機が投下した爆弾は、なんと空中で向きを変え、何かに誘導されているかのように味方艦に向けて突っ込んだのだ。外れて海面に着弾し水柱を噴き上げる爆弾もあるが、何発かは味方艦に命中した。

 キャニス・ミナー級駆逐艦「カメレオファダリス」に、2発の爆弾が迫る。片方は発射母機が撃墜されたため外れたが、もう片方が艦体後部に命中。薄い装甲板を貫通して飛び込んだ爆弾は、なんと機関室まで達してから爆発した。その結果、心臓をめちゃめちゃにされた「カメレオファダリス」は大量の黒煙を吐き出しながら速度を落としていき、やがて力尽きたように停止した。魚雷発射管や主砲弾火薬庫への延焼は時間の問題であり、艦長はやむなく「総員退去」を発令した。

 (あき)(づき)型に生き写しの姿と性能を持つハレー級駆逐艦「ホームズ」にも、投下された「イ号一型乙無線誘導爆弾改」…通称「エロ爆弾改」が直撃した。しかも命中箇所は第2砲塔のすぐそばだったのが不味かった。目を覆ってしまうほどの強烈な閃光と、鼓膜を突き破らんばかりの爆発音が辺りを満たし、「ホームズ」の艦体を飲み込まんばかりの凄まじい火球が黒煙と共に立ち昇る。火球が収まった時には、「ホームズ」は艦橋のすぐ前で真っ二つに叩き切られており、鋼鉄製の松明と化している。機関部は何とか生きているが、第2砲塔より前部を喪失し、艦橋は全滅し、レーダーも測距儀も失われたときては、有効な戦闘など行えるものではない。

 レオ級(()()()型にそっくり)軽巡洋艦「ウヌクアルハイ」は、2発の「エロ爆弾改」に直撃され、激しく黒煙を噴き上げて燃え盛っている。中破以上の損傷を負ったのは明らかだ。

 

「くそ…!」

 

 ロデニウス軍に完全にしてやられたという事実を目の当たりにし、ガリデーが苦鳴にも聞こえる声を漏らす。彼の拳は強く握り締められ、爪が掌に食い込んで血が流れていた。

 だが、これはまだ序の口にすぎない。「高速航空機」に続いて、ロデニウス軍の艦爆隊が高度5,000メートルの空から分散して突入してきた。空母や戦艦には目もくれず、巡洋艦や駆逐艦に向けて逆落としに突っ込んでいく。

 無論、巡洋艦や駆逐艦もただ黙って狙われた訳ではない。向けられるだけの対空火器を高空に向け、激しい対空射撃を浴びせるだけでなく、舵を切って回避を試みる。さらに、狙われた艦の周囲にいる他の艦艇も対空砲の傘を差しかける。だがこれだけやっても、敵機は阻止しきれなかった。

 ハレー級駆逐艦「エンケ」は、対空射撃で1機の艦爆を撃墜し、さらに回避運動によって2発の爆弾をかわしたが、それが限界だった。突っ込んできた4機目の敵機から投下された爆弾が、艦体後部に命中して炸裂した。さらに2発目、3発目の爆弾が命中し、「エンケ」は黒煙を引きずりながら速度を落とし、やがて停止した。敵の爆弾による被害が機関室に及んでおり、戦闘どころか航行さえ不可能となったのは間違いない。

 キャニス・メジャー級(5,500トン型に相当)軽巡洋艦「タニア・アウストラリス」は、喰らった爆弾は1発だけだったが、その1発が命中したところは魚雷発射管だった。爆弾の炸裂と同時に4本の魚雷がまとめて誘爆し、一瞬にして艦上構造物の大半を薙ぎ払われた「タニア・アウストラリス」は、燃えながらそのまま沈没しつつある。

 

 そう、実はこれこそ堺の新たな策略「ガードブレイク戦法」である。

 これまでロデニウス第13艦隊は、「艦爆で敵機動部隊の護衛艦を叩き、その後艦攻で主力艦を沈める」という戦法を実施していた。それをブラッシュアップしたのが、この「ガードブレイク戦法」である。最初に戦闘機だけを送り込んで敵の直掩機を掃討し、その次に脚の速い艦爆隊を突入させて護衛艦を攻撃し、最後に対空火力が弱まったところに艦攻を突っ込ませて空母や戦艦を仕留める、というものであった。

 西部方面艦隊は、まんまとこの戦法に引っ掛かってしまったのである。

 

 艦爆隊の攻撃だけで既に複数の艦が撃沈破されており、西部方面艦隊第1分艦隊の環状陣形(輪形陣のこと)は大穴が開いて崩れかけているが、これだけで済むはずがなかった。

 ロデニウス軍においては、爆撃機の役割は敵の護衛艦の掃討である。では、護衛艦が掃討された後には何が来るか。

 考えるまでもない。魚雷を抱えた艦上攻撃機の出番に決まっている。空母や戦艦の下腹部を魚雷で撃ち抜き、撃沈に追い込もうというのだ。

 近接信管付き対空砲弾の死角となる超低空…海面から5メートルも離れているか怪しいというほどの空から、魚雷を抱いた艦攻隊が突撃する。その攻撃目標は空母だ。

 ジェット機がいるので察せられたと思うが、今西部方面艦隊第1分艦隊を攻撃しているのは、ロデニウス軍呼称「デスティニー」の攻撃隊である。つまり、攻撃隊の母艦は「(たい)(ほう)」や第五航空戦隊であり、したがって艦攻隊の陣容は第六〇一航空隊に加えて「(てん)(ざん)一二型((むら)()隊)」というトップエースを編成しているのである。

 西部方面艦隊の対空射撃により、艦攻隊にも犠牲が出る。第六〇一航空隊の「(りゅう)(せい)」の1機が、巡洋艦から放たれた大口径対空機銃の弾を浴びて右の主翼をへし折られ、あっという間に海面に叩き付けられる。「(ずい)(かく)」から発進した「流星改」の1機が、対空機銃の弾幕を避けようと高度を下げすぎ、海面に激突して飛沫に変わる。だが、西部方面艦隊が挙げた戦果はそれだけだった。

 護衛を突破して環状陣形の内側に踊り込んだ艦攻隊は、めいめい目標を決めて空母に肉薄していく。縦横に飛び交う対空弾幕がまた1機の艦攻を捉え、被弾した艦攻は空中で砕け散った。だが、残った機は全く怯む様子を見せない。

 最初に攻撃位置に達した「天山一二型(村田隊)」が魚雷を投下したのを皮切りに、ロデニウス軍の艦攻隊は狙った空母に向けて次々と魚雷を発射する。特に第五航空戦隊を成す「(しょう)(かく)」と「瑞鶴」は、甲板カタパルトを活かして艦攻1機あたり2本の魚雷を持たせていたため、単純計算で機数の2倍の攻撃力を持つという反則技を見せつけた。

 

「1機あたり2本の魚雷を持たせるだと!? そんなの反則だろうがぁぁぁ!!」

 

 雷撃を受けたアンドロメダ級((そう)(りゅう)型にクリソツ)空母「ティタウィン」の艦長は、迫り来る無数の雷跡を目の当たりにして、怒りと憎悪の籠った声で叫んだ。だが、それは文字通りの「負け犬の遠吠え」にしかならなかった。

 大慌てで切った面舵も間に合わず、「ティタウィン」は右舷にまんべんなく7本もの魚雷を受けて大破。恐ろしい勢いで海水が艦内を席巻したため艦の傾斜がみるみるうちに20度を超え、もはやどうすることもできないと判断されて「総員退艦」発令の運びとなった。

 その他、村田隊に狙われたカシオペヤ級(千歳(ちとせ)型そっくり)軽空母「ツィー」も、右舷に5本の魚雷を受けてしまい、しかもそのうち1本が発電機室の至近で炸裂して発電機をズタズタにしてしまったため、味方への被害報告も消火活動もろくにできなくなってしまった。やがて航空機用の燃料庫や爆弾格納庫に火が回り、「ツィー」は艦体を真っ二つにへし折られるほどの凄まじい爆発を起こして、艦長以下逃げ遅れた乗員共々あっという間に海面下に没した。

 ペガスス級(翔鶴型相当)空母「モノセロス」は辛うじて2本の被雷で済んだが、浸水により全速発揮は不可能となっている。無事だったのはアンドロメダ級の「アンドロメダ」だけだった。

 

「くそっ、何て奴らだ! たった1回の航空攻撃で、精強を謳われた我が西部方面艦隊の機動部隊が半壊するとは…!」

 

 血を吐くようなガリデーの叫び。それに被せるようにして、レーダー手の絶叫が響いた。

 

「対空レーダーに感! 新たな敵航空機編隊です!」

 

 

 この時、西部方面艦隊第1分艦隊に向かっていたのは、大きく上向きに折れ曲がった逆ガル翼と突き出た固定脚を有する、どこか古めかしい感じの航空機だった。その固定脚の付け根付近には、小さなプロペラのようなものが付いている。そしてその下腹部には、とんでもない大きさの爆弾が抱えられていた。

 先ほど、ロデニウス軍の艦爆隊は敵機動部隊の護衛艦の掃討が任務であると説明したが、実は例外がいる。その卓越した技量に裏打ちされた高い命中率と、抱えた爆弾の威力の高さによって、敵主力艦攻撃を任された例外的艦爆隊、それがこいつらである……「Ju87C改(Rudel Gruppe)」。

 艦攻並みの鈍足機を使用し、かつ重い荷物を抱えるが故に戦場への到着が遅く、しかし一度攻撃すればほぼ確実に敵の主力艦を葬れるという恐るべき実力を持つ「魔王軍団」が、やってきたのだ。

 

「いたぞ!」

 

 水平線上に立ち昇る黒煙を見つけ、隊長妖精"ハンス・ウルリッヒ・ルーデル"は舌舐めずりをした。その瞳はギラギラと輝き、まさに獲物を見出だした肉食獣そのものである。

 

「む、護衛隊が前に出るぞ!」

 

 後席に座るバディの妖精"エルンスト・ガーデルマン"が叫んだ。その言葉通り、これまで随行していた護衛…13機の「()(でん)(かい)()」が速度を上げ、前方へと飛び出している。

 今回の攻撃では、「紫電改二」はいずれも両主翼の下に100㎜HEロケット弾4発を装備し、対艦攻撃機として運用されている。ロケット弾は無誘導だが、そこは搭乗員の技量と「紫電改二」自体の高速によってカバーするつもりだ。

 先んじて突入した第六〇一航空隊や村田隊の攻撃によって、グラ・バルカス艦隊の輪形陣は大きく崩壊しており、主力艦・護衛艦問わず黒煙を噴き上げている艦が多い。これはつまり、各艦が使える対空火器が少なく、また有効な対空射撃が困難になっていることを意味する。実際、グラ・バルカス艦隊の対空射撃は、妖精ルーデルの予想に到底及ばないほど密度が薄かった。

 

「ふむ、たったこれっぽっちか…問題とせず攻撃に向かう」

 

 妖精ルーデルがそう呟いた瞬間、1機の「紫電改二」が至近で高角砲弾の炸裂を受け、胴体を真っ二つにされて墜落した。さらに、敵艦隊の対空機銃による迎撃でもう1機が散華する。だが、犠牲になったのはその2機だけだった。

 残りの「紫電改二」は3機の小隊ごとに分かれ、それぞれ駆逐艦に向けて突っ込むと、持ってきたロケット弾を遠慮なくぶちまけた。それが次々と駆逐艦に命中し、海上に新たな黒煙が沸き出し、ただでさえ薄かった対空弾幕の密度が一気に下がる。その時、海面の一角に巨大な火球が出現し、恐ろしい勢いで膨れ上がった。少し遅れて、妖精ルーデルの乗る「Ju87C改」のコクピットの風防が、びりびりと震えた。

 

(魚雷が誘爆したな)

 

 妖精ルーデルはそう確信した。

 実はこの時、ロケット攻撃を受けた駆逐艦4隻のうち、エクレウス級駆逐艦「スハイル」は魚雷発射管をロケットに直撃され、魚雷が誘爆して轟沈していた。その他の3隻も対空火器を破壊され、そのうち2隻は機関部に被害が及んで航行能力を大きく損なった。ロケット攻撃を受けた駆逐艦が、艦隊の隊列から次第に落伍していく。駆逐艦から噴き上げられる一条の黒煙が小さくなっていく様は、「置いて行かないでくれ」という駆逐艦の切なる叫びが無視されているような印象を与える。

 ろくに身動きの取れなくなった駆逐艦には目もくれず、シュトゥーカ隊は対空弾幕を潜り抜けてグラ・バルカス艦隊に殺到する。

 

「第1小隊、私に続け! 左前方にいる戦艦を潰すぞ!

2小隊目標、敵戦艦2番艦! 3小隊目標、無傷の敵空母! 4小隊目標、炎上中の敵空母! シュトゥーカ隊、突入を開始せよ!!」

 

 妖精ルーデルの命令が伝わり、シュトゥーカ隊は小隊ごとに散開し始める。それぞれ目標とした敵に向けて、その心臓を抉らんと鋼鉄の鉤爪を叩き付けるのだ。

 特に妖精ルーデルの機体は、ようやく試験配備された1.8トン徹甲爆弾を抱えている。上手く当てれば、敵戦艦の戦闘力を大きく削ぎ落とせるはずだ。

 

「よし、ここだ! 突入する!」

「大佐、頼みましたぜ!」

 

 妖精ガーデルマンの声に、妖精ルーデルはサムズアップで応えた。その直後、「Ju87C改」が逆さまになり、そのまま機首を下に向ける。空と水平線が上方へ吹っ飛び、目の前に海面と敵戦艦が見える。最初は巡洋艦くらいのサイズにしか見えなかった敵戦艦が、みるみるうちに大きくなる。

 

「敵はナガト・クラスか。相手にとって不足無し!」

 

 妖精ルーデルがにんまりと笑うと同時に、サイレンのような甲高い音が響き始める。「ジェリコのラッパ」とか「悪魔のサイレン」と呼ばれる、シュトゥーカ特有の風切り音だ。

 

「降下角度88度、ダイブブレーキ異常無し!」

「3,000! 2,800! 2,600!」

ウウウウウウーー!!

 

 まさに獲物を見つけた猛禽のように、「Ju87C改」はターゲットとした敵戦艦めがけて舞い降りる。その下腹に抱えられているのは、試製1.8トン徹甲爆弾。魚雷より多い炸薬を詰め込んだ、最強クラスの対艦兵装。

 敵戦艦は対空機銃も交えて必死に迎撃してくるが、不思議なことにルーデル機には1発も当たらない。

 

「2番機被弾!」

 

 後方からまばゆい閃光が射し込むと同時に、妖精ガーデルマンが叫び声を上げる。敵の対空砲火を受けて部下がやられたのだ。だが、妖精ルーデルは全くと言って良いほど意に介さない。冷徹なのではなく、失神直前の限界まで攻め込んでいるので周囲に気を配る余裕がないのだ。

 

「高度500!」

「投下ぁ!」

 

 投下高度に達すると同時に、妖精ガーデルマンも妖精ルーデルもありったけの声で叫んだ。

 機体の下で作動音がした時には、妖精ルーデルはあらんかぎりの力で操縦桿を引いている。どうにか「Ju87C改」は機体の立て直しに成功したが、そこはもう海面ギリギリの高度だった。あまりにも低すぎて、機体の後ろに細い筋状の引き波ができたほどだ。

 

「どうだ?」

 

 命中を確信していたが、それでも妖精ルーデルはそう尋ねた。返ってきた妖精ガーデルマンの答えは、半ば予想外のものだった。

 

「命中! ……あっ!」

「どうした?」

「ヒュウ、艦橋が派手に倒壊しやがった!」

 

 

 この時、妖精ルーデル直率のシュトゥーカ隊に狙われたのは、ヘルクレス級戦艦の「ハダル」だった。対空砲を放ちながら取り舵を切り、回避運動に徹していた同艦だったが、残念ながらツキに見放されていた。いや、"シュトゥーカ乗りの魔王"に見入られた時点でこうなることは必然だったのかもしれない。

 妖精ルーデルが投下した1.8トン爆弾は、あろうことか艦体前部に(そび)える艦橋に命中。射撃指揮所の床をぶち抜いた爆弾は、そのまま昼戦艦橋の床も貫き、さらに2フロアを貫通して爆発した。その瞬間、凄まじい爆風と衝撃波が荒れ狂い、艦長以下首脳部の面々は逃げる暇も与えられずに吹き飛ばされた。大抵は即死したが、中には中途半端に生き残ってしまい、全身を苛む火傷と身体に刺さった破片で苦しむ者もいた。だが幸か不幸か、彼らの苦しみもそう長くは続かなかった。というのは強烈な一撃を喰らった昼戦艦橋が倒壊し、右舷の対空砲を操作員ごと踏み潰した後に海中へと消え去ったからである。

 艦橋の倒壊と前後して、妖精ルーデルに後続していた6機の「Ju87C改」が次々と爆弾を1発ずつ投下。このうち4発が命中し、戦艦「ハダル」は主砲たる41㎝連装砲こそ無事だったものの、対空砲などはめちゃくちゃに破壊されてしまった。判定としては大破だろう。

 シュトゥーカ隊第2小隊(シュタッフェル)に襲撃された戦艦「アルファ・ケンタウリ」も、3発の爆弾を被弾。1発は艦首甲板に大穴を開けて揚錨機を錨もろともバラバラに打ち砕き、1発は右舷中央に命中して副砲2基を使用不能にし、1発はマストを打ち倒してしまった。マストと一緒にアンテナもまるごと海没したため、「アルファ・ケンタウリ」はレーダーが使えなくなった。これと引き換えに、第2小隊は2機を撃墜されている。

 第3小隊に狙われた空母「アンドロメダ」は、勇敢な艦長と練度の高い乗員たちの奮闘に、強運が合わさっていた。何せ練度の高いシュトゥーカ隊7機の爆撃を受けながら、被弾したのは1発だけ、その1発も飛行甲板の端のほうに命中しただけで済んだ上に不発だったのだから。

 これとは対照的に、第4小隊のターゲットとなった空母「モノセロス」は、浸水のおかげで速度が落ちているところに爆撃を受けた結果、5発の爆弾が命中して飛行甲板をあらかた引き剥がされている。これだけでも相当な被害だが、それだけでは済まなかった。2発の爆弾の直撃は免れたのだが、その爆弾は「モノセロス」付近の海面に落下して炸裂した。その結果、爆発によって押し退けられた海水が大量に「モノセロス」艦内に侵入し、急激に高まった水圧によって隔壁が破れてしまったのだ。「モノセロス」のダメージ・コントロール・チームは全員が濡れ鼠になって、必死で隔壁の補強にあたった。どうにか浸水は食い止めたものの、「モノセロス」はもはや()(そく)(えん)(えん)の状態である。

 

 ロデニウス軍艦隊「デスティニー」の攻撃だけで、これだけの被害を出したグラ・バルカス海軍西部方面艦隊であるが、しかし残念なことにこれが前座だったのである。「デスティニー」の攻撃から1時間ほど遅れて、第二派、つまり「ファンタジア」の攻撃隊が襲ってきたのだ。

 

「くそっ、また来やがったのか!」

 

 (すす)で顔を汚したままガリデーは叫んだが、どうにもならない。

 西部方面艦隊第1分艦隊は、敵の第二派攻撃隊が襲来する前に何とか艦隊の再編成を完了していた。だが、その艦隊から撃ち上げられる対空砲火は驚くほど少ない。撃沈破された艦が多い上に、残った艦も大なり小なり対空火器を損傷しているからだ。

 この上直掩機もまともにいないときては、敵航空部隊を止められるものではない。西部方面艦隊第1分艦隊の必死の応戦も虚しく、敵の攻撃隊は両手で数えられる程度の機体を失っただけで環状陣形に殺到し、好き放題に暴れまくった。

 天空から投げ落とされた500㎏爆弾が、巡洋艦に命中して対空砲を破壊する。別の500㎏爆弾はある駆逐艦に迫ったが、それは至近弾になっただけで終わった。しかし、爆弾の炸裂によって巨大な水柱が上がり、不運な対空機銃の操作要員が水柱にひっさらわれて波間へと消えた。そして、艦上攻撃機から一斉に投下された鉄と火薬の鮫の群れが、空母の下腹を大きく食いちぎった。

 40分に及ぶ戦闘の末、空母「モノセロス」は新たに爆弾4発と魚雷4本を浴びて沈没確実。戦艦「ハダル」も、魚雷7本を土手っ腹に受けて「総員退去」が発令された。そして空母「アンドロメダ」も新たに爆弾3発を被弾し、第2エレベータがめくれ上がって飛行甲板を塞いでしまい、艦載機の運用ができなくなった。この他護衛艦にも多数の被害が出ており、第1分艦隊は壊滅的打撃を受けてしまったのである。

 

「何てことだ…!」

 

 エンジン音の(がい)()を残して引き上げていく敵機には目もくれず、ガリデーは「アルファ・ケンタウリ」の周囲を見渡して頭を抱えた。

 空母はほぼ全滅し、戦艦も1隻が撃沈され、巡洋艦も駆逐艦も戦闘開始前に比べると著しく数を減じている。十分な戦闘能力を残している護衛艦は、およそ半分くらいというところだ。第1分艦隊は、空母機動部隊としては全滅したと言っても良い状態である。

 

「巡洋艦より入電!

『第2分艦隊旗艦「ムリファイン」より報告、当分艦隊はロデニウス軍の空襲により空母2隻喪失、2隻中破。航空機運用不能。他、護衛艦多数に甚大な被害を(こうむ)れり』!」

 

 そこへ、泣きっ面に蜂とばかりにさらなる悲報が飛び込む。第2分艦隊も、ロデニウス艦隊との航空戦に敗れたのだ。

 第2分艦隊に向かってきたのは、ロデニウス軍呼称「リバース」の攻撃隊である。「リバース」に配備されている空母といえば、第一・第二航空戦隊だ。つまり、世界最強とすら言い切れる空母部隊なのである。

 加えて、第一航空戦隊の片翼を成す「(あか)()」は戦艦空母となっており、その搭載機は「F-86D改 セイバードッグ」である。戦後世代ジェット戦闘機が相手では、「アルコル」であっても勝負にならなかった。

 第2分艦隊の上空直掩隊はあっという間に蹴散らされ、緊密な編隊を組んだまま第2分艦隊に殺到してきた「リバース」の攻撃隊は、その高い練度とロケット弾攻撃、そして新戦法「反跳爆撃」によって、まず護衛艦隊に甚大な被害を与えた。特に防御力の弱い駆逐艦は、次々と高威力の500㎏爆弾を叩き付けられ、水に砂糖が溶けるようにやられていった。

 駆逐艦隊の壊滅によって環状陣形に大穴が開けられ、そこから突入してきた艦攻隊は空母だけを狙って攻撃した。神の領域にどっぷり浸かっていると言われるほどの練度を持つ艦攻隊に襲われては回避しきれず、ペガスス級空母「オシリス」とアンドロメダ級空母「アルフェラッツ」が多数の魚雷を受けて撃沈、アンドロメダ級の「ベリターテ」とカシオペヤ級軽空母の「カストゥラ」が、それぞれ魚雷2本の命中により艦載機運用不能となった。西部方面艦隊が誇った空母機動部隊は、たった一戦で全滅状態に陥ったのである。

 

「くそっ! 制空権を取られてはどうしようもない!

かくなる上は、航空機を飛ばせない夜の間に敵艦隊に肉薄し、止めを刺さねばならん、帝王陛下の御命令を果たすべく、各艦は粉骨砕身して敵艦隊撃滅にあたれ……と、普通の指揮官なら命じるだろうな。

だが俺は違う! 全艦に命令、環状陣形を再編成しつつ、損傷艦艇を内側に入れろ! しかる後、第2分艦隊と合流して戦場を離脱する!」

 

 空母の全滅を受けて、さすがの"猪武者"ガリデーも撤退を決断せざるを得なかった。

 

 

 一方、ロデニウス海軍第13艦隊では、

 

「やったな。とりあえず航空戦はこっちの勝ちだ」

 

 「ファンタジア」を率いる戦艦「長門」のCICにて、味方からの報告をまとめた堺が表情を綻ばせた。

 

「制空権は確保。となると、敵が取りうる作戦は2つしかない。撤退するか、もしくは航空機を運用できない夜のうちに、こっちに肉薄してケリ付けにくるだろう。

本来なら夜戦に乗ってやる道理はないんだが……そうだ、良いこと考えた。手始めに分散してる各任務群を集合させて……」

 

 そして綻んだ顔のまま悪巧みを始める堺であった。




というわけで、制空権をめぐる航空戦はロデニウス第13艦隊に軍配が上がりました。
今のところ、両軍とも水上砲戦をやるだけの戦力は残していますが、この海戦の結末は…?


UA124万超え、そして総合評価が12,000ポイントオーバー…! 本当にご愛読ありがとうございます!!


次回予告。

第三次バルチスタ沖大海戦、空母機動部隊同士の航空戦は終わった。制空争いに敗れたグラ・バルカス海軍西部方面艦隊は、損傷艦艇をまとめて撤退を図る。それに対し、ロデニウス海軍第13艦隊の、堺の取った戦術は…?
次回「ムー大陸西方大海戦 eins 第三次バルチスタ沖大海戦(参)」
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