鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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新年明けましておめでとうございます。今年も拙作「鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。」とそのスピンオフを、よろしくお願いいたします。

さて新年一発目となる投稿ですが、はっきり申し上げます。

頭からっぽにして読んでください。

警告は以上です。
そして出遅れスマソ。1頭枠入りをゴネたのじゃ。



正月特別 新年だって異世界でだって、レースは良いものかもしれない。

 西暦2024年1月1日 午後2時55分。

 え、中央暦じゃないのかって? 細けぇこたぁ良いんだよ!

 処は第三文明圏外東側にして大東洋共栄圏の中心地ロデニウス連合王国、その北部一帯を占めるクワ・トイネ州。

 クワ・トイネ州は、「豊穣の女神より賜りし祝福の地」と呼ばれるほど土壌が豊かであり、それを活かして農林業が盛んに行われている。この州だけで同国の総人口4千万人をそっくり養って余りあるほど、多数の農産物が取れるのだ。

 そんなクワ・トイネ州にも、珍しく土壌が痩せた地がある。それが、城塞都市エジェイの周囲に広がるダイタル平原だ。かつてロデニウス大陸戦役の折、タウイタウイ泊地の基地航空隊と陸戦部隊がこの地に基地を築き、旧ロウリア王国軍と戦っていたものである。

 そのダイタル平原。連合王国軍ダイタル駐屯地とは別の一角に、巨大な施設が築き上げられていた。一見すると陸上競技に使うスタジアムに見えるその施設は、しかしスタジアムにしては妙な設備を備えている。グラウンドは芝のコースと土のコースが用意され、中にはコースを横切るように巨大な植え込みが作られた部分まである。そしてコースのところどころに、「2」とか「4」などの数字が書かれた紅白の棒や青白の棒が立てられていた。観客席からはグラウンドの反対側は遠くて見えにくいため、見えやすくするための大型テレビジョンまで用意されている。

 そう、スタジアムではなく競馬場なのである。

 グラ・バルカス帝国との戦争の中で娯楽が減り、国民の間に鬱屈とした感情が高まっていることを、王権政府は問題視した。そこで「国営競技」と称して……要するに公営ギャンブルとして、競馬を本格的にやり始めることにしたのである。

 ダイタル平原は、そこまで起伏に富んだ地形ではない。とはいえ多少の登り坂くらいはある。そこで、日本の京都競馬場を参考にして(といえば聞こえは良いが実質コースの完コピである)、ロデニウス大陸初となる「国立エジェイ競馬場」が建設されたのである。

 そして今日、初の大規模レースとなる「ロデニウス連合王国賞」開催の運びとなったのだ。

 スタンドには大陸各地から多数の人々が集まって、異様な熱気を醸し出している。誰もが真剣な眼差しであり、その手に小さな紙切れ…馬券を手にしていた。そりゃあ金がかかっているなら真剣になるものである。

 また、実は国王カナタ1世がお忍びで今回のレースを観戦していた。そのため、このレースは人知れず国王観覧試合となっている。

 

 そして、ロデニウス連合王国海軍第13艦隊司令官の堺 修一中将も、私服姿で群衆に入り交じってこの地にいた。日本における競馬のシステムを用いて、ロデニウス国内の「国営競技」制度の新設に大きく関わったということで、VIP席に召喚されてしまったのである。

 現在グラ・バルカス帝国の脅威が大きく後退しているというのも、彼をここに召喚できた一因なのだが。

 

 ファンファーレが鳴り響き、コースに集まっていた競走馬たちが続々とゲートに入っていく。発走時刻は3時ジャストなのだ。

 観客たちが持つ広告や、競馬場入口に設置された出馬表には、次のように書かれていた。

 

《ロデニウス連合王国賞

コースレイアウトは以下の図の通り。レース距離3,000メートル。1着には賞金として3億ロデン。2着8,000万ロデン。3着900万ロデン。4着100万ロデン。

1番 バーンリブロース

2番 メイソンプリンセス

3番 ストレートボーイ

4番 バージンフライト

5番 ゴールドマイスター

6番 ブーケファラオ

7番 シンバシルドルフ

8番 ハリボテマックシップ

9番 ディープインパルス

10番 コーナーバンチョー》

 

 馬場発表は「稍重」である。

 8番の”ハリボテマックシップ”が何故かゲートインを嫌がるトラブルはあったものの、その他は特筆事項なく枠入りは完了した。そしてゲートが開き、10頭が一斉にコースへと飛び出す。

 

『スタートしました! さすが選りすぐりの10頭、ほぼ一列に並んで綺麗にスタートを切りました』

 

 なお実は、実況しているのは”(あお)()”である。何してんだオメー、というツッコミは甘んじてお受けします。

 

『先行争いですが…先頭は3番ストレートボーイ、その後ろ1馬身ほど離れて1番のバーンリブロース、その外並んで6番ブーケファラオ。その後に2頭並んで、外側に4番バージンフライト、内には2番メイソンプリンセスです。後は7番のシンバシルドルフ、それから10番コーナーバンチョーが外から並んで、第3コーナーの坂路にかかります。後は8番ハリボテマックシップ、続いて5番のゴールドマイスター、最後方から9番ディープインパルスという体制です』

 

 騎手の服装までは明確な指定がないのか、騎手の服装はまちまちで、中には鎧を着ている者もいる。そんな中で、8番”ハリボテマックシップ”の騎手だけ青を基調とする和風の着物を着ており、異色ぶりが目立っている。

 

『さあ第4コーナーをカーブして、各馬続々とホームストレッチへ差し掛かります、あーっとハリボテ倒れた、ガムテープの剥がれる音ォ!』

 

 第4コーナーを曲がりきれなかったか、後方を走っていた"ハリボテマックシップ"が転倒するのが見えた。観客席からどよめきが起こる。

 まだレース距離があるとはいえ、ああなってはもう勝ち目はない……それが、観客たちの総意だった。もちろん堺もそう思っていた。

 

 競走馬たちが駆け去った後の第4コーナー。"ハリボテマックシップ"から投げ出された騎手がいち早く起き上がった。そして懐から桃色と金色に彩られた王冠を取り出しながら、声をかける。

 

「やれやれ、転倒してしまうとはね。でも、ここからが本番だろう、お二人さん?」

 

 直後、倒れた"ハリボテマックシップ"の胴体がうごめき、そこから2人の人間が這い出てきた。

 

「もう、何で私がこんなことしなきゃなりませんの! というか貴方が変なことに巻き込むからでしょう!」

 

 "ハリボテマックシップ"の前足を構成していた女性……やや紫がかった銀色の髪を肩まで伸ばし、白いドレス調の衣装に身を包んだ美女が、不機嫌な様子で後ろに声をかける。そこにいたのは、"ハリボテマックシップ"の後ろ足役……長い銀髪と抜群のスタイルの良さが目立つ、長身の女性だ。こちらは黒いドレスを着ている。

 

「やれやれ、マックちゃんは文句が多いんだぜ」

「誤魔化さないでくださいまし!」

「勝ったら、ここの出店で売ってたスペシャルパフェ、好きなだけ奢ってやっからさ」

 

 「スペシャルパフェ」と聞いた途端、紫髪の女性の目の色が変わった。

 

「その言葉、忘れないでくださいませ?」

「勝ったらの話だかんな? オメー、アタシらよりG1の勝ち星少ないんだから、大丈夫かよ?」

「舐めないでくださいます? 天皇賞(春)を連覇した『最強のステイヤー』の実力、見せて差し上げますわ!」

 

 そう言うが早いか、紫髪の女性は猛然と駆け出す。走りのフォームは美しいのだが…大破した"ハリボテマックシップ"の頭部を持ったままであるため、かなりシュールな絵面になっている。

 

「よし、ではボクも本気を出すとしよう! 覇王伝説の序幕、開演だよ!」

 

 騎手役がその後に続く。そして、

 

「ならアタシもやるか! このコースは京都っぽいしな!

面白くなってきたぜぇーっ!」

 

 最後に、大破した"ハリボテマックシップ"の胴体を持った後ろ足役が、力強く大地を踏み込んだ。

 

 

 レースそのものはつつがなくは進行していたが、どうやら少々無茶な距離を走らせた馬もいたらしい。

 

『現在1番手は3番ストレートボーイ、そこから3馬身離れて6番ブーケファラオ、その後ろ外側から2番のメイソンプリンセスが行っています。4番手には7番のシンバシルドルフ、さらには1番バーンリブロース。4番のバージンフライトは厳しいか、少しずつ順位が下がっています。後方は動きは控えめですね、スタートからほぼ順番変わらず。10番コーナーバンチョーは綺麗なコーナリングを見せています、これはまさに円弧のマエストロか弧線のプロフェッサーと申せましょう。その後ろから5番ゴールドマイスター、9番ディープインパルスがじりっじりっと動いて、一番後ろから8番ハリボテマックシップが追いかけています』

 

 4番のバージンフライトは牝馬であることもあり、この距離は厳しかったようだ。少しずつ行き脚が鈍っている。その脚は第3コーナーの坂で完全に止まってしまった。しかしここで、思いがけない事態が起こる。

 

『おおっと、外から10番コーナーバンチョー一気に仕掛けた! キツい登り坂とそれに続く下り坂で、得意のコーナリングを活かして勝負に出たあっ!』

 

 予想だにしない展開に、観客も大賑わいである。

 しかし…勝負とは最後まで何が起こるか分からないもの。

 真の刺客は、内ラチ添いに潜んでいた。

 

『さあ最終コーナーをカーブして、先頭は10番コーナーバンチョー! 外で3番ストレートボーイが狙っている、あっ、ここで内から8番ハリボテ! ハリボテマックシップがすごい脚で上がってきた!』

 

 誰もが、我が目と耳を疑った。

 ハリボテマックシップ? あいつは確か第4コーナーで転倒して、最後方に大きく離れたのではなかったか? そのはずだ。

 だが現実に、ハリボテマックシップは3人の人間の集団と化して、最内から一気に襲いかかっている。

 

 いったい、何が起きている!?

 

『残り300を切った、先頭はコーナーバンチョーがまだ粘っている! ストレートボーイ差し返すか!?

しかし内からハリボテ! 残り200で、ハリボテマックシップが先頭に変わる! 何ということだ、人間が馬を出し抜いた!

ストレートボーイ追ってくる! さらに外から2番メイソンプリンセス、9番ディープインパルス追い込んでくるが2着争い! 先頭は8番ハリボテマックシップ完勝ゴールインッ!

ハリボテ! ハリボテが勝ちました!』

 

 結果として、第1回ロデニウス連合王国賞のレースはとんでもない番狂わせで終わったのだった。

 

《レース結果》

1着 8番 ハリボテマックシップ タイム2.59.4

2着 9番 ディープインパルス 3馬身差

3着 10番 コーナーバンチョー ハナ差

4着 3番 ストレートボーイ ハナ差

 

 

 2番手がとんでもなく熾烈な争いになっている。むしろここは、最後に鬼の末脚を繰り出して2着争いに食い込んだディープインパルスを讃えるべきだろう。

 

『1着を取ったハリボテマックシップがウィナーズ・サークルに入ってきますが……おっとこれは何でしょうか?』

 

 “青葉”の困惑した声。

 どうしたのかというと、"ハリボテマックシップ"を構成する3人のうち1人が、いつの間に用意したのか巨大なスピーカーとCDプレーヤーを持ってきたのだ。そこから、トランペットを主旋律とするファンファーレのような音が鳴り響いている。

 ファンファーレっぽい前奏が響いている間に、3人がおよそ横一列に並んだ。観客から見て王冠を被ったのが左、紫がかった銀色の髪が中央、そして黒服長身の銀髪が右である。

 

『位置について……よーい、どん!』

 

 もちろんだが、その後に流れ出した曲の正体はお察し。気分がぴょいぴょいするあの曲であった。

 当然のように、会場は大爆笑となる。実はロデニウス国内では既に「ウ◯娘」アニメが放送されており、そのためこの曲を知っている人も少なからずいたのだ。

 そして、お茶の間でも腹筋を部位破壊された者、お茶を噴き出して大惨事になった者など、阿鼻叫喚の様相となっている。

 ゲリラライブが終わった直後、呆けていた堺の元に”ハリボテマックシップ”3人組のうち1人が近づいてくる。黒いドレスを着た長身銀髪の方だ。

 

(ん?)

 

 その時、やっと堺は気付いた。この銀髪、どこかで見覚えがある。というか実際に会ったような気がする。

 しかし、堺がその正体に気付く前に、銀髪の方が声を上げた。

 

「なーんか見覚えあると思ったら、2年前のにいちゃんじゃん! あん時のタイは世界一の味だった…。

そのお礼を受け取って欲しいんだぜ! それぇい!」

 

 ぴょんと飛び上がる銀髪。

 

(こいつは…いつぞやの!)

 

 その正体に気付くと同時に、堺の顔面にドロップキックが着弾したのだった。




というわけで「正月特別」でした。もちろん、このネーミング自体、日本の競馬における2勝クラス条件戦でよく見られる「◯◯特別」を意識しています。

当然ながら、今回も思い付く限りのネタを放り込みました。ウ◯娘はもちろん、歴史、史実の競走馬、「JAPAN_WORLD_CUP」、「コスプレステークス」と選り取り見取りです。
競走馬名の元ネタは以下の通り。

1番 バーンリブロース…元ネタは「JAPAN_WORLD_CUP」のバーニングビーフ。なお、元ネタは闘牛だが、拙作のこっちはちゃんとした馬である。

2番 メイソンプリンセス…元ネタはシャーロック・ホームズシリーズの短編「ショスコム荘」に登場する競走馬ショスコム・プリンス号。主任調教師がジョン・メイソン氏であることから、名前を少し変更した。

3番 ストレートボーイ…元ネタは「JAPAN_WORLD_CUP」のギンシャリボーイと、ゴールドシップ号の同期たる短距離馬ストレイトガール号。なおスシウォークはしない。

4番 バージンフライト…元ネタは「コスプレステークス」のバージンフライト。コスプレはしていない。

5番 ゴールドマイスター…マイスターはドイツ語で「職人」の意。金の職人とは、金を使って装飾品を作る人のこと。すなわち「金細工師」。金細工師をフランス語で言えば…もう分かるでしょう。
ただし、今回はメンコをしたままだったので掲示板外に沈んでしまいました。

6番 ブーケファラオ…元ネタはアレクサンダー大王の愛馬とされたブーケファロス号。ただ、こいつは軍馬なのでスタミナはあるのだが、サラブレッドではないためスピード勝負には弱い。そのため残念ながら掲示板外に敗戦。

7番 シンバシルドルフ…元ネタは「コスプレステークス」のシンバシルドルフ。無敗三冠馬に謝ってこいって? おっしゃる通り。なおコスプレはしていない。もちろん着外敗戦である。そりゃ1,200メートルくらいしか走ってない奴に3,000メートル走らせたら、どうなるか容易に想像できるでしょう。

8番 ハリボテマックシップ…ウ◯娘と「JAPAN_WORLD_CUP」はすぐ気付いたでしょうが、そこに「MACシップ」が絡んでいるとは予想できたでしょうか? MACシップは第二次世界大戦時にイギリスが運用していた船で、商船の最上甲板を全通飛行甲板にして4機の航空機を運用する護衛空母でした。輸送船団に向かってくるドイツのUボートや爆撃機を相手に戦い、船団護衛や対潜哨戒に十分な役割を果たしました。

9番 ディープインパルス…もちろん元ネタは、日本競馬史上2頭目の無敗クラシック三冠馬となったディープインパクト号。

10番 コーナーバンチョー…元ネタは「JAPAN_WORLD_CUP」のチョクセンバンチョー。コーナーはチョクセンの半弟のつもりである。

 そしてもちろん、ハリボテの正体は以下の通りです。

騎手…【初晴・青き絢爛】テイエムオペラオー
前足…【エンド・オブ・スカイ】メジロマックイーン
後足…【La mode 564】ゴールドシップ(ひっそりエデソを用意済み)

 そしてエデソの力で3人ともこっちに来ていた、という設定です。
 この後メジロマックイーンがパフェにありつけたのかは、各人のご想像にお任せします。
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