鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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ちょっと遅いですが、皆様、明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いいたします…って、ええぇぇぇ!?
とうとう拙作が、総合評価600ポイントオーバーの評価を頂いて、ハーメルンにおける総合評価トップ5に肉薄してる、だと…!?

こんなネタのごった煮をご愛読いただいて、皆様、本当にありがとうございます!


平均評価ちょっと低くなっちゃったな…低評価を見ると、万人受けする作品を作るのは難しいんだって、はっきりわかんだね。ですが、高評価をくださる皆様のほうが多いので、このままの路線でつっ走りたいと思います。
評価1をくださいました2000様、評価8をくださいました冬だるま様、朧月琥珀様、評価9をくださいましたイタグレ様、シーホーク様、評価10をくださいましたヴェルヌイ様、本当にありがとうございます!!
特にシーホーク様には、Wikiにて応援コメントまでいただいて…ありがとうございます!
また、新たにお気に入り登録していただいた皆様、ありがとうございます!ついでに評価のほうもよろしくお願い申し上げます。


今回は特大のネタが入っています。あらかじめご注意ください。



020. 結成! 第13艦隊

 中央暦1639年7月1日。

 ロデニウス連合王国が誕生したと同時に、同国にとってやらなければならない課題が、大量に発生した。

 

 1つが、領土の把握。といっても、領土全体の量は決まっている(ロデニウス大陸全部のみ)ため、各州の面積と州境等を把握するだけでいい。

 

 1つが、統一貨幣の制定と、国ごとに異なる旧貨幣との交換レートの設定。これは急務である。だって、軍の兵士に払う給料や、国民生活に直結するのだから。

 

 1つが、各州の人口や特産品、工業レベルの把握。これは、旧ロウリア王国一帯だけでいい。何故なら、クワ・トイネ公国改めクワ・トイネ王国とクイラ王国は、互いにそれらを把握済みだから。

 

 1つが、諸外国との国交の再設定。これも急務である。この世界で生き残るためには、どうしたって外交が重要になる。

 

 1つが、租税徴収制度の制定。これも急務だ。なぜなら、租税はそのまま歳入……つまり国家予算となるからだ。どのくらいの租税収入があるか、制度を制定して決めなければ、国家予算の配分ができない。

 

 

 そして1つが、新たなる軍隊……ロデニウス連合王国軍の編成だ。

 

 

 編成される新生ロデニウス連合王国軍はまず、陸軍・海軍・空軍の3つになることが決定された。

 そして、各軍の最高責任者として「大臣」を置くことが決定し、総司令官ヤヴィンの指揮の下、陸軍大臣は旧クワ・トイネ公国陸軍の将軍ハンキが、海軍大臣は旧クワ・トイネ公国海軍の将軍ノウカが、空軍大臣は先の戦争をなんとか生き延びた(ただし重傷につき現場復帰は不能)元ロウリア王国空軍第1竜騎士団長アルデバランが、それぞれ務めることとなった。

 

 続いて、各州の代表たちの話し合いの末、まず陸軍の編成と指揮官が以下のように決まった。

 

 

第1軍団→旧クワ・トイネ公国軍のうち、日本軍式装備(具体的には三八式歩兵銃など)を保有している部隊。例としては、これまでの話に登場した、新生第5歩兵大隊など。指揮官は旧クワ・トイネ公国西部方面師団長ノウ将軍。

第2軍団→旧クイラ王国の軍隊のうち、日本軍式装備を保有している部隊。八九式中戦車を装備する戦車部隊などがこれにあたる。指揮官は、対ロウリア戦に参加したイフセン将軍。

第3軍団→旧クワ・トイネ公国とクイラ王国の両国軍のうち、ロデニウス式装備(剣と槍、弓など)で武装している部隊。指揮官は旧クイラ王国陸軍の指揮官の1人であるサムダ将軍。

第4軍団→旧ロウリア王国軍。もとロウリア王国の属領だった旧3ヶ国の陸軍も含む。指揮官はパタジン将軍。

 

第13軍団→日本国海上護衛軍タウイタウイ部隊の陸戦隊、およびその(れい)()の戦車隊。指揮官は堺、ただしこれは書類上の話。実質的な指揮官は"あきつ丸"となる。

 

 

 また、海軍についても、

 

 

第1艦隊→旧クワ・トイネ公国軍のうち、日本国が建造した艦(現時点ではウインク型砲艦、及びラ・フランス型輸送艦のみ)を装備した艦隊。指揮官には、クワ・トイネ公国海軍第2艦隊司令の側近だったブルーアイが、昇格して就任。

第2艦隊→旧クイラ王国軍のうち、日本国が建造した艦(こちらも第1艦隊に同じ)を装備した艦隊。指揮官は、旧クイラ王国の第1艦隊司令・ドハム提督。

第3艦隊→旧クワ・トイネ公国と旧クイラ王国の軍の艦で、ロデニウス式装備(矢避けの盾を並べた木造帆船)を装備した艦隊。指揮官は旧クワ・トイネ公国第2艦隊司令・パンカーレ提督。

第4艦隊→旧ロウリア王国海軍艦隊(独立した3州の分も含む)の、ごく僅かな生き残りと、新たに建造した船の統合艦隊。指揮官は戦争終結後にロウリアに帰国していた海将・シャークン提督。

 

 そして当然のように、日本国海上護衛軍タウイタウイ部隊の艦隊は、「第13艦隊」と名付けられた。指揮官はもちろん堺である。

 

 なんでこんなに番号が飛んでしまったかというと、堺曰く「タウイタウイの部隊については、この番号にしないといけないような気がしたから、これにしたんだ。それ以上の理由はないよ」とのこと。

 

 ……何を思って、わざわざ13なんて数字にしたのだろうか?

 

 

 さらに空軍については、ロウリア王国の竜騎士団は戦争の中でほぼ全滅してしまった(ワイバーン自体1匹しか残っておらず、竜騎士も生き残ったのは3人だけ。なおその生き残りの竜騎士とは、他ならぬアルデバランとターナケインとムーラである)ため、旧クワ・トイネ王国軍と旧ロウリア王国軍の竜騎士団を統合して設立した。こちらは、ワイバーンの航続距離などの観点から、「ロデニウス大陸周辺における商船護衛や哨戒、また国家に対する侵略の場合、航空隊と連携して最終防衛にあたる」ことを任務とした。

 その指揮官に充てられたのは、エジェイ近郊でタウイタウイ部隊にワイバーンごと捕まった後、戦争終結に伴ってワイバーンと一緒にロウリアに帰国していた竜騎士ムーラである。また、最初にタウイタウイ部隊の「彩雲」と接触したマールパティマをはじめ、旧クワ・トイネ公国の竜騎士たちはここに集められた。

 ちなみになんでクイラ王国の名前がないのかというと、クイラ王国には飛竜(ワイバーン)が生息しておらず、従って竜騎士団がなかったためである。

 

 これ以外に、陸軍と海軍がそれぞれ航空機を装備する航空隊を併設し、航空機を運用することとしている。

 

 

 こうして、新体制の軍を発足させたものの、軍にとっては緊急の課題が、大量に積み上げられていた。

 

 1つめにして最大の課題が、陸軍歩兵隊と艦隊装備、主に水上艦艇の近代化だ。

 

 堺は、ロデニウス沖海戦で捕虜にした海将シャークンから、この周囲ですさまじい国力を持つ列強・パーパルディア皇国に関して、以下のようなことを聞いていた。

 

・皇国には、砲艦という船そのものを破壊することのできる船がある。

・また、洋上でワイバーンを運用するための「竜母」なる船があるらしい。

・そしてそのワイバーンも、品種改良がなされているようだ。どうやら「ワイバーンロード」と呼ばれるらしい。

 

 堺はこれについて、捕虜にしたハーク・ロウリア34世や他のロウリア軍兵士たちから話を聞き、さらに旧各国の外交官たちからも話を聞いて、裏付けを取ろうと考えている。

 だが、もしシャークンの言う内容がすべて事実ならば、パーパルディア皇国には原始的ながら空母機動部隊がある、ということになる。これは、新生ロデニウス艦隊にとって紛れもない脅威だ。艦隊の質と、パーパルディア皇国への恐怖の、二重の意味で。

 

 しかもパーパルディア皇国はここ10年来、拡大(侵略)政策を取り続けており、周辺各国に対して理不尽な要求を押し付け、断ると問答無用で正規軍を送り込んで征服する、ということを続けているという。おそらくだが、このロデニウス大陸に魔の手を伸ばしてくるのも時間の問題だろう。

 

 こうしたことから、パーパルディア艦隊に対抗し、(らい)(こう)してきたならばこれを撃滅するべく、艦隊戦闘能力、航空戦力、補給、整備、情報伝達の全てにおいて、パーパルディア皇国軍を遥かに凌駕する質と練度(と、できるなら量)を、全軍の全兵士に持たせなければならない。そのためには、もうテレビドラマで出てくるような鎌倉時代辺りの斬り合いをしている暇はないし、もう帆船などで海賊ごっこをしている場合ではないのだ。

 

 幸い、クワ・タウイのドックはフル稼働し、練習艦としてウインク型砲艦を多数建造中である。堺の見立てでは、このウインク型だとパーパルディア艦隊に対して互角程度のスペックである。

 また、新たにクイラ州にも許可を得て、ドックを建造中である。それがだいたい完成してきており、今週中には運用を開始できる、と見られていた。さらに、今後ロウリア州に対しても測量を行い、ドックの建造ができないか予測する予定である。

 

 しかし、同等では足りない。そこで堺はすぐさま、泊地の余剰在庫となっている「12.7㎝連装高角砲(後期型)」または「10㎝連装高角砲」を主砲として搭載した、対空・対艦・対潜戦闘で戦える駆逐艦(かつ魚雷による攻撃が可能な艦。ウインク型砲艦は魚雷発射管を持っていないので)を要求した。

 さらに、これまた泊地の余剰在庫となっている「14㎝単装砲」や「20.3㎝連装砲」を使い、巡洋艦を建造するよう求めている。

 余裕があれば戦艦や空母も建造したい、と付け加えていた。

 加えて、ウインク型砲艦を改設計し、武装をほぼ全部外す代わりに大発動艇を積めるようにして、海岸部分における迅速な兵力展開が可能な兵員輸送艦の設計すら求めている。

 

 これのせいで、タウイタウイ泊地の造船部門と設計部署は、いくら働いても仕事がなくならない、という事態に突入することになる。

 

 それだけにとどまらない。こうした艦艇ができても、運用するのは人である以上、人間も鍛えなければ意味がない。陸軍の砲兵隊や海軍や航空隊は、その傾向が特に顕著だ。これが、第2の課題である。

 という訳で、さっそく完成したウインク型を片っ端から使って、航行演習やらタウイタウイの艦艇相手の砲戦演習やらが始まっている。また、それと前後して航空隊の錬成も開始された。さらに陸軍第1軍団や第2軍団のほうでは、三八式歩兵銃や九七式手榴弾は十分使えると見なされ、九六式軽機関銃の訓練が強化された。それに加えて、MP40による短機関銃運用訓練、くろがね四起や九四式六輪自動貨車、キューベルワーゲン、各種戦車による操縦・砲撃訓練、その他ついに大砲(88㎜Flak36野戦高射砲、九四式37㎜速射砲、九〇式野砲、八九式重擲弾筒、九六式25㎜対空機銃)の扱いもスタートした。

 タウイタウイの艦娘たちや妖精たちに手抜きはなく、まさに月月火水木金金でロデニウス軍の兵士たちをビシバシ鍛えている。たとえかつての敵だった旧ロウリア王国軍だろうと、味方だった旧クワ・トイネ公国軍だろうと容赦はない。

 

 その他、将来的には潜水艦の建造計画や、国産の航空機の開発、歩兵銃や軽機関銃の装備更新、科学と魔法を融合させた新たな軍艦の建造構想などの課題があった。

 

 

 かくして、ロデニウス連合王国軍の近代化は、急ピッチで進められていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ーーここから、訓練&生産&設計模様ダイジェストーー

 

 ある日のクワ・タウイ、陸軍兵器設計局。

 

「~~~♪」

 

 ある銃器設計妖精が、鼻歌を歌っていた。彼の前では、ある1つの銃の部品が、組み立てられているところである。

 彼が設計した銃が今、少しずつだが試作されようとしているのだ。以前に設計図を提出して認められた、「ボルトアクション式でない」銃の試作品。

 その銃のすぐ隣には、試作した弾も置いてある。本来5発クリップ装填になる九九式普通実包を2クリップ分、つまり10発の弾を横に並べて、Uの字型の特製試作クリップでまとめたものだ。

 

「さーて、どうなるかな……?」

 

 妖精は、試作されていく自分の設計の手になる銃を、楽しみに見つめた。

 

 

 一方、その隣の部屋では、

 

「うーむ、どうしたもんかね……」

 

 戦車設計担当の妖精が、頭を抱えていた。彼の前の設計用紙は真っ白。

 

「あんなデカい砲、回転砲塔で作れる気がしないんだよな……。ドイツってのは、なんであんなバケモノ戦車作れたんだよ……?」

 

 と、その時、妖精は何かを思い付いたらしく、目を見開いた。

 

「そうだ! 何も回転砲塔に拘る必要ないんじゃないか? 最初は自走砲でいいんじゃないか!?」

 

 そう考え付くや、妖精はとんでもないことを閃く。

 

「そうだ! 九六式150㎜榴弾砲…アレを装備した自走砲なんてどうだ!? もちろん、前面装甲を斜めに倒して……グヘヘ……」

 

 何やら不気味な笑いを浮かべながら、妖精は電卓を弾き、計算を始めた。そして用紙に、設計図を書き込んでいく。

 さて、どんな代物ができるやら……

 

 

 ある日のタウイタウイ泊地・軍艦設計部署。

 そこの署長室には、異様な光景が展開していた。デスクに座った署長は、無言でデスクの上に広げられた何枚かの設計図を見ている。いずれも軍艦の設計図だ。

 彼のデスクの前には、大勢の技官妖精たちが無言で突っ立っている。人数にしたら15人もいようか。

 

 設計図を見ている署長、その手がふるふると震え始める。やがて、署長は顔を上げると、震える手でかけていたメガネを外して言った。

 

「設計部署の代表者は、四天王、以外は、出てけ。アンポンタン」

 

 命令にしたがって、妖精たちがぞろぞろと出ていく。

 最後の1人が退室し、部屋の中が署長と四天王(設計部署の最高クラス幹部4人のこと)だけになって、ドアがバタン、と音を立てて閉まる。

 その直後、署長の(かん)(しゃく)が爆発した。

 

「何だこの設計図は!?」

 

 デスクの上にあった鉛筆をつかみながら、署長は怒鳴る。

 

「ほぼ全部、日本の軍艦のパクりじゃねえか!! まずこれだ!」

 

 その怒鳴り声はかなり大きく、部屋の外に待機していた他の技官妖精たちにも丸聞こえであった。何人かがビクッと肩を竦める。その間にも署長は、壁の向こうで怒鳴り続ける。

 

「アイカ型重巡洋艦って名前振ってるけど、これ(たか)()型重巡そのまんま! ほぼパクりと言って差し支えない!」

 

 アイカ型重巡洋艦の設計図を提出した技官妖精が、耐えきれなくなったかメソメソと泣き出す。それを慰める同僚が、ボソリと一言。

 

「気にすんな、俺もカイジ型っつって(ゆう)(ぐも)型まんまの設計図出したから」

 

 要するにこいつら、「時間がない」という理由で、新造する軍艦の設計図を、旧日本海軍の軍艦からほぼ丸パクりしたのである。

 署長はそれにブチギレているのだ。

 部屋の中で直接怒鳴り声を聞いている四天王4人、その心境は如何ばかりか。

 

「オウギョク型という名の(あき)(づき)型! ニジッセイキ型といいつつ5,500トン(川内)型!」

 

 未だ署長は怒鳴り続ける。

 

「どれもこれもほとんどパクりじゃねえか!!」

 

 そう言いながら、拳を振り上げて署長がデスクから立った時、署長の膝がガン! と大きな音を立て、デスクの縁にぶつかった。

 

「あ痛たたたたハフン、」

 

 かなり思いっ切りぶつけたのだろう、署長は涙目になりながらもさらに怒鳴る。

 

「時間ないからって丸パクりは大ッ嫌いだ!!」

 

 四天王の1人が必死に反論する。

 

「しかし署長、時間がないんですよ! それで新規設計なんか無理です!」

 

 聞く耳持たぬ、と言わんばかりに署長が叫ぶ。

 

「うるさい、大ッ嫌いだ!! 真面目に考えろバーカ!!!」

「署長、新人の基礎教育の時間だって要るんですよ!!」

 

 四天王の1人の反論に、ついに署長の堪忍袋の緒が切れた。

 

「口答えばっかしてんじゃねえよ!! もう少し独創性ないのか!?!?」

 

 そう叫ぶや、額に青筋を浮かべた署長は、手に持った鉛筆をデスクに叩きつけ、咆哮した。

 

「ちくしょうめぇぇぇ!!!!!」

 

 その後も、署長の癇癪は続くのであった。

 

 

 その頃、クワ・タウイの造船所では、連日連夜ウインク型砲艦の建造が急がれていた。

 4つある乾ドックの中では、次々とウインク型砲艦の船体が組み立てられている。船体は完成して水密試験に合格し次第、進水式もそこそこにタウイタウイまで曳航して運ばれ、そこで艤装作業を受けるのだ。

 

「急げ急げ! うちで使うだけならともかく、もしかすると海外からも発注が入るかもしれん。その時に現品お渡しできるように頑張るぞ!」

 

 技官妖精の1人が檄を飛ばす。その時、

 

「あの、お忙しいところすみません! 意見具申です!」

 

 別の技官妖精が話しかけてきた。

 

「む!? どうした!?」

 

 建造に伴う騒音が響く中、大声で会話が行われる。

 

「あの、これブロック工法に対応させられないですか? ブロック工法を取れるのなら、建造効率が上がると思うんですけど!」

「ブロック工法か! ありだな! よし、上に上申しといてやる、お前は仕事に戻れ!」

「はいっ!」

 

 そして今日も造船所の灯は落ちない……

 

 

 ある日の午前8時、ロデニウス連合王国海軍航空隊。

 ダイタル基地の滑走路には、白く塗装された零戦…零式艦戦21型が何機も並んでいる。それらの機体は、皆発動機が回されていた。栄発動機の唸りが響き渡る。

 それらの機体の先頭には、1機だけ緑色に塗られた零戦……零戦52型がいた。これが教導機。つまり、教官の乗る機体である。

 それらの機体に備えられた無線機から、教官と生徒たちのやりとりの1コマをお見せしよう。

 

(以下、少し台本形式入ります)

 

教官「おはよう諸君! これより、ロデニウス連合王国海軍・第1飛行隊の本日の飛行訓練を開始する! まずは、無線機の調整を兼ねて、いつものアレやるぞ! 当然、もう覚えているな? では零戦(れいせん)訓、詠唱始めっ!」

 

教官「何のために生まれた!?」

兵士たち「零戦に乗るためだ!!」

教官「何のために零戦に乗るんだ!?」

兵士たち「敵機を叩き落とすためだ!!」

教官「零戦は何故飛ぶんだ!?」

兵士たち「味方の奴らを守るためだ!!」

教官「お前らが敵にすべきことは何だ!?」

兵士たち「機首と同軸7.7㎜!!」

教官「零戦とは何だ!?」

兵士たち「ワイバーンより強く! ワイバーンロードより強く! (はやぶさ)より強く! どれよりも忠実!!」

教官「零戦乗りが食うものは!?」

兵士たち「精進料理と日本酒だ!!」

教官「零戦の親父は誰だ!?」

兵士たち「全ての祖先の九六艦戦! 複葉機とは気合いが違うッ!!」

全員「我ら、海軍航空隊! 弾幕上等! 敵機上等! 墜落怖くて空が飛べるか!!」

 

教官「詠唱終わり! 離陸せよっ!」

 

 そして、かつて「人殺し(なが)()」とも呼ばれた、航空母艦「(あか)()」の戦闘機乗り妖精による、地獄の訓練が今日も始まる……

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 そして中央暦1639年9月1日。

 ロデニウス連合王国軍は、以前に比べたら見違えるような軍隊に変化していた。いまや立派な近代軍隊である。

 

 まず陸軍から見ていこう。合計すると連合王国陸軍は…

 歩兵10個師団(いずれも三八式歩兵銃装備。なお一部に九七式狙撃銃による狙撃兵と八九式重擲弾筒装備兵を含む。また、第13軍団に限っては九九式小銃に装備更新済み)。

 機関銃2個師団(九六式軽機関銃およびMP40装備。第13軍団のみ、九九式軽機関銃装備の1個連隊含む)。

 砲兵隊3個師団(砲の種類は、88㎜Flak36野戦高射砲装備部隊が1個師団、九〇式野砲が3個連隊、九六式150㎜榴弾砲が3個連隊、94式37㎜速射砲が1個連隊、その他試製一式機動47㎜速射砲装備部隊など)。

 対戦車兵3個大隊(パンツァーファウスト装備)。

 戦車1個師団(士魂部隊含む。装備は原則としてⅢ号戦車、一部のみⅣ号やティーガー、チハ、ハ号、八九式装備)。

 工兵2個連隊。

 

 海軍は、新設計のアイカ型重巡洋艦1隻(まだ船体建造中)、これまた新設計のニジッセイキ型軽巡洋艦2隻(1隻は船体建造中、1隻は艤装工事中)、これも新設計のカイジ型駆逐艦4隻(1隻完成、他は艤装なり船体なり建造中)、さらに新設計のオウギョク型防空駆逐艦1隻(船体建造中)(なおここまでは、高雄型重巡洋艦、川内型軽巡洋艦、夕雲型駆逐艦、秋月型防空駆逐艦のほぼパクり)、ウインク型砲艦14隻(4隻が船体建造中、3隻は艤装工事中。残りは運用中)。なお現在、航空母艦の設計が始まっている。

 これに加えて、第13艦隊の戦力も忘れてはならない。戦艦17隻(うち8隻は高速)、正規空母13隻、重巡洋艦21隻、軽空母9隻。軽巡洋艦と駆逐艦は、数えるのが面倒なので割愛する。

 

 航空隊は、陸海軍合わせて一式戦「隼」Ⅱ型36機、「隼」Ⅲ型甲18機、零式艦戦21型100機、零式艦戦32型18機、九七式艦攻91機、九九式艦爆96機、一式陸攻36機。

 そしてこれはあくまでも、ロデニウス連合王国軍“現地民”による航空隊の装備。そう、これに加えてタウイタウイ部隊の航空隊がいるのだ。()(とう)だの()(なか)だの(いわ)(もと)だの(いわ)()だの(とも)(なが)だの(むら)()だの()(ぐさ)だのルーデルだの、“チート揃い”の連中が。

 もう想像したくもない。

 

 なんということでしょう。まさに劇的ビフォーアフターではありませんか。

 こんな戦力は、ムーでも持っていない。練度を度外視して考えれば、この装備に匹敵する軍隊を持つ国は、神聖ミリシアル帝国かグラ・バルカス帝国(あとアニュンリール皇国?)くらいのものである。少なくともパーパルディア皇国軍をぶっちぎって、第三文明圏トップの軍事力を持っているのは間違いない。

 もし第三文明圏周辺においてロデニウス連合王国にケンカをふっかけた国があれば、ほぼ間違いなく完膚無きまでに叩き潰されるだろう。

 

 うp主なら、こんな国にケンカを売りはしません。

 

 

 そんな軍事強国と化しつつあったロデニウス連合王国、その外交部門にある1通の国書が届いた。

 

「あー、今年か。いつもの祭」

 

 外交官の1人が、届けられた国書を見て呟く。その国書はフェン王国から届けられた国書で、内容は軍祭の案内だった。

 軍祭。それはフェン王国が5年に1度主催する祭で、各国の武官が来訪する。他国の軍の装備を確認するとともに、自国の装備を他国に見せつけ牽制する舞台である。

 

「こりゃ軍務部行きかな」

 

 そう呟いて、外交官はこの国書を軍部に届けるよう部下に命じた。

 

 

「軍祭?」

 

 軍務卿ヤヴィンに執務室まで呼び出され、この話題を出された堺は、すっとんきょうな声を上げた。

 

「何ですか、それは?」

「そういえば堺殿は初めてでしたな。軍祭は、フェン王国が5年に一度開催している祭だ。各国の軍が自国の装備を他国に見せ合う、という祭で、他国を牽制する場でもある」

 

 ここまで言って、軍務卿ヤヴィンは何かを期待するような目を見せた。

 瞬間、堺はその続きの言葉を明確に予想した。予想して()()()()

 

「堺殿、今年は(けい)が行ってきてくれ」

 

 そら来た。この始末だ。

 

「卿は、このロデニウス連合王国が模範とすべき、強力な陸軍と艦隊、さらにひりゅ……失礼、航空隊を有しておる。それを是非とも各国に見せてきてもらいたいのだ。また、この世界の常識を知っていただきたい。ついでにこの機会だ、外交部とも話し合って、この国書への回答を送るという形で、ひとまず外交官を送る。そして、この機会を利用して両国の間に円満な国交を開設したいと、外務部の連中は言うておった。軍祭の前に顔合わせをしておくのも良かろう。堺殿、臨時外交官を頼む」

 

「承知しました」

 

 ヤヴィンの執務室を退室した後、ヤヴィンから受け取ったフェン王国の国書を見て、面倒かつ厄介な仕事が来たと、堺は小さくため息をついた。

 まさか臨時外交官をやらされるとは、想像していなかったのである。

 

「ったく、なんでこんなに仕事を言われるのだろうなぁ。俺は大和(やまと)の紅茶を楽しみながら、のんびりやっていきたいのに……」

 

 その時、

 

「ん?」

 

 堺の目は、国書の下のほうに小さく記された文章を捉えた。

 

「何だこりゃ?」

 

 堺は目を細め、その文章を読む。目が文章の末尾まで動いた直後、堺は「全てを悟った」と言わんばかりの顔を見せた。

 

「なるほどな、()()()()か」

 

 その小さな文章には、意訳すると「パーパルディア皇国からの侵略の危機に晒されているから、助けて欲しい」という内容が書かれていたのだ。

 

「この国も、パーパルディアに怯えてるんだな。どうせパーパルディアはうちの国家(ロデニウス連合王国)も侵略するんだろうし、それにヤヴィン卿は円満な国交を開設したい、って言ってたな。ならばその円満な国交とやらを、『安全保障条約まで盛り込んだ国交』と解釈して……」

 

 堺は元々根が善人であり、こういう困った人がいると、()()()()に助けたくなる性質なのである。

 堺は、何やら黒い笑みを浮かべると、国書を抱えてタウイタウイ泊地に戻っていった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 さて、堺のこのやる気のない発言が見られてから20日後、中央暦1639年9月21日。

 ロデニウス大陸より海を隔てた遠方、フィルアデス大陸。そこに存在する第三文明圏の中心国にして列強、パーパルディア皇国の第3外務局に、怒気のある声が響き渡った。

 

「あの計画はどうなっている!?」

 

 怒鳴り声を上げているのは、第3外務局長のカイオス。

 

「はい……もうすぐ国家監察軍東洋艦隊から、22隻の艦隊と2個ワイバーンロード部隊が、フェン王国(ちょう)(ばつ)攻撃のため出撃します」

 

 冷や汗をかきながら部下・バルコが答える。

 

 パーパルディア皇国の外務局、これは日本国でいう外務省にあたる国家機関であり、他国との外交を職務としている。外務局は第1、第2、第3の3つがある。

 第1外務局(通称「外1」)は皇宮パラディス城の内部に位置し、世界5列強のうち自国を除いた4国を相手に外交を行う。相手が列強であるため、外交には細心の注意が必要となり、高度な政治的判断も求められる。よって、エリート中のエリートがここに配属される。

 第2外務局(外2)は皇宮の外側に位置し、列強を除く文明国を相手として外交を行う。国力の差を後ろ楯に、無理な要求を押し通して国益を確保するスタンスが基本となる。ただし、先日滅亡したパガンダ王国のような列強の保護国もいるため、一方的に高圧的態度をとる訳にもいかない場合がある。そのため、こちらでもある程度の政治的判断が求められ、エリートが属することとなっている。

 そしてこの第3外務局(外3)は、皇宮の最外縁部にあり、文明圏外国を相手に外交を行う。如何に相手に高圧的に出て、どれだけ利益を(むし)り取るかが求められる。ちなみに、対象となる相手国の数が多いので、相対的に職員の数も多く、第3外務局だけで外務局所属人員の6割が所属している。

 また、この第3外務局は「国家監察軍」と呼ばれる独自の軍を保有し、その指揮権を持つ。この軍は、他国(主に文明圏外国)に対して懲罰攻撃を行うことをその使命としている。

 

 ここで少し、地理の話をしよう。

 パーパルディア皇国から見て、東に約210㎞行ったところに、縦150㎞横60㎞の、(まが)(たま)を逆さにしたような形の島がある。その島を支配する国の名は、フェン王国。

 そのフェン王国のすぐ東隣には、フェン王国の国土を鏡写しにしたような、勾玉のような形の島があり、こちらはガハラ神国という国が支配している。

 そして、その2島の南、約1,500㎞の位置にロデニウス大陸がある。

 

 今回、パーパルディア皇国はフェン王国に対し、第3外務局を通してフェン王国南部の縦横20㎞の土地を献上するよう求めた。その地帯は森林地帯であるため、皇国外務局としては国土を得たという実績が残り、フェン王国としても土地の有効利用となり、かつパーパルディア皇国の同盟国となって外敵から襲撃される危険性が低くなる。また、パーパルディア皇国に忠誠を誓うことで、準文明圏国と見なされ、皇国から技術を供与することも検討している。

 要するに、パーパルディア皇国の国土が広がり、フェン王国も発展して国が富む、という双方にとって利益のある素晴らしい提案なのである。

 しかし、フェン王国のシハン王はこの素晴らしい提案を断った。

 

 そこで、第3外務局は第2の案を提出する。それは、同土地を498年間租借する、というものだった。

 ところが、シハンはこれも丁重に断る。

 

 その結果、第3外務局ではこのような意見が主流になった。

 

「列強国の顔を潰された」

 

 かかる無礼は許せぬと、国家監察軍によるフェン王国に対する懲罰攻撃が決定されたのだった。

 それも、攻撃の日取りをわざわざ軍祭の日に合わせてである。

 

 軍祭には、各国の武官がいる。その祭に合わせて攻撃することで、各国に皇国の実力を知らしめ、恐怖を植え付ける。また、フェンを攻撃することで、フェンと関わった国家全てが今回のような攻撃に遭うという、見せしめになるのだ。

 

 ロデニウス連合王国、パーパルディア皇国、フェン王国、そしてその他の参加各国。

 果たして、軍祭で彼らを待ち受けるものは何か?

 

 ……それは、誰にも分からない。




ええと…なんかすみませんネタだらけで…

海軍の設計部署のところは「ヒトラー最期の12日間」から、航空隊の訓練模様の下りは「A-10訓」からネタを持ってきています。不快に感じられた方、申し訳ありません。

軍艦のネーミング法則についてですが、
アイカ型重巡洋艦→日本で流通するリンゴの銘柄
ニジッセイキ型軽巡洋艦→日本で流通するナシの銘柄
カイジ型駆逐艦→日本で流通する赤色のブドウの銘柄
オウギョク型防空駆逐艦→日本で流通する緑色のブドウの銘柄
です。

次回予告。

パーパルディア皇国からの侵略の脅威に晒されたフェン王国。軍祭を利用して援軍を送ってくれそうな国家を探す剣王シハン。そこへロデニウス連合王国から国書が届けられる…
次回「武士の国、フェン王国」

さあ、そろそろ久々のドンパチの時間だコラァ!

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