鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
ついこの間、総合評価が600ポイント超えたと思ったばっかりなのに、なんでもう700ポイント超えてるの!!?
皆様、ご愛読本当にありがとうございます!
そして、平均評価はまた下がって7.47になってる…まあ、仕方がないかな、結構好き勝手やってますし、それを好まぬお方もいらっしゃるのでしょう。
評価1をくださいました磁区様、評価6をくださいましたjunq様、評価7をくださいましたasosan様、評価9をくださいましたkonndou様、如月遥様、祇圍 ケント様、Galm1Cipher様、評価7から8に上げてくださいました主犯様、本当にありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録していただいた皆様、ありがとうございます。
タイトル通り、今回からいよいよ、フェン王国が登場します。そして、原作では大きな事件のあった軍祭もまた、近づいています。
果たして、拙作ではどうなるのか…
それでは、ごゆっくりどうぞ!
「第三文明圏」。これは、この世界の東にあるフィルアデス大陸の南側に集まっている国家をまとめていう呼称である。その第三文明圏の“圏外”に国土を持つ国は、ロデニウス連合王国だけではない。他にもいくつか
フェン王国は、フィルアデス大陸の西南西約210㎞の位置にある、縦150㎞幅60㎞の勾玉を逆さにしたような形の島にある島嶼国家である。そのすぐ東隣には、フェン王国の島を鏡写しにしたような、勾玉のような形の島があり、そこにはガハラ神国が存在する。そして、その2島の南、およそ1,500㎞ほどのところにロデニウス大陸がある。
人口わずか70万人の小国であるフェン王国には、魔法がない。その代わりに、国民全員が教育として剣を学んでいる。剣に生き、剣に死ぬ。それが、フェン王国国民の生き様である。
どんなに身分が貧しくとも、剣の腕が立つならば尊敬される。逆に、身分が高くても剣が扱えない者は、軽蔑される。それが、フェン王国の文化である。
中央暦1639年9月11日、フェン王国の王宮騎士団に所属する千士長アインは、今日も鍛練として剣を振るっていた。彼は国に10人しかいない、「
もともと彼は、王宮騎士団に入るつもりはなかった。剣は好きだったが、同時に建築も好きで、建築の道を進もうと思っていた。
そんな彼の進路を変えたのは、母である。
アインがまだ学生だったころの冬のある日、彼は自分の髪が伸びているのが気になり、夕食前に髪を切りに出かけた。その時アインの母は、自宅で夕食の準備をしていた。
事件は、彼が出かけている間に起こった。アインの家のすぐ近くには川が流れているのだが、その川辺を、2歳の子供の手を引き、背中に赤ん坊を背負った女性が歩いていた。しかし、女性がちょっと目を離した隙に、2歳の子が川に落ちてしまったのである。背中に赤ん坊を背負っていたその女性は子供を助けることもできず、近所に助けを求めた。それに応じたのが、アインの母だったのである。
アインの母は、冬の寒い日にも関わらず川に飛び込み、子供を助けた。しかし、子供を岸に引き上げた後で、急激な身体の冷えのために心臓発作を起こし、そのまま還らぬ人となってしまったのである。
アインが家に帰った時には、母は既に冷たくなっていた。泳ぎが得意だった彼は、自分がいれば母を犠牲にすることなく、子供を助けられたのではないかと後悔し、何度も何度も泣いた。
そんなある日、アインは学校で習った文を見て、王宮騎士団に入ることを決意する。それは、軍であると同時に治安維持も担う王宮騎士団の、規則の1つであった。
・王宮騎士は、個人の生命、身体、財産の保護に任じ、犯罪の予防とその鎮圧、犯罪者の逮捕、その他公共の安全と秩序の維持を以て、その責務とする。
そして剣の腕も磨いたアインは今、王宮騎士の1人となっていたのである。
「アイン、ちょっと来てくれ」
そんなアインを、上司である王宮騎士団長マグレブが呼び止めた。
「何ですか?」
「剣王シハンがお呼びだ」
剣王シハン、それがフェン王国の現国王の名前である。
「剣王が? 私を?」
剣王が千士長を呼ぶことなど、就任式くらいでしか考えられないことである。なのに今、お呼びがかかったということは、どうやら相当の事態が起きたと考えられる。
「いや、お前だけじゃなく私もだ。というより、国内の全ての十士長以上の者に召集がかかっている。どうやら、国の一大事らしい。さ、行くぞ」
ここまで言われては、断る理由もない。
彼はマグレブや他の者たちとともに、王宮へと急いだ。
フェン王国首都アマノキ、フェン王城。
集まった者たちを前に、剣王シハンは口を開いた。
「諸君に急に集まってもらったのは、他でもない、大事な話があるからだ。心して聞いてほしい。
……パーパルディア皇国と、紛争になるやもしれん」
「「「!!!!!」」」
全員に緊張が走った。
パーパルディア皇国といえば、第三文明圏唯一の列強である。その技術レベルは非常に高く、フェン王国との国力の差は、比べるべくもない。
とは言うが、数字が出ないと分からないこともあるだろう。そこで試しに、ここでフェン王国とパーパルディア皇国の国力を比較してみよう。
フェン王国 対 パーパルディア皇国
人口 70万人 対 7,000万人
軍船 バリスタ配備斬り込み型21隻 対 魔導戦列艦422隻(なおこれは現在の皇国主力軍に所属する艦のうち、最新鋭艦に分類されるフィシャヌス級100門級戦列艦以上の艦艇のみであり、その前級であるフィルアデス級100門級戦列艦や国家監察軍の所有艦艇、竜母などを含んでいない)
歩兵の主力武器 剣 対 マスケット銃
ワイバーン 0騎 対 300騎
ワイバーンロード 0騎 対 1,000騎以上
圧倒的不利ではないか、フェン王国は。
しかも、不利なのはそれだけではない。先述の通りフェン王国には魔法がないのだが、これで一番問題になるのは、何よりも魔法通信が使えないことである。魔法通信がないことが、そのまま情報伝達速度の差となって現れ、たとえ相手と兵の数が同じだったとしても、ものすごい戦力差ができてしまうのだ。
ちなみになぜ、フェン王国がワイバーンを保有していないのかというと、それは隣国であるガハラ神国に住む風竜に原因がある。風竜は知能が高く、また知能、飛行能力、最高速度、防御力、全てにおいてワイバーンどころかワイバーンロードすら上回る。いわばワイバーンの完全上位種だ。ワイバーンはそれを恐れており、結果、フェンにはワイバーンはいないのである。
戦力差は絶望的であり、しかも相手は文明圏内国家ならともかく、よりによって列強。兵士の装備の質も別格である。
場は完全に静まりかえった。
「現在、ガハラ神国からも援軍を送ってもらえないか、交渉している。各方面に対して対策を実施中だ」
シハンは、ガハラ神国の首都タカマガハラの神宮に住まう、神王ミナカヌシに親書を送っていた。
「とにかく各人、戦の準備をしておいてくれ」
シハンのこの言葉を最後に、全員が解散した。しかし、王城内には張り詰めた空気が流れている。
「ううむ、厳しいか……!」
会議を終え、自室に戻って執務をしていた剣王シハン、しかしその顔色は優れない。
彼の前には、文明圏外の各国(シオス王国やトーパ王国など)から送られてきた、親書に対する回答の国書がある。どれにも、援軍は出せないとの返事が書かれていた。トーパ王国など、物理的に距離が遠いことも理由としてあるのだが、やはり最大の理由としては、相手が列強と知って尻込みしているのだろう。
「剣王殿、モトム入ります」
「うむ」
その時、
「モトム、ただいま戻りました。如何ですか、援軍の件は?」
「各国とも難しいと言うてきておる」
難しい顔で、シハンはモトムに返事をする。とそこで、モトムが何かの書類らしきものを脇に抱えているのが、目に留まった。
モトムは、剣王シハンの直接命令を受けて、軍祭の案内を各国に出しに行っており、その際にロデニウス連合王国を訪れていた。そして同国の外務部に、国書を渡していたのである。
「剣王、その援軍に関してですが、援軍を送ってくれそうな国が、一国だけ見つかりました」
「なに、本当か!? それはどこだ?」
「ロデニウス連合王国にございます。我が国の南方、ロデニウス大陸を治める国家です」
「ロデニウス…あそこか」
シハンも、ロデニウス大陸において大規模な戦争と政変が起き、6つの国が最終的に連合して、1つの国になったという話は聞いていた。
「そのロデニウス連合王国の、サカイと申す者から親書を受け取っております。それがこちらです、ご覧ください」
モトムは、脇に抱えていた書類をシハンに差し出した。シハンはそれを受け取り、広げて読む。
ちなみにこの親書、差出人の一番最初が堺の署名になっているだけである。そして、国王カナタ1世と外務部による文面のチェックを受けてOKをもらった上で、堺がモトムに直接手渡している。
「なになに……『僭越ながらこの度の親書、読ませていただきました。パーパルディア皇国から圧力を受けていること、心中お察しします。ロデニウス連合王国政府は、貴国と国交を開設したくあり、また貴国を支援したくあります。国交の開設が認められるのであれば、軍事支援も含めた安全保障条約の締結までを視野に入れております。国交開設と安全保障条約の締結が出来れば、貴国に対してパーパルディア軍を十分に撃破しうる軍隊の派遣を行なうことができ、またそのための用意もしております。なるべくお早めのご決断とお返事を、お待ちしております』……!?
何だこれは!? あのロデニウス連合王国は、そこまでの力があるのか!?」
シハンは、親書の内容に驚きを隠せない。
確かに、クワ・トイネ公国がロウリア王国に対して逆転勝利した時点で、シハンもこれは何かがあったなと気がついていた。だが、あの列強パーパルディア皇国に勝る力がある軍隊とは、これは本当だろうか?
「詳細は不明ですが、これを私に渡した時、サカイ殿は自信満々に申しておりました。『我が軍にも銃があるのですが、我が銃はパーパルディアのそれをはるかに凌駕する性能がございますので、我々はパーパルディア皇国軍など恐れてはおりません』と。また、同国の様子を少しだけ見てきたのですが、同国の街はパーパルディアの都市よりも発展した様子を見せておりました。軍船もパーパルディアのそれより大きく、しっかり魔導砲を搭載しておりましたので、恐らくホラではございますまい」
「なんと!? ロデニウス連合王国には、我が国のトップシークレットである魔導砲まであるのか!」
「はい。ガハラ神国の外交員も、同様のことを言っております。恐らくロデニウス連合王国の技術は、パーパルディア皇国どころか、上位列強である神聖ミリシアル帝国やムー国にも匹敵しうるものがある、と」
「あのガハラの外交員が、そう言ったのか? ……褒めすぎかもしれんが、ワシも俄然、興味が出てきたわ。会談の日取りの設定を頼む」
「ははっ!」
こうして剣王シハンは、ロデニウス連合王国の特使と会ってみることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
中央暦1639年9月18日。
堺は、ロデニウス連合王国の臨時外交使節として、同じく臨時使節に抜擢された"
ちなみに、今回特使船として選ばれたのは、
「何というか……身が引き締まるな、大和」
「ええ。しかしこの国、かつての日本と雰囲気が似ていますね。治安も良いようですし、艦娘や妖精の慰安旅行先としては、ありかもしれません」
国中が厳しく、厳格な雰囲気が満ちている。それがフェン王国に対する、堺と"大和"の印象であった。
しかし、生活レベルは低く国民は貧しいものの、それに反比例するかのように精神レベルは高い。誰もが礼儀正しいのだ。
「こりゃあ……かつて日本が持っていた、武士道ってやつが大成されてるようなもんだな」
堺はそんな感想も抱いた。
フェン王城に到着したロデニウス連合王国の使節団一行は、謁見室に案内され、剣王が来るのを待っていた。
謁見室は、襖と畳、床の間といった日本家屋の和室の様相だ。派手な装飾は一切なく、装飾らしいものを強いて挙げるなら、見たことのない花をさした鉄製らしい花瓶と、床の間にかかった風景画くらいのものだ。
(和室っぽい、シンプルな雰囲気……こういうのは好きだな)
堺は好印象を持つ。
「お待たせいたしました、剣王が入られます」
ここまで彼らを案内してくれたマグレブが、声をかける。その瞬間、
「!?」
堺は、ものすごい気配を感じた。それは、超越した剣の腕を持つ者から溢れ出る、一種の凄みのようなもの。マグレブから出ている雰囲気も大概だったが、これはそれをはるかに超えている。これが、剣王の雰囲気なのだろう。
自分自身も日本軍人であるからには、剣道くらい
開かれた襖から入ってくる人影が見えた瞬間、堺は咄嗟に、正座した状態から畳に両手の握りこぶしをついて、頭を下げた。傍から見れば、見事なるDOGEZAである。
剣王とやらが着座する気配と、かさかさという布擦れの音がする。その後、
「特使殿、面を上げられよ」
低く、重厚な響きを伴った声がかけられる。堺はゆっくり顔を上げた。
堺の前方1メートルほどのところ、床の間を背にした上座に、壮年の男性が1人、座っている。礼服を着ていたが、その状態でも腕や体幹を非常によく鍛えているのが、はっきりと分かった。
「そなたらが、ロデニウス連合王国の使者か」
剣王シハンが話しかけてくる。表情も口調も穏やかだが、一言でも失礼なことを言ったら、その場でこちらを斬り捨てることも容易にやれるだろう。そう考えた堺は、緊張で少し声を震わせながら話し始めた。
「はい。私は、ロデニウス連合王国特使の、堺 修一と申します。この度、貴国と国交を開設したく、参上いたしました。まずは、ご挨拶として、粗品ではありますが、我が国の品をお持ちしました。どうぞご覧ください」
一緒に来ていた特使たちが、シハンの前に品物を並べていく。扇や水彩画の巻物、陶器、日本刀、双眼鏡などだ。
だが堺には、剣王シハンがまず何に目を付けるか、既に予想がついていた。ここフェン王国は剣の国。ならば、その王たるシハンが最初に目を止めるのは……日本刀に違いない。
堺の予想通り、シハンが最初に手に取ったのは、日本刀だった。鞘を持ち、まずは柄と鞘を確認する。鞘は黒く塗られており、金色の吊り紐が付けられている。その後、シハンはゆっくりと刀を引き抜いた。
日本軍妖精たちが丹精込めて打った刀が、そこにあった。傷1つない刀身は白銀色の輝きを放ち、切れ味も申し分ないことを窺わせる。その刀身は緩やかに反り返り、武器としての高い機能性と、美術品のごとき美しさを兼ね備えている。
じっくり刀を観察していたシハンは、しばらくの後口を開いた。
「ほう……これは良い剣だ。貴国には、優秀な鍛冶職人がいらっしゃるようですな」
気に入られたらしいと感じ、堺はひとまずほっとする。
気を良くしたシハンにより、話が始められる。以前に送られている親書や、今回特使団が持ってきた国書の内容をよく確認し、間違いがないか照らし合わせていく。
会談は、順調に進んでいた。
「失礼ながら、私は貴国のことをよく知らない」
書類の確認がほとんど終了し、会談もそろそろ終わりかと堺が感じ始めた頃、シハンがふいに言った。
「貴国からの提案……あなた方の仰ることが本当なら、我が国はすさまじい力を持つ国と、対等の立場で関係を築くことができる。また、我が国単独では決して届かない、夢のような技術も手に入る。我が国としては申し分ない」
「それでは……」
堺の顔が明るくなりかけた。
が、それを遮るようにシハンが言葉を続ける。
「だが、それは誇張でなければ、の話だ。私としては、貴国がそこまで隔絶した技術を……列強パーパルディア皇国すら凌駕する力を持っているとは、とても信じられんのだ」
堺は素早く考えた。
(信じられてはいない、ってことか。無理もない、ロデニウスが短期間でここまで変わったなんて、俺がシハンの立場だったら信じないだろうしな。となると、百聞は一見にしかず、見てもらうしかないか)
「それでは、我が国に使節を派遣していただければ……」
堺がそう提案したとたん、
「いや、私の目で直に見てみたい」
シハンは、とんでもないことを言い出した。
「と、仰いますと?」
「貴国には、優秀な軍隊があるのだろう? それらのうち、一部でも良いから我が国に派遣していただきたい。
貴国にも案内がいっていると思うが、来る9月25日にちょうど軍祭があるのだ。そこで、貴国の軍隊、特に水軍を見せてもらいたい。要は、“力”が見てみたいのだ」
まさかの提案である。
「今年、ちょうど我が国の水軍から廃船が4隻出る。軍祭の折に、それを敵に見立てて、攻撃していただきたい」
堺と"大和"は面食らった。
通常、国交も築いていない国に軍を派遣するというのは、相手国にとって威嚇にしかならず、嫌がられるものだ。派遣する側としても細心の注意を払わなければならない。
だというのにこの男は、いやこの国は、その軍を見せろと言う。しかも首都まで持ってこいと。
「承知しました。一旦本国に持ち帰り、検討させていただきます」
「うむ、良い返事を期待しておりますぞ」
会談はこれにて終了した。
一方その頃、ロデニウスの特使団を迎えたフェン王国水軍の兵士たちは、誰も彼もたいへん興奮していた。その理由はもちろん、フェン王国の沖合いに停泊した、重巡洋艦の「高雄」である。
フェン王国の軍船どころか、パーパルディア皇国の砲艦すら凌ぐ巨大な鋼鉄製の船体。その上に聳え立つ城のような建物(艦橋のことである)。そして、その周囲に多数並んだ、武装と思われる巨大な鉄の筒。
兵士たちが興奮するには、十分すぎる要素があった。
その後、政府幹部の協議により、ロデニウス連合王国はフェン王国と正式に国交を開設することを決定するとともに、軍祭にも参加することを決定した。
その軍祭が、波乱に富むものになるとは知ることもなく。
はい、軍祭はちょっと長くなりそうなので、勝手ながら今回は顔合わせだけで済ませることにしました。
そして、それに伴ってドンパチパートも次回以降になります。期待されていた方、申し訳ございません。
次回予告。
ついに開催された軍祭。第三文明圏外各国の軍が揃う中で、ロデニウス連合王国より派遣された軍は一際異彩を放つ。そこへ、空から接近する影が…
次回「波乱の軍祭(前編)」
あと、これから実習だの期末試験だのでたいへん忙しくなりますので、今月いっぱいは更新が遅くなりがちになるかと思われます。ある程度の書き溜めは一応用意しているのですが…
また、活動報告のほうにアンケートを載せておりますので、よろしければそちらのほうのご回答も、お願いいたします。