鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
中央暦1644年4月1日 23時45分、グラ・バルカス帝国 帝都ラグナ。
戦争中とはいえ…いや、戦争中だからこそ、この帝都ラグナは騒がしかった。多くの人々が通りを行き交い、造船所は何隻もの船を整備・建造し、工場は煙突からもくもくと煙を吐き出して武器などを製造している。それは日が沈んでも変わらなかった。ただ、年末だけあって流石に稼働している工場の数はいつもと比べると少なくなっている。
都市の明かりが太陽光から街灯のそれに変わったラグナ、その帝都防衛隊司令部の建物の屋上で1人の男が夜のラグナ港を見つめていた。彼の名はラーセン・ゲーニッツ、階級は少将。本土防衛隊司令官に昇格したセトレイ・ジークス中将に代わって、帝都防衛隊長となった男である。
「壮観な光景だな…」
ラグナ港に停泊する幾多の艦船を眺め、彼は感嘆のため息を吐いた。
彼の眼前に停泊しているのは、戦艦2隻、空母6隻、大小の巡洋艦10隻以上。駆逐艦や輸送船・タンカーに至っては、もう数えるのが面倒くさくなるほど多数停泊している。グラ・バルカス帝国本土最大の港としての威容がそこにあった。
ただし、それらの艦の多くはボイラーの火を落としている。船荷の積み下ろしや
それに加えて、グラ・バルカス帝国には実は深刻な問題が発生しつつあった。原油不足である。もともと本土が小さく、それほど多くの資源が取れないグラ・バルカス帝国は、資源の多くを外征で獲得した植民地に頼っていた。そこに加えて、比較的大規模な油田のあったムー大陸植民地が陥落し原油供給が途絶したことで、本土の原油不足がより深刻化してきたのだ。既に本土ではガソリンではなく木炭で走るバスが民間路線の大部分を占めており、一般人のガソリン自動車や暖房器具(石油ストーブとか)の使用が制限されているという有様なのである。当然、軍艦や航空機の燃料費もケチらなければならなくなってきていた。
「敵はムー大陸植民地を落としたものの、そこからは動いていないと聞いている。当然だ。アストラル大陸には多数の友軍が展開しているし、それにこのラグナ港だけでこれだけの艦艇がいるんだ、この港を侵せる者などこの世界のどこにもいない!」
いつの間にか、彼は思っていたことを口に出していた。
「さて…そろそろ帰るとしよう。家族と新年を祝わなければ」
そしてゲーニッツは、英気を養うべく屋上から降り、帰宅の準備を始めた。その彼の背後で、1隻の駆逐艦が哨戒任務から帰投しつつあった。
「………」
「………」
「………」
沈黙ーーーーただただ圧倒的な沈黙。単調な機関音とハイドロフォンに入る敵駆逐艦の航行音の他は、重苦しい静けさだけが潜水艦「呂500」の艦内を支配していた。艦長の”呂500”をはじめクルーたちは一同揃って物音1つ立てないよう細心の注意を払っており、会話や報告すらも蚊の鳴くような小さな声を徹底していた。艦そのものとクルー一同が一体化し、完全に「サイレントハンター」として動いていたのである。
その「呂500」は現在何をしているのかというと、ラグナ港に潜入しつつあるのである。…それも、哨戒任務から帰投中らしい敵駆逐艦を尾行して。
ここまで来るのも容易なことではなかった。グラ・バルカス島に近づいた時から昼間はひたすら潜航に徹し、航空機の目から逃れ続けた。電池の充電は夜間に浮上あるいはシュノーケルだけ海面に突き出して行っていたのだが、その夜間浮上航行にしたって、いつ敵の駆逐艦や哨戒艇、航空機に見つかるか分かったものではない。また、沿岸に近付けば敵の沿岸砲台も恐ろしい脅威となる。慎重に慎重を重ね、それら全てを掻い潜って、漸く彼女たちはラグナに到達したのだった。
ラグナ港の入り口には防潜網が仕掛けてあった。しかし、ドイツ海軍や日本海軍で仕込まれた無音航行と防潜網(毛)カッターを装備する「呂500」には、この程度は脅威たり得なかった。そしていよいよ、彼女たちは目指すラグナ港へ「招かれざる客として」入港したのである。
ここまで彼女たちを案内してくれた駆逐艦は、ゆっくりと離れていきつつある。どこかの埠頭にでも接岸しようとしているのだろう。後で案内のチップとして魚雷をくれてやろうか、と考える”呂500"であった。
絶望的に要らない? 残念ながら、受け取りに関して拒否権はない。
「ハイドロフォン、どうですか?」
敵地への侵入を果たした、と肌で感じながら、”呂500”は聴音室に詰める妖精に尋ねた。
「こちら聴音、敵駆逐艦の機関音遠ざかりつつあり。それ以外にはめぼしい機関音は認められず」
ささやき声で答える妖精。
「りょーかい。でも多分、上は敵艦でいっぱいですって」
「その割にエンジン音は少ないですね。おそらく、首都の港だということで絶対的な安全を信じ、ボイラーの火を落としているのでしょう」
副長妖精が意見を述べた。なお、この妖精の懐には遺書がしまってある。
「なら、大きなチャンスですって」
獲物を前にした肉食獣を思わせる、不敵な笑みを浮かべる”呂500”。
蒸気タービンを機関とする艦は、一度ボイラーの火を落としてしまうと、それを起こして航行できる状態にするのに最低でも数時間、大抵は1日かかる。逆に言うと、その間はほぼ何もできない(人力で操作する高角砲や対空機銃であれば動かせるが)から、潜水艦にとっては狙い放題なのだ。しかも今は夜なので、潜水艦の天敵たる航空機は飛んでいないし、この夜の闇が潜水艦の姿と潜望鏡を隠してくれる。おまけに港の中なので海面の波もかなり軽減されるから、磁気信管魚雷の早爆率を大きく減らせる。
「始めますか、艦長?」
「もう少し待ちますって。さっきの駆逐艦が機関を落としたら、ぼつぼつ始めますって」
「
そのまま待つこと半時間、ついに駆逐艦の機関音が聞こえなくなった。
「こちら聴音、駆逐艦の機関音、聞こえなくなりました」
「よーし」
少し仮眠を取っていた”呂500”は、起こしに来たソナー担当妖精からその報告を受け、直ぐ様指示を飛ばした。
「潜望鏡深度まで浮上」
「Jawohl, Herr Kaleun. 潜望鏡深度まで浮上!」
副長妖精の復唱を受けて、艦内が俄かに活気付き始める。
「狩りを、始めますって」
獲物を見出した獣を思わせる、ギラギラとした眼光を湛えた“呂500”。戦意は十分なようだ。
深度30メートルというかなりの深さ(ラグナ港は戦艦が停泊できるレベルの深さを持っているのだ)にいた「呂500」が、その艦体をゆっくりともたげる。潜望鏡を海面上に突き出して周囲を見渡した途端、”呂500”は小さく歓声を上げた。
「うわぁ、これはいいですって。どっちを向いても
「艦長、どれから狙いますか?」
副長妖精が尋ねると、彼女は改めて周囲を観察し始めた。
「ちょっと待って欲しいって。まず、11時半から1時半の方向にかけて、ペガスス級とちっさいの、合わせて6隻の空母が2列に並んで停泊してますって。その隣、2時方向にタウルス級重巡洋艦が2隻…3時方向、遠いけど戦艦が見えますって。4時から4時半の方向には…これは敵の輸送船ですって。5隻くらいずらっと並んでるって。あとタンカーも1隻いますって。6時方向は私たちが入ってきた港の出入口で……8時方向、敵の小型巡洋艦と駆逐艦が多数。あっ、9時から11時の方向に輸送船とタンカーが多数接岸しているって! それと10時の方向、陸上に円柱形の大型建造物、多分石油タンクですって!
無理して持ってきて良かった、WG42!」
「承知しました。どれからやりますか?」
今の”呂500”のふわっとした説明だけで、副長妖精はだいたい様子を理解していた。
「それじゃ、2時方向の重巡洋艦から仕留めますって!
総員戦闘配置! 艦内の魚雷20本を、前部魚雷発射管室へ! 残り2本は後部発射管に装填! 持ってきた酸素魚雷22本、ぜーんぶまとめてぶつけてやりますって!」
「Jawohl, Herr Kaleun. Auf Gefechtsstationen*2!
手空きの者は、魚雷20本を前部魚雷発射管室に運べ! 残りの2本は後部発射管に装填、装填完了後は指示を待て!」
命令を受けた妖精たちが、静かに急いで持ち場につき始める。2人がかりで魚雷を持って走る者もいる。
「ええと、タカオ型の吃水の深さは…」
“呂500”が敵艦識別リストを取り出して潜望鏡とにらめっこする傍ら、妖精たちは続々と配置についた。魚雷の装填作業が始まろうとしている。
「よし、1番発射管、魚雷装填! 信管は磁気、調定深度5メートル! 1発で竜骨をへし折ってやりますって! 装填したら注水開始!」
「Jawohl, Herr Kaleun. 1番管、信管磁気、深度5メートル、魚雷装填! 装填完了次第注水せよ!」
「続いて2番発射管、魚雷装填。信管は磁気、調定深度は、ええと、4メートル! 敵の小さい空母にぶち込みますって!」
矢継ぎ早に命令を出す”呂500”。
「3番、4番発射管も磁気信管で魚雷装填! データ入力はちょっと待ってほしいって。
5番、6番発射管も信管磁気でスタンバイですって!」
「Jawohl, Herr Kaleun. 3番、4番、5番、6番、磁気信管装填! データ入力はしばし待て!」
「艦長、FaT魚雷はどうしましょう?」
「4本とも、前部魚雷発射管室に持ってって!」
急速に「戦闘」の気運が高まっていく。
ちなみに一言解説しておくと、磁気信管とは文字通り、弾頭部分で敵艦から発する磁気を探知して敵艦を探り当てる信管で、敵艦の金属反応を検知して起爆する仕掛けの信管である。これがあると、敵艦の艦底部を直接攻撃して竜骨の損傷を狙うことができる。波が荒い場合には早爆する危険があるのだが、ここは港の中だ、そんなことはないだろう。
「面舵60!」
「面舵60ヤー!」
「2番発射管、装填よし!」
「了解、注水してくださいって!」
「2番了解!」
ゆっくりと回頭し、停泊中のタウルス級重巡洋艦に艦首を向ける「呂500」。十数秒後、回頭が完了した。潜望鏡のど真ん中に、重巡洋艦のシルエットがぴったり重なる。
その瞬間、”呂500”は躊躇なく命じた。
「さあいきます、てー!」
「Rohr Eins! Los!*3」
カチリと軽い音を立て、発射スイッチが押された。直後、ドスンという鈍い響きと共に、何かが水を潜っていったような気配が感じられる。
「取舵15、目標敵小型空母! 重巡の前にいる奴をやりますって!
ハイドロフォンは、魚雷の命中並びに敵艦の機関音に注意してくださいって!」
「取舵15ヤー!」
「聴音了解。現時点で不審な機関音無し。魚雷、順調に航走中!」
「1番魚雷、発射より10秒経過!」
「3番管、調定深度5メートル! 敵の小型空母を狙いますって!」
「3番ヤヴォール! 深度5メートルだ、外すんじゃねえぞ!」
「回頭完了!」
「よーし! 2番発射管、てー!」
「Rohr Zwei! Los!」
再び、ドスンという鈍い音。そして、空気が発射管から噴出する音と共に何かが飛び出していく気配がする。
「3番管、注水開始! 4番管、調定深度7メートル! 狙うは大物、敵ペガスス級空母ですって!」
「3番ヤヴォール、注水するぞ!」
「4番りょーかいです!」
「取舵15!」
「取舵15ヤー!」
息を吐く暇もなく、”呂500”はあっちに指示を出したり潜望鏡を操作したり、識別リスト片手に敵艦と照合したりと忙しい。
「回頭完了!」
「3番管、てー!」
「3番ヤヴォール! フォイア!」
「4番、調定まだですか?」
「こちら4番、調定よし。注水開始します!」
「取舵10!」
「取舵10ヤー!」
その時、ドォォン…と、遠くで鈍い爆発音が響いた。最初に1番発射管から撃ち出した魚雷が、見事に目標に命中したのだ。
「Torpedo treffer*4!」
「了解ですって!」
ハイドロフォンにかじりついている妖精からの報告を”呂500”が受け取った直後、副長妖精が叫んだ。
「Jawohl Junks, wir haben ihn*5! wir haben ihn!」
発音は「ヤヴォール ユンクス、ヴィア ハーベン イーン」なのだが、どう聞いても日本語で「フタエノキワーミ! キワーミー!」と叫んでいるようにしか聞こえない。
その途端、他の妖精たちも一斉に「キワーミー! キワーミー!」と唱和し始める。しかし、直後に副長妖精に「Sei ruhig*6!」と一喝され、全員がこんな顔になった。
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)ショボーン…
だが、彼らの作業の手は止まらない。
「回頭完了!」
「4番、注水完了! いつでもどうぞ!」
「4番、てー!」
「Rohr Vier! Los!」
「聴音より艦橋、2番魚雷命中! Torpedo treffer! 」
「フタエノキワーミー! キワーミー!」
「「「キワーミー! キワーミー!」」」
「静かにせい!」
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)ショボーン…
狼の狩りはまだ、始まったばかり。
ラグナ港に停泊していたグラ・バルカス帝国艦の乗組員たちにとって、この悪夢は全く唐突に訪れた。
轟音と共に突然襲ってきた、下から突き上げるような衝撃。そのせいでタウルス級重巡洋艦「タイゲタ」の艦長キーラ・アルクス大佐は、自らの寝床としていた艦長室のベッドから思い切り投げ出され、目を覚ますと同時に床に接吻する羽目になった。
「何だ!? いったいどうしたんだ!?」
起き上がりながら叫ぶが、答える者は近くにいない。だが、不意に艦が大揺れに揺れたらしいことは察せられた。その直後、鼓膜を突き破らんばかりの大爆発の音が響く。絶対に、何かあったに違いない。
手早く着替え、艦橋へと降りていったアルクス。艦橋に入るや、待ちかねたように副長が叫んだ。
「艦長、緊急事態です! 艦尾に被弾! おそらく魚雷と思われます、現在被害確認中!」
「何だと!?」
アルクスが叫んだ時、
ズドオォォォォン…! ドガアァァーーン…!!!
鈍い音、そして凄まじい爆発音。それと同時に、「タイゲタ」のすぐ前方に停泊していたスプートニク級小型空母「ニュー・ホライズンズ」の左側面に、夜目にも鮮やかな白い水柱が太く高く屹立する。そして、次の瞬間には飛行甲板が大きく盛り上がった、と思った直後に真っ赤な炎が弾けた。大量の破片が空高く舞い上がる。
「雷撃!?」
「おそらくは!」
「誰だこんなところで雷撃訓練なんかやってる奴は!」
「違うと思います! あまりに突飛ですが…おそらく、敵の潜水艦です!」
「潜水艦だと!? 馬鹿な! いったいどうやってここまで侵入したというのだ! いやそもそも、敵に潜水艦なんてあって堪るか!」
「ですが…!」
副長の抗弁は、新たな爆発音によって遮られた。
「空母ホイヘンス、被雷!」
断末魔を迎えつつある「ニュー・ホライズンズ」の前方に停泊していた、スプートニク級小型空母「ホイヘンス」が、水柱を突き立てられる。
「ええい、何をやっている!? 機関はどうした!」
アルクスが叫んだのと同じタイミングで、艦内電話が鳴った。そして受話器から、とんでもない報告が飛び出してくる。
『舵機室より艦橋! 一大事です! 舵が故障しました、動かせません!』
『こちら機関室、先の衝撃によりボイラー2基不調!』
『か…艦尾が! 艦尾が、ちぎれてなくなっています!』
「……え!?」
あまりにもとんでもない報告に、一瞬アルクスの脳が思考停止した。
実は、「呂500」が発射した「41式魔導酸素魚雷改」は51ノットの高速で海中を突進し、「タイゲタ」の艦体後部、第5主砲直下に命中して弾薬庫を誘爆させた。そして、第5主砲塔を空中高く跳ね飛ばすと同時に「タイゲタ」艦尾を木っ端微塵に粉砕したのだ。このため、「タイゲタ」乗組員には艦尾がちぎれてなくなったように見えたのである。
第5主砲より後部がほとんどちぎれかかり、後部機械室の隔壁などを直接海水が洗う状態となった「タイゲタ」は、トリムが狂い、艦尾を下にして傾き始めた。
「い、いかん! 総員退艦! 陸へ上がれ!」
アルクスが叫ぶ間にも、大量の海水を飲み込んだ「タイゲタ」はだんだん艦尾方向に傾いていく。それはもはや、「タイゲタ」の運命が「着底」に決したことを意味していた。
その「タイゲタ」の前方では、激しく燃え盛る「ニュー・ホライズンズ」が急速に左へ傾いており、既に傾斜が40度を超えている。そして、空母の列の先頭にいたペガスス級航空母艦「ペガスス」の左舷中央に、新たに被雷の水柱が突き立った。
「なんて…ことだ…」
次々と魚雷を受ける友軍艦を見て、自身も艦橋から脱出しながらアルクスは力なく呟いた。
「よーし、次の目標は敵の水雷戦隊と輸送船、そしてタンカーですって! ついでに、4時方向にいる艦を艦尾魚雷で食ってやるって!」
「Jawohl, Herr Kaleun!」
前方に並ぶ空母3隻と重巡洋艦1隻に1本ずつ魚雷を喰らわせたところで、”呂500”は新たな指示を出した。
「ついでに浮上準備! 砲撃でタンクを吹っ飛ばしてやるって!」
「こうなりゃ、毒食らわば皿まで、ですな!」
あまりに常軌を逸した彼女の指示に、ついに副長妖精も開き直った。
敵の港湾拠点、それもよりによって首都の港で浮上するなんて、狂気の沙汰としか言い様がない。自殺願望でもあるのかとしか思えない、頭のおかしい指示である。しかし、彼女はそれをしようとしている……!
『艦首発射管室より艦橋。1番から4番、磁気魚雷装填よし。Alle konsento klar*7!』
「あれ?」
その時、”呂500”の目は潜望鏡に吸い寄せられた。さっき魚雷を喰らわせた敵のペガスス級空母は、まだ健在なように見える。
「流石に正規空母はしぶといですって。なら、もう一撃喰らわせてやりますって!」
やはり正規空母は頑丈であった。だが、”呂500”が持ってきた魚雷…42式魔導酸素魚雷改を2本も喰らえば、流石に無事では済まない筈だ。
1本の潜水艦用小型酸素魚雷は、通常型の水上艦艇用魚雷1本分以上の威力を誇る。その大威力の酸素魚雷を持ってすれば倒せる筈である。もちろん「当たれば」であるが。
「4番発射管に注水、雷撃諸元はさっきと同じで。さっき開けた大穴に直接叩き込んで、止めにしてやりますって!」
「Jawohl, Herr Kaleun!」
「航海、4番の魚雷を撃ったら取舵回頭するって。準備しといてー」
「Ja!」
この時点で、既に攻撃開始から40分は経過している。時刻はあと少しで午前0時になろうというところだ。
「4番管、注水完了!」
「てー!」
「Rohr Vier! Los!」
ドスン…というもはや聞き慣れた衝撃音、次いでシュコー…という空気の抜ける音。そして、発射された魚雷が水を潜っていく気配。
「取舵5! 艦首魚雷目標、輸送船及びタンカー群! 1番から3番、調定深度3メートル、調整してって! 4番管は、FaT魚雷の装填を急ぐって!
5番管、魚雷発射用意! 調定深度4メートル!
浮上開始、地上目標に対して砲撃に入るって!」
「「「Jawohl, Herr Kaleun!」」」
いよいよ「呂500」の戦いも真骨頂である。
前進しつつゆっくり浮上していく「呂500」、その周囲の海面は既に慌ただしくなっている。燃え盛り沈み行く軍艦からは次々と乗員が海面に身を躍らせ、炎に赤々と照らし出された埠頭には何人もの人間が走り回っていた。そして、駆逐艦や巡洋艦の中には対空機銃の銃身を水平に倒し、目標も定まらない先に闇雲に撃ちまくる艦もある。
と、「呂500」の艦体が海面に顔を覗かせた時、白く太い光の筋が海面を撫で回し始めた。サーチライトだ。埠頭の見張り台に据えられた1基が光を投げかけている。
「まず、砲撃であの鬱陶しいサーチライトを潰すって。
1番から3番、一斉射用意! 深度調定はいい?」
『こちら艦首、1番から3番調定よし! いつでもどうぞ!』
「よろしい…散布角5度、1番から3番、魚雷発射始め!」
「Jawohl, Herr Kaleun! Rohr Eins, Zwei, Drei! Los!」
艦内をめまぐるしく報告と命令が飛び交う。
その時、ドォン! と鋭い砲声が響いた。「呂500」の甲板に設置された10.5㎝砲が、砲撃を開始したのだ。
発砲炎に気付いたサーチライトが光を投げかけようとするが、もう遅い。サーチライトが「呂500」の艦体を捉える寸前、狙いすまして放たれた10.5㎝砲の初弾は、たった一撃でサーチライトを見張り台ごと吹き飛ばし、その光を永劫沈黙させた。
『砲術より艦橋、敵サーチライト沈黙!』
「了解、目標変更! 新たな目標、12時方向の陸上のタンク!」
『Jawohl, Herr Kaleun!』
「1番から3番、FaT魚雷装填! ここで全部ばら撒いてやるって!」
ここに来て”呂500”は、FaT機構を搭載した酸素魚雷の投入を決断した。これは本来船団攻撃に使うもので、この機構を搭載した魚雷はある一定のアルゴリズムに従ってジグザグに走るようになる、というものである。
『4番、装填完了! 注水に入ります!』
「了解、一斉射するから発射はちょっと待ってほしいって!
1番から3番、魚雷装填急いで!」
「聴音より艦橋、敵正規空母に魚雷命中!」
「フタエノキワーミー! キワーミー!」
「「「キワーミー! キワーミー!」」」
「静かにせい!」
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)ショボーン…
この頃には、火災を起こした小型空母…「ニュー・ホライズンズ」はほとんど横倒しになっていた。その隣で、小型空母「ホイヘンス」が火だるまとなり、星も焦がせとばかりに真っ赤な炎を高く噴き上げている。航空燃料に引火したのだ。
そして、第二撃を突き立てられた「ペガスス」は、タービンが完全に御釈迦となり、そして急速に左に傾き始めた。艦内に残された乗員を巻き込み、轟音を上げながら凄まじい勢いで横転していく。その周囲では、停泊している敵の駆逐艦から放たれた対空機銃弾が次々と海面を叩き、曳光弾の赤い炎と白く細かい水飛沫で暗い海面を彩っていた。
それに委細構わず、”呂500”は仕事を続ける。
『こちら艦首、1番から3番、装填よし! 深度調定3メートル、急ぎます!』
「了解、1番から3番、注水開始!」
そこへまた、ドォン! と砲声が轟く。陸上に並ぶ石油タンク群を目標にして、10.5㎝砲が砲撃を再開したのだ。
その途端、大量の曳光弾が「呂500」めがけて飛んできた。敵の駆逐艦から放たれた対空機銃の銃弾だ。
パシパシパシッ!
ガン! ガキン!
飛んできた曳光弾のうち大半は海面を叩くばかりだが、何発かが「呂500」の艦体に命中し、火花を散らす。
『こちら砲術。艦長、対空機銃の射撃許可を下さい! 応戦します!』
砲術部から飛んできた艦内無線に、魚雷の照準調整に忙しい”呂500”は「許可するって!」とだけ応答した。そして無線が切れてしまってから、ふと疑問を抱く。
(ん? 何に対して『応戦する』って?)
一方、艦橋後部に設置されていた2㎝対空機銃に取り付いていた妖精たちは、許可をもらった途端に銃身を思い切り水平に倒し、目一杯の俯角をかけた。銃口が見据える夜の海、そこに火災炎に照らされて、波しぶきとは異なる不自然な波が幾つか立っている。やがて、そこに朧げながら人の姿が見えてきた。
その瞬間のことである。
「Feuer!」
鋭い号令の下、
ドドドドドドッ!
2㎝対空機銃、さらに3.7㎝対空機銃が小刻みに火を噴いた。その目標は、泳いで「呂500」に向かってくる敵の兵士である。おそらく、これまでに雷撃された船から脱出してきたのだろうが、スクリューを詰まらせる等して作戦行動を妨害しに来たと判断し、戦時国際法ガン無視なのを覚悟の上で発砲したのだ。
大口径機関銃の射撃を受けた兵士が一瞬で肉体を消し飛ばされ、「呂500」に泳いで向かってきていたグラ・バルカス帝国の水兵たちは、見るも無残な欠損屍体となってあっという間に重油の入り混じるラグナ港の海に飲み込まれていく。
「これ戦時国際法違反ですよね!?」
「それなら、あちらさんだって捕虜処刑しただろうが! それに、イギリスじゃあ恋愛と戦争は手段を選ばないんだよ!」
「私らドイツ人ですよ!」
「んなこた知るか! 作戦の邪魔だし敵だから排除した、それの何が悪い!」
「そうだそうだ! それより敵の数が多い、MP40でも何でも持ってこい! 敵に取り付かせるな! 最悪ジャガイモ投げてでも追っ払え!」
火を噴き続ける2㎝対空機銃にかじりつき、弾倉の交換を行う装填手とトリガーを引く砲手が、早口の大声でやり取りをしていた。
いつの世も、戦争というのは悲劇しか生まないものである…。
対空機銃を担当する妖精たちが虐殺を繰り広げている間に、”呂500”は4本の「試製FaT仕様九五式魚雷改」を撃たせていた。魚雷が海中を駆け抜けて敵の駆逐艦やタンカー、輸送船などに向かう間に、10.5㎝砲は次々と砲弾を石油タンク群に叩き込んでいる。砲弾がタンクを直撃するや、タンクは凄まじい勢いで爆発し、火山の噴火のような巨大な炎を夜空を焦がさんばかりに噴き上げる。タンクの破片が四方八方に飛び散り、その直撃を受けた不運な人間が悲鳴を上げて苦悶する。
さらに、「呂500」艦尾の5番発射管から「41式魔導酸素魚雷改」が発射され、岸壁に停泊する輸送船の1隻めがけて突進しつつあった。
「まだまだやりますって!」
魚雷はあと12本残されている。”呂500”はなるべく全ての魚雷を撃ち尽くしてやろうとしていた。
「1番から4番、魚雷装填急ぐって! 目標は前方の駆逐艦部隊! 鬱陶しいからいい加減黙らせてやるって!」
「Jawohl, Herr Kaleun!」
さっきからの対空機銃による応戦を、彼女はよほど腹に据えかねていたらしい。
「そろそろ敵の魚雷艇が出現する可能性があるって。潜航用意、砲員たちは砲撃を中止して退避するって!」
「Jawohl, Herr Kaleun. まあ、これだけ派手に燃やせば良いでしょう。10発くらいは砲撃したようですし」
副長妖精の言う通り、既に石油タンク群は炎の海に沈んでおり、幾つかのタンクからは猛烈な勢いで黒煙と炎とが高く立ち上っていた。相当の被害を与えたことだろう。
「砲術部から艦橋、全員退避完了しました!」
「聴音より艦橋、後方から機関音! モーターボートらしき艦艇複数接近! 距離およそ1,000!」
ちょうど「お出迎え」が来たらしい。”呂500”は即断した。
「きゅーそくせんこー!」
これを聞いて、どこぞのナノマテリアル製艤装を持つ潜水艦を思い浮かべたあなたは間違っていない。
「ヤヴォール、ヤカロイ!
アラアァァァァァァァァァァム!!」
普通のアラームよりやかましい声で副長妖精が叫び、ジリリリリリリリリ…! という甲高いサイレンが「呂500」艦内に満ちる。機関が静かに唸り始め、「呂500」はゆっくり前進しながら潜航し始めた。
「走れ走れ! 重量物を持って艦首に走れ! 魚雷を喰らったら終わりだぞ!」
「サイレントハンター」の名はどこへ行ったのか、と思うほどバタバタとやかましく足音を立てて、妖精たちが決死の形相で艦首に走る。箱入りのタマネギやジャガイモを抱えて走る者がいる、10.5㎝砲弾を抱えて走る者もいる。2人がかりでダメコン用の角材を運ぶ者もいる。
「現在深度10メートル!」
「聴音より艦橋、敵魚雷艇、魚雷発射しました! 数はおそらく5本以上!」
どうやら撃ってきたようだ。だが、到着が遅かった。「呂500」は既に水中深く姿を消した後である。
無誘導の魚雷ほど潜水艦に当たらない兵器もそうそう存在しない。そしてグラ・バルカス帝国軍は無誘導の空気式魚雷しか持っていないのである。しかも、本来なら対潜戦闘に従事する筈の駆逐艦や軽巡洋艦は、軒並みボイラーの火を落としてしまっていて動けない。即応戦力は魚雷艇くらいしかなかったのである。残念であった。
「目標敵輸送船群! 1番から4番、魚雷発射用意! 続いて6番管注水、調定深度9メートル! 目標、6時方向の敵戦艦!」
敵の魚雷艇が発射した魚雷には一切頓着せず、”呂500”は次の獲物のことを考えている。
『こちら6番、発射準備よし!』
「よーし、6番てー!」
潜望鏡をくるりと回して、夜闇の向こうに僅かに浮き上がっている戦艦のシルエットを見ながら、”呂500”は指示を飛ばした。
「Rohr Sechs! Los!」
『こちら艦首、1番から4番、発射用意よし!』
「てー! てー!!」
「Rohr Eins, Zwei, Drei, Vier! Los!」
ドスン…シュコー…という響きのセットが5回、艦内に響いた。
「聴音より艦橋。敵魚雷、本艦直上を通過!」
『こちら艦首、魚雷残り8本!』
“呂500”はちらっと壁にかかった時計を見た。いつの間にか、攻撃開始から1時間半が経過している。
「よーし、沖合の島に確か駆逐艦が駐留する泊地があったから、それへの備えに魚雷4本だけ残して、後は全部くれてやりますって!
1番から4番、次発装填急いで!」
「Jawohl, Herr Kaleun!」
沖合の島にあった泊地では、駆逐艦が即応態勢で待機していた。おそらく自分たちの存在はもう通報されているだろう。相手の駆逐艦に頭上を抑えられる前に、そして夜のうちに、脱出する必要があった。
要するに、ここが潮時というわけである。
「手空きの者は、魚雷の装填を手伝え!」
副長妖精が声をからして、乗組妖精たちを督励している。その甲斐あって、
『こちら艦首、1番から4番、装填よし!』
装填完了の報告と同時に「聴音より艦橋。1番から4番の魚雷、全弾命中!」の報告が入った。もちろん、「お約束」のやり取りが発生する。
「フタエノキワーミー! キワーミー!」
「「「キワーミー! キワーミー!」」」
「静かにせい!」
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)ショボーン…
これが最後の攻撃だ。”呂500”は潜望鏡を回転させ、素早く目標を定める。今は一刻も早く、この敵地を脱出しなければならなかった。
「よーし、行きますって!
1番から4番、てー!」
「Rohr Eins, Zwei, Drei, Vier! Los!」
「ついでにWG42、発射して!」
「Feuer!」
迷惑極まりない「置き土産」として、”呂500”は4本の魚雷を発射し、ついでに「WG42」までぶちまけた。これで、「呂500」艦内には魚雷が4本しか残っていない。
発射完了直後、彼女はすぐさま命じた。
「取り舵、針路274! この忌々しい港からおさらばしますって!」
「Jawohl, Herr Kaleun!
攻撃終了だ、逃げるぞ! 逃げ切るまでが作戦だ、全員気合入れていけ! 絶対に、生きて帰ってやる!」
「「「Jawohl!!」」」
発射した魚雷の命中を待つことなく、「呂500」は反転するとラグナ港を脱出し始めた。さあ、あとは生きて帰るだけ。一刻も早く、この敵地から脱出する必要がある。
狩りを満喫した静かなる狼は、満腹とは思えないほど静かに、素早くラグナ港を離れていった。
ラグナ襲撃なんてやった以上、グラ・バルカス帝国軍は相当頭にきていたにちがいない。
出港して早々、「呂500」の艦体は敵駆逐艦のソナーから発せられた音波によって、何度も叩かれた。怒り狂ったように敵駆逐艦は走り回り、爆雷を何度も海中に叩き込んで炸裂させ、彼女をあぶり出そうとした。
ドオオォォォン! ドオオオォォォォンッ!!
鈍い爆発音と共に、「呂500」の艦体が激しく揺さぶられる。震度7の地震にでも見舞われたかのようだ。
"呂500"と妖精たちは、必死に四肢を踏ん張って何かにしがみつくことしかできない。それでも何人かは度重なる激烈な衝撃によって吹っ飛ばされ、床をゴロゴロと転がる羽目になった。当然のように負傷者が発生し、医務室が新たな戦場となる。
「あんたは打ち身だけだ、回復魔法かけといてやる! アンタは…む、こりゃ不味いな、肋骨を持っていかれたようだな。手術は後だ、鎮痛剤出してやるからちょい待て!」
もちろん、発令所も戦場である。
「現在までの負傷者7名! うち2名が骨折クラスの重傷!」
「前部魚雷発射管室に浸水あり! 現在水雷課員が対処中!」
「艦長、新しく貼った吸音タイルは仕事してんでしょうな!?」
「技術屋さんを信じるしかないって!」
爆雷炸裂の轟音が雷鳴のように轟く中でのやり取りなので、大声を出さないと聞こえない。なのでもはや怒鳴り合いと化している。
ドガアァァァァンッ!
新たな爆雷の爆発と同時に、これまでより大きな爆発音が響き、「呂500」の艦体が金属の叫喚を上げる。同時に発令所でも、シューッという音と共に水が噴き出した。
「浸水ですって!」
爆雷の衝撃で転びそうになりながらも、"呂500"は手近にあったタオルをひっ掴み、漏水部分に押し当てた。4月とはいえ深度150メートルの海水はまだまだ冷たく、一瞬にして彼女の両手がかじかむほどに冷える。そこへ妖精が2人駆け寄ってきて、タオルの上から角材を押し当てた。これで水が止まるまで圧迫し続けるのである。
コーン、コーン、コーン……
そこへ甲高い音が聞こえてきた。敵の駆逐艦が放つ探深音だ。
しかし、"呂500"も妖精たちもそれに最大限の精神力を以て耐えた。何しろ「第一海上護衛隊」の面々…それも”五十鈴”、”由良”、”朝霜"などといった潜水艦狩りのエキスパートたちとの演習のおかげで、彼女の精神力は尋常じゃないほどに鍛えられている。加えて"呂500"の艤装には吸音タイルが装着してあるのだ。その彼女たちにしてみれば、乱発されるピンガーくらいはなんてことなかった。
…そして、東の空が白む頃。潜水艦「呂500」は、どうにか敵の追撃網を脱出することに成功したのである。
とはいえ、かなりギリギリだったことは否定しない。何しろ潜航用のバッテリーの残量は僅かだったし、空気タンクの容量も限界だったのだ。どこで失敗して全滅してもおかしくなかったのである。それを成功させたのは、彼女の幸運なのか、それとも天照大神のご加護か…。
「は…はは…。信じられるか…? あんなことやって、生き残っちまったよ…ははは…」
航空機を飛ばす基地がある島もない絶海を、堂々と浮上航行する「呂500」。長期に渡る極度の緊張を強いられたせいで、艦内では手が空いた妖精たちがあちこちで死屍累々と横たわっている。廊下と言わず医務室と言わず、いろいろな場所で妖精たちが死んだように眠っているのだ。ひどい者だと、戦闘配置の場所についたままで眠りこけている。
発令所にあっても例外ではなかった。計器盤に突っ伏している者、座席の背もたれに身体を預けて遠慮無しの大いびきをかいている者。それらの中で、艦橋の床にへたり込んだまま副長妖精がハイライトを失った目をして、うわごとを呟いている。
「副長、ここはいいから早く休むって」
「あ、艦長…そういう艦長こそ、お休みになったほうが…」
「攻撃前に仮眠取ったから、まだマシですって。さ、早く寝てくるって!」
「し、承知しまs…ぐう」
その副長妖精に”呂500”が声をかけたのだが…自室に向かおうとしたところで副長妖精は力尽き、艦橋の床に大の字になってしまった。そのままぐうぐう眠っている。
「Nichts zu machen.*8」
“呂500”はそっと肩を竦めた。…その彼女も、化粧こそしたものの目の下の隈は完全には隠せていなかった。
比較的ほのぼのした時間が流れる「呂500」艦内。
ところで、皆様は疑問に思わなかっただろうか。敵の制海権内で何故ここまで堂々と浮上航行できるのか、と。
もちろんだが、ちゃんと理由がある訳である。それは…「グラ・バルカス帝国側に、追撃を行う余裕がなかったから」である。
時に、中央暦1644年4月2日。
ロデニウス連合王国海軍第13艦隊の潜水艦「呂500」による、グラ・バルカス帝国ラグナ港の単独襲撃、成功。グラ・バルカス帝国海軍の被害甚大。
帝都ラグナに停泊していた艦船に大きな被害が出たばかりか、着底した艦船や流出した重油によってラグナ港の機能は著しく損なわれた。しかも、敵潜水艦の砲撃によって沿岸部の石油タンク群が大炎上を起こし、これはしばらく収まらないと見られている。そして、ここまで大胆不敵な襲撃を行った敵の潜水艦には逃げられてしまい、グラ・バルカス帝国軍のメンツは完全に丸潰れであった。ラグナはたった一夜にして、考えられうる最悪の惨劇に見舞われたのである。
これは、今後のグラ・バルカス帝国の戦略にも悪影響を及ぼしうる、極めて重大な案件であった。ただ……惜しむらくは、それを戦訓として反映するには、戦況があまりに逼迫してきていたのである。
なお余談だが、"呂500"の副長妖精は後に今回の体験を文章にまとめ、小説として出版すべきか相当に迷うこととなった。
というわけでろーちゃん大暴れ回でした。敵国の首都に単身で殴り込み、おまけに潜水艦にも関わらず浮上砲撃までぶちかましていくなんて、とんでもない真似やってくれましたね。
なお、ろーちゃんは今回の攻撃をあろうことか○コ動から取っています。港湾襲撃したどこぞのUボート艦長さんをリスペクトしたらしいですね。
評価8をくださいました四屍詩師様
評価10をくださいましたオリオンビール様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
次回予告。
"呂500"の襲撃により甚大な被害を被ったグラ・バルカス帝国の帝都ラグナ。しかし、帝国上層部に強烈な衝撃をもたらしたこの襲撃も、実は前座でしかないのだった。何故なら潜水艦1隻よりも遥かに強大な戦力が、ラグナに接近しつつあったのだから…!
次回「ラヴクラフト発動! ラグナに響く呼び声」