鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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転職してから、ようやく状況が落ち着いてきました…また少しずつ描いていきます。
「ラヴクラフト」いよいよ発動しますよ!



221. ラヴクラフト① 襲撃、再び

 中央暦1644年4月2日 午後0時11分、グラ・バルカス帝国帝都ラグナから東南東わずか南105㎞沖。

 大洋渡る風の音と、微かな波の音、そして海鳥の鳴き声の他には特に音は聞こえない。海も穏やかそのものだ。ここに潜水艦がいたら、ソナー員は船の造波騒音を聴き取るのに苦労しないだろう。

 その静かな大気を切り裂くようにして、巨大な飛行物体が飛ぶ。

 この世界の人々がこの飛行物体を見たら、例外なく仰天するだろう、色々な意味で。全長265メートルというその巨体は、どこからどう見ても航空機などではない。全身を硬くて分厚そうな金属板で覆い、中央部に丈高い艦橋が聳え、その前後に三連装の砲塔を大小5基も据え付けたその姿は、まるで大和型戦艦もしくはグレードアトラスター級戦艦を空中に飛ばしたかのよう。しかし、本来ならそうした軍艦にあるはずのスクリューがなく、代わりにジェットエンジンのノズルを思わせる巨大な炎の噴出口が艦後部に3つ存在している。全体的に武骨ながらも、どこか近未来的な造形をしていた。

 

「艦長、今の速度ですとあと7分ほどでグラ・バルカス帝国本土に達します」

 

 その飛行戦艦の艦橋にて、白地に緑で錨のマークが描かれた制服を着た女性が報告する。

 

「了解。そろそろですね」

 

 それを聞いて、艦橋奥の一段高くなった席に座る長身の女性が命令を下した。

 

「艦長より達する。只今より、『ラヴクラフト』第006号、『スマイラー』作戦を発動します! 目標、グラ・バルカス帝国超大型爆撃機製造工場並びに運用飛行場!

総員戦闘配置! 繰り返します、総員戦闘配置!」

 

 艦内に警報ブザーが鳴り渡り、乗組員たち…全員が女性である…が一斉に持ち場へと走る。

 

「敵さんも慌てるだろうな……反転して立ち去ったと思った敵が、突然舞い戻ったんだから。しかも、空飛ぶグレードアトラスター級というおまけ付きだ」

 

 長身の女性の隣に陣取る、白い制服を着た男性が独り言のように言う。

 

「そうですね。そして今回は、目標の位置が位置だけに必ず敵に姿を見せなければいけません」

「ああ。ならばそれを最大限に活かすまで。目標を吹っ飛ばす姿をグラ・バルカス帝国人に盛大に見せつけ、敵の心をへし折る第一歩にしよう」

 

 白い軍服の男性と長身の女性…堺と"ヤマト"は頷き合った。そして艦長たる"ヤマト"が号令する。

 

「機関、出力上げ! マッハ1.5まで増速!!

ヤマト、突撃します!!」

 

 マッハ1.5にまで一気に加速した巨体が、グラ・バルカス帝国本土上空への突入を開始した。

 朝空襲したばかりの帝都の上空をわざと突っ切り、そこから一気に内陸部を目指す飛行ルートである。その意図は、首都に居座る王族から一般市民に至るまでの人々に、ロデニウス連合王国の力をしかと見せつけること。それと、朝の空襲の戦果判定である。

 ただ、堺としては戦果判定は"不十分"という評価になる可能性が高いと考えていた。理由は単純に、空襲を1回しか行っていないからである。

 

(ま、余裕があれば帰りがけにでもヤマトの砲撃を浴びせてやれば良いさ)

 

 堺がそんなことを考えている間に、第一艦橋の窓からはグラ・バルカス帝国本土が少しずつ見えてきつつあった。

 

 

「陛下! 危険です、お早く地下へお戻りになってください!」

「構わん! 本土にまで空爆を受けたのだ、今更よ。

それに、ミリシアル国の空中戦艦は強力な爆弾を搭載しているのであろう? どこにいようと死ぬ時は死ぬぞ」

「それはそうですが…!」

 

 ラグナ中心部にある王城・ニヴルズ城。中世に建造された城を利用した、国家規模の割に質実剛健な城である。その見張り塔に立ち、帝王グラ・ルークスは海の方を見ていた。ラグナに接近中だという敵飛行物体を一目見ようとしているのだ。

 

「む……あれか?」

 

 双眼鏡を覗いていたグラ・ルークス。その視界、水平線付近に黒い点がぽつりと映り込む。

 と、黒点はみるみる大きくなり、その形が少しずつはっきり見えるようになった。

 

「な…!? あれはまさか…グレードアトラスター級!?」

 

 グラ・ルークスが驚くと同時に、

 

「来たぞ!」

 

 ニヴルズ城に詰める近衛兵たちがざわつき始める。

 

「帝都防衛隊は何してんだ!?」

「まだ戦闘配置が間に合ってない! 敵発見から2分しか経ってないんだぞ!」

「速すぎるっ! これでは…!」

 

 近衛兵たちが言い合っている間に、飛行物体は既にラグナ上空に達していた。

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

 アンタレス戦闘機などのレシプロエンジンとは全く異なる轟音を発し、後部から3筋もの炎を吐きながら飛ぶ物体。大きさは桁外れに大きく、すらりとした艦橋がそびえているのもあって、まさにグレードアトラスター級戦艦が飛んでいるという様相である。

 

「何だこれは…美しいのに、強さがはっきり分かる…!」

 

 呟きながらも、グラ・ルークスはこの敵の正体を何となく分かっていた。

 

(軍部からの報告では、ミリシアル国の空中戦艦は円盤というか、自動車のハンドルのような形をしていたという。だが、これは明らかに形が異なる。おそらくだが、ミリシアルというよりはロデニウスの艦だろう。

グレードアトラスター級を航空機のように空に飛ばすなど、今の我が国には出来ぬ。どうやったら、あんなことができるんだ…?)

 

 グラ・ルークスが考えている間に、飛行戦艦はラグナ上空を素通りして内陸部へと飛び去っていく。はたと気付いたグラ・ルークスは即座に指示を飛ばした。

 

「帝都防衛隊はまだ戦闘配置を続けろ!

それと、奴がどこを狙っているか早急に調べろ。全土の飛行場に、戦闘機・爆撃機全てを投じた敵戦艦の迎撃を下令せよ!」

「はっ!」

 

 しかし忘れてはいけない、ラグナ周辺は発電施設がダウンしたことで深刻な電力不足に陥っているのだ。電気が来ないのだから、無線設備も有線電話もロクに使えない。軍艦や航空機の無線機を緊急の指令塔代わりにしてどうにか命令を伝達したのだが…もはや遅すぎた。

 

 

「お、あれか」

「あれですね」

 

 第一艦橋の窓の真上にかかった巨大な斜めスクリーン、そこに映し出された巨大な飛行場を見て、堺と"ヤマト"が頷いた。全幅80メートルくらいの機体でも飛ばせそうな広大な滑走路とそれに比例する大規模なエプロンが広がり、そのエプロンのあちこちにカマボコ形の屋根が見える。おそらく機体を格納する掩体壕だろう。掩体壕は「一式陸攻」のような中型爆撃機を格納するには大きすぎ、どこからどう見てもあの重爆撃機の専用壕である。

 また、滑走路脇や基地のあちこちにはランドルト環(視力検査で使われる、一部が欠けた円の図形)のようなものがあり、その真ん中に細長い棒のようなものが設置されている。対空戦闘用の防空陣地だ。

 敵本土に突入してから、ここに来るまでにかかった時間は僅か3分30秒。グラ・バルカス帝国軍からすると常識の範囲外にある、信じがたいまでの高速である。

 

「イルネティア島で撃墜した敵機の残骸から推測する限り、敵の超大型重爆撃機は性能的に『B-36 ピースメーカー』に匹敵する可能性があるとのことだ。つまり、核兵器を搭載可能であり、ということはグラ・バルカス帝国が核兵器を保有している可能性があるということだ。

ならば、核の発射プラットフォームとなる機体は、製造工場ごと叩き潰さねばならん」

「ええ。我が国や第二文明圏内外諸国を核の炎で焼かれないために!」

 

 2人の指揮官が考えていることはそれだけである。故に手加減も容赦も一切する気が無い。完全破壊を確認できるまで、ありったけの砲弾を叩き込むつもりである。

 

「主砲、三式弾装填! 滑走路を掘り返しながら敵基地の施設を叩く!」

「了解。第一、第二主砲、及び第一副砲は三式弾に切り替え! 第三主砲並びに第二副砲は、ショックカノンで敵施設を砲撃せよ!」

 

 その巨大な飛行場に向け、高速で近付いていくヤマト。都市の上空だろうが何だろうがお構い無しに突っ切り、グラ・バルカス帝国の一般市民にその姿を見せつけていく。

 

「砲撃ヨーイよし!」

「撃ち方、始めぇ!」

「撃ちぃー方ー始め!」

 

 ヤマトの前部主砲と第一副砲が、轟音と共に火を噴いた。大小9発の三式弾が、赤い光の玉となって飛んでいく。そして狙った飛行場…グラ・バルカス帝国内にいくつか存在するグティマウンを運用可能な空港の1つに突き刺さり、その威力を解放した。

 たった1発で滑走路のコンクリートが粉砕され、コンクリートの下の地面にまで到達した三式弾が少しの間を置いて起爆する。その瞬間、大きく盛り上がったように見えたコンクリートが粉々に吹き飛び、着弾地点には直径5メートル深さ2メートルにも達するようなクレーターが出来上がる。

 カマボコ形の掩体壕に1発の三式弾が命中し、格納されていたグティマウンが屋根ごと串刺しにされた後、三式弾の起爆によって意味のない粗大ゴミへと変換される。機体の残骸の上に掩体壕の屋根が落下し、完全に潰されてしまった。

 管制塔が根元を吹き飛ばされ、みるみるうちに横倒しになる。その真下にあった司令部施設が踏み潰され、轟音を上げて倒壊していく。逃げ遅れた司令部要員たちが悲鳴を上げたが、その悲鳴も建物の瓦礫と轟音に塗り潰された。

 

「くそっ、こんなところに敵襲だと!?

全員急げ! グティマウンの発進は間に合わん、早く地下壕へ避難しろ!」

 

 何とか建物の外へ脱出できたグラ・バルカス帝国空軍特殊殲滅作戦群部長アーリ・トリガー大佐が、必死に声を枯らす。だが、もはや全てが遅い。

 再び斉射した三式弾が落下し、飛行場に大小9つの爆炎が噴き上がる。搭乗員が訓練に使う体育館に三式弾が命中し、広大な体育館が瞬時にして炎に席巻される。砲弾炸裂の衝撃波で窓ガラスが一斉に割れ、無数の見えざる散弾と化して逃げ惑う兵士たちに襲いかかる。そこに追加で建物の破片が降り注ぐ。不運な兵士が1人、吹き飛ばされてきた梁に頭部を直撃されて昏倒した。

 無人の搭乗員宿舎に三式弾が降り注ぐ。屋根を突き破った三式弾は、4階の床、3階の床、2階の床を貫通してなお止まらず、1階食堂の床にぶち当たってから炸裂した。普段なら将兵の談笑や食器の触れ合う音が満ちる食堂を黒煙と炎の奔流が吹き荒れ、テーブルや椅子がひとまとめにガラクタに変換されて吹っ飛ばされる。そこに搭乗員の私物やベッドなどが入り混じり、全てが役に立たない燃えかすへと変わっていく。

 姿を現したヤマトに向けて必死に撃ちまくっていた高射砲が、青白い光線を撃ち返されて木っ端微塵に吹き飛んだ。

 巨大なレーダーサイトに三式弾が突き刺さり、爆発と共にアンテナが積み木のように崩れ落ちていく。

 基地上空に達したヤマトは、基地に対して左舷を向け、左旋回しながら保有する火器を撃ちまくった。主砲や副砲はもちろんのこと、本来ならば敵機やミサイルに向けられるパルスレーザー砲ですら基地掃討に駆り出される。40㎜パルスレーザー弾が文字通り雨のように基地に降り注ぎ、剥き出しの対空砲陣地は片端から沈黙を余儀なくされた。そして、

 

「な、何なんだこれは! があっ!」

 

 地上を走っていたアーリ・トリガーらもこの青白い暴風雨に撃たれ、地下壕にたどり着くこともできずにハチの巣にされてあの世へと送られる。

 グティマウンの製造工場がショックカノンの青白いレーザーで切り裂かれ、炎を上げて燃え始める。さらに容赦なく二撃、三撃とヤマトの主砲・副砲が撃ち込まれ、組み立てられるのを待っていたグティマウンのパーツが歪に捻じ曲げられ、レシプロエンジンがバラバラに分解され、工員たちの努力が無に帰していく。

 わずか20分ほどの間に、飛行場も製造工場も全て瓦礫の堆積場と化して火の海に沈んでいた。

 

「よし、ここはこんなもんだな」

「でしょうね。これだけやれば、流石に何も残っていないでしょう。次に行きましょう!」

 

 そしてあっさり目標を転換する堺と"ヤマト"。竜巻のように立ち昇る黒煙を背にして、宇宙戦艦ヤマトは次なる目標に向かって転進していった。

 

 

 もちろんだが、グラ・バルカス帝国のグティマウン運用可能な飛行場に待ち受けていた運命は、ただ1つである。

 

「高射砲が一切通じねえ!」

「愚痴ってる暇あったら撃ちまく…あがぁっ!!」

「あ…雨だ! 死の弾幕の雨だ!」

「逃げろ、逃げろおぉぉ! 敵う訳がない! 相手は空飛ぶグレードアトラスター級なんだぞ!」

「おいこらっ、逃げるな! ここで退けば我らが祖国が…!」

「どこに逃げろってんだよこんちくしょおぉぉぉぉ!!」

 

 基地将兵の悲鳴も怨嗟も何もかも、一切合切を飲み込んで焼き尽くす炎。基地の建物は全て炎に飲み込まれ、炭と化して消えていく。瞬く間に、帝国本土に存在する飛行場は片端から破壊されていった。

 だが、そんな中にあってグラ・バルカス帝国軍は無抵抗ではなかった。各基地の対空陣地は持てる総力を以て弾幕を張り、航空機の発進が間に合った基地では接近するヤマトに対して機銃掃射や爆撃(自国領内だろうとお構い無しに爆弾を落としている辺り、帝国の必死さが感じられる)を行った。だが、

 

『目標発見……おいおい嘘だろ! なんてでかいんだ化け物め!!』

『な、なあ。あの飛行物体…グレードアトラスター級戦艦に、似てないか?』

『言われてみりゃなんとなく似てるぞ!』

『くっそ、あの超戦艦にこんな爆弾1発でどうにかなんのかよ!!』

 

 パイロットたちはまず、グレードアトラスター級戦艦に似た姿をした超巨大戦艦が空を飛んでいるのを見て驚愕する。しかし本土を侵されているということで家族にも危険が迫っている状態であり、パイロットたちは意を決して命懸けで敵の飛行戦艦に挑みかかった。しかし、

 

『またあの謎の光の膜だ! 爆弾が弾かれたぞ!』

『くそっ、アルタイルの500㎏爆弾でも駄目なのか! どうしろってんだ!』

 

 波動防壁を展開している時は、何をしようがてんでダメである。全て食い止められてしまい、有効打になっていない。

 しかし、波動防壁の展開可能時間は20分ほどであり、そのため実は展開していない時の方が多い。では展開していない時に攻撃すれば良いのか、という話になるが…

 

『第23飛行隊全滅! なんて対空砲火だ!』

『何だよ! 何で避けても追ってくるんだよ! や、やめ、うわあぁぁぁ!!』

『帝国に栄光あ…(爆発音と共に通信途絶)』

 

 全て迎撃されてしまっている。無理もない、相手が悪すぎる。一国の主力宇宙艦隊の守りをたった1隻で突破するバケモノ戦艦が相手なのである。ちょっとやそっとの数や打撃力では通用しない。

 グラ・バルカス帝国には無い未知の兵器である誘導弾に、空に向かって逆さまに降る雨のごときパルスレーザー砲の弾幕。狙われたグラ・バルカス帝国機に逃げられる道理がない。

 それに、何とかヤマトを発見して接近しようとしても、

 

『な…何だ!? どんどん引き離されていくぞ!』

『もうあんなところに…! 駄目だ追いつけん!』

『畜生……あんだけ好き放題されて、何もできねえのか…!』

 

 脚の速さが段違いで、あっという間に振り切られてしまうのである。

 高速で接近してきて、味方の迎撃を全て跳ね返しながら圧倒的な火力を叩き込み、必死に追い縋る味方機を尻目に悠々と立ち去っていく……まさに通り魔である。その姿を目にしたグラ・バルカス帝国将兵は戦死するか、生き残ったとしても心をへし折られていた。

 そんな中、スキルニル飛行場を飛び立ったミョルニル航空隊の「アンタレス」30機も、ヤマト追撃に参加していた。このミョルニル航空隊というのは、「アンタレス」に250㎏爆弾を装備させ、そのまま機体ごと敵艦に体当たりする航空隊……実のところグ帝版神風特攻隊である。本来なら実戦投入するには些か訓練不足の感は否めなかったが、相手が飛行戦艦という常軌を逸した戦力であることに鑑み、体当たり攻撃くらいしか有効打が見込めないということで、急遽実戦投入となった。

 しかし、勇躍発進したは良いが、残念ながら会敵に失敗。やむを得ず航空隊は、スキルニル飛行場への帰還ルートを取った。だが、運命の女神はまだ彼らを完全には見放していなかったらしい。

 

「あ、あれは…!」

「いたぞ…いたぞおぉぉ!!」

『全機へ命令、突撃せよ、ただ突撃せよ! やられていった同胞の仇を討て! 我々の命と引き換えにしてでも奴を地面に叩き落とせ!!』

 

 今まさにスキルニル飛行場へ砲弾を叩き込まんとするヤマトに、出会したのである。この機をむざむざと見逃す彼らではない。

 

「く…くそおぉぉ! これ以上やらせるかぁ!」

「俺の命に代えても…! 帝国万歳!」

 

 思い思いに叫び、パイロットたちはスロットルを全開にする。

 だが、先陣を切って突入しようとした第1中隊8機は、焦ったあまりに「ヤマト」左舷中央部に突っ込もうとした。そこは防空火器のパルスレーザー砲が密集している区画であり……雨霰と飛来する細かいレーザー光弾によって、第1中隊は一瞬で文字通りに全滅した。

 

「だ…ダメだ、舷側からじゃ駄目だ! 正面か、艦底部を狙え!」

『艦底部って通じるんですかね!?』

「知らん、魚雷が効くなら体当たりだって効くだろ!!」

 

 第2・第3小隊はどうにかこうにか、対空砲の少ない敵艦の正面、あるいは下に回り込むことに成功した。そして、

 

『うおおおおぉぉ落ちろおぉぉぉ!!』

『皇帝陛下ばんざーいっ!』

『帝国に栄光あれ!!』

「……さようなら…母さん」

 

 各々敵艦へと突入していった。

 

 

「またか……しつこいな」

「敵国の本土に侵入してるんですから、仕方ありません。スズメバチの巣を叩き壊したらどうなるか、想像できるでしょうに…波動防壁、展開」

「なるほど分かりやすいな」

 

 グラ・バルカス帝国本土のめぼしい飛行場を片端から潰して回っている堺と"ヤマト"であるが、五月雨式にグラ・バルカス帝国軍の航空機が向かってくる。煙突SAMをはじめとして対空ミサイルはありったけ用意してあるし、艦内工場でも現在進行形で量産しているが、正直キリがない。

 敵はチャフもフレアも持たないレシプロ機だから撃墜自体は容易だし、攻撃といっても無誘導爆弾を自国民の被害を厭わずばら撒くだけだからそうそう当たらない。だが、次から次へと向かってくる。そのため、必要時以外は波動防壁を使わず、艦の兵装でなるべく対処していた。

 目標となるフォックス飛行場(グラ・バルカス帝国呼称スキルニル飛行場)を攻撃しようとしている今も、敵機が向かってきている。今度は爆弾を1発抱えた「アンタレス」だ。

 

「そういえば提督、爆装アンタレス多くないですか?」

「ん、言われてみれば確かに多い気がするな」

 

 そう言ってる間に敵機が中隊か小隊ごとに散開して向かってくる。

 

「近接戦闘!」

 

 "ヤマト"の号令一下、パルスレーザー砲塔が一斉に火を噴いた。接近していた1個飛行隊10機を、あっという間に全滅させる。

 

「残り2個飛行隊…ん?」

 

 この時、"ヤマト"は不審感を抱いた。

 残りの敵機は2方向から向かってきている。対空砲の少ない正面から向かってくるのは、まだ理解できるが……爆弾は下に向かって放り出されるものだから、基本的に攻撃目標より高い高度を取らなければならないはずだ。だというのに1個、下から向かってくる飛行隊がある。

 

「ん…下から? 妙だな」

 

 堺も気付いた。

 それに、正面から緩降下してくる「アンタレス」も、速度を緩める気配がない。零戦そっくりのあの機体は、降下制限速度は遅いはずだが…減速しない。却って速度を上げ、こちらへ向かってきている。

 

((……まさか、特攻!?))

 

 男女の指揮官が全く同じことを考えた時、正面から向かってきた「アンタレス」の先頭機の正面に青い膜のようなものが出現した。それと同時に「アンタレス」は爆発し、バラバラになって落ちていく。波動防壁に正面衝突したのだ。

 

「敵機、波動防壁に体当たりしましたっ!」

 

 艦橋に詰めている測距士官妖精が、泡を食ったような声で報告した。

 

「ああ、俺も見た。爆弾を投下する気配がない…これは特攻と見るべきかな」

 

 堺がそう言っている間に、2機め、3機め、4機めと「アンタレス」が波動防壁に突っ込んで爆散する。

 技師長妖精の席のコンソールには、波動防壁の稼働状況が表示されている。それによると、艦正面と左舷中央下部の波動防壁の稼働率が低下していた。何らかの攻撃が加えられた証である。

 また、レーダー席においても接近してきた「アンタレス」を示す輝点が次々と消えていく様子が鮮明に表示されていた。

 突っ込んできた「アンタレス」は合計して20機ほど。それらは次々と「ヤマト」に爆弾を抱えたまま体当たりして消滅していった。何が起きたのかは明白である。

 

「提督……敵は、神風特攻を……」

 

 "ヤマト"の声は震えている。

 

「少なくとも、その可能性がある行動をやってきたな」

 

 対する堺はあくまで冷静だ。衝撃を受けているはずだが、表面上は落ち着いているように見える。だが、その表情の険しさは隠しきれていなかった。

 

「あいつら、ついにこんな外道までやるようになったか。そうまでして戦争に勝ちたいというのか…」

 

 堺の視線が鋭さを増す。

 

「ならば、これ以上帝国人の犠牲が増える前に戦争を終わらせなきゃな」

「ですね。如何に軍人であろうと、国の復興を担う銃後の人々、特に生産年齢人口の方々を無為に死なせることはありません」

 

 特攻のことを頭からいったん押し退け、堺は命令を飛ばした。

 

「砲撃用意! 目標、敵飛行場及び重爆撃機製造工場! これ以上奴らに抵抗させてはならん……故に徹底的にやれ!」

「了解っ! 全砲門開け! てぇー!」

 

 特攻すら退けた空飛ぶ要塞は、AC-130を遥かに超える火力を以てスキルニル飛行場への砲撃を開始した。15分後、スキルニル飛行場は火をかけられた瓦礫の堆積場と化していた。

 グラ・バルカス帝国本土をあっちこっちと飛び回り、幾多の迎撃を突破して本土各地の空港や飛行場を片端から破壊しまくった宇宙戦艦ヤマトは、最後に再び帝都ラグナ上空に姿を現した。危険は承知しているが、堺は「やっぱ帝都の工場や軍港潰しきれてないよなぁ」と思ったのだ。ということで、帝都の工場や軍港、それと飛行場に完全に止めを刺すべく、帝都の空を巨体が飛ぶことになったのである。

 

「撃ちーかたー始め!」

 

 号令一下、林立する煙突やその間に広がる工場に向けて青白い破壊の流星が降り注いだ。

 煙突のうち1本が、首切りにでもあったように中程から叩き切られ、その先端部が施設に落下する。そこは2階建ての広い野砲の試射場であり、完成して試射を待つだけとなった野砲とその弾薬が置かれていた。急な空襲警報のせいで工員たちは急いで避難していたが、そのために砲弾類は安全な保管庫に入れられず山積みにされたままになっている。そこに天井を突き破った煙突がぶち当たった。その瞬間、砲弾の信管が作動し、100発以上の砲弾と装薬がいっぺんに誘爆して、試射場はその半分がまるごと吹き飛んでしまった。

 銃器を生産する工場の建物…耐火性が高く頑丈なはずの建物が、ショックカノンによってバターのごとく切り裂かれ、戦場で活躍するはずだった銃器が粉々にされ、あるいは醜く捻じ曲げられて役に立たない鉄屑になる。そこに破壊された天井が落下してきて、生き残っていた銃器も高価な生産機械も、等しく押し潰されてしまう。

 軍服をはじめとする衣類系装備品を作る工場に青白い光弾が突入して炸裂し、工員たちが丹精込めて作る軍服やその他の装備品が、作業台や作業道具もろとも粉砕されて焼け焦げたチリになって飛び散る。

 発生した火災がどんどん燃え広がり、崩れた建物も無事な建物も等しく皆炎に飲み込まれていく。

 工場群を破壊したヤマトは、次に飛行場に残り少ない三式弾を撃ち込んだ。滑走路もエプロンも瞬く間に掘り返され、未開の荒れ地のようにデコボコにされる。管制塔、司令部、兵員用宿舎といった建物が区別なく砲撃され、逃げ惑う将兵が爆発に巻き込まれてグロテスクな惨死体に変えられる。その上に破壊された建物の残骸が積み上げられ、火が回って巨大な篝火と化す。生き残っていた対空陣地が必死に迎撃するが、波動防壁を展開しているヤマトにかすり傷すら付けられない。反対にミサイルやパルスレーザー砲を撃ち込まれ、沈黙を余儀なくされていく。

 甚大な被害を受けながらも、今朝の空襲を辛くも耐え切っていたラグナ飛行場だったが、AC-130を遥かに上回る絶大な火力を叩き付けられては、耐えられる道理がなかった。10分ほどで飛行場は完全に沈黙し、全体を黒煙に覆われて燃え盛っている。

 最後に、今朝の空襲の火災もまだ鎮火しきらない軍港に、破壊の奔流が向けられた。ドック入りして整備を受けていたオリオン級戦艦が、真上からショックカノンで串刺しにされ、主砲弾火薬庫に引火して大爆発と共に真っ二つになる。ガントリークレーンが薙ぎ倒され、岸壁に接岸していた駆逐艦を押し潰す。ようやく船体が完成して進水待ちとなっていた空母が、ショックカノンの一撃で四枚おろしにされ、工員たちの努力が水泡に帰する。埠頭や防波堤も、まるで砂糖菓子のように打ち砕かれていった。

 軍港が完全に機能を喪失するまで、わずか15分。全ての砲撃を終えるや、エンジンに点火したヤマトはあっという間に飛び去っていった。

 グラ・バルカス帝国本土を後にして、何もない洋上を飛び続けるヤマト。その第一艦橋にて、堺と"ヤマト"はさっき見たものを振り返っていた。

 

「提督、アレは…」

「認めたくはないが、間違いない」

 

 爆弾を抱えたまま第一艦橋に向けて真っ正面から高速で接近、というか突撃し、しかし波動防壁にぶつかって爆発四散する敵機。その映像を艦橋の巨大スクリーンで振り返りながら、沈痛な表情を浮かべる堺。

 

「あのアンタレス戦闘機は、爆弾を投下するそぶりを全く見せないままこちらに接近し、そして明らかに体当たりした……間違いなく、神風特攻だ」

「では今後、我が艦隊があれをわんさかと差し向けられる可能性がある、と…?」

「ああ。というか、グラ・バルカス帝国機を見たら特攻機と思え、というべきだろうな」

 

 追い詰められたグラ・バルカス帝国は、とうとう形振り構わぬ手段に出てきたのである。日本人からすると聞き覚えのある、そして悍ましさすら感じる狂気の戦術、特攻。

 覚悟はしていたが、実際にやられるとその衝撃は無視し得ないものがある。

 それに史実を振り返ると、第二次世界大戦末期の日本軍は神風特攻を対艦攻撃の中心戦術に据え、色々な機体を投入した。使われた機体として有名なのは零戦だが、それ以外にも単発の艦上爆撃機や艦上攻撃機、陸軍の戦闘機、陸上運用される双発爆撃機、終いには練習機や水上機でさえも爆弾を搭載して特攻に使用されている。それも旧式の複葉機から新型機まで選り取り見取りだ。

 以上の史実を踏まえ、堺は爆弾装備可能な機体はもちろんのこと、例え爆装できない機体であっても無理やり爆弾を取り付けて特攻機にしてくると考えていた。それ故に、「グラ・バルカス帝国機を見たら特攻機と思え」である。

 

(第二次大戦の連合軍も、神風特攻を目の当たりにして今の俺たちと同じ気持ちになったんだろうかね)

 

 そんなことを考える堺。

 

「急ぎ、釧路を通じて各任務部隊に通達を出そう。資料映像付きでな。

今回のアレ、撮影してただろ?」

「はい、ばっちり映像記録として残ってますよ」

「よろしい。全艦隊に通達だ…『グラ・バルカス帝国軍が神風特攻を実施せり。各員は一層注意を払い、敵機は全て体当たりしてくるという覚悟を持って作戦にあたるべし』と」

「了解しました」

 

 この通達は、まず補給のために「ヤマト」や「釧路」に立ち寄った部隊から順に伝えられ、さらに第二文明圏内外諸国へと外務省を通じて伝えられていった。第13艦隊の艦娘・妖精たちはもちろんのこと、第二文明圏内外諸国も、体当たり攻撃という狂気の戦術に心底震え上がり、慌てて自国の海軍に通達を出した。

 特攻…狂気の戦術の登場は、第二文明圏内外諸国に大きな衝撃を与えることとなる。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 中央暦1644年4月2日 午後3時13分。

 帝国本土が2度にわたって襲撃され、大混乱に陥っているとはつゆ知らず、グラ・バルカス帝国の資源輸送船団「OM356」は、アストラル大陸産の原油をはじめとする軍需物資を本土まで運ぶ任務に就いていた。

 船団の規模はかなり大きい。何せ「EC型」と呼ばれる"戦時標準型輸送船"ばかりとはいえ、総計30隻もの輸送船がいるのだ。これを護衛しているのが、タウルス級重巡洋艦「アリエス」を旗艦として重巡2、軽巡2、小型護衛空母2、駆逐艦16隻からなる帝国海軍本国艦隊第21地方隊である。

 グラ・バルカス帝国海軍において、本国艦隊の役割は主に植民地の警備(反乱の鎮圧)と、外敵襲来時の即応である。ただ、それだけでは刺激がないため、待命状態の地方隊や配置転換時の移動を利用して、「長距離練習航海」名目で船団護衛をやらせることはよくある話なのである。

 

 輸送船を中心にした輪形陣を組んで進む輸送船団、その最後尾を固める重巡洋艦「アリエス」の艦橋にて、地方隊司令官のアイザック・ティーチ准将はタバコをくゆらせながら前を行く船団を見渡した。

 

「本船団の現在位置は?」

「はっ、現在位置は帝国本土から見て方位40度、距離1,700㎞ほどの海域です。船団の速力は10ノットですから、このまま進めば3日後の深夜に帝都ラグナに到着します」

 

 副司令リルケ・ゴームリー大佐が答えた。

 グラ・バルカス帝国の地方隊では、司令官や副司令が何かしらの参謀役を兼任していることが多い。この地方隊の場合は、司令官が参謀長と作戦参謀と航空参謀を兼ね、副司令が航海参謀と砲術参謀、水雷参謀を兼任している。

 

「ふむ、了解した。それにしても平穏なものだな……」

 

 まあ、島も何もない海域を航行しているのだから、嵐でもない限りは大抵平穏だろう。

 

「蛮族の住まう島や大陸がないんですから、仕方ないでしょう。それに、この船団は何やらいつもの積荷とは違う物を運んでいるとか?」

「あー、そうだ。何やら新種の鉱石とかいうものだったな。何でも、これまでにないような強力な兵器に使える可能性があるとかで、サンプルを本国に輸送するよう命令がでているらしい」

「鉱石ですか…何に使うんでしょうね?」

「さあな。蛮族が使う魔石とやらみたいに爆発する訳でもなかろうに」

「まあ、気にしても仕方ありませんね。とりあえず積荷を全て本国に届けられればそれで良いんでしょうし」

「違いないな」

 

 地方隊司令と副司令がそんな平和な会話をしていた時、「アリエス」のレーダー手は、レーダースコープに奇妙な輝点か映っているのを見つけた。

 

「ん? 何だこりゃ?」

 

 よくよく観察すると、その輝点は少しずつ艦隊の方へ近付いてきている。速度はだいたい時速400㎞くらい、数は1つ。高度は…

 

「んん?」

 

 飛行高度は4,000メートル。これだけなら、野生のワイバーンか何かかと思えたが、ワイバーンにしては速度が速い。判断に迷ったレーダー手は、とりあえず相談しようと艦長に報告を上げた。

 

「艦長、対空レーダーに感あり。本船団からの方位230度、距離200㎞、数は1。飛行高度4,000メートル、飛行速度は時速400㎞、本船団に接近中。如何しますか?」

「ワイバーン…ではなさそうだな」

 

 艦長のフランク・サリヴァン大佐が顎鬚を捻りながら言った。

 

「少し待て、司令に相談してみる。そのまま監視を続けろ」

「は!」

 

 5分ほどで結論が出た。

 

「念のため飛行物体の正体を確認する。艦隊上空で哨戒飛行中のアンタレス1個分隊を差し向けろ!」

「ははっ!」

 

 命令が伝わると、艦隊上空にいた「アンタレス」戦闘機のうち2機が翼を翻し、飛行物体の来る方向へと向かっていった。

 グラ・バルカス帝国軍では既に「アルコル」という最新鋭戦闘機が制式採用されているが、主力艦隊の母艦航空隊や本土の防空隊に回されてばかりだ。本国艦隊の地方隊や植民地展開の航空隊は、相変わらず「アンタレス」を使い続けている。尤もこの「アンタレス」だって、ワイバーン(ロード)なんかが相手でも一捻りなのだが。

 しかし、ほんの少しの後にこの飛行物体の正体がとんでもないものであることが発覚した。その兆候はまず、レーダー手によって発見された。

 

「んっ?」

 

 接近していく「アンタレス」と輝点を見比べているうちに、レーダー手はあることに気付いた。そろそろ「アンタレス」隊にも飛行物体が目視できている頃合いだが…

 

「え…何か、スピード速くね?」

 

 飛行物体の速度がさらに速くなっているように思えたのだ。レーダー手がそのことを報告しようとした時、無線機のスピーカーから焦った声が飛び出してくる。

 

『こちらレックス隊!』

 

 飛行物体の確認に向かった直掩隊からの通信である。

 

『ありゃワイバーンじゃない! 俺たちと同じレシプロ機だ! えらくほっそりしている…偵察機か?

な、あのマークは…ただの赤い円!?』

 

 その瞬間、リルケ副司令が一瞬固まった。

 

「ただの赤い円だと? それはもしや…」

 

 副司令の呟きにパイロットの叫びが重なる。

 

『こりゃ我が国の機体じゃない! 直ちに迎撃に移る! ………な、速い! こなくそっ! ……駄目だ、追いつけん!

こちらレックス1、敵機を取り逃した! 脚が速い、アンタレスでも追いつけない!』

 

 これで完全に、アイザック司令もリルケ副司令も…いや、全員が緊急事態だと理解した。

 

「全艦対空戦闘用意! 哨戒中のアンタレスは全機、国籍不明機の迎撃に向かえ!」

 

 アイザック司令が慌てて命令を出す。だが、もはや全てが遅かった。

 追加で殺到した哨戒部隊の迎撃をも突破し、空母からの「アンタレス」の発艦も間に合わないまま、飛来した不明機は船団の上空を2度ほど旋回。そして、必死に追い縋ろうとする「アンタレス」と、ようやく撃ち上がり始めた艦隊の対空砲火をあっさりと振り切り、いずこかへと飛び去っていったのだった。

 

「今の機体……我が軍の偵察機『スタークラウド』では、ないよな……」

 

 震え声で確認するアイザック。

 

「は…あの機体の国籍マークは、ただの赤い円でした。確かに我が軍のマークと似ていますが……赤い円は我が軍のものではなく、ロデニウス連合王国の国籍マークです」

 

 同じく震え声で答えるリルケ。

 

「ロデニウスだと!? しかし、この辺りは我が軍の制空・制海権内だ! こんなところに飛行場を建設するなど不可能だぞ! それにそもそも建設可能な島もない!」

「は、それはそうです。ですが…飛来したあの機は単発機でした。単発機ならば、わざわざ飛行場を築かずとも…」

 

 リルケが最後まで言い終える前に、アイザックは彼の言いたいことを察した。

 

「空母ならば可能、か…」

「はい…」

 

 つまるところ、ロデニウス軍の空母機動部隊が近くにいる可能性が非常に高いのである。

 自国の制海権内に堂々と侵入している辺り、このロデニウスの空母機動部隊は間違いなく精鋭だ。下手をすると、かつてのグラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊や特務軍艦隊にも匹敵する最精鋭かもしれない。

 そんな実力者にかかれば、ろくな主力艦のいないOM356船団の護衛艦隊など瞬時に吹き飛ばされてしまう。そして、船団に山と積み込まれた物資は、本国にたどり着くことなく全て海底に沈められてしまうだろう。

 

「……全艦に命令、対空警戒を厳となせ」

「はっ!」

 

 たとえ蟷螂の斧であろうと、せめて一矢は報いてみせる……アイザックとリルケは悲壮な覚悟を決めた。そして同時にこうも思った。精鋭なのは仕方ないとして、どうか少数であってくれ…と。

 果たして、推定ロデニウスの偵察機が飛来してから1時間後、「アリエス」の対空レーダーが接近する輝点の群れを捉えた。

 

「対空レーダーに感! 本船団からの方位240〜250度、距離300㎞! 反応の規模からして、数は推定150機以上ッ!!」

 

 悲鳴じみたレーダー手の報告に、アイザックもリルケも愕然とした。

 

「な…何だと!? 150!?」

「正規空母にして4隻以上か…!」

 

 明らかに敵の規模が大きすぎる。

 まずそもそも、このOM356船団の航空戦力は、第21地方隊の2隻の護衛空母「ベネラ」「コスモス」に搭載された総勢60機だけだ。しかもその中で、制空戦闘を行える「アンタレス」は空母1隻あたり12機、合計24機しかない。残りは対艦対地攻撃用の「シリウス型爆撃機」24機と、偵察兼攻撃用の「リゲル型雷撃機」12機だ。

 ちなみに、各機の見た目と性能だが、「アンタレス07式艦上戦闘機」は零戦21型相当、「シリウス型爆撃機」は九九式艦上爆撃機(見た目だけは彗星三三型)相当、「リゲル型雷撃機」は九七式(3号)艦上攻撃機相当である。

 この世界の一般的な国家が相手なら、これだけでも十二分に強力な戦力である。だが、自国の精鋭主力艦隊を破ったロデニウス艦隊を相手取るには、性能不足が否めない。

 さらに言えば、パイロットの練度もお世辞にも十分とは言えない。もともと植民地の蛮族(現地人のこと)の反乱を鎮圧する…言い換えれば「弱い者いじめ」をする部隊であるため、兵器の性能に胡座を掻いてしまっており、「自国の主力部隊と同等以上の数・質を有する敵」との戦闘は経験がない上に訓練も最低限しかやってないのである。

 だがこんなナリでも、今は彼らに頼るしかない。

 

「全戦闘機、直ちに発進せよ! 輸送船を守れ!」

 

 アイザック司令は凛とした、しかし悲壮感の見え隠れする声で命令を下した。

 程なく2隻のスプートニク級護衛空母の飛行甲板を爆音が満たし、「アンタレス」戦闘機が順番に空へと上がっていった。ここが自分たちの死に場所となるかもしれない、という恐怖を押し隠して。

 

 40分ほど経った頃、直掩に上がった「アンタレス」隊から通信が入った。

 

『こちら戦闘機隊、来やがった! くそ、なんて数だ…畑の害虫みたいにうじゃうじゃいやがる! これより交戦する!』

 

 レーダースコープには、直掩隊を示す輝点が敵機の群れを示す輝点と重なり合う様子が映っていた。頼む、1機でも多く撃墜してくれ…それが、護衛艦隊の将兵並びに輸送船乗員たちの切なる願いだった。

 だが無情にも、それは叶えられなかった。

 

『くそっ、速い! 速すぎる!』

『く、来るな! 来るなぁ! うわあぁぁぁぁ(何かが壊れる音と共に通信中断)』

『駄目だ、敵戦闘機が速いし強い! 雷撃機や爆撃機に近づけん!』

 

 そんな悲鳴もだんだんと減っていく。

 直掩隊の迎撃は敵の護衛戦闘機によってほぼ完全に抑え込まれ、爆撃機や雷撃機はかすり傷を負っただけで船団へと向かってきた。綺麗な編隊を組んでおり、しかも船団上空で分離して半数は高空、半数は低空から向かってくる。

 

「雷爆同時攻撃か…!」

「ちくしょう、なんて精鋭部隊だよ!」

 

 対空砲座に取り付いて敵機を睨む兵士たちから、そんな言葉が漏れ聞こえる。

 艦船にとっては逃げ場がない最悪の攻撃といえる、雷爆同時攻撃。そんな戦法を実践してくるとなると、相手は紛れもない精鋭だ。果たして生きて帰れるかどうか、もしかするとここで…そんな悪い予感が頭をもたげる。

 

「撃ち方始め!」

 

 頃合い良しと見たアイザック司令の号令と共に、駆逐艦や軽巡洋艦の主砲が、重巡洋艦や空母の高角砲が、順次砲撃を開始した。向かってくる敵機に近い側の艦がまず、必死の砲撃を開始する。先行して向かってきている高空の敵に照準しているようだ。

 しかし……

 

「クソ! 弾幕が薄い!」

 

 アイザックは歯噛みした。

 彼は元々北部方面艦隊に所属していたこともあり、そのため主力艦隊の対空戦闘の様子を経験している。その彼の経験から言えば、第21地方隊の対空弾幕は明らかに薄かった。主力艦隊なら、空の色が真っ黒になるほどの弾幕を撃ち上げるのが当たり前なのだが…。

 敵編隊は小揺るぎすらもせず、まっすぐ向かってくる。本国艦隊の地方隊は旧式艦を使っていることが多く、そのためもあって対空射撃がなかなか命中しない。例えば第21地方隊の場合、タウルス級重巡洋艦は高雄型重巡洋艦相当の性能である。その他は、5,500トン型相当の「キャニス・メジャー級軽巡洋艦」2隻と、睦月型相当の「スコルピウス級駆逐艦」8隻、特型駆逐艦相当の「キャニス・ミナー級駆逐艦」8隻しかいないのだ。

 

「なかなか当たりませんな…」

 

 リルケが呟くように言った時、ようやく1機の敵機が黒煙を吐き出した。パイロットは諦めていなかったのだろう、被弾した敵機はしばらく飛行していたが、新たな高角砲弾の炸裂と共に片翼を吹き飛ばされ、くるくると回転しながら落ちていく。

 船団の外縁を固める駆逐艦群の上空に達する前に、もう1機が黒煙の尾を引いて海面に直行する。さらにもう1機、抱いていた爆弾に被弾したのか大爆発を起こして散った。だが、残った機は40機前後と多い。編隊もそこまで崩れていないし、撃墜された敵機のいた場所にはすぐに隣の敵機が入っている。練度の高さを証明する動きだ。

 

「先に急降下爆撃を仕掛けるか。奴らの狙いは輸送船か、それとも空母か…?」

 

 と、アイザックが呟いた時、敵機のうち1個編隊10機ほどが一斉にくるりと翼を翻した。その向かう先は…

 

『敵編隊、本艦直上! 急降下!』

 

 なんと旗艦「アリエス」である。

 

「な!? う、撃ち落とせ、早く!

 

 フランク艦長が泡を食ったような声で命じた。まさかこちらを狙ってくるとは思わなかったのだ。

 

『いや待ってください! これは…敵機の狙いは本艦じゃありません! 駆逐艦『サルガス』です!』

 

 見張員が報告を訂正した。

 

「いかん、敵機を撃て! 『サルガス』を援護しろ!!」

 

 フランク艦長の号令の下、「アリエス」は向けられる高角砲の全てを動員して必死に撃ちまくる。狙われた駆逐艦も、それこそ死に物狂いで対空砲火を放つ。

 主力艦隊のそれより遥かに薄い対空弾幕を、敵機は1機も撃墜されずにあっさりと突破し、爆弾を投下した。

 狙われた駆逐艦たちは、対空砲を撃つのと並行して急転舵によって爆弾を避けようとする。スコルピウス級駆逐艦「ララワグ」は、艦長が上手くタイミングを見切ったことで投下された爆弾3発を全て回避した。だが、他の艦は幸運に恵まれた訳ではなかった。

 

ドガアァァン……!

『駆逐艦「ギルタブ」被弾!』

 

 見張員の悲愴な声。

 スコルピウス級駆逐艦「ギルタブ」には2発の爆弾が命中。1発はあろうことか艦橋を直撃し、指揮を執っていた艦長以下の艦橋要員と操舵手たちを残らず死傷させた。そしてもう1発は艦体後部に命中。投下された500㎏爆弾は薄い装甲をあっさりと突き破り、機械室にまで達してから爆発した。これによって発電機等が瞬時に全滅し、ついでに缶室にも損傷が及んだ。心臓を抉られた「ギルタブ」は急激に速度を落とし、黒煙を噴き上げたまま艦隊から落伍、取り残されていく。睦月型相当という旧式駆逐艦にとってはかなりのダメージだ。沈没しなくてももはや戦えないだろう。

 キャニス・ミナー級駆逐艦「クラズ」は、立て続けに3発の爆弾を回避した上に敵機を1機撃墜した。だが武運及ばず、最後の敵機が投下した爆弾が艦中央部に吸い込まれた。ガツン、と被弾の衝撃が走る。

 

「爆弾命中ー!」

 

 叫んだ直後、落雷のような轟音と共に乗員の視界は一面真っ赤に染められた。その次の瞬間には、身体が軽くなるような感覚を感じると同時に乗員の意識は永遠に刈り取られていた。

 爆弾の炸裂によって、「クラズ」は第2・第3魚雷発射管に詰められていた魚雷が誘爆してしまった。既に老齢化しつつあった艦体にとって53㎝魚雷6本の一斉爆発は耐えられる打撃ではなく、「クラズ」は一瞬で全乗員もろとも消し飛んだ。

 

「駆逐艦『ギルタブ』速力低下! 環状陣形から落伍します!

続いて軽巡『アルジャナフ』被弾、火災発生! さらに駆逐艦『サルガス』被弾、炎上中! あっ……く、駆逐艦『クラズ』轟沈しました!」

 

 「アリエス」の見張員が、次々と悲痛な報告を上げてくる。それを聴くだけでも、味方の駆逐艦や巡洋艦が手ひどく叩かれていることが窺えた。

 

「ちくしょう…ちくしょう…っ! せめて、対空戦闘の得意なハレー級駆逐艦が1隻でもいれば…!」

 

 アイザックの拳がふるふると震える。

 敵の急降下爆撃によって、軽巡洋艦2隻、駆逐艦6隻が被弾した。軽巡洋艦は2隻とも何とか持ち堪えたが、片方は缶室をやられたらしく速力低下を来しており、もう片方は対空火力が大きく減弱している。かなりの数の武装を破壊されたようだ。

 駆逐艦はというと、「クラズ」が轟沈し「ギルタブ」を含む3隻が大破航行不能となって艦隊から脱落。2隻は火災が発生した上、対空火器にかなりの被害を出している。

 そして、綺麗な環状陣形を構築していた艦隊は、敵の爆撃によって大きく混乱していた。回避行動によって艦隊陣形が崩れ、各艦の相互支援が困難になっている。

 

 これだけで済めばどんなに良かったか。

 艦隊陣形が崩れたところへ、低空からしたい寄る複数の影。いつの間にやら高度を10メートル前後という超低空まで落とし、艦隊に向かってくる雷撃隊である。

 

「低空だ! 雷撃機が来るぞ!」

 

 アイザックが鬼のような形相で指示を飛ばす。その怒りは敵機に向けられたものだろう。

 

「敵雷撃機編隊、『ベネラ』『コスモス』に向かう! な、これは……敵雷撃機10機以上、左舷より本艦に向かってきますっ!」

「う、撃ち落とせ、早く!」

 

 見張員の絶叫に、フランク艦長の号令が震える。

 現状、第21地方隊は敵機の急降下爆撃によって艦隊陣形を崩され、相互支援が困難な状態にある。しかも、こちらの戦闘機による迎撃がほとんどできなかったため、敵機は緊密な編隊を組んでいる。雷撃された場合、その命中率はかなり高い。

 これまで高空の敵機を迎撃していた高角砲が、急いで砲身を下げて雷撃機を狙う。「アリエス」の近くにいた駆逐艦も、何とかして雷撃を阻止しようと主砲を撃ちまくる。

 だが、陣形の崩壊と艦艇の被弾損傷によって、弾幕はかなり薄くなってしまっている。ぽつぽつと砲弾炸裂の黒煙が湧き出すくらいで、本当に悲しくなるほどだ。そのか細い対空弾幕をあっさりと抜け、敵機が向かってくる。

 

「は、早く落とせえぇぇぇぇ」

 

 フランク艦長が喚いている。そこに連続した射撃音が重なった。「アリエス」の対空機銃が応戦を開始したのだ。

 「アリエス」に近付いてきた敵機は10機。5機ずつの編隊を組んでいる。そのうち1機が「アリエス」の対空砲を浴びて火を噴いた。少しの間踏ん張っていたが、やがて機首を下げ、力尽きたように海面に滑り込む。だが、撃墜できたのはその1機だけだ。

 残りは弾幕を掻い潜って「アリエス」に接近し、4機に減った編隊が先に魚雷を発射してきた。

 

「敵機、魚雷投下! 数4!」

「取り舵いっぱい! 急げ!」

 

 フランク艦長の号令が下り、操舵手が急いで舵輪を回す。しかし、排水量1万トンを超える「アリエス」は、すぐには回頭しない。

 海面に白い航跡がするすると伸び、「アリエス」に向かってくる。2本は外れそうだが、残り2本が怪しい。

 

(((回れ! 早く回れ!)))

 

 全員が必死に祈る中、やっと「アリエス」が回頭し始める。1本が命中コースから外れたが…

 

「雷跡1、近い! 当たります!」

「総員衝撃に備えろぉぉ!!」

 

 1本が避けきれなかった。

 ガン、と鈍い音がして、僅かに衝撃が走る。……が、それだけだ。

 

「ん?」

 

 リルケが首を傾げる。魚雷が命中したにしては変だ。床から身体が飛び上がるほどの衝撃がない。

 

「魚雷、命中したよな?」

「そのはずですが…もしかして、不発でしょうか?」

 

 アイザックとフランクが顔を見合わせた。

 

「不発か…何とか助かったな…」

 

 しかし、安心するのはまだ早い。もう1個編隊残っているのだ。その1個編隊5機が、順次魚雷を投下してくる。さらに、「アリエス」の上を飛び越えざまに機銃掃射を浴びせてきた。

 対空機銃を撃ちまくっていた兵士が、敵機の主翼から放たれた太い火箭に直撃され、ザクロのように頭部を弾けさせる。腕を吹き飛ばされた不運な兵士が、地獄に落とされた亡者のような呻き声を上げる。

 

「な、何とかして躱せ!」

 

 機銃掃射によってスリットガラスの割れた艦橋で、フランク艦長が叫んでいる。

 取り舵を切っていた「アリエス」は、さらに取り舵を切って回っていく。そこに敵機の発射した魚雷が迫ってくるが、「アリエス」の回避によって命中コースから外れていく…1本、2本、3本。

 しかし、残り2本、少なくとも1本は避けられそうになかった。

 

「今度も、不発であってくれ…!」

 

 アイザックの切なる願いが戦闘騒音にかき消された直後、ガツンと軽い衝撃が響いた。そして次の瞬間、「アリエス」の艦体は凄まじい勢いで蹴り上げられた。艦橋内の全員が弾け飛び、直後に壁や床や計器類に叩きつけられた。

 

「ぐうっ……幸運は続かなかったか…!」

 

 火災が発生したらしく、焦げくさい臭いが漂ってくる艦橋にて、アイザックが床から身を起こしながら呻いた。

 だが、「アリエス」への攻撃はこれで終わりだった。爆弾も魚雷も使い果たしたのか、敵機は離脱していくばかりである。

 

「手酷くやられたな……」

 

 アイザックの呟き通り、「アリエス」は魚雷を1本もらってしまった。だが、実はこれはまだマシな方だった。

 見渡すと、海面から3条の太い黒煙が空に向かって昇っている。その下で燃えているのは、第21地方隊の艦艇だ。

 護衛空母「ベネラ」「コスモス」はどちらも、全艦火だるまとなって激しく炎上している。あれではもはや消火は不可能だ。

 そして、「アリエス」と同じタウルス級重巡洋艦に属する「ボタイン」は、燃えながら横転しつつあると駆逐艦から報告が入っていた。遠からぬうちに水面の底に招かれるだろう。

 

「被害は甚大、か…」

 

 アイザックがそう呟いた時、鈍い爆発音が響いた。

 

「あっ! 輸送船が…っ!」

 

 続いて見張員が叫ぶ。

 輸送船のうち1隻の舷側に、巨大な水柱が突き立っていた。どうやら護衛艦を外れた魚雷が、たまたま輸送船に命中したらしい。

 直後、輸送船は凄まじい勢いで爆発し、真っ赤な炎と黒煙と無数の破片を空に向かってばら撒いた。原油か何かの可燃物を大量に積んでいたようだ。

 

「ちくしょう……護衛の任務も果たせないなんて…!」

 

 ギリッ…とアイザックは唇を噛み締めた。

 

 空襲による最終的な被害は、重巡洋艦「ボタイン」、駆逐艦4隻が沈没し、小型護衛空母「ベネラ」「コスモス」は火災鎮火不能と見做されて総員退艦のうえ雷撃処分。重巡洋艦「アリエス」、軽巡洋艦2隻、駆逐艦3隻が損傷した。また、輸送船団からは2隻が護衛艦を狙った攻撃に巻き込まれて沈没している。

 輸送船は30隻もいるから、現時点ではそこまで大きな被害とは言い難い。…かもしれないが、撃沈された輸送船の積荷は原油であった。グラ・バルカス帝国本土でも原油は不足してきており、本土の民間では既に木炭で走るバスが何本も存在しているほどである。なので、どこかの時代の日本と同じく「ガソリンの一滴は血の一滴」…は極端かもしれないが、なかなかの貴重品になっているのである。それを沈められたのは痛かった。

 

「何とか、生き残った輸送船だけでも無事に本土に到着させなければ…。幸いにしてもう夕方だ、航空攻撃は容易じゃないだろう。夜の間に何とか距離を稼ぎたいな…。

っと、それどころじゃない、夜になれば視界が悪くなるから艦隊陣形の再編成は難しくなる。今のうちにやらなければ」

 

 アイザックは目の前の現実問題に目を向け直した。




ということで、「戦略作戦ラヴクラフト」が発動した結果、まずは「グティマウン」の製造工場とそれを運用する飛行場がぶっ叩かれまくることとなりました。まあ、グティマウンなら核爆弾搭載できるスペックはありますから、味方を核の炎で焼かれないようにするために破壊するのは当然です。
そして、グラ・バルカス帝国を干上がらせる第一歩が……。OM356船団を襲ったのは、いったいどの航空隊なんでしょう。


UAが148万を超えた…! 皆様、本当に、ご愛読ありがとうございます!

評価9をくださいましたAC隊員様、月魔様、酒樽様、徐・敦様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!


次回予告。

OM356船団を襲ったロデニウス軍の航空部隊。甚大な被害を受ける輸送船団だが、そこに追撃がないという保証など存在しない。そして、輸送船団を送り出した港もまた、無事という保証はないのだった……
次回『ラヴクラフト② 港湾攻撃作戦』
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