鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
ま、今週はまた実習なので、ちょっと投稿が難しいと思われるので、その分先にやってしまおうと…
評価9から10に上げてくださいました普通の一般人様、評価8をくださいましたリョウ23様、ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
予告通り今回は軍祭が終わった後の後日談になるわけですが…またしてもネタ入りです。
そして今回、新式銃のネタを公開するとともに、新たなネームド妖精登場のフラグが立ちました。さて、どうなるか…
では、ごゆっくりどうぞ!
中央暦1639年9月29日、ロデニウス大陸北東沖 タウイタウイ島。
タウイタウイ泊地の第13艦隊司令部では、フェン王国での軍祭に参加した
「司令、今回は申し訳ありませんでした。私の分析にも関わらず、死者を出してしまって……」
フェン軍祭派遣艦隊の旗艦を務めた"霧島"が、頭を下げる。
「いや、気にするな。あれは俺にも非があった」
堺は、苦々しい表情を浮かべて答えた。
「あのパーパルディアとかいう国が、あそこまで野蛮かつ危険な国だとは考えていなかった。前世界……地球の国際常識で事を考えたのが、不味かった。やはり、この世界では地球の国際常識は通用せんな……。今回のことで、それがよく分かったよ」
影ながら現場を見ていた堺が、そう言って話を締め括ると、
「まさか、軍祭の場で警告もなしに実弾発砲だなんて……」
心底呆れた、という調子で"大和"が呟いた。"霧島"らが提出した報告書を持つその手が、細かく震えている。
「これは、パーパルディア皇国に賠償を求めたほうがよろしいでしょうか?」
そう言う"鳳翔"も、目が笑っていない。そして、怒りのオーラが全身から滲み出ている。イメージは、不動
「いや、求めるだけ無駄だろう」
堺は、ばっさりと"鳳翔"の案を切り捨てた。
「フェン王国のマグレブ殿は、あの国をやたらプライドが高い国だと言っていた。こちらが賠償を求めたとしても、向こうは応じないだろう。それどころか、こっちが目を付けられかねん。まあ、もう目を付けられてるかもしれんがな。
球磨、お前と11駆は、我が国の国旗を掲げていたのだろう? あいつらの艦隊と戦った時に」
ここで堺は、"球磨"を振り返る。
「うん、確かに掲げてたクマ。
アホ毛をぴょこぴょこさせながら、"球磨"が答える。
「それなら多分、目を付けられただろうな。この世界には魔法通信なんてものがある。全艦を仕留めるまでに、本国に通報する時間くらいあったはずだ。
それより球磨、吹雪、白雪、初雪、深雪。お前らの口から、敵の艦隊について、どんな船だったか話してくれないか? 俺はあの現場を見ていないからな」
とここで、"摩耶"が手を挙げた。
「ん? 提督、お前ひょっとしてあの軍祭に来てたのか?
さっきのマグレブって人の話といいこれといい、直接見ていたように聞こえるぜ」
「ああ、行ってたよ。鳥海にこっそり乗せてもらってな」
堺は事もなげに答えた。
「なんだ、それならあん時、直接指揮したらよかったんじゃねえのか?」
"摩耶"がそう言う傍らで、"霧島"が沈み込んだ。提督の目の前で被弾し、死者も出すという失態を晒した、と改めて思ったからである。
「その考えはないでもなかったが、提督のいない……少なくとも皆がそう思っている状況で、想定外の事態が起こった時に、皆がどう対応するか見てみたかったんだ。それと鳥海、黙っててくれてありがとう。霧島も、よく対応してくれた」
「いえ、司令官さんの戦略でしたから」
謙遜する"鳥海"。"霧島"は沈んでいた表情を少し明るくした。
「まあ、俺の考えとしては、皆よくやっていたと思うぞ。特に霧島、お前は未曾有の状況下でよく動いていた」
堺は一同を讃えた後、"球磨"に向き直った。
「さて、ここからは違う話だ。球磨、敵艦隊について教えてくれ」
「わかったクマ」
"球磨"はアホ毛をぴょこん、と動かすと、話を始めた。
〈艦娘説明中………〉
「なるほど…」
"球磨"を始め、水上艦隊と交戦したメンバー一同が話し終えるのを待ち、堺は説明した。
「皆が語ってくれた敵の艦の特徴から、敵艦の正体がよく分かったよ。そりゃ『戦列艦』ってやつだ」
「戦列艦? それって確か……」
思い出そうとした"吹雪"が、思い出せずに首を傾げると、
「確か、地球だと18世紀頃に世界各国で使われていた、木造の帆船を使った軍艦ですね。地球だと片舷37門、計74門の大砲を搭載した『74門艦』が主流で、舷側にそれらの砲を並べ、基本的に単縦陣(複数の軍艦を、縦一列に並べた布陣)を構成して、同航戦(敵味方が同じ方向に航行しながら撃ち合うこと)や反航戦(敵味方が擦れ違いながら、一瞬の間に撃ち合う戦い方)で戦う軍艦だったかと」
気を取り直した"霧島"が解説した。
「そして、『戦列艦』の名前の由来は、複数の同じ形の船が一列に並ぶ『戦列』を作って戦う『艦』だから、ですね」
"鳥海"が後を引き受ける。
「さすが、2人とも詳しいな」
「ってか、よくお前らそんなの知ってるな……」
堺が感心し、"摩耶"が半分呆れた。
「だがな、この軍艦は欠点だらけだ。まず機動力が低い。マグレブ殿の話では、奴らの軍艦はだいたい速力12ノット程度。我々にしたら、標的船以下の速力だ。そして、大砲の命中率が低い。それを補うために、『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』の理論で多数の大砲を舷側に並べている。ということは……」
「生存性に乏しい、ですね」
堺が話していると、途中で"大和"が口を開いた。
「そんなの、艦全体が巨大な弾薬庫みたいなものです。しかも、基本的に木造船でしょう? 私たちの砲弾が1発でも飛び込んだら、それこそあっという間に誘爆して吹き飛びますよ」
「その通り。それにマグレブ殿の話では、彼らの砲は射程2㎞だ」
堺がさらに説明すると、
「たった2㎞? それじゃ、吹雪たち駆逐艦でも、アウトレンジで倒せるじゃねえか」
"摩耶"がコメントする。
「ああ、だから1対1なら負ける要素はない。ただ…相手の数が分からん。今回は22隻で済んだが、もっと出てくるかもしれん。少なくとも今回は、竜母という航空母艦の一種は見なかったようだしな。というわけで、青葉」
堺は、"青葉"を見た。
「司令官、何でしょう?」
「パーパルディア皇国について分析を頼む。国力、軍事力、人口……どんな面からでもいい、できるだけ多くの情報を集めて、分析してくれ。情報分析なら、お前のとこの情報収集・分析科の
「任されました!」
"青葉"が右手を額にあて、ビシッと敬礼する。
「敵の航空戦力の分析については、鳳翔さんにお願いしたい」
「承知しました」
"鳳翔"は微笑みながら答えた。
「それと摩耶、
「承知したぜ」
"摩耶"は、脇を締めた状態で右手を額に当て、敬礼した。
「よし、これで会議は終了だ。ちょうど今日、軍事部会があるから、軍部には俺から報告する。以上解散!」
堺の号令を合図に、会議は解散した。
後日、軍事部会が終わった後、"大淀"が管理しているタウイタウイ泊地の記録には、以下の項目が追加で登録された。
[アマノキ沖航空戦]
発生日時: 中央歴1639年9月25日 午前10時30分
発生場所: フェン王国首都アマノキ南方5㎞程の沖合い
交戦勢力: パーパルディア皇国(と見られる。要確認)
概要: パーパルディア皇国の国家監察軍の所属と見られる
被害: 戦艦「霧島」、水上機飛行甲板及びその周辺に計5発の火炎弾を被弾。飛行甲板に火災発生、カタパルト損傷、「零式水上偵察機」1機全損、妖精殉職4名。
戦果: パーパルディア皇国の国家監察軍の所属と見られる飛竜隊20騎撃墜。なお飛竜は改良型と見られる。
[第一次フェン沖海戦]
発生日時: 中央歴1639年9月25日 午前11時30分
発生場所: フェン王国首都アマノキ西方25㎞程の沖合い
交戦勢力: パーパルディア皇国
概要: パーパルディア皇国・国家監察軍に所属する22隻の戦列艦が、フェン王国に対する懲罰攻撃のため同国に接近していた。これに対し、我が艦隊は軽巡洋艦「球磨」、吹雪型駆逐艦「吹雪」、「白雪」、「初雪」、「深雪」を差し向け、この艦隊と交戦。10分ほどで全艦を撃沈した。ただし、我が国の艦隊はいずれも国旗を掲げていたことから、我が国の存在をパーパルディア皇国に認知された可能性が大である。今後は防諜を意識する必要ありと認む。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その1時間後。
ロデニウス連合王国の首都クワ・ロデニウス……かつてのクワ・トイネ公国の首都クワ・トイネにある、連合王国政府庁舎の一角では、軍事部会が開かれていた。
連合政府庁舎は現在建物が増築中であり、まだ一部しか完成していない。そのため、軍事部会は工事の音が響く中での開催となった。
出席者は、ロデニウス連合王国軍の司令長官ヤヴィンを筆頭に、各軍の大臣、それと重要な報告事項がある各部隊の司令官。当然堺も混じっている。
「各部隊、現状を報告してくれ」
ヤヴィンの声に、まずは空軍大臣アルデバランが手を上げる。
彼は、ロウリア王国がクワ・トイネ公国に侵攻した際、第1竜騎士団の団長を務めていた。そして、ギムの街でルーデル隊と一式陸上攻撃機による空爆を受け、左の手足を吹き飛ばされる重傷を負った。その後クワ・トイネ公国軍に拾われ、最も進んだ医療施設のあったタウイタウイ泊地に緊急搬送され、手術を始めとした医療処置によって、一命を取り留めたのだ。
しかし、もう現場への復帰は不可能であり、それ故空軍大臣としてワイバーン隊の指揮官となっていたのである。
「現在、我が空軍は最も高い実力を持つ竜騎士の訓練の下、どんどん力を付けております。ですが、野生の竜の都合が付かないのもあって、新人の訓練はなかなか進んでおりません。また、ワイバーンの生物としての特性上、夜には行動できません。沿岸の警備については、海軍にも応援をお願いしたい状態です」
彼が着席すると、続いて海軍大臣ノウカが起立して報告する。
「我が海軍にあっては、先日ついにニジッセイキ型軽巡洋艦の1番艦『ニジッセイキ』が竣工しました。これより、第1艦隊に編入のうえ、慣熟訓練に入りたいと思います。慣熟訓練には3ヵ月を見込んでおります。また、カイジ型駆逐艦の2番艦『キングデラ』の艤装工事と、オウギョク型防空駆逐艦の1番艦の船体工事が、それぞれ近日中に完了する見込みです。
また、ラ・フランス型輸送艦の2番艦『バートレッド』が4日前に艤装工事を完了して竣工し、1番艦のラ・フランスと合わせて現在慣熟訓練中です。また、同3番艦が『マックス・レッド』と名付けられ、クイラ州南部の港湾都市ラスバの4番ドックより今朝進水しました。空いたドックではラ・フランス型輸送艦の4番艦の船体建造工事が開始される予定です」
続いては、堺の番であった。
「第13艦隊司令の堺です。先日我が艦隊が参加した、フェン王国の軍祭について報告したいと思います」
堺が起立して説明を始めると、各人がそれに聞き入った。
「先日フェン王国において開催された軍祭に、我が国は海軍第13艦隊から8隻の軍艦を派遣し、また陸軍第13軍団の1個小隊がデモンストレーションを行いました。
陸軍小隊の隊長からは、各国の武官たちから驚きの反応を多数観察した、との報告を受けています。また、フェン王国が用意した標的船に向けて、参加艦艇8隻のうちの3隻、戦艦『霧島』と重巡洋艦『摩耶』『鳥海』から実弾による砲撃演習を行いました。結果は良好なもので、我が国の力をフェン王国はじめ参加各国に見せられたと思います」
堺が報告すると、何人かが頷いた。
「しかし、この後問題が発生しました。フェン王国で砲撃演習を行った後、戦艦『霧島』がどこかの国の所属と思われる複数のワイバーンから、警告もなしの実弾発砲による攻撃を受けたのです」
その瞬間、会議室全体がざわついた。
「最終的に、『霧島』は合計5発の火炎弾を被弾し、搭載していた『零式水上偵察機』1機を全損。また、4名の殉職者を出してしまいました。この攻撃に対し、『霧島』はその場に居合わせた『摩耶』『鳥海』とともに実弾による対空射撃で迎撃。最終的には、襲ってきたワイバーン20騎全てを撃墜いたしました。
現在、襲撃者のうちの1人と見られる男を拘束しており、泊地にて取り調べを行っています」
「なんてことだ……」
「実弾発砲とは……もしかして……」
何人かが、何事か呟いている。
「なお、襲撃してきたワイバーンですが、我が国の空軍が運用しているワイバーンよりもやや大柄であり、また速い速度を出していました。我が国のワイバーンは最高で時速235㎞ですが、それに対して襲撃者のワイバーンは時速350㎞で飛んでいたとの報告を、各艦の見張りや電探操作員より受けています」
その瞬間、全員がものすごいショックを受けた。
「ちょっと待て、堺殿! それはもしや、パーパルディア皇国が運用しているワイバーンの改良型ではないか!?」
ヤヴィンが驚いて堺に質問する。
「はい。詳細は不明ですが、おそらくそれだと思います。軍祭に来ていた各国の武官の何人かにお話を伺ったところ、皆様異口同音にそう仰っておられましたので。捕らえた男の取り調べを急ぎます」
対して、堺は特に衝撃を受けた様子もない。泰然たるものだ。
「この武力攻撃を以て、フェンにいた我が艦隊は、この武装集団を極めて危険な存在と見做し、これ以上死者を出すわけにはいかない、と判断しました。
そこで、フェン王国に接近中だったこの武装集団の仲間と見られる水上艦隊に対して、軽巡洋艦『球磨』と第一一駆逐隊、駆逐艦『吹雪』『白雪』『初雪』『深雪』を差し向け、交戦してこれを殲滅しました。こちらの方でも何人か拾っていますので、必要なら治療等を施した上で、取り調べを急ぎたいと思います。
それと、それに関して彼らの艦隊を撮影しておいたのですが、その写真に彼らの紋章らしきものが写っていました。私には何の紋章か分からないので、皆様で確認していただいてよろしいでしょうか?」
堺はそう言って言葉を切り、軍服のポケットから写真を数枚取り出して、テーブルに広げた。その1枚には、大砲を並べた帆船が、3隻ほど写っている。うち1隻は爆発炎上していたが。
「「「なっ!?」」」
無事な方の帆船の帆に描かれていた紋章を見て、堺以外の全員が絶句する。
その紋章は、尻尾を長く伸ばして交差させ、口から炎を噴いている2頭の竜を描いたものだったのだ。第三文明圏内外に住む者たちなら、知らぬ者はない恐怖の紋章。
「いかがでしょうか?」
堺が尋ねると、
「堺殿……これは……」
なんとか気を取り直したヤヴィンが、口を開いた。
「これは……パーパルディア皇国の紋章だ。間違いない!」
「ほう。では私の艦隊は列強国の艦隊を、一切の被害なく叩きのめした、と?」
堺とヤヴィンの他は、声を出す者はいない。第13艦隊が軍祭でやったことがあまりにも衝撃的すぎて、開いた口が塞がらなくなったのだ。
(まさか、列強パーパルディア皇国のワイバーンロードと水上艦隊を、特に大きな被害も出さずに全滅させるとは……!)
それが、全員の感想だった。
「堺殿、以前に
ヤヴィンが感心したように言う。堺は、その発言にやっぱり違和感を抱いた。
「国家監察軍? 本国の正規軍ではないのですか?」
フェン王国の王宮騎士団長マグレブの話と合わせて考えるに、どうやら自分たちが戦った艦隊は、本国の正規軍ではなかったようなのだ。
「違うと言えるだろう」
ヤヴィンはそう言うと、ある写真の1箇所を指差した。
「ここを見てくれ。この船は、何門の大砲を載せている?」
「?」
訝しみながらも、堺は写真を見る。
「ええと……? 2、4、6、8……。片舷で15門。ということは、30門級戦列艦ですか?」
「そうだ、この戦列艦は30門級なのだ。だから、正規軍ではない、と言えるのだ」
ヤヴィンは、ゆっくりと説明した。
「現在のパーパルディア皇国の正規軍が運用する戦列艦は、100門級が大半だと噂に聞いたことがあるのだ」
「なるほど。ということは、それよりはるかに砲門数の少ないこいつは、正規軍ではないと言えるのですね」
(っつーことは、球磨たちが撃沈したのは、退役寸前の老朽艦とか、そんなのなんだろうな)
堺がそう考えていると、
「うむ。それに加えて、パーパルディア皇国には国家監察軍という組織がある。これは、特に文明圏外国への懲罰攻撃を主任務とする部隊でな」
「そういうことでしたか。そういう存在を考慮すると、これは国家監察軍であったと言える、ということですね」
「うむ」
堺は嘆息した。これが正規軍だったなら、列強とは名ばかりだなと思っていたのだが、どうやら違ったらしい。
「ですがヤヴィン殿、相手の主力が戦列艦なら、技術的にはこちらが優勢です。それは、こちらの砲の性能に理由があります。そもそも何故、あんなに沢山大砲を積む必要があるかと言いますと、低い命中率を数で補おうとしているからです。この時点で、命中率の低さを自分から宣言しているようなもの。第13艦隊も含め、近代化された上に十分な練度を持った我が国の艦隊が相手だと、一方的に倒せる相手です。
しかも、彼らの砲は舷側に固定されています。このため、彼らは発砲しようとすると、距離2㎞まで接近した上で必ずこちらに腹を向けなければいけません。その間に、ウインク型砲艦の75㎜砲でも撃ち抜くことができるでしょう。カイジ型駆逐艦やオウギョク型防空駆逐艦なら、一方的に蹴散らせます。それ以上の艦艇なら、もう説明するまでもございません」
堺は、あっさり言い切ってのけた。
「なんと、真にそんな力があるのか!? 我が国が最近必死で造っているあの艦艇群は!?」
海軍大臣ノウカが、驚いて叫ぶ。
「はい。ただ、それだけの性能の兵器があっても、使うのは人間ですから、兵士も鍛えなければなりません。それだけはくれぐれもご了承願いますよ? 海軍大臣殿」
堺はこれも、念を押した。
「あ? ああ、分かっておる。しかし、そういう兵士は簡単にはできんものだろう?」とノウカ。
「ええ。それ故、我が艦隊から派遣した教官たちは、『月月火水木金金』を合い言葉に、ビシバシ兵士たちを鍛えているようですよ」
「兵士たちの何人かが、正月休みもないんじゃないかと嘆いておったぞ」
「さすがに正月は休みにしますよ……戦時でなければですが」
堺はニコニコしながら言うが、兵士たちからすればたまったものではない。正月すら休みにならないかもしれないのである。
「以上、第13艦隊より報告です。取り調べの結果が纏まりましたら、また報告させていただきます」
そう言い終えると、堺は着席した。
その後、いくつか報告が行われた後に軍事部会は終了となった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、首都クワ・ロデニウスから100㎞以上も離れたクイラ州のある一角。
砂漠特有の熱気の中を、陸軍の兵士たちが行軍している。過酷なように聞こえるが、これも訓練の一環なのだ。
そこから5㎞離れた地点では、静かな砂漠の空気を震わせて、砲声とエンジン音、そしてキュラキュラというキャタピラの音がしている。
ドォン!
砲声が1発響いたその直後、
ズガァン!
Ⅳ号戦車G型の1輌が、飛来した砲弾を正面から受けた。直後、そのⅣ号戦車は車体前面の装甲を歪ませ、エンジンルームから黒煙を吹き上げる。
シュパッ!
空砲めいた軽い音がして、IV号戦車の砲塔上部に白旗が揚がった。妖精さんたち特製の演習用装備である。
『こちら5号車、被弾! やられました!』
『こちら7号車。敵戦車、こちらに砲を指向! やーらーれーたー』
無線を阿鼻叫喚の悲鳴が飛び交う。
「くそっ!」
紅白戦を行っていた白組の隊長は、自身の乗るIV号戦車の上で歯軋りをした。
「
その隊長の視線の先には、IV号戦車にちょっと似た形状の、しかしIV号戦車とは明らかに異なる足回りをした戦車が、たった1輌で白組の戦車隊を
紅組のたった1輌の生き残り……VI号戦車E型「ティーガーI」である。かなり重量級の戦車であるにも関わらず、その重量感を感じさせない軽やかな運動を繰り返し、白組の砲撃を回避し、あるいは弾きながら、嫌になるほど正確な狙いで砲撃してくるのだ。
そして最終的に、隊長の乗るIV号戦車もティーガーIに倒され、白組の全滅で試合は終了した。6対1からの紅組の大逆転勝利であり、この結果は驚きを以て迎えられた。
……が、実はこの結果、当然といえば当然だったりする。戦車の性能もそうなのだが、搭乗員がヤバかったのだ。化け物じみた練度の持ち主だったのである。
「やれやれ、我々が勝って終わったか」
演習終了直後、周囲で何輌もの戦車が黒煙と白旗を揚げる中で、唯一やられていないティーガーI。その車内では車長を務める妖精が、どこからかタオルを取り出して額の汗を拭っていた。
砂漠地帯などという過酷な環境で、エンジンを全開で回していたものだから、エンジンの放射熱と気候が相俟って、ティーガーIの中は良く言えば5人用サウナ、悪く言えばでかい灼熱の棺桶だ。
「しかし車長殿、今回の演習はなかなか楽しかったですよ。砂漠で戦車、というのも悪くありませんな。かのロンメル将軍指揮下の兵士たちも、アフリカ戦線でこんな風に戦っていたのでしょうな」
装填手を務めていた妖精が、汗まみれだが満面の笑みで言う。
(ロンメル将軍とは、第二次大戦当時のドイツ陸軍戦車部隊の司令官だった将軍である。アフリカ戦線でイギリス軍をさんざん酷い目に遭わせ続け、「砂漠の狐」の異名を取り、挙句には「ナポレオン以来の戦争の天才」とまで言われた)
「そうそう。それに『あの』一連のセリフも久々に聞けましたからね」
操縦を担当していた妖精が、ハッチを開けて換気を図りながら装填手に同調する。
「何だ、『一連のセリフ』って?」
そこに、水筒の水をちびちびと飲んでいた砲手の妖精が問いかけた。
「砲手殿の『ふん、もう勝ったと思ってるな』からの、車長殿の『そうらしい。では教育してやるか』ですよ」
「一連のセリフって、それかよ!」
操縦手の妖精に、砲手がツッコミを入れる。
「全くですよ。それに、そのセリフを言った途端にこの無双ぶり。場所と時は違えど、『あの戦い』そのまんまの流れじゃないですか」
これまで黙っていた、通信手の妖精が話を纏めた。
わいわいと騒ぐ仲間たちを眺め、車長を務める妖精は1人思う。
(何の因果かは知らないが、せっかくこうして生まれて、また
車長は1人、考えに耽るのだった。
ちなみに、この車長妖精が乗り込んでいるティーガーⅠには、3桁のナンバーが砲塔後部に描かれていた。そのナンバーは、「231」。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その1時間後、クワ・トイネ州 マイハーク陸軍基地。
射撃演習場の一角では、例の新型小銃を設計した妖精が、緊張した面持ちで一点を見つめていた。その視線の先にあるのは、彼自身が設計した小銃。今、それは陸軍の歩兵によって、射撃テストに掛けられようとしていた。
今回の射撃試験は、ロデニウス連合王国陸軍の第2世代主力小銃を決めるテストでもある。そのため、陸軍大臣を始め陸軍の高級幹部が多数出席してテストを見ていた。それが、妖精の緊張の原因である。
多くの目が見つめる中、新型小銃が両手に構えて持ち上げられ、的にその銃口を向ける。そして、
ダン!
まず1発、発射された。九九式普通実包(旧日本陸軍が使用した、銃弾の1種)が1発撃ち込まれ、的の中心に穴を開ける。
ここで早速新型小銃は、その特徴の1つを見せつけた。なんと、射撃を行っている兵士は「銃の右側面に付けられたボルトを引くことなく」引き金に指をかけ、それを引いたのだ。自動小銃の本領発揮である。
ダン!
自動で装填されていた2発目の弾が、発射される。こちらも見事に的のほぼ真ん中を撃ち抜いた。
射撃を行っている妖精は次に、2回連続で引き金を引く。
ダン! ダン!
射撃音が続けて2回。的にも、新たに2発の弾が食い込む。
装填が行われたばかりで、しかも2発目などまだ1発目の発砲の衝撃が残っている中で撃ったにも拘らず、狙いはかなり正確だ。この新型小銃は、九九式小銃と比べてもちょっと重くなっているのだが、それがどうやら上手く作用して、撃った反動を殺すことができているらしい。
続いてはその倍以上、5発の連続射撃が行われた。
ダン! ダン! ダン! ダン! ダン!
さすがに機関銃には劣るものの、ボルトアクション式銃である三八式歩兵銃や九九式小銃など、比較にならないほどの短いスパンで立て続けに実弾が発砲される。連続発射された弾は、どれもブレることなく、しっかり的に命中していた。
最後に残った弾の1発が、的に向けて撃ち込まれる。それとほぼ同時に、Uの字のような形をしたクリップ(複数発の銃弾を纏めるための小型の金具)が、特徴的な金属音とともに上方に跳ね上げられ、排出された。クリップが空になったため、自動で排出されたのである。
誰もが無言で見つめる中、その金属音はまるで新たな制式採用小銃の産声のように、静まり返った射撃演習場に響き渡った。
キーン。
はい、今回入れたネタは、皆様ご存じ◯ルパンです。どうにも、戦車隊の演習シーンをどう描くべきか分からなくて…やむなくこのネタを使いました。
それと、新式銃の元ネタが分かった人は挙手。
次回予告。
軍祭において圧倒的な力を示したロデニウス連合王国。その様子を目撃した各国の武官たち、パーパルディア皇国の動きは…。
そして、「あの列強」も動き出す…?
次回「国際情勢ハ複雑怪奇ナリ」