鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
ついに総合評価1,000ポイント超、総合評価ランキング2位! ネタのごった煮が、ここまで来たか…!
皆様、本当にご愛読ありがとうございます!心より、御礼申し上げます!
しかし平均評価は相変わらず7.00に届かない…
評価1をくださいました桜うさぎ様、評価4をくださいました蓬月 瞠様、評価6をくださいましたダンゾウの影様、評価7をくださいましたナハト様、評価9をくださいました烈風連山様、○坊主様、ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
それと…コミックス「日本国召喚」の1巻を、ついに手に入れました! ひゃっほぅ!
で、それを見て思ったこと。
ワイバーンが、思ったよりデカい…! これは、拙作の設定を焼き直したほうがいいかもしれない…
間章のほうは投稿がもう少し先になりそうです。ですので、こちらから先に投稿いたします。今回は情景描写ガバガバ感が否めませんが…
それでは、ごゆっくりどうぞ!
中央暦1639年12月1日、ロデニウス連合王国 クワ・トイネ州。
そこで今、ある国際会議が開催されようとしていた。その名は、「大東洋諸国会議」。
この会議は、基本的に大東洋と呼ばれる海に面した地に国土を持つ国……具体的には、第三文明圏外の東側に国土を持つ第三文明圏外国の代表たちが集まって行う会議である。定期的に行われるものではなく、大きな出来事があった際に不定期に開催される会議である。
元々の会議提唱国が文明圏外国であるため、第三文明圏の列強パーパルディア皇国や、第三文明圏内に国土を有する文明国は「会議は必要がなく、無意味である」として、参加していない。
従って、文明国がこの会議には出席していないため、この会議は国際会議としては珍しく、オープンに本音を打ち明けるタイプの会議となっている。文明圏外国の代表たちが、国の本音をぶつけ合う会議なのだ。
過去に開かれた会議では、パーパルディア皇国の動向が会議の主題となっていたが……今回は別だ。パーパルディア皇国の動向とは別に、もう1つ主題がある。
「それではこれより、大東洋諸国会議を開催します」
司会進行係が宣言し、会議が始められる。
開催に先立ち、出席した各国の代表(というより、事実上各国のロデニウス駐在大使だが)には、資料が配布されていた。例年になく分厚いその資料には、主に2つのことが記されている。
「まず、最初の議題はパーパルディア皇国の動向についてです」
司会の言葉に、フィルアデス大陸の南方500㎞ほどの位置に国土を持つ島国、シオス王国の代表が手を挙げ、話し始める。
「皆様もご存じだと思うが、去る11月28日、我が国の西の隣国にして、我が国の友好国の一つだったアルタラス王国が、パーパルディア皇国によって滅ぼされた」
シオス王国の代表は、一言一言ゆっくり話す。その声は震え、表情には悲壮感があった。
「アルタラス王国といえば、第三文明圏外においては随一の軍事力を持ち、その軍事力は並みの文明国にも引けを取らなかった。しかし、パーパルディア皇国には勝てず、滅ぼされてしまった。先日アルタラス王国に降り掛かった運命が、次は我が国へ来るのかと思うと、我が国の王族も国民も、気が気ではなくなってきております」
シオス王国といえば、アルタラス王国のすぐ東隣の国だ。距離にして300㎞と離れていない至近距離である。だが、第三文明圏外随一の軍事力を誇ったアルタラス王国軍が、やられたのである。希望を失うのも無理はないだろう。
続いて、アワン王国の代表が挙手する。アワン王国は、フィルアデス大陸の北東部、距離にしておよそ250㎞ほど離れたところにある島嶼国家だ。その南やや南南西より420㎞ほどの位置にガハラ神国がある。
「アワン王国です。こちらにも、パーパルディア皇国から領土献上に関して強い圧力がかけられております。
我が国は以前、国家の体面を優先した結果、パーパルディアからの領土献上の圧力に屈したことがあります。あの時は国民からの反発が大きかった。今また領土の献上を求められ、どうすればよいのか、我が国の外交部は途方に暮れている状態です」
これを皮切りに、各国の代表が次々とパーパルディア皇国の脅威について、感じていることや自国の状況を話す。どこの国も、パーパルディア皇国に怯えているのだ。
そんな中、手を挙げたのはネーツ公国の代表である。ネーツ公国は、第三文明圏外国の中でも北方に位置する国だ。フィルアデス大陸とグラメウス大陸を繋ぐ地峡に本土を持ち、トーパ王国とともに“グラメウス大陸の魔物から第三文明圏を守る”と自負している国家である。
「ネーツ公国です。我々はパーパルディア皇国について、あまり恐れてはおりません。距離が遠いから、というのは確かにありますが、それだけではない。
先日我々はトーパ王国に倣って、ロデニウス連合王国と国交を開設、交易を始めました。そして彼らの武器の1つである銃を手に入れたのですが、いやはや、あれはすごい性能ですな。200メートル離れたところにいる動物を、1発で撃ち倒せる兵器があるとは思いませなんだ。それに、トーパ王国からの触れ込み通り、トーパ王国の主力遠距離兵器であるクロスボウなどより短い時間で、多数の攻撃ができる。あれがあれば、我々は簡単には負けんと思うとります」
ネーツ公国の代表が着席すると、続いてまたシオス王国の代表が挙手した。
「そうだ、今のネーツ公国の代表の方の話で思い出した。我が国も少量ながらその銃を手に入れたのですが、やはり全軍に行き渡るだけの量がありません。彼らの兵器は確かに強力だが、
それさえなければ、我が国はすぐにでも全兵士に行き渡るだけの銃を手に入れ、訓練したいと思っているのですが。ついでにいえば、もう少し多くの教官を派遣していただけると助かります」
そしていよいよ、ロデニウス連合王国の代表である外務卿・リンスイの発言の番となった。
「ロデニウス連合王国です。我々自身も、アルタラス王国が征服されたことで、覇権国家が目と鼻の先まで進出してきた状態となっており、パーパルディア皇国を自国の存続にあたっての重大な脅威と捉えています。そしてシオス王国の代表の方が仰った通り、我々も皆様に強くなっていただきたいと思っているのですが、確かに武器が高価です。そこで、この場をお借りして、皆様にある提案をさせていただきたいと思います」
話しながら、リンスイはつい少し前のことを思い出していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「何ですと!?」
会議の3日前、中央暦1639年11月29日。
リンスイは、ロデニウス連合王国の外務部に突如乗り込んできた堺からの提案に、完全に驚いて叫び声を上げた。
「更に上位の国家共同体を作れば、それに参加した国で且つ我が国と国交を開設している国の技術の底上げがやり易くなり、同時に持てる情報や魔法技術を共有しあったりすることで、各国共通の、そしてより強大な相手に対しても、十分に戦えるようになるのではないかと考えます。
私はこの案によって生まれる国家共同体を『大東洋共栄圏』と名付けます」
堺からの提案は、言うなれば以前に使った「ロデニウス連合王国案」の焼き直しであった。ロデニウス連合王国をリーダーとし、第三文明圏外の各国同士で交流を深め、各国共通の脅威に対して立ち向かおうとする、という「文明圏」という括りと同じような
「これを、今度行われる大東洋諸国会議で提案してみては如何でしょう?」
「な、なるほど……。まさか、そんなアイデアが出てくるとは思いませんでしたな」
リンスイは、まさかのこの提案に圧倒されていた。
「し、しかし、各国は果たして参加してくれるだろうか?」
「なに、簡単な話ですよ。参加して下さった国の方には特典として、『我が国の主力兵器である銃をはじめとした武器その他の商品を、通常の交易で提示する価格より格安で提供』し、更にその『銃を使えるようにするための教官の派遣を優先的に』行います、と言えば良いのです。
このところの各国との交易のデータを見せていただきましたが、各国はどこも共通して銃を求めています。特にシオス王国やフェン王国といった、パーパルディア皇国に近い所に国土を持つ国は、矢のような勢いで銃を欲し、しかし銃の値段が高いがために二の足を踏んでいる状態のようです。そこでこれです。大東洋共栄圏に参加することによる、交易における武器、弾薬その他の商品やサービスの格安値段での提供、教官の優先的な派遣。付け加えるなら、我が国と安全保障条約まで締結している国家には、将来的に艦艇と航空機までの提供を視野に入れる。また、インフラや工業製品の輸出に関しても、今までより値段が安くなる。
こんなもので如何でしょう?」
ここまで来たら、もうただの軍事同盟を超えて、経済までも連携することになる。
「その具体的な値段はどうする?」
「ええと……」
堺はポケットを探って、計算したらしい紙を引っ張り出した。
「試算ですが、こんなもので如何でしょう?」
リンスイは、差し出された紙を受け取って見る。そこには、従来のほぼ半分の値段となった、武器をはじめとする各種商品が提示されていた。
「原価にかなり近いので、既製品を買うのであればこれ以上の値下げは厳しいです。ですが、例えばフェン王国のようにそれなりに工業化が進んだ国であれば、『ノックダウン方式』と言う、こちらで部品だけ提供して組み立ては相手国で行う、という方法を使うことで、もう少し安い値段で商品を手に入れられる、ということもできます。私としては、今打てる手はこんな感じですね」
「なんと……他のところでも連携するのか?」
「はい。情報交換などの分野でも、連携していきたいと思っています。さらに、本共栄圏に参加した各国には、交易において掛かる関税を格段に安くしましょう。これで、だいぶ国同士の交流が促進されるのではないでしょうか?」
地球で言うなら、EUみたいなものだろうか。
ちなみにであるが、堺が提案したこの「大東洋共栄圏」には、元ネタがある。その名は「大東亜共栄圏」。
それは太平洋戦争の頃に、日本が東南アジア諸国に対して提案した国家共同体である。欧米の植民地支配からの独立とそれらの国の影響の排斥、そして日本を中心とするアジアにおける政治的・経済的な共存共栄を謳ったものだった。
尤も、実際に日本がやったことと言えば、戦争遂行に必要な資源の搾取、天皇崇拝の推奨等だったのだが。ただし、一概にそうとも言えない。というのは、フィリピンやビルマ(現ミャンマー)などはこの日本の支援の下に独立を果たしたからである。
堺が提案したのは、換言すればこの「大東亜共栄圏」を異世界の地で再現しよう、ということであった。それも、しっかりした理念と誠実な行動を伴っての再現である。
「なるほど……新たな文明圏を、この第三文明圏外に作り出す。卿はそう言いたいのだな、堺殿?」
「左様でございます。それと、その結成に関して大東洋共栄圏参加各国が守るべき掟『大東洋憲章』も、ざっとですが考えてきました。こちらになります」
堺は鞄から別の書類を引っ張り出し、リンスイにそれを手渡した。
「それじゃ、大東洋諸国会議のほう、頑張ってくださいませ。あと、タウイ図書館は深夜以外ならいつでも開いておりますので、お困りになりましたらいつでもどうぞ」
それだけ言うと、堺は用事は済んだとばかり退室した。
その後、リンスイは堺から渡された「大東洋憲章」の草案や、大東洋共栄圏参加各国への関税率、商品取引の値段について、タウイ図書館からの情報収集や幹部たちとの協議を重ね、ある程度の研鑽を行った上で、大東洋諸国会議に臨もうとしたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、時は12月1日へと戻る。
「以上が、我が国からの提案になります。我が国は、大東洋共栄圏への皆様の国々のご参加を、心よりお待ちしております」
説明を終えたリンスイが、そう言って着席すると同時に、いくつもの手が挙げられた。司会が最初に指名したのは、マオ王国の代表である。
「マオ王国です。我が国は貴国とは国交を開設していませんが、正直に申し上げて、我が国は貴国を危険な国家だと見做しています。
他の国の代表の方が言うように、確かに貴国は強力な国家であるようだ。だが、その強大な力をいつ我々に対して敵として振るうか、分かったものではない。パーパルディア皇国のように、軍事力と経済力・技術力をもって我々を脅かし、圧政を敷かんとも限らない。何せここにいる全ての国家が束になったとしても、当時のロウリア王国に勝てんというのに、貴国はそれを打ち負かして……言い方は悪いが
マオ王国の代表がそう言って着席すると、続いてトーパ王国の代表が起立した。
「トーパ王国です。我々は貴国を危険だとは見做しておりません。確かに貴国は、どこから手に入れたのかは存じませんが、優れた技術をお持ちだ。
聞けば、パーパルディア皇国のワイバーンロードすら撃墜してのけたと聞いている。それはおそらく彼らが先に手を出したからでしょう。我々は、貴国はこちらから危害を加えない限りは決して襲ってくることはないと考えております。
そればかりか、貴国は我が国に対して非常に優れた技術の産物をいくつも輸出してくれる。貴国から輸入した暖房器具には、たいへん助かっております。我々は、貴国が提唱した大東洋共栄圏に、喜んで参加させていただきますぞ」
続いてはシオス王国の代表が手を挙げる。
「シオス王国です。我々もトーパ王国の方と同じ意見です。彼らはパーパルディア皇国のワイバーンロードを叩き落とすだけの技術を持ち、しかしそれを背景に奴隷の献上や領土の割譲を迫るでもなく、我々を対等の相手と認めて交易をしてくれる。非常にありがたい限りです。
銃を安く仕入れることができ、またそれを扱う教官の派遣も優先的に行ってくれるということであれば、我々は是非とも大東洋共栄圏に参加したい、と思っております」
お次はフェン王国の代表だった。
「フェン王国です。我々は貴国と国交を開設して以来、すっかり変わりました。国民はぐんぐん豊かになるばかりで、しかも軍隊も以前とは見違えるほど強くなってしまいました。おそらくパーパルディアの国家監察軍程度が相手なら、簡単には負けますまい。
それに、大東洋共栄圏に参加した暁には、『ノックダウン方式』とやら言う現地組み立て方式を使って、我が国で使う銃を我が国の工業を強化するためだけに作らせようとしてくださるそうな。我々も喜んで大東洋共栄圏に参加させていただきたく存じます」
さらに、アワン王国の代表も。
「アワン王国です。我々大東洋諸国は、ロデニウス連合王国とこの大東洋共栄圏を上手く使って、パーパルディア皇国の暴走に対処するべきと考えます。ここ10年来、あの国はやりすぎだ」
そして最終的に、多数の国が大東洋共栄圏への参加を表明していった。参加を表明しなかった国といったら、マオ王国と「しばらく様子を見る」としたガハラ神国くらいのものである。北はトーパ王国から、南はシオス王国に至るまで、約10ヶ国が一挙に大東洋共栄圏に参加することになったのだ。
「皆様、本当にありがとうございます。それでは、こちらでご用意させていただきました資料『大東洋憲章』と、我が国との貿易に関する資料その他をお持ちくださいませ」
リンスイのこの言葉を最後に、今回の大東洋諸国会議は散会した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
大東洋諸国会議が終了し、大使館に帰還してきたトーパ王国のロデニウス駐在大使は、本国に送る資料を今一度確認していた。そして、武器のカタログの中に、気になる武器を発見する。
「……ワルサーP38?」
それは、拳銃の項目だった。そこにはこんなキャッチコピーが踊っている。
『1人に1丁、小型の銃を。警備に、自衛に、なんでもござれ!』
そして、ヒト族の男性が両手でこのワルサーP38を構えている魔写がある。
『全長たったの216㎜! 貴方の掌に乗るサイズ!』
『有効射程なんと50メートル! ワルサーを、貴方のお供に。』
気になるその値段は、トーパ王国の懐事情を考慮しても、なかなか安いといえる値段に収まっていた。これなら、一括で1,000丁くらい、弾と一緒に買ったとしても、そうそう財布は痛まないだろう。
「こりゃあ便利だな。大使館の警備員にこいつを購入して持たせるよう、陛下に上申してみよう。それの扱いの教習は、教官の優先派遣サービスを駆使すればなんとかなるはずだ。これで、暴徒が大使館に押し入ったとしても、ある程度対抗できるだろう。
それにしても、ロデニウスにこんなものがあるとは……歴史が大きく変わるかもしれんなぁ」
大使は1人、世界の行く末を思うのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、クワ・トイネ州のマイハーク陸軍基地では、対空戦闘演習が行われていた。
ロデニウス連合王国海軍航空隊の九九式艦上爆撃機が、急降下して投弾態勢に入る。その下にいるのは、IV号戦車。
「ようし、今日の演習こそ撃破を……!」
エルフ族の新米パイロットが緊張しつつも、照準器を覗いていたその時だった。彼は照準器を通して、狙っているIV号戦車の隣にもう1輌、戦車がいるのに気付いた。……が、その途端彼は驚く。
「なっ、何だありゃ!?」
その戦車は、IV号戦車と同じ車体を有していた。だが、そこに乗せられていた砲塔は、IV号のそれとは違う。まず天辺ががら空きになっており、砲塔内の乗員が剥き出しになっていた。
そして何より、砲身自体は細いものの四連装になっており……更に、その砲口はあり得ないほどの仰角を掛けられて、こちらを睨んでいた。
瞬間、
バババババババババッ!
その四連装砲が火を噴いた。
次の瞬間、彼の機体には連続して演習用のペイント弾が着弾し、彼は敢えなく爆弾投下前に撃墜判定を喰らってしまった。
「くっそぉ! 初撃破の夢が……」
彼は歯軋りしたものの、残念ながら初撃破は“お預け”となった。
九九式艦上爆撃機に撃墜判定を食らわせたのは、特異な見た目をした車輌だった。
車体はIV号戦車そのものだが…砲塔は九角形で天井が開いた、所謂「オープントップ」になっていた。正面から見るとコンセントが差込めそうな格好をしたその砲塔からは、細長い砲身を持つ機関砲らしきものが4門、突き出ていた。
そう、IV号対空戦車「ヴィルベルヴィント」である。ヴィルベルヴィントはドイツ語で「つむじ風」という意味だ。
IV号戦車G型の車体を流用し、43口径75㎜砲の代わりにタウイタウイ泊地の余剰在庫をコピー生産した、「2㎝四連装Flak38機関砲」を搭載した対空戦車である。
「2㎝Flak38機関砲」は発射レートが180発/分と遅く、20㎜と小口径なのもあって、当時どんどん高性能化していた連合国の航空機に対抗するには能力不足であった。しかし、四連装化したことで発射レートは720発/分と段違いになり、連合国機を多数撃墜する戦果を上げた。結果、連合軍は本装備を「魔の四連装」と呼んで恐れたとか。
ただし、1回のリロードでの給弾数はたった20発しかない。なので、景気よくばらまくとすぐ弾切れになる上に、四連装……つまり装填の手間が多いことが欠点である。後期には、連合軍はこいつの装填の慌ただしさを衝いて攻撃するようになったとか。
ただ、それは前世界においての話だ。今のこの世界では、ワイバーンロードですら時速350㎞しか出せないので、対空戦力としては十分すぎる力がある。
ちなみに堺は、これまた泊地の余剰在庫となっている「3.7㎝Flak M42対空砲」をコピーして、IV号対空戦車「オストヴィント」も開発することを検討している。ただ、こいつもオープントップなので、将来的には別の車輌を開発することになるだろう。
中央暦1639年10月中旬に採用されたこの「ヴィルベルヴィント対空戦車」は、既に50輌以上が生産され、20輌単位で対空戦車大隊を編成して、戦車第1連隊・第2連隊にそれぞれ配備されている。
そして、タウイタウイ泊地の提督室では、
「こちらが、『アレ』の初期型と見られる機体の構造やスペックその他になります」
航空母艦の艦娘"赤城"が、堺に資料を提出していた。
「やれやれ、こいつの把握にも本当に苦労させられたな。ったく誰だ、こんなものを置いていったのは……。まあ、くれるというからにはありがたく使わせてもらうけどさ」
堺はそう言いながら、資料を読む。数分後、
「ん?」
堺は「武装」と書かれた項目を見て、顔を上げて"赤城"に尋ねた。
「なんだこの『主砲×1』って」
「それなんですが提督、写真を後ろにお付けしました。見ていただけますか?」
「どれどれ……」
堺はぱらりとページをめくる。すると目に写真が飛び込んできた。
「ああ、こいつか……っ!?」
瞬間、堺の目が見開かれる。
「どうされました、提督?」
"赤城"の質問に対し、堺は、
「……なあ、これ、直接見ていいか?」
逆に"赤城"に質問してきた。
「心当たりがある。直接見たら、よりはっきりするかもしれん」
「承知しました。では行きましょう」
踵を返し、堺とともに"赤城"は提督室を出て行く。
堺が見た写真……そこには、長い砲身を持った砲塔が写っていたのだ。そして。
その砲塔には、何やら出っ張りのようなものが付いた、かまぼこ型の防盾が装備されていた。
はい、ついにヴィルベルヴィントが登場しました。おそらく、対パーパルディア戦のどこかが初陣となるでしょう。
そして最後の砲塔は何なんでしょうねー(棒読み)
次回予告。
年の瀬も近づき、中央暦1639年もあと僅か。そんな中、ロデニウス連合王国とパーパルディア皇国は、お互いの情報収集と分析を続けていた…
次回「それぞれの分析 ーロデニウスとパーパルディアー」