鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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えっ!?
拙作の総合評価ポイントが、とうとう1,150を超えた…!?
皆様、ご愛読本当にありがとうございます! 励みになります!

評価8をくださいました大希様、ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!
ついでに、評価のほうをポチッと押していただけますと幸いです。

はい、今回より第三章「第三文明圏大戦」編に突入いたします!
まあ、何が起きるかは漢字をお読みいただければ分かりますよね。

それと今回、前から度々話題にしていた「伝説のアレ」のうち1つの正体が、ついに明らかになります。

ようやっとテスト期間が終わりましたので、連載頻度低下状態を脱しました。また投稿を続けていくので、中央暦1640年も拙作をよろしくお願いします!

最後に、今回は2話連続投稿となっております。「019.2. 間章その2 タウイタウイの新たな艦娘」のほうもお読みいただけますと、望外の幸福であります。

いい加減前置きが長いので、本編入ります!
ごゆっくりどうぞ!



第三章 第三文明圏大戦
030. パーパルディアの矛先


 中央暦1640年1月4日、パーパルディア皇国皇都エストシラント、皇宮パラディス城。

 すべての外務局長(第1外務局長エルト、第2外務局長リウス、第3外務局長カイオス)、臣民統治機構長官パーラス、皇軍最高司令官アルデ、その他国家戦略局長、情報局長、農務局長などの国の重臣たちと、政治や戦略に携わる皇族などの面々が会議室にずらりと揃っていた。明らかにただならぬ、厳粛な雰囲気が漂う。

 そこへ、会議室の扉が開いた。途端に、全員が一斉に平伏する。27歳の若き皇帝、ルディアス・フォン・エストシラントのご入来だ。

 

 そう、これはパーパルディア皇国の指針を決める、重要な国家最高会議。皇帝をも交えるので、帝前会議とも呼ばれている。

 

「「「偉大なるルディアス皇帝陛下、明けましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願い申し上げます。そして、本年もパーパルディア皇国に栄光を!」」」

 

 出席者たちが一斉に起立し、声を揃えて新年の挨拶をする。

 

「うむ、よろしく頼むぞ」

「「「ははーっ!」」」

 

 ルディアスが返事をし、出席者たちが再度平伏する。

 

「それではこれより、帝前会議を始めます」

 

 出席者一同が着席すると、まず議長が開会の挨拶をする。続いて皇帝が口を開く。

 

「アルデ、アルタラス王国は完全に掌握したな?」

「はっ、アルタラス王国内は完全に掌握できました。属領となったアルタラスには、既に属領統治軍が現地入りしており、それと入れ替わる形で皇軍は現在、撤収の準備に掛かっています」

 

 ルディアスの問いに答えたのは、軍の最高司令官アルデ。

 

「うむ。さて、次の皇軍の活用法だが……第2外務局長リウス、どう考えるか?」

 

 ルディアスの問いは、今度はリウスに向けられた。

 

「はっ! 北方の蛮族……リーム王国とか名乗っていますが、そやつらを滅し、新たな資源の獲得を……」

 

 しかし、リウスが最後まで言う前に、

 

「却下だ」

 

 ルディアスが口を挟んだ。

 

「は……はっ? で、では、皇帝陛下は如何お考えでしょうか?」

 

 それきり沈黙するリウス。

 皇帝はゆっくりと話し始めた。

 

「余は……怒っているのだ」

 

 誰も、何も言い出すことができない雰囲気が満ち溢れる。

 

「皇国の国家監察軍を一度退け、調子に乗っている蛮国が、東にあるな……。ロデニウス連合王国、と言ったか……?」

 

 ここで、皇軍最高司令官アルデが口を開いた。

 

「では陛下は、ロデニウス連合王国を滅そうとお考えですか?」

「ふ……その通りだ、アルデ。奴らは現在調子に乗っている。

国家監察軍を退けたばかりか、ロウリア王国が国家戦略局から借りた金も踏み倒そうとしておる。それどころか、最近大東洋共栄圏とやらを結成して、文明圏外の蛮族どもに技術をばら撒いているとも聞いている。

きつい灸を据えてやらねばならん。……だが、それには盤石な足掛かりが必要だ。まずは、そのロデニウス連合王国と友好関係にあるフェン王国を滅せよ。昔から生意気な国だしな。それを以て、皇国の属領を増やすとともに、ロデニウス連合王国と友好関係にある国がどうなるかを、世界に知らしめるのだ」

「ははっ!」

 

 平伏するアルデ。

 そこへ、第三文明圏の地理を把握している第3外務局長カイオスが口を開いた。

 

「陛下、地理的に考えますと、フェン王国とロデニウス連合王国ではフェン王国のほうが皇国から近いです。フェン王国は皇国から210㎞の距離にあり、対してロデニウス連合王国は皇国本土から1,100㎞、最も近い属領アルタラスからでも600㎞離れています。また、アルタラスは属領にしたとはいえ、まだ大軍を進出させる拠点とするほどには整えられていないでしょう。

その点から考えても、フェン王国を先に落とすべきであると思います。あるいは、フェン王国と同時にアルタラスの隣のシオス王国を落とす、という手もありますが、皇帝陛下、如何いたしますか?」

 

 しかし、ルディアスはカイオスの提案を蹴った。

 

「うむ、それは余も考えた。だが、蛮国とはいえ一度に2国を相手にするのは避けたい。これまで皇国は、1対1でしか戦っていないからな。余の代で例外は作りとうない」

「はっ、承知しました」

 

 カイオスは続いて、もう1つ質問した。

 

「では陛下、フェン王国の隣にあるガハラ神国については如何しますか?」

 

 すると、ルディアスは少し苦々しげな表情を浮かべた。

 

「あの国には構うな、まだ謎が多すぎる。それに、ガハラ神国には我が国の初代皇帝が世話になっているからな。手を出すのは、気が引ける」

「承知いたしました」

 

 カイオスは今度こそ沈黙した。

 

「ということだ。まずフェン王国を滅し、然る後ロデニウス連合王国を滅せよ。できるか? アルデ」

「はっ! もちろんであります」

 

 皇軍最高司令官アルデは、胸を張ってルディアスに答える。

 

「国家監察軍を退けたロデニウス連合王国軍も、出てくるかもしれんぞ?」

「無論、撃破いたします。旧式の装備と弱兵とはいえ、()()()()()()()に敗北するとは、国家監察軍とその司令部たる第3外務局は、皇国の恥であります」

 

 アルデがそう言った途端、第3外務局長カイオスの顔が歪んだ。その口から「くっ……」という苦痛の声が漏れる。

 もちろん読者諸賢の皆様は分かっていることだろう。ロデニウス連合王国軍が相手では、例え()()であろうと、パーパルディア皇国軍には勝ち目がないということを。

 

「陛下、戦略や細かいところはお任せしていただいてよろしいでしょうか?」

「うむ、好きにして良い。それと……そうだな、フェン王国については、戦後の国土や民の扱いまで好きにして良いぞ」

「なっ!?」

 

 一同に衝撃が走る。

 皇国の一機関にしかすぎない軍が、一国の領土も民も好きにして良い、という皇帝陛下の暖かいお言葉。

 アルデは一瞬考えた。

 

(部下たちにある程度分けたら、軍の士気は途轍もなく上がるだろうな)

 

 しかも、だ。

 たかがフェン王国とはいえ、70万人もの民となかなかの規模の領土を、自分の好きにして良いのだ。部下にある程度振り分けたとしても、地方貴族が賜るより多くの土地と民を我が物にできるだろう。

 アルデは、ルディアスに深々と頭を下げる。

 

「あ……あ、ありがたき幸せ!」

 

 アルデは、一層ルディアスへの忠誠心を固めるのであった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 一方、こちらはフェン王国。

 同国はロデニウス連合王国と安全保障条約や修好通商条約を締結し、更に大東洋共栄圏に参加してロデニウス連合王国と友好関係を持ったことで、急激な発展を見せ始めた。

 ロデニウス連合王国は、期限付き貸与という形でフェン王国から土地を借り、同国で流通させる衣服やその他の工業製品、銃などの生産を開始したのだ。特に、美術品のような美しさと実用に耐えるしっかりした機能を併せ持つ日本刀は大人気で、フェン王国内の刀鍛冶が何人もロデニウス連合王国の軍刀職人に弟子入りして、日本刀の生産技術を学んでいる。

 軍同士の交流も積極的に行われている。しばしば剣道による親善試合が開催され(だいたいフェン側が勝つのだが、たまにロデニウス側がとんでもない剣法を見せることがあり、それがまたフェン側にウケている)、見た目と機能を両立するもののお値段の張る日本刀を装備することが、フェン王宮騎士団ではある種のステータスと化している。

 そしてロデニウス側が銃剣を持ち込んできたことで、新たに銃剣道がフェン王国では流行り出した。三八式歩兵銃の訓練と合わせて、武士たちは鍛練に乗り出している。

(そして()()のように、戦術的日本面に堕ちて来つつある。もちろん、突撃こそ至高、という考え方である。元々フェン王国軍の戦い方は、剣による接近戦であり、この思考が流行るのはある意味()()とも言えた)

 

 更に、一挙に文明圏内外の各国と交易を開始したことで、たちまち豊かな国となったロデニウス連合王国では、新たに海外旅行がブームとなり、治安の良いフェン王国は格好の旅行先となった。交易相手のマール王国から流入してきた、パンドーラ大魔法公国製の「風神の涙」を装備した高速帆船による定期便が開設されたこともあり、フェン王国では首都アマノキや西部の都市ニシノミヤコなどにおいて、ロデニウス人を見かけることが多くなった。

 

(元々ロデニウス大陸の各国海軍が所有していたバリスタ装備の帆船は、ウインク型砲艦をはじめとして近代艦艇が建造・配備され始めると、順次軍船としては引退した。しかし、取り壊すのももったいないので、新たに設立された民間の旅行会社や国営ツアー会社に払い下げられ、武装を取り外して輸入した「風神の涙」を装備した上で、旅客帆船として再就役させたのだ。このうち一部は客船への改造費用や家具類の購入費用が国費で賄われており、その代わりに有事の際には徴発されて兵士の輸送や諸外国にいるロデニウス人の脱出に使用されることになっている。これらの帆船は、パンドーラ大魔法公国製の「風神の涙」の質の高さや元々バリスタが載せられたりしていたことによる死重(デッドウェイト)の除去によって、15ノットの高速帆船となっており、旅客船としては大層重宝されている)

 

 ロデニウス人は他国の観光客に比べて行儀が良く、金払いもいいとして、フェン王国側からも大いに歓迎されていた。また、フェン王国の人々の間には、ロデニウス連合王国の艦がパーパルディア皇国のワイバーンロードを滅し、追い払った、という情報が既に伝わっており、フェン王国民の対ロデニウス感情は極めて良好。観光に来たロデニウス人が、フェン王国で(かご)(現代日本でいうタクシー)を利用した後、料金を払おうとしたところ「恩人から金は受け取れない」と、料金支払いを拒否されることも珍しくなかった。

 両国の関係は極めて良好だったのである。

 

 そんなある日、ニシノミヤコで警備にあたっていた千士長アインは、街の様子を見ながら考えていた。

 

(平和だな……。これがずっと続けばよいのだが……)

 

 今のアインの仕事といったら、専ら現状把握と警備の維持、それに道に迷った外国人の案内(当然のようにロデニウス人が多い)であった。

 だが……アインはパーパルディア皇国の脅威を、片時も忘れたことはない。

 パーパルディア皇国はプライドが高い。国家監察軍のワイバーンロードを追い払っただけで黙っているとは、とても思えない。

 もし皇国軍が侵攻してくるとすれば、奴らは西から来るだろう。そうなれば、このニシノミヤコは最前線となるはずだ。

 しかし、ロデニウス人たちは心から観光を楽しんでいるようにしか見えない。逆に言うと、危機感が無さすぎるのだ。

 

(皇国の正規軍が来なければいいが……)

 

 アインは、切にそう願うのだった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 しかし、そのアインの願いも虚しく、パーパルディア皇国はフェン王国を狙って、軍事行動を起こしていた。

 

 中央暦1640年1月17日、フェン王国西方100㎞の海上。

 パーパルディア皇国海軍の第4・5艦隊は、陸軍の兵士や武器を乗せた輸送船団と共に、フェン王国に向かっていた。目的はもちろん、フェン王国を滅すること。

 皇国の主力艦である100門級戦列艦を中心に、戦列艦211隻、竜母12隻、補給艦を兼ねた揚陸艦101隻、合計324隻の大艦隊が波を割き、帆を一杯に張って西へ進む。第三文明圏では最強であり(本人たちの知らぬ間に、この称号は()()()()()となっているが)、見る者に圧倒的な恐怖を与える、大艦隊の布陣である。

 ちなみにこの軍と艦隊は、先年にアルタラス王国を滅ぼした軍と艦隊でもある。ただし今回は、フィシャヌス級100門級戦列艦の初期型2隻が近代化改修のため艦隊から離脱し、代わって近代化改修が終わったばかりのフィシャヌス級戦列艦のネームシップ「フィシャヌス」と、皇国が誇る120門級超フィシャヌス級戦列艦「パール」が加わっていた。

 艦隊旗艦である120門級戦列艦「パール」の艦上で、フェン攻略軍総司令官シウスは、西の海を見つめていた。今回は、国家監察軍が敗れたとの情報が事前に入っているため、シウスの両肩にも力が入っている。

 

「そろそろフェン王国の領海だ。各艦、より一層警戒せよ!」

 

 魔信に乗って指示が飛ぶ。フェン王国の艦隊は国家監察軍が事前に滅したようだが、新造艦がないとも限らない。警戒は必要だった。

 こうしてパーパルディア皇国は、アルタラス王国に続いてフェン王国を滅しようとしていたのであった。まだ誰も、このことには気付いていない。

 

 

 

 

 

 ……と、思いきや。

 

 ところがどっこい、この大艦隊の進軍は、とっくにロデニウス連合王国軍に気付かれていた。

 実はパーパルディア艦隊の真上に、ロデニウス連合王国の兵器が陣取っていたのである。それも、光学・魔法・電磁波の全てを対象にしたステルスを張って。

 

 それは、異様な形状をしていた。全体の見た目は、一言で言うと「巨大な釣り鐘」だ。色は真っ黒だが光沢があり、何らかの金属でてきていると思われる。真面に翼らしきものも持たないそれには、何かの噴射ノズルがあるわけでもなく、全体的にのっぺりとしており、かなり不気味だ。にも拘わらず、どんな機構をしているのか、ゆっくり右に回転しながら、幅2.7メートル、高さ4.5メートルの巨体を音一つ立てずに空中に浮かべている。いったいどんなメカニズムなのだろうか?

 そして、釣り鐘状の機体側面上部には、「お寺」を示す地図記号を左右反対に描いたようなマークが、でかでかと付けられていた。

 

 その物体の名は、ディグロッケ。

 

 核兵器を投下するために開発されたとされる、ナチス・ドイツ第三帝国製の飛行物体。その形状から「ナチス・ベル」とも呼ばれる。要するにUFOである。

 こいつ、なんと対放射線機能+光学ステルス+電磁波ステルス+サーモステルス+魔法ステルス+垂直離着陸(VTOL)機能搭載、という化け物である。つまり、放射線は例え最も強力なγ(ガンマ)線だろうと通さない装甲を持ち、光学ステルスにより透明化することができるので目に見えないし、電磁波ステルスのためレーダーも誤魔化し、サーモ(温度)センサーすら欺き、そして魔信探知機(魔力探知レーダー、略して魔探)にも映らず、挙げ句に滑走路なしでも陸だろうと空母の甲板だろうとあらゆるところに着陸し、また離陸できるという、頭おかしいスペックの持ち主なのである。ちなみに、()()上昇限度はない。つまり、その気になれば宇宙にも行けるし、宇宙空間も航行できる。が、移動速度は通常の場合、最高で時速1,200㎞と、音速にギリギリ届いていない。ボディーは対魔法ステルスを発揮すべく、オリハルコン製となっている。

 そして当然のようにワープ機能付き。これがほんとの()()()()()()マシンである。

 

「すげえ……なんて数なんだよ!」

 

 その機体、偵察専門のディグロッケ1号機の中で、偵察員を務めるハイエルフの男性は興奮気味に叫んだ。

 眼下には、列強パーパルディア皇国の大艦隊が、整然とした布陣を組んでフェン王国へと向かう様が見える。

 どうみても緊急事態(エマージェンシー)だ。

 

「早く、こいつを知らせないと……!」

 

 ハイエルフの男性は、機長の命令に従ってモールス打鍵機を叩き、ロデニウス連合王国軍司令部に通報を始めた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「なにっ!? パーパルディアの大艦隊が、フェン王国に向かっている!?」

 

 提督室に飛び込んできた"大和(やまと)"から報告を受け、堺は叫んだ。

 

「はい。艦隊の規模から考えて、フェン王国の征服に向かっていることは間違いありません。数は約320隻、竜母らしきものを12隻含みます」

 

 "大和"はそう報告する。

 

「竜母か……! シャークンや青葉が言ってたやつだな。それが12隻ってことは……」

「はい。竜母1隻当たりのワイバーン搭載数は、多くて20前後と見られていますので、最大で約240〜250騎のワイバーンがいるでしょう。しかも、そのどれもが改良型、ワイバーンロードだと思われます」

 

 "大和"はそう計算していた。

 

「遠からず来ると思ってたが、もう動いたのか……。安全保障条約に基づいて直ちに応援の軍を送らなきゃならんが、今からでは第1・2・3・4の各艦隊の出航は間に合わない。演習とかで疲労もしてるからな。となると、陸軍は第13軍団及び第1軍団から、海軍はうちの第13艦隊から、それぞれ兵力を出すしかないな」

「はい。既に軍と艦隊の編成は用意してあります」

 

 そう言うと、"大和"は別の書類を差し出してきた。

 

「お前、いつの間にこれを?」

(おお)(よど)さんがこれを受信した時、たまたま私もその場にいましたので、大淀さんと一緒にその場で考えてしまいました」

「ったくもう、手際のいい……」

 

 言いながら、堺は書類に目を通す。

 

 

フェン王国救援艦隊 編成

《主力艦隊》

戦艦 ()(そう)(やま)(しろ)(ともに改二。主砲、主砲、「三式弾」、そして扶桑は「零式水上偵察機」、山城は「(ずい)(うん)12型」装備)

航空母艦 (しょう)(かく)(ずい)(かく)(ともに改二甲。"翔鶴"の装備は「Ju87C改(Rudel Gruppe)」34機、「(ふん)(しき)(けい)(うん)(かい)」21機、「(りゅう)(せい)」12機、「試製(れっ)(ぷう) 後期型」9機。"瑞鶴"の装備は「(きっ)()(かい)」34機、「試製烈風 後期型」24機、「流星」12機、「流星改」6機)

航空巡洋艦 ()()(ちく)()(ともに改二。主砲、主砲、(ずい)(うん)、そして電探という装備)

軽巡洋艦 (さか)()(なが)()(主砲、主砲、水偵)

駆逐艦 (はつ)(づき)(あさ)(ぐも)(やま)(ぐも)(しま)(かぜ)(いずれも高角砲、高角砲、対空電探という装備。艦○れ提督諸氏には防空CI装備、という呼称がお馴染みか)

 

《揚陸艦隊》

輸送艦 ラ・フランス、バートレッド、マックス・レッド、ル・レクチェ、マルゲリット(合計してⅢ号戦車N型8輌、Ⅲ号戦車M型10輌、ヴィルベルヴィント対空戦車2輌、九六式150㎜榴弾砲4門、88㎜Flak36野戦高射砲4門、陸軍歩兵3個連隊分装備。陸軍歩兵はロデニウス連合王国陸軍第1軍団より派遣されたもの)

揚陸艦 あきつ丸(戦車第11連隊、「WG42」、陸軍歩兵1個連隊分装備。こちらの歩兵は第13軍団からの選抜である)

護衛駆逐艦 (あき)(づき)(てる)(づき)(むら)(くも)(いそ)(なみ)(くろ)(しお)(おや)(しお)(いずれも高角砲、高角砲、対空電探装備)

 

 

「よし、迷ってる暇はない。国王陛下や外務部には事後報告になってしまうが、緊急事態だ、止むを得ん。これで行こう。艦隊出撃せよ!」

 

 号令を掛け、堺は"大和"とともに()(とう)へと走った。

 そして、堺の見送りの下、艦隊は出撃することとなる。

 

 いよいよ、フェン王国の、そしてロデニウス連合王国の命運を賭けた戦いが、始まろうとしていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 同時刻、クワ・トイネ州北東部の港街クワ・タウイ、その一角に設けられた強制収容所。

 パーパルディア皇国国家監察軍所属の特A級竜騎士レクマイアは、国家監察軍東洋艦隊の司令官だったポクトアール、及び艦隊の僅かな生き残りの者たちとともに、そこに収容されていた。なお、ここはかつてのロウリア王国の海将シャークンが収容されていた場所でもある。

 レクマイアは、大いに困惑していた。彼は、フェン王国に対する懲罰攻撃の際、ワイバーンロード隊を率いて先陣を切ったのであるが、攻撃を仕掛けた敵の巨大船から攻撃され、撃墜されてしまった。

 しかも、自分が海を漂流している間に、部下たちは1騎残らず消滅させられてしまった。その光景をまざまざと見せつけられた後、彼は敵の巨大船……ロデニウス連合王国の戦艦「(きり)(しま)」に収容されたのだった。そしてそこで、取り調べを受けた。

 

 取り調べに当たった者は、紺色のぱっとしない服装をした女性だった。軍の船に女性を乗せているということは、どうやら男性軍人の数が不足していると見える。蛮族め。

 取り調べ官に対してレクマイアは、自国・パーパルディア皇国の国力や技術力の高さについて説き、文明圏の他の国々よりも皇国の技術のほうが優れているということを告げた。ついでに、文明圏の他国と比べても比較にならないほど多数の軍を保有していることと、それを余裕で支えることのできる、皇国の国力の高さについても告げた。

 新興国の軍は時として、世界のことを知らないことがあるため、こうした内容を伝えるだけでも効果があり、自分への扱いも丁重なものになるだろうと思ったのだ。

 

 しかし、ロデニウス連合王国の軍人と見られる女性取り調べ官は、レクマイアに対して淡々と質問し、レクマイアの話を聞いても全く動じる様子もなかった。それどころか、時折何も知らない者に対して見せるような、()()()にも似た態度すら見せた。まるで、我々が文明圏外の蛮族を相手にする時のように。

 

 最初にその態度の理由が明らかになったのは、自分が自国の船の速度について話した時だった。

 

「我が国の船は非常に速度が速く、12ノットもの速度を出せるのだ! これは、第三文明圏内でも一番の速度である!」

 

 彼かそう言うと、その取り調べ官は「そうですか」と冷淡に頷いた後で、こう付け足した。

 

「ではたった今、あなた方の技術は抜かれましたね。我々の船は、24ノットは()()()出せるので」

 

 ……は?

 レクマイアはその意味を飲み込めなかった。

 

 そして……レクマイアは、だんだんとこのロデニウス連合王国の力を理解していった。

 最初に彼が驚いたのは、ロデニウス連合王国の船だった。非常に大きな船体を持ち、それに比例するように巨大な砲を載せている。自国でもこんな巨大な魔導砲は見たことがない。

 続いては、ロデニウス大陸に辿り着いた時。ざっと計算してみると、なんとフェンからロデニウスまで()()()1()()で到着していたのだ。パーパルディア皇国の帆船なら、2日はかかる距離である。明らかに船のスピードは、パーパルディア皇国の戦列艦より速い。

 そしてレクマイアに止めを刺したのが、収容所から見たロデニウス大陸の発展ぶりだった。

 なんと、ワイバーンではない何かが多数、空を飛び交っている。しかも観察した限り、ワイバーンロード()()()速度が速そうだ。実際、収容所の職員に話を聞けば、これらは飛行機械であり、速度はおよそ時速450〜500㎞とのことだった。明らかにワイバーンロードより速い。

 しかも、道は細かい石のようなもので継ぎ目なく舗装され、その上を車のようなものがびゅんびゅん走っていく。馬に繋がれているわけでもないのに、その速度は馬車よりも圧倒的に速い。

 そして移送された先の港には、何隻もの巨大な船が停泊していた。その全てに帆がなく、しかも鉄板を側面に張っている。そのくせ自国の戦列艦より速いスピードで、波を蹴立てて水上を走るのだ。

 レクマイアが移送されたところは「クワ・タウイ」という港街らしいが、そこの工場や造船所らしい施設の規模は圧倒的であり、皇国の工業都市デュロをすら上回っているのではないかと思うほど、非常に大きく、重厚な雰囲気を纏っていた。

 

(この国は……危険だ)

 

 それが、レクマイアの正直な感想だった。ついにレクマイアは、ロデニウス連合王国への認識を180°転換したのである。

 

 なぜロデニウス大陸が()()()()ここまで発展したのかは、まるっきり謎だ。おそらくとんでもない何かがあったのだろう。

 だが、かつての自分自身同様、パーパルディア皇国はこのことには気付いていないはずだ。ロデニウス連合王国を、たかが文明圏外の蛮族だとしか考えていないだろう。

 このままでは、皇国がロデニウス連合王国と衝突する可能性は、十分に高い。

 

(もし皇国がこのロデニウス連合王国と武力衝突すれば、どうなるだろう?)

 

 作業のため、自身が収容されている施設の掃き掃除をしながら、レクマイアは1人考える。

 

(ロデニウス連合王国がとんでもない力を持っていることは、ここに来てよく分かった。この国の陸戦兵器はまともに見たことがないが……)

 

 レクマイアは、自身を撃ち落としたあの船を思い出す。城を海に浮かべたかと錯覚するほど巨大な船体に、愕然とするほど巨大な魔道砲(実際には魔力や魔法は全く使われていないので、ただの大砲なのであるが、レクマイアがそんなことを知る由もない)。そして、ワイバーンロードより速い速度で飛ぶ飛行機械、あれが全て空中戦用のものだったとしたら……。

 

(これはまずい! 武力衝突した場合、もしかすると、皇国の将来を大きく左右するほどの事態になるかもしれん……!)

 

「おいそこ、なぜ手を止めているんだ? ぼやっとするな!」

「あっ、す、すみません!」

 

 考え事に夢中になりすぎて手が止まり、作業監督から注意が飛んできた。

 慌てて掃き掃除を再開しながら、レクマイアは祖国たるパーパルディア皇国の将来について、憂いを抱くのだった。

 

 

 なお、ポクトアールは状態がよろしいとは決して言えなかった。というのは、命こそ助かったものの、マストに頭をひどくぶつけたのがまずく、若干ではあるが記憶障害を起こしてしまっていたのである。それに加えて、頭部外傷による高次脳機能障害が心配されていた。今は記憶の他は何もおかしなところはないものの、障害による失行や失認などの発生のリスクがあったのである。




はい、「アレ」のうち1つの正体は、ナチス・ドイツ第3帝国製のUFOでした。まさかUFOが登場するなんて、普通思いませんよね。
「027. 激動のアルタラス島」でのヒントが出るまでに、明確に「アレ」の正体を推測していただいたのは、お2人だけでした(どなたとは申しませんが)。推測、お見事でございました。

さて、いよいよろくなことにならなくなってきましたね。
パーパルディア皇国は、第三文明圏の武力統一を狙っている覇権国家なので、遅かれ早かれロデニウスとは衝突する運命にあったことは間違いないですが…堺の立てたフラグは見事に回収されかかっているようですね(029. 「それぞれの分析」参照。「新年早々開戦とならないことを、切に願うばかりだ」と堺は発言していましたが、完全に武力衝突フラグが立ってしまった)

果たして、この先どうなるやら…


次回予告。

ついにパーパルディア皇国は、フェン王国に武力侵攻を開始した。それに対し、ロデニウス連合王国から「とある武器」を入手したフェン王国軍も、簡単にはやられまいとする。両軍は、フェン王国西部の街ニシノミヤコで、満を持して激突する…
次回「フェン王国に戦乱来る」

それと、前述しましたが、今回は2話連続投稿です。
「019.2. 間章その2 タウイタウイの新たな艦娘」のほうも、お読みくださいませ!

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