鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。 作:Red October
皆様、ご愛読本当にありがとうございますっ!
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!注意!
今回の投稿回には、以下の要素が含まれます。
・パーパルディア皇国への殺意マシマシ
・慈悲の欠片もないアサマ作戦の内容
・ダイレクトすぎる作戦目標(特にアサマ作戦5合目)
以上の内容が苦手という方は、3分間お待ちしますので、どうするかお決めになってください。ブラウザバックしたとしても、不利益を被ることはございません。
最初から読む気まんまんの方、あるいは3分間の間に読むことを決断した方は、部屋を明るくする、画面から30㎝以上目を離すなどして、40秒で読む支度をしてください。
お覚悟はよろしくて?
ではごゆっくり。
アルタラス王国において、パーパルディア皇国アルタラス統治機構副長官が、ライアルにナニカサレタ日から時を遡ること1週間、中央暦1640年5月7日、ロデニウス連合王国首都クワ・ロデニウス。
ロデニウス連合王国軍司令部では、連合王国軍総司令官チェスター・ヤヴィン軍務卿を筆頭に陸・海・空各軍の大臣、そして各軍団や艦隊の司令官が会議(というよりは説明会と称するほうが正しいかもしれない)のため集まっていた。各員に資料が配布されている。
全員が揃い、時計の針が午前10時ジャストを指したところで、ヤヴィンが口を開く。
「皆、今日はよく集まってくれた。会議を始めたいと思う。
皆もよく知っていると思うが、去る4月20日、我々はアルタラス島奪回を成し遂げた。そう、パーパルディア皇国の領土を、一つ削り落としたのだ。これは大いに喜ぶべきことである。何故なら、パーパルディア皇国の前線基地の一つとなっていたアルタラスを攻め落としたことで、パーパルディア皇国皇軍による我が国への本土侵攻のリスクが減少したからだ。また、パーパルディア皇国の名を地に貶めることができたからだ。しかも、そのアルタラスを攻め落とし我々の手中に収めたことで、今度は我が軍がそのアルタラスを足がかりに、“パーパルディア皇国本土への侵攻”ができるようになったからだ。
いよいよ、この戦争に“雌雄を決する時”が来た、と私は確信している。そこでだ、パーパルディア皇国本土への侵攻作戦を、第13艦隊司令官の堺殿に立案してもらった。この作戦について、各軍に通達する。パーパルディアへの作戦開始の日は近い。各軍は気を引き締めて、訓練に励んで貰いたい。私からは以上だ。
では堺殿、説明を頼む」
「はっ」
ヤヴィンに指名され、堺は席から立ち上がると、黒板のところに歩いていった。そこにはパーパルディア皇国の地図が大きく描かれており、「エストシラント」「デュロ」「パールネウス」などの地名も幾つか書かれている。また、パーパルディア皇国の領土は、何やら複雑に分割されていた。
「それでは
まず、パーパルディア皇国軍を撃滅して本土へ攻め込むことになる本作戦の名称は、『アサマ作戦』とすることで決定しました。本作戦の戦略的目標は、“パーパルディア皇国の滅亡または無条件降伏による同国との戦争の終結”。戦術的目標は“パーパルディア皇国の段階的な制圧"と、"パーパルディア皇国軍の撃滅”です。
では、作戦の詳細説明に入ります。資料の4ページを御覧ください」
ここまで来ると、堺もほとんど腹を括っていた。自らの手で一国を滅ぼすことになるのだが、“上からの命令”とあっては致し方ない。
言いながら、堺は手持ちの資料をぱらりとめくった。会議の席の方でも、さらさらと紙がめくれる音がする。
「質問がありましたら、適宜手を挙げていただきたく存じます。
本作戦においては、段階的に、しかしできる限り“迅速かつ圧倒的な進撃”が望まれます。作戦の出だしとなるアサマ作戦1合目として、パーパルディア皇国の首都エストシラントへ、航空機を多数投入しての空襲を行います。この作戦は、『トワイライト作戦』と呼称します。
投入する戦力は、アルタラス王国のルバイル基地に展開する予定の基地航空隊144機、シオス王国のゴーマ基地に展開する予定の基地航空隊144機、それに第13艦隊の空母10隻から出撃する母艦航空隊約700機、計約1,000機です。攻撃目標は、エストシラント近郊にある陸軍基地と軍港に停泊する艦隊です。偵察機からの報告により、エストシラント北方に基地があることが判明しており、巨大な飛行場が併設されています。この飛行場には規模から言って約800騎のワイバーンがいるとみられています」
この時、席の方から手が上がった。
「はいシャークン殿、どうぞ」
堺に指名され、その男……かつてのロウリア王国海軍提督にして、現ロデニウス連合王国海軍第4艦隊司令官プロヴォロス・シャークンは質問する。
「1つお伺いしたい。先ほど、軍港にいる艦隊もターゲットにする、と伺ったが、その中には竜母が含まれているのではないか? だとすれば、その分のワイバーンも数えなくてはならん、と思うのだが」
「はい、ご質問はご
「それでは、我が軍が投入する航空機の数の約1.4倍ではないか。勝てるのか?」
これは、陸軍第4軍団司令官リケッタ・パタジン将軍の発言である。彼も、堺と同様にアルタラス島から帰還していたのだった。
「いくら何でも、数の差が大きすぎるぞ」
空軍大臣のウルダ・アルデバランも、それに同調する。
「皆様のご心配はよくわかります。ですがご安心ください。資料の最後の方のページを開いていただけますか」
堺の発言を受けて、またさらさらとページをめくる音がひとしきり響く。
全員が資料をめくったのを見て、堺は口を開いた。
「パーパルディア皇国のワイバーンロードは、最高時速350㎞です。対して我が空軍のワイバーンは、最高時速235㎞なので勝負になりませんが、航空機なら話は別です。我が軍の主力となる戦闘機は、いずれも時速500㎞は余裕で出せますし、ムー国に対して技術供与した九六式艦上戦闘機でも、時速400㎞は余裕で出せます。また、ワイバーンロードの巨体と騎手の耐荷重能力を考慮すると、旋回半径もこちらが上と考えられます。従って、性能的には我が方の戦闘機は、ワイバーンロードの3倍以上の戦闘能力があります。
また、これに搭乗するパイロットも、基地航空隊の一部に初実戦の者がいるとはいえ、少なくとも第13艦隊の母艦航空隊搭乗員はベテランばかりです。よほどの不覚でもない限り大丈夫でしょう」
作中では、ロデニウス連合王国にまだ情報がないので、読者の皆様には“堺がワイバーンオーバーロードの存在を知らない”のはご容赦願いたい。
まあ、ワイバーンオーバーロードでも最高時速430㎞なので、練度の高い母艦航空隊の戦闘機乗りなら余裕で勝てるだろう。
「というわけですので、彼らが魔改造でもして『時速600㎞を出せるワイバーン』でも配備していない限り、我が軍の航空隊が敗北を喫することはないでしょう。まあ、人間が耐えられる荷重の大きさは、高が知れておりますので、ワイバーンを使ってのあまりの高速での戦闘は不可能であると思います」
「そういうことなら、承知した。貴官を信じよう」
そう言ってアルデバランが頷くと、パタジンとシャークンもそれに従った。
「では、説明を続けさせていただきます。私は先ほど、“パーパルディア皇国艦隊を撃滅する”と申しましたが、はっきり申し上げて、『航空攻撃』だけでパーパルディア艦隊を“真の意味で”
そこで、アサマ作戦の2合目『チェックメート作戦』として、第13艦隊を主力とする水上打撃艦隊と空母機動部隊を投入し、パーパルディア皇国に対して海上封鎖を仕掛けます。またこの時、もしエストシラントを守ろうとしてパーパルディア皇国が艦隊を出してくれば、水上砲撃戦によってこれを撃滅します。ここまではよろしいでしょうか?」
ここで、海軍第2艦隊司令官のルーシャン・ドハム提督が挙手した。背丈は低めだが、がっちりした体格のドワーフ族の男性だ。嵐の海にあっても、艦橋にデンと構えて指揮を執っているのではないか、と堺がぼんやり考えるほどの恰幅の良さである。
「はいドハム殿、どうぞ」
「説明ありがとうございます。“敵の数が多い”とのことですが、第13艦隊も投入してしまうと、本土の防衛が薄くなるのではないでしょうか。その場合、敵に背後を衝かれる可能性があると思います。堺殿は如何お考えですか?」
(流石だ、ドハム殿。鋭いな)
そんな感想を抱きながら、堺はゆっくり答えた。
「ご質問ありがとうございます。確かに仰る通り、そのリスクは捨て切れません。ですので、第13艦隊の一部戦力を残しておきます。
例えば、第13艦隊が保有している戦艦で見てみますと、総勢17隻のうち、現時点では7隻が対パーパルディア戦線に投入されており、1隻は改装中で動かせませんから、残りの戦艦は9隻です。このうち1隻をデュロ攻撃に、1隻をアルタラス島とシオス島の防衛に、1隻をフェン島の防衛に、1隻を別途任務に充てますので、本国に残る戦艦は5隻です。この他にも空母6隻、航空巡洋艦4隻、重巡洋艦3隻、軽巡洋艦と駆逐艦はまだ多数残っております。
またこれ以外に、大陸各地に設置された基地から航空機を飛ばし、24時間態勢で哨戒を行います。これによって手薄になった本土をカバーしようと思います。もちろん、ドハム殿を含めて他の司令官の方々が指揮している艦隊にも、手伝っていただきたく思います」
「なるほど、ありがとうございます」
堺の回答で疑問を解決し、ドハムは着席した。
「他にご質問のある方はいらっしゃいますか?」
誰も手を挙げなかったので、堺は続きの説明に入った。
「さて、先ほど少しだけお話しましたが、アサマ作戦3合目『スターボウブレイク作戦』は、デュロ攻撃です。デュロは、パーパルディア皇国の工業の中心であり、同国の武器や弾薬の製造を一手に引き受けていると見られますので、ここは絶対に“完膚無きまでに破壊する”必要があります。
これには、第13艦隊から戦艦1隻、空母2隻を中心とする空母機動部隊を投入します。また、これと一緒に揚陸艦『神州丸』を中心とする揚陸艦隊を派遣し、フェン王国の飛行場からも爆撃隊を送ります。航空攻撃と艦砲射撃によって敵基地と工場地帯を焼いた後、陸軍7個師団約8万人を揚陸してデュロを完全に制圧します。ここまではよろしいでしょうか?」
今回は誰も挙手しなかったので、堺は説明を続行した。
「それでは、アサマ作戦4合目の説明に入ります。アサマ作戦4合目『ブレイジングスター作戦』は、レノダ攻撃です。レノダは、パーパルディア皇国西部に位置する港湾都市で、巨大な造船所を擁しており、パーパルディア皇国海軍最大の後方拠点となっております。ここも、絶対に叩かなければなりません。
ただ、このレノダは中規模陸軍基地が併設されており、しかも飛行場があるので、ワイバーンロードによる空襲が予想されます。このため、我が軍が投入する戦力としては、戦艦1隻、空母3隻を中心とする空母機動部隊を投入したい、と考えます。また、こちらへの陸上攻勢については、“パンドーラ大魔法公国軍及びマール王国軍が担当する”ことになります」
とここで、陸軍第3軍団司令官のクワルク・サムダ将軍が挙手した。
「ちょっと待ってくれ堺殿。マール王国は分かるが、パンドーラ大魔法公国だと? その国は確か、パーパルディア皇国の属国だったはずだが、どういうことだ?」
(やはり、そこが気になるか)
サムダ将軍の質問を聞いて、堺はそう考えた。席上を一通り見渡してみると、他の出席者もサムダ同様に、疑問や疑念を抱いたような表情をしている。堺は、彼らのうち少なくとも半数の頭上に、大きな「?」マークが浮かんでいるのを幻視した。
「ご質問ありがとうございます。仰る通り、パンドーラ大魔法公国はパーパルディア皇国の属国です。ですが、外務部のリンスイ卿が得た情報によれば、パンドーラ大魔法公国は『パーパルディア皇国に無理矢理属国にされた』とのことで、公国内では反パーパルディア感情が高く、我が国と内通してパーパルディア皇国と戦う覚悟を示しているそうです」
「それは本当か?」
「リンスイ卿は、『パンドーラの学院連合次長であるメルデ氏が、お忍びで我が国を直接訪ね、以上の情報をもたらした』と仰っていました。学院連合次長という、いわば“国のサブリーダー”が直接もたらした情報ですから、おそらくホラではありますまい。また、パーパルディア皇国の属領への圧政を考えれば、属国であるパンドーラ大魔法公国に対する扱いも、酷いものと想像されます。反パーパルディア組織ができるのは、むしろ当然と言えるでしょう」
「なるほど、そういうことだったのか。失礼した」
サムダ将軍が着席する。
「質問がないようなので、説明を続けさせていただきますね。そして……」
ここで堺は、不意に口調を深刻なものに変えた。
「アサマ作戦の5合目です。こちらには『カタストロフ作戦』というコードネームが充てられています。具体的な手法は申し上げかねますが、この作戦の目標は……端的に言えば、“パーパルディア皇国皇帝ルディアスの殺害”と、“パーパルディア皇国上層部の撃滅”です」
「「「「「!!!??」」」」」
いきなり堺の口から飛び出してきた「カタストロフ作戦」のトンデモ目標に、出席者一同が目を見開く。
「最後に、アサマ作戦6合目、パーパルディア皇国本土への大規模陸上侵攻である『ラグナロク作戦』です。これに関しては、先にご説明致しました『スターボウブレイク作戦』……アサマ作戦3合目『デュロ攻撃』において揚陸した陸軍兵力も関わってきます。作戦に参加するのは、『南方軍集団』と呼称する部隊と、『東方軍集団』と呼称する部隊、そしてパンドーラ-マール連合軍になります。
まず、南方軍集団の42個師団約50万人を以て、エストシラントの西部沿岸にある浜辺に上陸し、エストシラントを占領します。戦車隊も同行させる予定ですから、いくら何でも1週間もあれば制圧できるでしょう。エストシラント制圧が終わった段階で、南方軍集団はパーパルディア皇国のほぼ中央部にある都市パールネウスに向けて進軍を開始。同時に東方軍集団……デュロに上陸した部隊のうち6個師団約7万人も西南西の方向に進撃し、パーパルディア皇国北部の要衝アルーニを突破して、パールネウスに兵力を進めます。最終的には南方軍集団、東方軍集団、そしてパーパルディア皇国西方から進撃してきたパンドーラ-マール連合軍の3部隊を連携させて、パールネウスに総攻撃をかけます。
パールネウスは、パーパルディア皇国においては『聖都』と呼ばれる特別な街です。パーパルディア皇国の前身は“パールネウス共和国”と呼ばれる国だったそうですが、どうやらここは、そのパールネウス共和国の首都だったようですな。ここを陥とせば、如何にパーパルディア皇国といえども、滅亡は免れないでしょう。
これを以て、アサマ作戦の戦術的目標『パーパルディア皇国の段階的な制圧と、パーパルディア皇国軍の撃滅』、並びにアサマ作戦の戦略的目標『パーパルディア皇国の滅亡または無条件降伏による同国との戦争の終結』が達成される見込みです」
堺は、ここで一息入れた。
「最後に、補足説明をさせていただきます。パーパルディア皇国が現在、“72ヶ国の属領”を支配していることは、皆様もよくご存じであると思います。我々は、この“皇国本土における戦い”でも、おそらく連戦連勝となるでしょう。我々は勝つ度に、その情報を“魔信ニュースで大々的に発表”し、それによって“属領各国のパーパルディア皇国からの独立”を促したいと考えております。
もしこの試みが成功すれば、パーパルディア皇国は属領を全て失い、“列強の座”から転落することとなるでしょう。パーパルディア皇国の“滅亡”を目指すのはもちろんのこと、“列強としてのパーパルディア皇国の解体”も行っていくと、なお効果的である、と考えられます」
そう、地図上のパーパルディア皇国が何やら複雑に分割されていたのは、これが原因である。属領にされた国ごとに分割し直した結果、こうなったのだ。
「また、作戦の遂行に当たっては、アルタラス島のルバイル基地に展開した『B-29改』を適宜投入し、パーパルディア皇国の各都市に対して戦略爆撃を実施します。その他、シオス王国のゴーマ基地やフェン王国のカエデ基地からも航空機を飛ばし、パーパルディア皇国の東部や南部に対して戦略爆撃を行うとともに、宣伝ビラを散布してパーパルディア国民や軍部の継戦意志を
堺は一旦、一息入れた。そして、呼吸を整えて説明を再開する。と同時に、彼は指揮棒を手に取り、それで「エストシラント」と書かれた地図上の点を示した。
「では続いて、現時点でのパーパルディア皇国軍の展開の様子の説明に移ります。
まず、敵国の首都エストシラントには、大規模陸軍基地が1つ、市街地から少し離れた北部に築かれており、同基地は大型飛行場を有しています。アルタラス王国に建設されていたワイバーンロードの飛行場の規模から計算しますと、この飛行場はワイバーンロード約800を収容可能と見られます。ですので、爆撃の際には戦闘機による護衛が必須となります」
堺のこの説明を聞いた瞬間、アルデバランが苦い表情を浮かべた。
ロデニウス連合王国空軍の戦力は、現時点でワイバーンが272騎。パーパルディア皇国は、その3倍近い竜を擁し、それも改良型であるワイバーンロードを、“首都を守るためだけ”に配備しているのだ。国力の差は歴然である。
「また、基地の規模から考えると、エストシラント基地は20〜25万人を収容していると見られます。また、先ほど申し上げた通り約800騎のワイバーンロードの他、多数のリントヴルムも配備されているでしょう。
更にエストシラント軍港には、竜母約30隻を含む400隻以上の艦隊が集結しております。現在物資の積み込みが盛んに行われており、また多数の輸送船も配備され、リントヴルムの姿も見られることから、この艦隊はアルタラス島、もしくは我がロデニウス大陸の占領を狙っていると見られます。エストシラントには、以上の敵兵力が展開しております」
堺は続いて、指揮棒を「デュロ」と書かれた点に伸ばした。
「続いて、このデュロには市街地西部に大規模陸軍基地が築かれており、規模から見て兵力20〜25万人を収容していると見られます。また、こちらにも飛行場があり、飛行場の規模から見積もって、ワイバーンロード400騎程度が配備されている、と見られます。こちらについては、リントヴルムがいるかどうかは不明です。
更に、このデュロにも艦隊が配備されており、戦列艦、竜母を合わせて約100隻程度の艦隊がいることが偵察の結果、判明しています。デュロの兵力配置は以上になります」
今度は、指揮棒の先端が「レノダ」と書かれた地点を指した。
「このレノダは、巨大な港湾都市となっており、パーパルディア海軍最大の後方拠点です。ここには、約150隻程度の艦隊がいましたが、中央暦1640年の2月半ば頃からほぼ全ての戦力が順次移動し、アルタラス島に集まっているのが観察されていました。おそらくですが、パーパルディア皇国は1月のフェン王国への侵攻で少なくとも1個ないし2個艦隊を全滅させられている、と推測されていますので、その全滅した艦隊の立て直しを行ったのでしょう。この移動した戦力は全て、タスフラワー作戦の際に我々が沈めております。従って、レノダは今、海上からの侵攻には比較的無防備な状態にあります。
ですが、20隻ほどの艦隊がいることが分かっております。また、同市には比較的小型の戦列艦が多数、陸揚げされております。おそらく解体待ちの旧式艦なのでしょう。状況次第では、この解体待ちの戦列艦も戦列に復帰する可能性があります。また、ここには中規模基地が築かれており、デュロと同規模の飛行場も併設されています。兵力の収容能力は、おそらく10~15万人規模と思われます。レノダの防衛戦力については、以上になります」
堺は一度言葉を切り、「失礼します」と一声かけてから自分の席にあったコップを取り、中の水を一息に飲み干した。そして話を続ける。
「失礼しました。それ以外ですと、パールネウスに中規模基地が作られております。ここの基地の推定配備兵力はおよそ10万。このことから考えても、パーパルディア皇国はパールネウスを重要視していることが分かります。
また偵察の結果、アルーニにも大規模陸軍基地があることが分かっています。その他としては、皇国と属領の各地に兵力が分散されて配置されている状態です。“属領を統治するための兵力の展開”であると推察されます。敵戦力の配置についての説明は、以上です」
堺はここで、持っていた指揮棒を置いた。
「ではいよいよ、我が方の作戦と動員兵力について発表します。この『アサマ作戦』は、我がロデニウス連合王国軍でも例のない、“大規模兵力を投入しての戦い”となります。それでは、作戦の遂行に当たる兵力の発表に移ります」
堺がそう言うと、特に陸軍の各軍団の司令官たちや、海軍の各艦隊司令官たちの顔に、緊張の色が現れた。
「順を追ってご説明致します。
まず、アサマ作戦1合目『トワイライト作戦』には、私の指揮します第13艦隊の戦力が中心となって参加します。参加する兵力は、第13艦隊から戦艦7隻、正規空母10隻、重巡洋艦8隻、航空巡洋艦2隻、軽巡洋艦7隻、駆逐艦40隻、潜水艦9隻、潜水母艦1隻、補給艦10隻。また、アルタラス島のルバイル基地に展開する基地航空隊から、戦闘機72、爆撃機72の計144機が出撃します。爆撃隊の主力となるのは54機の一式陸上攻撃機で、これに18機の『
今回、『隼』には“我が陸軍航空隊の新米たち”に搭乗いただき、実戦を経験していただきます。心配になる方がいらっしゃるかもしれませんが、零戦に乗るのはいずれもベテランの搭乗員ばかりであり、特に零戦21型に乗るのは歴戦の飛行隊長が率いるプロばかりなので、ご心配には及びません。アルタラスから発進した隊には、エストシラント北方の基地を爆撃していただきます。
また、同時にシオス王国のゴーマ基地からも一式陸上攻撃機72機、戦闘機72機、計144機からなる攻撃隊を出します。こちらは、零戦21型に乗る“海軍航空隊の新兵たち”に実戦を経験していただく隊となります。代わりに、『隼』を装備した戦闘機隊として、飛行第54戦隊と飛行第64戦隊をお付けしますので、問題はございません。ゴーマ基地から発進した航空隊も、エストシラント北方の基地を叩いていただきます。
これと並行して、第13艦隊の空母機動部隊から母艦航空隊を
この攻撃が終了した後、アルタラスのルバイル基地から発進した航空隊はシオスのゴーマ基地に、シオスのゴーマ基地から発進した航空隊はフェンのカエデ基地に着陸します。これは、アルタラスのルバイル基地が、『B-29改』の前線運用拠点となるので、それに対応するためのものです。なお『B-29改』は、機体そのものが非常に大きいので、ルバイル基地の収容能力をフル活用したとしても、最大で180機の収容が限界です。
以上が、『トワイライト作戦』への投入兵力になります。また、アサマ作戦2合目『チェックメート作戦』は『トワイライト作戦』に引き続き、第13艦隊の戦力で対応に当たります」
堺はここで一息入れながら、並み居る将軍たちを見回した。そして、質問がないと判断すると、次の説明に入る。
「続いて『スターボウブレイク作戦』ことアサマ作戦3合目、デュロ攻撃です。これには、第13艦隊から戦艦1隻、空母2隻、重巡洋艦1隻、駆逐艦2隻を投入し、また第2艦隊から重巡洋艦2隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦4隻を投入する予定です。更に、揚陸艦『
この艦隊の総指揮ですが、ドハム提督にお任せしたいと思います。また、陸軍の指揮はサムダ将軍に委ねます」
堺がそう言った瞬間、海軍第2艦隊司令官であるドハムと、陸軍第3軍団司令官であるサムダの目が見開かれた。同時に、他の将軍たちが一斉に彼らを見る。
「ドハム提督、サムダ殿、よろしくお願い致します」
堺に言われ、2人は立ち上がると敬礼した。
「はっ、任されました! 新たな艦を率いるようになって初めての実戦……必ずや、作戦を成功させて見せます!」
「承知しました。近代的な銃を装備しての大規模戦闘……このサムダ、
この宣言に、堺は満足そうに頷く。
「お願いしますね。では続いて、アサマ作戦4合目『ブレイジングスター作戦』です。これには、第13艦隊のうち『チェックメート作戦』に参加している艦艇から、戦艦1隻、空母3隻、重巡洋艦1隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦7隻を投入し、パンドーラ-マール連合軍の陸上作戦の援護と艦砲射撃・航空攻撃によるレノダの殲滅を狙います。
なお偵察の結果、このレノダは港湾部と居住区が極めて近い位置にありますので、ここは“民間人に被害を出さずに殲滅するのは極めて困難”と見られます。よって、『B-29改』を投入し、無差別戦略爆撃による航空援護を実施します。『B-29改』の前線投入は、本作戦が初めてとなる予定です。これらの戦力によって、マール王国軍計3万5千とパンドーラ大魔法公国軍計2万5千、合計6万名の地上攻撃を援護します」
ここでついに、「B-29改」の前線投入が決定したのだった。
「そして、アサマ作戦5合目『カタストロフ作戦』です。本作戦は兵力3,000名を以て行います。
最後に、アサマ作戦6合目『ラグナロク作戦』に参加する兵力の発表です。こちらに参加するのは、これまでにない大規模なものとなります。
まず、エストシラントを制圧した後にデュロに向けて進軍する南方軍集団から発表します。南方軍集団の動員兵力は、第1軍団から20個師団、第2軍団と第4軍団からそれぞれ10個師団、そして第13軍団から2個師団で、合わせて42個師団約50万人とします。また、第13軍団から戦車第11連隊を投入します。今回の作戦では、パーパルディア皇国はインフラ設備が整っていないので、基本的に戦車を擁する機甲師団は、第11連隊以外は投入せず、移動用の乗用車やトラック、機銃で武装したハノマーク装甲車を投入するに留めます。南方軍集団の指揮は、ノウ将軍に執っていただきます。
南方軍集団は、エストシラントを最大1週間で制圧した後、北上を開始し、エストシラントの北300㎞にあるパールネウスへと向かっていただき、パールネウスへの攻撃を行っていただきます。
また、デュロを占領している第3軍団の陸上兵力のうち、5個師団6万人を『東方軍集団』としてパールネウスに派遣していただきます。残りの2個師団約2万人は、占領したデュロの守備に当たっていただきます。途中、アルーニでの大規模戦闘が予想されますが、デュロに展開する空母から戦闘機を飛ばすなどして、援護することを予定しています。
こうして、西はパンドーラ-マール連合軍が攻め、東は東方軍集団がこれを制圧し、南は南方軍集団の大兵力を以て占領。そして、最終的に敵をパールネウスに追い詰め、パールネウスに総攻撃をかけ、これを占領します。これを以て、作戦終了となる公算が大であります。
ただ、皆様もよくご存じと思いますが、『戦場は思い通りに動くもの』ではございません。敵がどう動くかは、その時その場になってみないと分かりませんので、この流れを主軸としつつも、“臨機応変な対応を行う”こととなるでしょう。以上、アサマ作戦の各段階の説明でした」
長きに亘る説明を終え、堺は着席した。
「以上が、アサマ作戦の全貌だ。他に何か、質問はあるか?」
軍務卿ヤヴィンがそう言うと、幾つか手が挙げられ、質問が行われた。
それに対して応答が行われた後、ヤヴィンが立ち上がり、宣言する。
「では、各部隊の健闘に期待する。本作戦は、“この戦争の趨勢と、誇りある我がロデニウス連合王国の運命がかかった重要な作戦”である。各自、心して作戦にかかって貰いたい! 以上!」
出席していた総員が、一斉に敬礼する。
こうして、アサマ作戦が全部隊に通達されたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃、クワ・ロデニウスの一角にある大使館街。
そこに設置されているムー国大使館に、突然の来客が飛び込んできた。
「あれ、マイラスさん。本日はどうされ……っ!?」
応対しようとしたムー大使ユウヒは、“鬼気迫る”といわんばかりの表情で飛び込んできた、ムー統括軍技術士官マイラス・ルクレールに驚いていた。
「ユウヒ大使! 今すぐに、ムー本国の外務省と統括軍本部に通信を繋いでいただきたい! 緊急事態です!」
まともに息を吐く暇もなく、マイラスは一方的にまくし立てる。どう見ても、ただごとではなかった。
ユウヒは咄嗟に、部屋の片隅に控えていた秘書に視線をやる。秘書は迅速に行動し、コップ1杯の水を持ってきた。
「マイラスさん、まずは落ち着いて……!」
必死に、コップをマイラスに押し付けるユウヒ。マイラスは一息に水を飲み干して、息を吐いた。
「ふう、失礼しました。取り乱してしまってすみません。ですがユウヒ大使、本国へすぐ連絡を取っていただきたく存じます。パーパルディア皇国内にいるムーの民が、危険に晒されています」
「何ですと? どういう意味ですか?」
ソファーを勧められたマイラスは、それに腰かけると真剣な表情でユウヒの顔を見詰め、話し始めた。
「ユウヒ大使、以前にロデニウス連合王国軍の方から、“我々の空港の利用についての要請”が来ませんでしたか?」
「ええ、来ましたよ。アルタラス島にあるルバイル空港と、シオス島にあるゴーマ空港の使用許可を求めていきました。それが、何か関係があるのですか?」
「ええ。私たちが集めた情報によれば、どうやらロデニウス連合王国軍は、パーパルディア皇国本土に対して無差別爆撃を行う公算が大きいです。文字通り、パーパルディア皇国の軍事基地のみならず、経済都市から工場地帯から、一切合切全てを焼き払うつもりのようです。無論、これにはエストシラントも含まれます」
「なっ……!?」
今度は、ユウヒが驚く番だった。
「私たちムーの観戦武官一同は、更なるデータ収集を急ぎます。ですが万一のことを考え、本国に連絡をお願いしたく存じます。私が通信で直接対応しますので、ユウヒ大使は連絡回線を繋いでくだされば結構でございます」
マイラスのこの説明を聞いて、ユウヒも即断した。
「分かりました。どうやらよほどのことのようですね。どうぞ、通信をお使いください」
「あ、ありがとうございます!」
マイラスは、深々と頭を下げるのだった。
はい、アンケートで取った皆様のご意見や、ロデニウス連合王国の立場などを考慮した結果、慈悲の欠片もない作戦が出来上がりました。
まあ…殲滅戦って言い渡された以上、ある程度は仕方ないのかな…。
次回予告。
ついに決行が決められた「アサマ作戦」。その遂行のため、アルタラスをはじめとする前線拠点に、ロデニウス連合王国軍の戦力が集結し始める。一方、ユウヒ大使を通じてマイラスから連絡を受けたムー政府は…
次回「アサマ作戦、発動寸前!」