鎮守府が、異世界に召喚されました。これより、部隊を展開させます。   作:Red October

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私「やっと学校終わった…疲れたな。でもレポートも小説も書かにゃならんし、まずはハーメルン見てみるか」


拙作の評価バーが黄色、お気に入り43件

私「(  Д ) ゚ ゚ファ!?」

私「ヾ(o゚ω゚o)ノ゙ウオォォォォォ」


こ、ここまで伸びるとは思わなかった…!嬉しさのあまり、一気に書き上げました。

評価9をくださいました正憲様、評価7をくださいましたmugen様、GUNPEI様、評価4をくださいましたケチャップの伝道師様、本当にありがとうございます。
また、お気に入り登録していただいた皆様、ありがとうございます!


お待たせいたしました、ドンパチパート第一部、開幕でございます。
1万3千文字を超える文字数なので、長いということをあらかじめご理解いただけますと幸いです。
それと、描き方が足りない、と思われましたら、ごめんなさい。感想欄にでもご指摘いただけますと参考になります。



006. 海と空に鉄と血は舞う

 中央暦1639年4月21日 午前4時45分、ロデニウス大陸北岸、マイハークの北西約20㎞の沖合。

 ようやく水平線の端が明るくなってきたという頃、まだ暗い海を割き、高速(この世界基準)で西へと進む一群の艦隊があった。クワ・トイネ公国海軍所属・日本国海上護衛軍タウイタウイ泊地艦隊の一部隊である。 

 その艦隊の中心には、平べったいシルエットの艦が2隻、航行していた。航空母艦の「(あか)()」と「()()」……かつて太平洋を(せっ)(けん)した()(ぐも)機動部隊、その主力となった栄光の第一航空戦隊である。

 「赤城」の甲板では、既に機体の暖機運転が完了しており、幾つものプロペラエンジンの音が響いていた。その下、格納庫の中には、飛行服を着た大勢の妖精が集まっている。全員の手には、日本酒の入ったお(ちょ)()があった。

 

「諸君」

 

 集団の前に立つ妖精……第一次攻撃隊の隊長が話し出す。全員の目が、そちらに注がれた。

 

「間もなく、タウイタウイ艦隊がこの世界に転移して以降、初めての実戦が行われる。その一番槍を、我ら栄えある(いっ)(こう)(せん)が務めることになった。これ以上の名誉はない」

 

 ゆっくり、静かに話す隊長。

 

「敵は、標的艦よりもろい木造船だが、()()()はやたら多い。どうやらそれだけの数がある、というだけで、(いくさ)をやる前から勝ったつもりでいるらしい」

 

 ふいに隊長は語調を変え、太い声とともに、左手の握りこぶしを振り上げた。

 

「だが諸君、知っているな? そういう状態を何と表現するのか! そう、(まん)(しん)である!

彼らは現在、調子に乗っているのだ。この艦隊に勝てる者など、クワ・トイネの艦隊にはいない、と。だが、それこそが彼らの慢心であり、油断である!

我々の仕事は、そんな奴らに頭から冷水をぶっかけてやることだ。ついでに、軍刀を突き立ててやることだ」

 

 ほんの少し、妖精たちの中から笑い声がする。それが静まるのを待ち、隊長は再び、声を張り上げる。

 

「思い上がっているロウリア艦隊の奴らに、クワ・トイネ公国海軍の、そしてタウイタウイ艦隊の、実力のほどを見せつけてやろうではないか!」

「「「おおーっ!」」」

 

 妖精たちも、一斉に握りこぶしを振り上げる。

 

「敵艦隊の位置情報は、既に(さい)(うん)から入ってきている。では諸君、行こう。クワ・トイネ公国の勝利と、一航戦の栄光に、乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」

 

 隊長のかけ声に合わせ、全員が右手に持ったお猪口を、上へと突き上げた。そして、それを口元へ持っていき、ぐいっと一気に飲み干す。

 

「全員搭乗! 出撃せよ!」

 

 隊長の号令一下、妖精たちはお猪口を給仕係の妖精に返し、ダッシュで階段を駆けあがって、飛行甲板に出ていく。そして5分後には、全員が搭乗を完了していた。

 

「攻撃隊、発艦準備よし!」

「最大戦速! 風に立て!」

 

 「赤城」の艦橋では、(かん)(むす)たる"赤城"が凛とした声で命じた。航海長妖精が舵を切り、「赤城」は30ノットの全速に加速して、風上に向かって走る。ほどなく甲板の先端から吹き出ている白い蒸気が、艦の中心軸と一致した。

 

「第一次攻撃隊、発艦してください!」

 

 再び、"赤城"は命じた。

 

「攻撃隊、発艦はじめー!」

 

 その命令を受け、甲板上では旗が振られる。

 

「総員、帽ふれー!」

 

 対空機銃座の妖精などが、一斉に帽子を振って見送る中、「赤城」から第一次攻撃隊……「(れい)(せん)52型(熟練)」10機、「(てん)(ざん)」20機、「(すい)(せい)一二型甲」32機が発艦した。少し後ろを走る「加賀」からも、「零戦52型(熟練)」26機、「天山」20機、「彗星一二型甲」32機が飛び立っていく。

 

 空中集合を終えた第一次攻撃隊は、零戦36機、「天山」40機、「彗星」64機、合計140機の航空隊となった。そして、美しい密集隊形の陣を組み、(あかつき)の空に背を向けて敵艦隊に突進していく。その後を追いかけるように、タウイタウイ艦隊は21ノットの速力で西進していった。

 

(何なんだ、これは? 昨日から驚愕のしすぎだが、いったい何度驚愕すればいいんだ?)

 

 6時半頃、起床して朝食を済ませ、「(おお)(よど)」の艦橋に上がってきたブルーアイは、艦隊の動く様子を見て驚いていた。

 帆も張っていないのに、明らかに速度が速い。どう見ても、クワ・トイネ公国の軍用帆船の4倍以上の速度で走っている。それに、艦同士の距離が離れている。密集する必要はないのだろうか?

 そんなブルーアイの疑問をよそに、艦隊はなおも進撃する。やがて、水平線の向こうに、ロウリア王国の艦隊が見えてきた……のだが。

 

「なっ!?」

 

 ブルーアイは、またも驚愕することとなった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 話は、タウイタウイ艦隊とロウリア艦隊の会敵より、1時間前にさかのぼる。

 朝日が空と海を照らす中、大量の帆船が東に向かって海を進む。ロウリア王国海軍の艦隊、4,400隻の大艦隊だ。

 

「いい景色だ。美しい」

 

 そのうちの1隻の上で、艦隊司令官・海将シャークンが呟いた。

 見渡す限り、船、船、船。船が多すぎて、海面が見えないほどだ。それぞれの船が、大量の水夫と揚陸軍の兵士を乗せ、マイハークに向かって進んで行く。

 大量の帆船が白い帆を朝日に輝かせながら、風をいっぱいに受けて進んでいく様は、「美しい」以外の表現が見つからない。

 

 6年もの期間をかけ、準備した戦力。パーパルディア皇国からの援助も受けて、ようやく完成した大艦隊。これだけの艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウスにはない。

 いや、もしかすると、パーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。

 

(いや……パーパルディア皇国には、砲艦という、船そのものを破壊することが可能な兵器があるらしいな……)

 

 一瞬顔を覗かせた野心を、シャークンは理性で打ち消した。第三文明圏の列強国に挑むのは、リスクが高い。

 その考えと野心を振り払うように、彼は艦隊の進行方向、つまり東の海を見た。

 

「ん?」

 

 見間違いだろうか? 水平線のあたりの空に、何か、黒い点が複数見える。

 シャークンは一度目をそらし、目をこすってから、再度そちらを見た。やはり黒い点が複数ある。しかも、先ほどより少し大きくなっている。

 

「こちらに、近づいてきている……!? それも、空を飛んで!?」

 

 東といえば、敵国の方向だ。そんな方向から、我が軍のワイバーンが飛んでくるわけがない。

 シャークンは一瞬で、事態を悟った。

 

「敵襲だ! 東の空から来るぞ!」

 

 シャークンの報告が魔信で各艦に伝えられ、兵士たちは一斉に戦闘態勢に入る。

 

「通信士! ワイバーン部隊に上空援護を要請しろ! 敵飛竜は100騎以上いると言え!

急げ!」

 

 そう言うと、シャークンはもう一度、黒い点を見上げた。そして、目を疑った。

 さっきよりもずっと近くにきている。そして、もはや点ではなく、はっきりした形を伴うようになっていた。飛竜のように見える…が、羽ばたいていない。代わりに、ブーンという音が耳に響く。移動速度が、とても速い!

 シャークンは不吉な予感を覚えた。

 

「あの飛竜を撃墜しろ!」

 

 とは命じたものの、シャークンには、それが無理難題だとわかっていた。

 飛竜を討てるのは、飛竜のみ。軍船では、飛竜の撃墜はとても難しいのだ。

 

 

 その頃、クワ・トイネ公国とロウリア王国との国境付近に設けられていた、ワイバーン部隊の本陣では、シャークンが出した上空援護の要請が届き、ちょっとした混乱が生じていた。

 

「なに!? 敵ワイバーンが、100騎以上だと!?」

「これはまずい! 侵攻艦隊に、相当の被害が出るやもしれんぞ!」

 

 オペレーターたちが、焦った様子で言葉を交わす。

 

「いかがしますか、司令?」

 

 尋ねられたワイバーン運用部隊司令は、即座に命じた。

 

「いま残っているワイバーンが、350騎いるだろう。それをすべて、艦隊に回せ! 奴らの飛竜なら、我が方のワイバーンでも戦える。数で押し潰す! 急ぐんだ!」

「了解です!」

 

 全騎出撃の命令はただちに発せられ、ワイバーンに乗った竜騎士たちが、続々と空に舞い上がっていった。

 

 

 上空援護要請の通報を終え、シャークンらが見上げるうちに、それらは複数の飛竜となって、さらに近づいてきた。と、その中から何騎かが前に飛び出し、そのうち1騎がシャークンの船に首を向けた。

 その瞬間、シャークンの本能が危険信号を鳴らす。同時にその飛竜の鼻先が、チカチカチカと細かく光った。

 

(!?)

 

 シャークンが目を見開くと同時に、

 

タタタタタタタタタタタタタタ

 

 細かい連続音がする。

 次の瞬間、甲板が(えぐ)られ、木片が宙を舞った。その近くにいた兵士は、それに触れた瞬間、悲鳴を上げてのけぞり、甲板に倒れ伏す。周囲には真っ赤な液体が撒き散らされていた。

 

「まさか……あれが敵の導力火炎弾なのか!? なんという連射速度だ!」

 

 シャークンは驚愕する。

 甲板には、小さい穴が2列に並んで開いていた。それを見やったシャークンの耳に、絶叫と悲鳴が響いてくる。

 急いでそちらを見ると、味方の船が同じ攻撃に晒され、多数の人間が血飛沫を上げて倒れていた。攻撃を受けた者は、全員ぴくりとも動かない。

 

「くそっ!」

 

 シャークンが叫んだとき、

 

「提督! 右を!」

 

 水夫の1人が叫んだ。

 はっとしてそちらを見るシャークン。敵の飛竜の一部が移動し、いつの間にか艦隊の前方ではなく右側面に展開していた。海面のすぐ近くという低高度を、まっすぐにこちらに向かって飛んでくる。

 

「提督! 上ですっ!」

 

 別の悲鳴に、シャークンははっとして上を見る。その目に飛び込んできたのは、急降下する敵飛竜。

 

「しまった!」

 

 シャークンが叫んだ直後、急降下する敵飛竜の1騎から黒い塊が1つ、ふわりと離れた。それは、味方の帆船の1隻に向かって落下していく。

 

ドカァァァァァン!

 

 黒い塊は、船に落ちると同時に炸裂し、ものすごい音と黒煙と炎を吹き上げた。ワイバーンの導力火炎弾なんか、比べ物にならない爆発だ。

 その瞬間、シャークンは見た。攻撃された味方の船が、()()()()()で真っ二つに折れ、沈んでいく姿を。

 実はこの不運なる船、「彗星」艦上爆撃機から投下された500㎏爆弾の直撃により、竜骨をへし折られてしまったのである。

 

「一撃、だと!?」

「提督、右です!」

 

 シャークンの悲鳴と、部下の悲鳴が重なる。

 見ると、海面ぎりぎりを飛ぶ敵飛竜が、海面に何かを落としていた。そして上昇し、味方の矢の射程から離れる。

 

「今度は何だ!?」

 

 シャークンの声を、爆発音が遮った。また、味方がやられたのだ。

 

「提督! 何ですかアレ!?」

 

 見張りが叫ぶ。シャークンはそちらを見た。

 低空を飛んでいた敵の飛竜が去った方向から、白い線が何本も、艦隊をめがけて走ってくる。シャークンはとっさに、これも攻撃だと判断した。

 

「全艦、海面の白い線を(かわ)せ!」

 

 魔信に怒鳴るも、もう遅い。

 海面を走る白い線のうちの1本、その前に味方の帆船が立ち塞がった。

 次の瞬間、ズズーン!という鈍い音と一緒に、白い柱が太く高く立ち上る。同時に、味方の帆船は一撃で真っ二つに折れ、乗っていた兵士たちを巻き込んであっという間に沈没した。

 

「こ、これも一撃必殺か!?」

 

 シャークンの悲鳴を、タタタタタという連続音が圧した。

 倒れるマスト。破かれた白い帆。爆発と水柱。沈む帆船。

 それらの頭上を、ブーンという音を凱歌として響かせながら、翼と胴体に赤い丸を描いた敵の飛竜が乱舞し、何度となく攻撃を繰り返した。

 

 

 結局、1時間ほどして一航戦の攻撃隊が去った時、シャークン率いるロウリア艦隊からは、200隻以上が失われていた。

 爆弾か魚雷を喰らった船は一撃で轟沈し、その他にも零戦の機銃掃射で油壺を割られ、油に引火して火事になり、戦えなくなった船もいる。

 

「何なんだ!? たったあれだけの攻撃で……」

 

 腰を抜かしたシャークンが呟いた時、

 

「前方、敵艦隊発見! なんだあの大きさは!?」

 

 生き残っていた見張りが絶叫した。

 シャークンは急いで立ち上がり、震える足を引きずるようにして船首に向かう。前方を見ると、

 

「大きい……大きすぎる!」

 

 愕然とするほど巨大な艦が少なくとも2隻、迫ってきていた。その後ろにも、それより小さいのが何隻か続いているようだ。

 直後、

 

「後方より、味方ワイバーン!」

 

 歓声が上がる。上空援護のワイバーン隊が、ようやくかけつけたのだ。

 振り返ると、空が黒く見えるほどのワイバーンの群れが近づいてきている。どうみても、300は下らないだろう。

 と、その時、シャークンらの頭上を、30騎ほどの敵飛竜が飛び越えていった。それらはまっすぐ、黒い雲のように展開している味方のワイバーン隊に向かっていく。

 敵飛竜は30騎ほどだが、味方のワイバーンは300騎以上。数の差で潰せる!

 期待を込め、シャークンらが見上げる中で、敵飛竜と味方ワイバーン隊が交差し……

 

「なっ!?」

「そんな……」

 

 驚愕と絶望の声が、ロウリア軍兵士たちから上がった。

 敵飛竜との交差だけで、30以上のワイバーンがやられ、墜落していったのだ。逆に、ロウリア軍のワイバーン隊は、多数の火炎弾を発射したにも関わらず、敵の飛竜は1騎も落ちていない。

 

「バカな!? 相手はクワ・トイネだぞ!?

奴らのワイバーンは、ここまで(かく)(ぜつ)した性能を持っているのか!?」

 

 シャークンは、困惑と恐怖が入り交じった声で叫んだ。

 シャークンらの混乱と絶望などお構い無しに、敵の飛竜は空を飛び回り、味方のワイバーンを叩き落としていく。ロウリア王国のワイバーンは、敵の飛竜の後ろをとってもすぐ振り切られる。逆に後ろを取られたら、どれだけ足掻こうとも逃げられず、タタタタという連続音のする攻撃を受けてミンチにされ、1騎また1騎とやられていった。しかしそれでも、ワイバーン隊は一撃を与えるべく、敵艦隊を目指して一直線に飛んでいく。

 戦場は移動し、シャークンの艦隊の上を越え、敵艦隊へと近づいていた。時折やられたワイバーンが、竜騎士ともども船の上に落下し、甲板に血と(ぞう)(もつ)とをぶちまける。味方の兵士の中には、それを見て吐き気を催す者もいた。士気が下がることおびただしい。

 と、ふいに敵の飛竜が動きを変え、味方ワイバーン隊より離れる。その頃には、味方のワイバーンは半分ほどに減らされていた。

 その時、敵艦隊の前方を走る2隻の大型艦が突然、光と炎を発する。

 

「何だ? 勝手に爆発したのか?」

 

 シャークンが呟いた時、

 

 空に、死を招く大輪の花が咲いた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「なっ!? 敵艦隊が、やられている……!?」

 

 ブルーアイは、またも驚愕していた。

 前方に見えるロウリア艦隊、そのうち何隻かが黒煙を引きずっている。船首を高々と突き上げ、沈んでいくものも見えた。そしてその上では、直衛の零戦隊30機と、敵ワイバーン300以上との戦闘が発生している。しかし、落ちていくのはロウリア軍のワイバーンばかりだ。数にはものすごい差があるのに、戦況は誰が見ても、こちらが圧倒的優勢である。

 

「了解。誤射防止のため、直衛隊には空域を離れるよう指示してください」

 

 ふいに、どこからか声が聞こえた。そちらを見ると、"大淀"が何かの機械を手に持って、話している。

 

()()さん、ビスマルクさん、主砲三式弾で敵を迎撃してください。艦隊全艦、防空戦闘用意!」

 

 それだけ言い終えると、“大淀”は機械を置く。どこからか、ラッパの音が高らかに聞こえてきた。

 

「ブルーアイさん、もうすぐ敵のワイバーン隊との対空戦闘が始まりますよ」

 

 "大淀"が話しかけてきた。

 

「は、はい」

 

 驚きの連続でブルーアイはただ、そう答えることしかできない。

 空を埋め尽くさんばかりの数の敵ワイバーン、それに対して“大淀”たちは()()()()で対抗しようとしている。

 軍船は、基本的に空からの攻撃には脆弱だ。火を付けられれば燃えるし、こちらから弓を放ってもワイバーンに当たらない。

 

(どうやって対抗するというのだろう?)

 

 ブルーアイがそう考えた、その時だった。

 

ズドオォォォォォォン!!

 

 鼓膜を突き破るような大音響。「伊勢」と「ビスマルク」が、艦体前方の主砲から「三式弾」を発射したのだ。目標は敵ワイバーン隊。

 少し後、空がピカッ! と光り、大量の火花が撒き散らされた。それに絡め捕られたワイバーンが30騎以上、炎の塊となって落下する。

 

「なっ!? あの1発で、30騎以上を……!」

 

 ブルーアイは、言葉を失った。

 船からの攻撃で、1騎どころか30騎もワイバーンを撃墜するとは……!

 と、「大淀」の右横を、小柄な艦艇が2隻駆け抜け、艦隊前方へ飛び出していく。その船体側面には、それぞれ「キヅキア」「キヅルテ」と書かれていた。

 

「全艦、対空戦闘開始!」

 

 タウイタウイ艦隊全艦から、一斉に対空砲火が上げられる。グワーン、グワーンとものすごい轟音が響き、耳がおかしくなりそうだ。

 空中に次々と黒い煙の花が咲く。もちろん、敵に死をもたらす地獄の花だ。それに捕まったワイバーンが、かたっぱしから粉微塵になって、墜落する。

 

『敵ワイバーン、残り約30! 距離2㎞まで接近!』

 

 ブルーアイには聞こえないが、"大淀"には"伊勢"からの通信が聞こえていた。

 

「対空機銃も撃ち方始めてください! 全武装使用自由(オール・ガンズ・フリー)!」

『了解! 派手にぶっ放すよ!』

『Feuer!』

 

 今やタウイタウイ艦隊の周辺には、対空機銃まで合わさって、死の暴風が吹き荒れていた。それが少しの間だけ続く。

 暴風が収まった時、空を飛んでいるワイバーンは、1騎もいなかった。ロウリア王国のワイバーン隊は、1発の導力火炎弾の発射も許されず、全騎が海の()(くず)と消えたのだ。

 

「ぜ、全滅させるなんて……」

 

 ブルーアイは、自分の中の常識がガラガラと音を立て、崩れていくのを感じた。

 

 

 常識が崩れていたのは、なにもブルーアイだけではなかった。

 

「なんということだ……。全滅だとは……」

 

 絶望的な声を漏らすのは、ロウリア艦隊の司令官・シャークン提督。他の兵士たちも、絶望を顔に浮かべている。

 敵艦隊の攻撃に向かった、残り120騎のワイバーン。だがそれは1発の攻撃もできぬまま、敵艦隊の猛烈な対空攻撃で全滅した。いまや空を飛ぶのは、敵の飛竜だけ。

 

「くっ……だが、やるしかない……!」

 

 シャークンも名将である、この時点で()()の戦力差を痛感していた。圧倒的に敵が強すぎる。全く太刀打ちできる気がしない。が、それでも戦うしかない。

 と、さっきまで空をにらんでいた、敵大型艦の片割れの兵装が動いた。

 巨大な鉄の箱から突き出た太い鉄の筒が、ゆっくりと下に下げられ……その先端が、こちらを向く。

 その瞬間、

 

ズドオォォォォォン!

 

 破壊が、撃ち出された。

 一瞬後、味方の艦隊の前方で、巨大な炎の花が咲く。艦隊前方を走る帆船が数隻、まとめて()()()(じん)に粉砕され、(ごう)(ちん)する。乗っていた人たちがどうなったか、考えるまでもない。

 

 

『初弾命中よ! でもこれじゃ、演習にすらならないわね』

 

 一番槍を付けた"Bismarck"の通信を受け、"大淀"は命じた。

 

「全艦、面舵30を取りつつ、航行序列を単縦陣に変更! 左砲戦にて、敵艦隊を叩きます。伊勢さんは弾種そのまま、三式弾で攻撃をお願いします。残る全艦は、弾種通常弾! 距離ゴーマル(5,000メートル。つまり5㎞)で射撃開始!

敵にフタマルまで近づかれた場合、機銃を使ってでも撃沈してください。彼らの狙いは白兵戦です。機銃でも十分撃ち抜けますので、絶対に相手を近づけないようお願いします。

全艦、左舷反航戦、砲雷撃戦用意!」

 

 艦隊はすぐさま「伊勢」を先頭に、右に30゜回頭し、単縦陣に移行しながら主砲を敵に向ける。序列は先頭から順番に、「伊勢」、「加賀」、「赤城」、「ビスマルク」、「大淀」、「(あき)(づき)」、「(てる)(づき)」、「(はつ)(づき)」、「(ゆき)(かぜ)」、「(とき)()(かぜ)」、「(たか)()」、「(あた)()」、「()()(くま)」、「()()」、「()(つき)」、「(きさ)(らぎ)」、「()(つき)」、「ヴェールヌイ」、「(かわ)(かぜ)」、「(かすみ)」の順だ。

 艦隊の左側に、大量の帆船が見える。それに対して、主砲が砲身を向ける。

 

「撃ち方始め!」

 

 "大淀"が号令したその途端、先頭を進む「伊勢」の主砲が火を吹いた。4基の「35.6㎝連装砲」が轟然と咆哮し、三式弾が炸裂して敵艦隊の上に光の花が咲く。その花弁に触れた船は、あっという間に火だるまにされた。

 直後、「ビスマルク」が主砲の全門斉射を放つ。大威力を誇る通常弾での全力射撃は、10隻もの軍船を一撃で、跡形もなく打ち砕いた。

 続いて、「大淀」の2基の「15.5㎝三連装砲」が発射される。と、「大淀」の()()と後方からも、似たような発射音が聞こえてきた。

 

(前?)

 

 "大淀"の脳裏に、疑問が湧く。

 後方からの射撃は、音からいって20.3㎝砲。これは、「高雄」と「愛宕」の主砲で間違いない。では、前からの発射音は、誰のものだろう?

 "大淀"は一瞬考え……すぐに納得した。前方にいる「赤城」と「加賀」、両艦の艦尾から発砲煙が出ていたのだ。

 

(なるほど、そういうことですか)

 

 そう、「赤城」と「加賀」が、艦尾の20.3㎝単装砲で砲撃を放ったのだ。あの単装砲は、決してただの飾りではないのである。

 20.3㎝砲どころか、15.5㎝砲でも木造の帆船にはオーバーキルというべき威力であり、直撃を受けた帆船は一瞬でバラバラにされる。

 それに遅れて、軽巡「阿武隈」、「鬼怒」以下の駆逐艦隊も射撃を開始する。睦月型の12㎝単装砲でも、ロウリア軍の帆船にはお釣りがくるほどの高威力であった。瞬く間に、ロウリア軍の艦隊はその数を減らしていく。特に秋月型駆逐艦は、対空戦闘を意識して作られた防空艦という特性を生かし、高い速射性と高射装置による正確な照準で、どんどんスコアを稼いでいた。キルレシオで見れば、ぶっちぎりの1位だろう。

 

『雪風は、沈みませんっ!』

 

 お決まりのセリフと一緒に、"雪風"が九〇式61㎝魚雷を発射する。白い航跡が8本、ロウリア艦隊に向けて突進し、水柱とともに6隻を海中に(ほうむ)った。(でん)(こう)(せっ)()(はや)(わざ)である。

 

 しかし、敵艦隊は必死でこちらに近づこうとする。何とかして移乗攻撃から白兵戦に繋げようとしていた。そんなロウリア軍船のうちの小柄な1隻が、「伊勢」に近付いていく。上手い具合に大型船を盾としたため、「伊勢」に2㎞の距離まで接近できた。

 

『こちら伊勢、敵1隻接近、排除します。全武装使用自由(オール・ガンズ・フリー)!』

 

 "伊勢"の声が通信に乗る。

 次の瞬間、「伊勢」の船体各所に設けられた大量の25㎜対空機銃が、一斉に撃ち始めた。木造船の装甲など、あってないようなもの。25㎜でも十分撃ち抜ける。あっという間にロウリア軍船は蜂の巣にされ、八九式12.7㎝連装高角砲で止めを刺された。

 

『敵船排除。ま、いいんじゃない?』

 

 タウイタウイ最古参の戦艦なだけに、実にあっさりした感想を残す"伊勢"であった。

 

 

 ロウリア王国海軍・東方征伐艦隊司令官シャークンは、絶望の縁に立たされていた。

 敵艦隊は進路を変え、縦2列から縦1列になって、こちらの艦隊の左を通過しようとする。こちらの矢は1本も届かないのに対し、向こうの強烈な魔導は次々とこちらの船を破壊し、沈めていく。小さいが速射性の高い魔導。隙は大きいが、すさまじい威力の一撃を放つ巨大な魔導。そして、小さい艦から発射される、見覚えのある海面に引かれる白い線。

 中には、危険をおかして接近しようとする帆船もあったが、それを待ち構えたさっきの濃密な弾幕が、今度は船を蜂の巣に変える。そして、接近した船は穴だらけにされて、あえなく轟沈した。

 もはや、勝負も何もあったものではない。

 

(これは……勝てない……。そして、部下をこれ以上死なせるわけにはいかない……)

 

 シャークンは、絶望的な決断を下した。

 既に艦隊は、3,000隻以上が燃えるゴミにされてしまっている。艦隊の約4分の3を失ったのだ。これ以上の()()きは、無意味だ。かといって、降参してもギムでさんざん虐殺をやった我々は、許されるわけがないだろう。

 シャークンの選択は、「撤退」であった。

 帰ったら、自分はロウリア最大の艦隊のうち半分以上を失った無能の将軍との(らく)(いん)を押され、死刑は免れないだろうし、歴史書に無能の将軍として名を記されることだろう。だが、部下をこれ以上無駄死にさせたくない。

 

「全軍撤退せよ、繰り返す、全軍撤退せよ」

 

 シャークンは魔信で、指示を下す。

 順次反転する味方の船団。シャークンの船も反転したその時、「愛宕」がぶっ放した主砲弾が、彼の船の船首を打ち砕いた。喫水線のすぐ近くに命中した砲弾により、船の竜骨が叩き折られ、喫水線付近に開いた大穴から、大量の海水が船内へなだれ込む。船はあっという間に前方へ傾き、そのままの勢いで海面に沈んでいった。その拍子に、シャークンの体は船の外へと投げ出され、船と一緒に沈みはしなかった。

 シャークンは、浮いていた木材に掴まり、漂流する。

 ロウリア艦隊が撤退を開始したのを見て、タウイタウイ艦隊は攻撃を中止した。そして全艦が機関を停止し、生き残って浮いているロウリア軍の兵士たちの救助にかかる。

 海将シャークンも、兵士たちとともにカッターに拾われ、駆逐艦「雪風」に収容された。

 

 

 生存者の救助作業の様子を眺めながら、ブルーアイは興奮で体を震わせていた。

 とんでもないものを見せられてしまった。普通なら、20隻で4,000もの艦隊に勝つのはどう考えても不可能。しかし彼らはやってのけた。敵艦隊を残り1,000隻くらいまで撃ち減らし、撤退させたのだ。海面に浮かぶ多数の浮遊物が、その事を何より雄弁に物語る。

 彼はふいに、大変なことに気付いた。

 

(これ、帰ったら報告しないといけないけど、どうやって分からせよう。見ていた自分ですら信じられないのに、パンカーレ提督やヤヴィン軍務卿が信じるとは、とても思えない……)

 

 ブルーアイは、自身に課された(おそらく最大の)課題に、胃がおかしくなりそうな感覚を覚えた。

 

 

 その頃。

 多数の船を失い、残り1,000隻で遁走するロウリア王国の艦隊。その1隻の上で、パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルは、ガタガタ震えていた。

 彼は死を覚悟したが、彼の乗った船は運良く撃沈されずに済んだ。

 

 パーパルディア皇国からヴァルハルに課せられた任務は、ロウリア王国の艦隊が如何にしてクワ・トイネ公国の艦隊を撃滅するか、記録することだった。この任務を命じられた時、彼は個人的な興味もあってこの任務を快諾した。

 蛮族らしいバリスタという攻撃方法と、斬り込みという原始的な戦闘方法で、これだけの数を揃えて戦ったらどうなるか、見てみたかったのだ。

 

 しかし、結果として彼が見たのは想像を絶するものだった。

 

 何やら変わった形の飛竜が群れをなして飛んできたな、と思ったのが災厄の始まり。その飛竜が放った、爆弾と思われる黒い塊により帆船は一瞬で火だるまにされ、あるいは木っ端微塵に吹き飛ぶ。海面に投下された白い線を引くわけのわからぬ何かが、帆船を一撃で真っ二つにへし折る。小さい何かを目にも止まらぬ早さで連続発射する攻撃で帆を破き、マストを倒し、人を血祭りにあげる。ロウリア王国の艦隊は一瞬で蹂躙され、多くの船が沈められた。

 ヴァルハルが乗っている船も、今は片付けられたものの、さっきまで死体の山が甲板上に築き上げられ、甲板は朱に染められていた。そして、甲板のあちこちに2列に並んだ細かい穴が多数開いている。零戦の機銃掃射(もちろんヴァルハルが知る訳もないが)でできたものだ。

 機銃掃射が船の上を駆け抜けていった時、ヴァルハルの目の前でロウリア軍の兵士が撃ち抜かれ、還らぬ人にされた。ヴァルハルは間一髪で死を免れたのだ。あと数センチずれていたら、間違いなく彼が死んでいただろう。

 

 やっとそれが済んだと思ったら、今度はロウリア王国のワイバーンと敵の飛竜の空中戦。しかし、皇国が支援してロウリア王国に売り渡したワイバーンは、敵の飛竜に全く敵わず次々と撃墜された。残ったものも、そこへやってきた敵艦隊の空の色が変わるほどの猛烈な砲撃により、瞬く間に全滅する。

 

 そしてとどめに、艦隊決戦という名の一方的蹂躙。ロウリア王国の帆船部隊は、ただの一撃も加えられぬままアウトレンジから徹底的に叩かれ、次々と沈められた。敵の数は変わらないのに、こちらはどんどん数を減らしていく。やがて撤退命令が出たらしく、ロウリア艦隊は反転して生存者を見捨て、海域を離脱した。その頃には、どう見ても出撃した時の半分も生き残っていなかった。

 そして今に至る、というわけである。

 

(何だったんだ!? アレは!?)

 

 敵が用いた艦艇も、想像を超えるものだった。

 そもそも、帆がない。

 そして、速力を上げる「風神の涙」を使った痕跡もないのに、ものすごい速度で海を走る。

 

 そして何より、“大砲”があった。

 蛮地にないはずの大砲があったのにも驚いたが、それだけではない。敵の大砲は、我がパーパルディア皇国のそれよりもはるかに巨大なものだった。しかも、命中率は100パーセントではないものの、相当な高さを誇る。その上当てれば帆船は1発で撃沈、下手をすると複数隻がまとめて屠られる。恐ろしいまでの威力である。

 しかも、敵の船は金属製らしい。我が方の戦列艦ですら、金属装甲を張っているのは一部だけで、大半は木造だというのに、クワ・トイネの軍船が金属製だとは、とても信じられない。

 

 何より驚いたのは、ワイバーンの波状攻撃を防ぎきったこと。

 我が国なら、ワイバーン相手には(りゅう)()(ワイバーンを洋上で運用するための特殊な船。いわばワイバーン用の航空母艦。航竜母艦、というべきか)を繰り出し、同じくワイバーンをもって対抗する。我が国のワイバーンは性能も良いので、同数ならば確実に勝てるし、そもそも大砲は空を飛ぶものに当たるものではない。

 しかし敵は、その当たるはずのない大砲の砲撃のみでワイバーン120騎を完封し、全滅させたのだ。とても人間業とは思えない。

 

(あの敵のことをよく知らないまま事を進めると、大変なことになるかもしれない……)

 

 背筋が冷えるのを感じながら、ヴァルハルは魔信を使って、自分が見たものをありのままに本国に報告した。

 

 

 それと時を同じくして、ロウリア王国の別の船の上でも男が1人、震えていた。ただし、この震えは恐怖に由来するものだけではない。驚愕から由来している分もある。

 彼の名はリアス。第二文明圏の列強、ムー国の観戦武官である。

 

「そんな……! まさか……! 我が国の軍艦より、大きいなんて……!」

 

 リアスの口から、驚きの声が漏れる。

 ムー国は、戦闘に関して情報収集癖があり、何か戦争があるとなると必ず該当国家の、それも勝つだろう方の国に観戦武官を派遣するのが常である。今回、彼はロウリア王国とクワ・トイネ公国の戦争について、ロウリア王国の観戦武官として、戦いの記録を集めてくるよう命じられた。

 こんな東の果てまで来て、見るものなんか何もないだろう、とは思ったものの、彼はしぶしぶその任務を承諾して、アルタラス王国まで飛行機で飛び、そこから船を使ってはるばる2万㎞も離れたロデニウス大陸までやってきていた。

 戦闘開始前に、船の数は4,000隻超 対 200隻未満だと聞いていたから、すぐ決着がつくと思っていたのだが……彼が見たものは、想像のはるか先を行くものだった。

 

 まず見たのは、……もうここからして信じがたいのだが……敵であるクワ・トイネ公国軍が“航空機”を出してきたのだ。

 ロウリア王国の兵士たちは、変な飛竜が飛んできた、といって騒いでいたが、科学機械文明国家ムーで過ごしていて、軍事の知識もあるリアスにはすぐ分かった。あれは飛竜などではなく、航空機だ。それも、単葉機。

 ムー国の誇る最新鋭戦闘機「マリン」ですら複葉機だというのに、こんな東の果てで単葉機にお目にかかるとは全く予想していなかった。しかも観察したところ、その「マリン」よりも速いスピードと高い機動性があるようだ。このことは、ロウリアのワイバーンと単葉機の戦いを見て気付かされた。

 さらに単葉機は、我が国の爆撃機のように上空から急降下して、爆弾……これも、東の果てにあるなどとは微塵も思っていなかった……を投下し、船を破壊していった。それだけではなく、海面に何かを落としていた。これは、どうやら水中を進む爆弾の一種であるようで、海面に白い線を引きながら進んできて、一撃で船を真っ二つにしていた。どんな原理なのか、さっぱりわからない。

 

 そして、敵の艦隊が登場したのだが……それを見て、リアスはひっくり返りそうになった。

 大きい。ムー国の標準艦どころか、最新鋭艦すら上回る大きさだ。しかもそれが2隻。

 

 リアスは、先日のことを思い出す。本国を発ち、アルタラスに向かう直前、ムーでは盛大な式典が行われ、同国の技術の粋を集めた最新鋭戦艦「ラ・カサミ」が竣工したのを見せられたところだった。あの時、「ラ・カサミ」の大きさや、搭載された最新式の30.5㎝連装砲、それを回して敵に照準する「回転砲塔」と呼ばれる最新の仕組み、帆や「(ふう)(じん)(なみだ)」、「(かい)(じん)()(くつ)」といった魔法石の代わりに、石油を燃やすことで得られる18ノットの高速を目の当たりにし、なんと素晴らしいのだ、と感嘆したものだった。

 

 この戦いでクワ・トイネ公国が繰り出したのは、その「ラ・カサミ」すら凌ぐ巨大な船体と、これまた巨大な大砲を備えたまごうことなき超大型戦艦だった。しかも、船体の進行方向に関係なく、常に砲をこちらに向け続けていた。間違いなく回転砲塔を有している。

 そして、その後ろに続いていた巡洋艦クラスや駆逐艦クラスと見られる小さな艦にも、回転砲塔が載せられていた。小型艦にすら回転砲塔があるということは、……信じられないが……おそらく、回転砲塔の仕組みが熟成され、全艦艇に標準装備されているのだろう。しかも、煙突から黒煙を吐いていたから、「ラ・カサミ」と同じく、たぶん石油か石炭を燃やして動力を得ている。

 そしてその超巨大戦艦も含め、クワ・トイネ公国の全ての軍艦は、「ラ・カサミ」よりも速い速度で、海上を疾走していたのだ。見た限り、どの艦も20ノット以上の速度で走っている。

 あの超巨大戦艦とは1対1で戦ったとしても、「ラ・カサミ」に勝ち目があるとはとても思えない。

 

(これは……たいへんなものを見てしまったぞ。なんとかして報告書を書いて、本国の連中に分からせなければ……! だが、見てもいないものを信じてくれるだろうか?

マイラス先輩なら、何とかなるかもしれないけど……)

 

 今から始まるだろう自身の苦難を思うと、胃が痛くなる。

 リアスは胃の痛みを抱えながら、本国に持ち帰るデータをどうやってまとめるか、どうやって報告するか思案し始めた。




Web版原作では、グラ・バルカス帝国の情報局が、ロウリア軍の帆船の写真を持っていましたが、本作では同国は転移したばかりと考えて、偵察員を派遣したりはできていないと設定しています。
ただ、ムーは戦闘情報の収集癖があること、アルタラス島に空港があることから、観戦武官の派遣は十分可能だと判断し、リアスというオリキャラを登場させました。さあ、果たしてリアスの報告は信じてもらえるのか?


次回予告。

わずか20隻で4,000以上の敵を破るという、とんでもない番狂わせを見せたタウイタウイ艦隊。そのニュースはあちこちに伝わり、波紋を広げていた…
次回「海戦の与えし影響」
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